仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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Dear my familiar

世界は終わった。

 

黄昏の眩しかった世界はこうして終わり、俺はただ真っ暗な世界にいる。

 

もう何をする気にもならなかった。

 

俺が大切と思ったものがまた離れた。

 

心が痛むとか、ズボラな俺には縁のない話だと思っていたのに、全然そんな事は無かった。

 

無表情を装い、しょうがないと切り替えて、歯を食いしばって戦い、傷が1つ増えていく。

 

体の傷と違ってそれはいつまでも残り続けるし、ふとした時にぶり返す。生死が掛かる戦いが無くなった時、それは頻繁に起きた。

 

しつこい風邪がぶり返すように。

 

それなのに、何故また俺は変身をしてしまったのか。

 

・・・・・・・

 

そうだ。俺はもうとっくに気付いていた。あの黄昏の世界は、俺の創った夢だということを。

 

いつ気付いたのかは覚えていない。もしかしたら最初からか?いや、もうそんな事はどうでもいい。

 

重要なのは、その世界に何故かのみきも付いてきてしまったという事だ。

 

真の俺を、あいつは知ってしまった。

 

『お願いだから私を巻き込まないで!』

 

彼女のあの言葉が耳に残る。

 

空を怖がり、部屋に籠もってしまった後輩の目を思い出す。

 

本当の俺を知ってしまったらこうして離れる。離れなくても待っているのは死。

 

そう考えると、そもそも繋がりを作ってしまったのが間違いなんじゃないのか?何故俺は少年団になんか入った?

 

矛盾している。

 

そもそも、何で俺は今そんな事を考えているんだ。俺は■■■■■だ。■■■じゃない。いや、■■■であっtて■■■■■では無かったっけ?

 

ダメだ。もう何もかもが崩れている。俺は零れていて、もう鏡にもどこにも映らない。

 

・・・・?

 

ふと横を見ると、そこには硬い髪を何本を立ち上がらせたヤマアラシのような怪物の姿があった。

 

そうか。ここが俺の夢の世界なら、こうしてやりたい事が反映されるのは当然か。

 

確かこいつは、あの津上ですら瀕死に追い込んだヤツだった。木野の処置が無ければ間違いなく死んでいたという。

 

夢の世界で死んだら、現実の俺もまた死ぬのか?苦しみから開放してくれるのか?

 

やってみる価値はあるのかもしれない。もうリセットしちゃうか。

 

いいよ、やれよ。

 

そう心で思ったタイミングと同じだった。ヤマアラシの怪物が頭を振りかぶって針を出すのと、

 

ピュンピュン!

 

それを水鉄砲が撃ち落としたのは。

 

水鉄砲?

 

驚いて辺りを見渡し、俺は目を疑った。

 

そこには、野村美希の姿があったから。

 

何でここに?どうやってここに?いや、それよりも、

 

何故俺を救けた?

 

「救けに来たぞ!!」

 

ピュンピュンピュンピュンと、のみきはハイドログラディエーター改の水をヤマアラシに向けて発砲し始めた。

 

辞めろ、あいつにそんな水が効くわけ無いだろ。

 

それにもう良いんだ。あいつに殺られる事で、俺は俺の運命を終わらせるんだから。

 

その思いに呼応して、ヤマアラシはまた針を出すが、

 

ピュンピュン!

 

それはまた撃ち落とされた。

 

「今まで何万発良一を撃ってきたと思ってる?こんなデカい針を撃ち落とすなど、造作もない」

 

終わらせてくれない。何で俺を...

 

「お前が呼んだからに決まってるだろ!」

 

・・・・・・は?

 

「蒼から聞いた。ここは、お前が思い描いた世界だって。お前が本当に終わらせたがってるなら、私はここに入れなかった。だけど入れた!それは、お前自身が終わらせたくないと望む心があるから、まだ迷いがあるからじゃないのか!?」

 

俺に、迷い...?

