仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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おしまい〜序章〜

レストラン AGITΩ

 

都心から少し離れた街角にある店に風谷真魚、美杉義彦、美杉太一の3人が顔を出した。

 

「いらっしゃいませ!」

 

3人が来たのを見て、津上翔一は満面の笑みで出迎えた。

 

真魚達はいつもの席に腰を下ろす。3人はすっかり常連客だ。

 

中には3人の他にはお客さんは一人だけ。時刻は12時を少し回った所。ランチのピークタイムの時間だ。

 

一年前までは、行列が出来るほどの人気店で翔一が別の世界へ行ったような感覚がして、寂しくなったのを真魚は覚えている。

 

人混みは苦手だから、今の雰囲気のほうが落ち着くけどそれはそれで寂しい。

 

混んでても寂しいし静かでも寂しい。そんな矛盾の気持ちを抱くのはー。

 

「ご注文は?」

 

「翔一スペシャルで」

「俺も!」

「私も!」

 

メニューを開かずに、3人はハッキリとそう言った。

 

「かしこまりました!かなさん!翔一スペシャル3つ!」

 

「承知しました!ありがとうございます!」

 

翔一からの注文を受け、厨房の奥にいた奥村可奈ー2年前、調理師として働いていたレストランの見習いシェフーは元気よく応えた。

 

可奈さんを手伝おうと厨房へ行こうとした、その時だった。

 

「おい店長!!!」

 

真魚達の向かいの席に座っていた男が、太い声で呼び止めた。

 

「はい!どうされましたか?」

 

「お前が出してきたスープによぉ、虫が入ってたんだがこりゃどういうことだ!?」

 

「虫...ですか?」

 

男の指差す方向にあるスープを見ると、確かに、蝿のような小虫が浮いていた。

 

「あ〜申し訳ありません!すぐに作り直しますんで!」

 

「いやもういいよ」

 

男がおもむろに立ち上がった。

 

「やっぱダメだな~!!アギトの店は!客に何を食わせようとしてるのか、分かったもんじゃないぜ!」

 

男はスープ皿を掴むと、思い切り床に叩きつけた。

 

パリンという音と共にスープや破片が辺りに飛び散った。

 

「ちょっと!何やってるんですか!?」

 

見ている事が出来ず、風谷真魚は男のもとに駆け寄った。

 

「いくらなんでもやりすぎじゃないですか!翔一くんに謝ってください!!」

 

「真魚ちゃん!」

 

「んだと?こっちは虫入りスープを出された被害者なんだぞ!?」

 

「それ、本当に出された時に入ってたのかよ?食べてる時に入った可能性だってあるし、ていうか、オジサン達が入れたんじゃないの?」

 

「んだとこのガキ!!!」

 

「止めて!!!!!」

 

太一に拳が振り下ろされそうになったのを見て、真魚は思わず叫んだ。その時だった。

 

パリンとテーブルの上にあったワイングラスが割れた。誰も触れていなかったのに。

 

真魚はハッとなって男を見ると、翔一でも太一でもなく、今度は真魚を睨みつけていた。しかし、その目の奥には微かな怯えも見え隠れしていた。

 

「お前もアギトだったのか...だからこの店に」

 

「あっ、あの...」

 

「やっぱりだ。アギトは俺たちを力で支配する。そういう事だろ!?」

 

「ち...違う!私は...」

 

「うつせぇ!てめぇらの言葉なんか誰が聞くか!支配されるより前に、こっちから行ってやる!!!!」

 

男は椅子を持ち上げると、真魚に向かって振り下ろした。

 

「真魚ちゃん!!!」

 

ドガッ

 

鈍い音が店内に響いた。

 

男が振り下ろした椅子は、真魚には届いていなかった。それは、彼女の目の前に立ち塞がった翔一に届いていた。

 

そして、翔一はスープで濡れた床に手を付き、頭を下げた。

 

「虫が入っていた事については謝罪します!お代も結構です。この度は誠に、申し訳ありませんでした!」

 

男は黙って見下ろすと、チッと短く舌打ちをして店を去っていった。

 

「翔一さん...」

 

厨房にいたかなが不安な表情で現れた。

 

「かなさん、俺は大丈夫。それよりも、真魚ちゃん達3人分の翔一スペシャルを頼む。俺は、掃除をしないと」

 

「私も手伝うよ!」

「俺も!」

「私も!」

 

結局、床に散らばった食器やスープは4人で後片付けをすることになった。

 

「なぁ、翔一くん」

 

床をモップ掛けしながら、太一が口を開いた。

 

「どうして反撃しなかったんだよ?あいつ、絶対に過激派だぜ?あの虫だって、あいつがわざと...」

 

「知ってるよ。だけど、あの男が入れたっていう証拠は無いし、しょうがないよ。それに俺、アギトだしさ」

 

「そんな!翔一くんはずっと皆の居場所を守るために戦ってきたんだよ!?それなのに、こんな仕打ちって...!」

 

「ありがとう。だけど、その戦いの事を皆は知らない。超能力の犯罪がこんなに起こってるんだ。今はこんな事になっても仕方ないよ。俺にできるのは、ここでアギトの看板を持って料理をすることだけ。そうすればきっと、分かってもらえると思うからさ!」

 

津上翔一は真魚に向かって優しく微笑んだ。その顔に、真魚は息を飲んだ。

 

「翔一くん血!!」

 

「えっ?あっ...」

 

頭に手をあてて、ようやく気がついた。

 

さっき椅子で殴られたとき、どこかを切ったようだった。

 

程なくして翔一スペシャルが届いたが、いつもより味が薄く感じた。

 

 

アンノウンが現れなくなって1年後の事だった。警察官が恐れていた事件が起こった。超能力に目覚めた人が、周りに危害を加え始めたのだ。それは1件2件ではなく複数件。アンノウンが2001年に現れたのは、その時期に覚醒する人物が多いと分かってのことだったのだろう。

 

その事件は、超能力の暴走によって起こしてしまったものから意図的に起こしたものまで様々だった。

 

『未確認生命体は実は生きていた』『テロリストによる暗躍』『アンノウンの犯行再び』様々な憶測が飛び交う中、1冊のオカルト雑誌が、驚くべき記事を掲載した。

 

『アンノウンの真実〜超能力者は実在する〜』そんな見出しから始まる記事だった。そこには、風谷信幸殺害事件や榊亜紀が起こした事件と今回の騒動には類似点があること、そしてその榊亜紀が関係者であるあかつき号事件の生存者が、沢木哲也を除く全員がアンノウンに殺害されていた事、それにはアンノウンが関わり実はアンノウンは特殊な力を持つものを整理するために存在していたと書かれていた。

 

かみ砕いて言うと、警察が秘密裏に捜査し突き止めた内容の全てが掲載されていたのだった。

 

荒唐無稽な記事の中現れた論理立てた記事は、人々を魅了し、さらに噂は過熱した。

 

「体にタトゥーがあるのが超能力者の証らしいよ」「超能力者は実は人間ではなく、人間に化けた未確認生命体だったんだよ」「長野県民は全員超能力者」

 

あらぬ噂によって犯行を重ねる人が続出したため、警察はアンノウンの事、アギトの事について警察の捜査で判明した内容を公表。

 

さらに、超能力による犯行のほとんどは、力に目覚めた事で、精神が不安定になった事が大きな原因として、超能力者を保護する『アギト保護法』を立ち上げると宣言した。

 

これが、さらなる混乱を呼ぶ種になった。既に起こってしまった超能力者の事件の被害者を中心に、アギト保護法に真っ向から反対するグループが作られた。

 

初めこそアギト保護法反対のデモをするだけの集団だったのだが、その活動はエスカレートしていき、アンノウンへの信仰、その末に超能力者、または超能力者と思われる人物や超能力者に目覚めそうな人物(その根拠というのも『水の飲み方が不自然だった』などの荒唐無稽なもの)を攻撃するようになっていった。彼らは”過激派”と呼ばれるようになった。

 

しかし、1つの物質ができれば必ずそれと相反する反物質ができるのが世界の理。

 

アンノウンを直に目の当たりにした者、アンノウンによる被害者を見たものやアンノウン事件の遺族らがアギト保護法賛成派のグループを起ち上げた。彼らは”保守派”と呼ばれ、事あるごとに過激派と対立していった。

 

保守派は、アギト保護法を進める警察や政府の味方になってくれると思われたが、そうはならなかった。

 

どこから漏れたのか、G3とG3-Xがアギトを攻撃したことが公にされたのだ。さらにその公表は過熱を呼び、「対アギト用絶対兵器」として半ば凍結されていたG4の存在でさえ公にされた。

 

これに保守派は激怒。過激派がアンノウンを神格化しているように、保守派にもまた、アギトを神格化する者が現れていたのだった。

 

これを受け警察は、アギト保護法を円滑に進めるために、警察はG4チップを破壊すると発表したのだった。

 