 

「だったら助けるぞ。お前は私の部下で、右腕なんだからな」

 

右腕?俺は違うってもう気付いてるんだろ?俺はーー

 

「いーーーや、右腕だ!」

 

断言。

 

口に出した訳ではないのに、考えを読まれた。

 

「お前があいつの事を言ってるのなら、筋違いだ!私にとってあいつは理想の男で、お前ごときでは到底及ばない領域にいる、理想の旦..って、にゃにを言わせるんだ!」

 

あっ、顔が赤くなった。

 

「それでもだ!私たちが過ごしたあの夏は、幻でも何でもなく本物だった!私は、お前と一緒に夏を過ごせて本当に楽しかったんだ!!」

 

のみき・・・

 

「前にも言っただろ。この島の皆は家族だと。それは、お前も含まれているんだ!!何者だろうと、どんな運命だろうと関係ない!■■■は、鳥白島の家族なんだ!!」

 

・・・・!

 

それは、俺の中の何かに響いた。

 

俺の事を知ってなお歩み寄ってくれた事が嬉しかったのだ。津上や氷川とも違い、同じ運命に翻弄されていないのに、むしろ俺が巻き込んだようなものなのに、俺の正体を知ってなお俺を受け入れ、理解してくれた事が嬉しかったのだ。

 

「あっ」

 

ふと見ると、ハリネズミの怪物が、のみきの方へと体を向けていた。

 

何をしている?お前の狙いは俺だろ!?

 

ダメだ。俺の中には、自滅の心が、迷いがまだ...

 

のみきはハイドログラディエーター改を連射しているが、一向に届かない。

 

俺を滅せられないから、それを阻む障害を排除しようというのか?

 

そんな事は、させない!!

 

そう思った時、体が緑に包まれた。夢の中では逃げていた、あの光に。

 

その時だった。ハリネズミの怪物の体に鞭のようなものが巻き付いていた。

 

それは、俺が腕から出していた。

 

俺はそのまま腕を引いてハリネズミを投げた。

 

ハリネズミはそのまま倒れる。

 

俺は体制を立て直せまいとしてハリネズミの頭を掴んで顔を殴りつけた。

 

ハリネズミは四つん這いになりながらも何とか針を出す。踏ん張りがきかないまま無理矢理出したんだ。やはり少ない。

 

俺は爪を伸ばして針を全て弾いた。

 

そして俺は踵のトゲを伸ばし、昨日と同様に強力な踵落としを背中にお見舞いした。

 

ハリネズミは一段と大きな叫びを上げて、爆発四散した。

 

一瞬、のみきと目が合った。その時ののみきは、微笑んでいるように見えた。

 

その時だった。

 

!!!

 

バキバキと薄氷のように黒の空間が割れた。

 

そして俺は、俺とのみきは空中へ放り出された。黄昏に染まる空へ。

 

今まで踏みしめていた黒の地面はない。

 

俺ものみきも重力のまま、下へ下へと落ちていく。

 

「のみき!!!!!」

 

俺は踏み台の効かない中、何とかのみきのもとへ行き、体を抱きかかえる。

 

変身は解除されたが、まだその余波は残っている。変身をしていて良かった。

 

だが、この高さだ。この体でも行けるか?そもそも、のみきを守っても俺が死んだらどうなる?

 

俺の目覚めがトリガーになってるなら、そもそも夢の出口(そんなものがあるかも不明だが)が無くなるなんて事もーーー

 

そんな事をぐるぐる考えながらふとのみきを見て驚いた。

 

のみきの顔は驚くほど晴れ晴れとしていた。

 

「やっぱりそうだ」

 

何がだ?何がどういいんだ!?

 

お前はやはり、そういう奴だ。

 

「目の前の困った人間を、お前は放っておかない。あの日から、私が誤って落ちた日から、それは分かっていた。私が惚れた人と同じだったからな」

 

それがどうした?状況が解っているのか!?

 

「いいか、その気持ちに蓋をしたらダメだ。お前はお前だ。お前が、正しいと思った事をするんだ。心に従え」

 

その言葉で、俺の思考は一瞬止まった。じっと俺を見てくる目に、俺は目を奪われた。

 

「そんなお前はきっと、もっとカッコいい」

 

そう言って微笑むのみきを見て、俺は俺の中にあった氷が解けるような感覚があった。

 

冬が終わり、雪が残る中暖かな光が差し込んだかのようなーー

 

「ーーーーーに行けばきっと、道は開ける」

 

空気の音で聞き取れなかったが、聞き返す暇は無かった。

 

地面がもう目前まで迫っていた。

 

俺は運を天に任せ、のみきを抱きかかえたまま背中を地面に向けた。

 

少しでもクッションになればと。

 

そしてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蝶が、落ちた。
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