 

「どういう理由があったとしても、僕はあのチップは破壊するべきだとずっと思っていたので良かったです」

 

G4チップの保管場所に移動する中、氷川誠は口を開いた。

 

仮面ライダーG4。それは、人が造りながらも人ではない、ただの殺戮兵器だ。氷川誠の手には未だに、G4を殴ったときの感触があった。装着員である水城史朗が亡くなってるにもかかわらず、目の前の命を奪おうと動き出したあの不気味さは忘れない。

 

「そうですね。たとえ、作り出された展開だったとしても、G4チップの破壊には賛成です」

 

「作り出された?」

 

北條透の不穏な発言に、氷川誠はつい聞き返した。

 

「上がG4チップの破壊に踏みきったそもそもの発端ですよ。僕と小室さんがアギトを攻撃したなんて、そんな情報が漏れたのが解せないんです」

 

「どういうことですか?」

 

「あの時の僕は、アンノウンを秘密裏に保護し、アギトを殲滅しようとしていました。アンノウンは絶対悪としていましたから、そんな事をすればバッシングされるのは当然。ですから、僕はとても慎重にことを進めていました。しかし、情報が漏れた。一体どこから漏れたのか。色々調べましたが、全く検討がつかない。G4の情報なんて尚更です。氷川さん、僕には今回の情報漏洩は、G4チップの破壊に繋げるために起こしたように見えるんです」

 

「まさか、今回帰国したのはそのためですか?情報漏洩の出処を探すために」

 

「ええ。確かに、G4チップの破壊にも興味はありますが、帰国した理由の9割がこれです」

 

「はぁ」

 

「氷川さん、先ほどのあかつき号事件の話もそうですが、僕は、全ての事象には何かの意味があると思っています。それは、人間社会ならばなおさらです。ですから僕は、この情報漏洩を辿っていけば、過激派と保守派が現れた原因であるアンノウンとアギトの関係性に関する記事、果てはその先にあるものまで繋がると思っています」

 

「ちょっと待ってください。じゃあ北條さんは、G3-Xの記事だけでなく、あのオカルト記事にも何か意図があると考えているんですか?」

 

「そうです。それとも、あれは独自に取材を重ねた上での推理だと本気で思っていたんですか?だとしたら純粋過ぎますよ。あれは明らかに、アギトの事情を深く知っている人が書いた記事でした。あれにも必ず、リーク先の意図があるはずです」

 

北條透はそう断言すると、廊下をぐんぐんと歩き始めた。

 

風谷信幸事件の時もそうだったが、北條透は一度謎を見つけると、解明するまで決して離さない男だ。青い炎のごとく静かに燃え、その執念で真実に辿り着くその様には、氷川誠も一目置いていた。

 

「あっ、そうそう」

 

ふと立ち止まると、北條透は後ろを振り向いて言った。

 

「リーク先については1つ分かった事はあります。最初のアギトの記事ですが、例のオカルト雑誌の方に問い合わせた所、あれは女性からの情報だったらしいですよ」

 

 

「アギト保護法反対!!」

 

「「「「反対!!!!」」」」

 

「アギトは全員逮捕しろ!!!!」

 

「「「「そうだそうだ!!!!」」」」

 

都内某所。広場を乗っ取って、過激派は今日もメガホン片手に声をあげる。

 

そんな時ー

 

「放水!!!!」

 

過激派にブシャーと水がかけられた。

 

「あんだオイ!」

 

突然の事に驚き、先頭にいた男が睨みつける。

 

「アギトの事を知らねぇヤツが、偉そうに語ってんじゃねぇぞ!!!!」

 

「何だと保守派!!!!」

 

「アギトは、我々人類の可能性!!!未来の救世主だ!!!」

 

「「「「「救世主万歳!!!!!」」」」」

 

「ふざけんな!!そのアギトの力で、何人が犠牲になったと思ってんだ!?」

 

「そのアギトに我々は助けられたのだ!!」

 

「アンノウンは殺すべきじゃなかった!!」

 

「そのアンノウンが何人警察関係者を無差別に殺したと思ってんだ!!!」

 

「保守派は帰れ!!!」

 

「てめぇらこそ帰れ!!!」

 

そこからは乱闘だった。それぞれが相手の主義主張に聞く耳を持たず、ただ殴って蹴って髪をつかんで水をかけて石を投げて声をあげて.....見ていられなくなった傍観者が警察を呼び、争いは強制終了。

 

終わりのない争いに皆疲弊しきっていた。

 

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