仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
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俺が最後に夏休みを楽しんだのはいつだろう?
『楽しむ』というのを『遊び』に置き換えるとすると、それは本当に小さな頃だった。
友達と近所の森へ出かけてカブトムシを探したり、家族と市民プールへ出掛けたり。
俺の世界には『家族』と『友達』しかいなかった。
宿題も何も縛られるモノが無かったから、夏の良さだけを甘受して、ある意味ムテキだった。
俺が水泳に魅力を感じたのは、それが背景にあったからかもしれない。
ギラギラと輝く太陽の下、冷たい水の中に飛び込み気持ちの良い暑さに身を投じる。
そんな贅沢な感覚に虜になり、もっと感じたいと思って水泳を始めたのではないかと今なら思う。
もっとも、当時の俺が本当にそこまでそんな深く考えていたかと言われると微妙なのだが。たまたまご機嫌だった日に、たまたま泳いでいたからそれが好きになっただけかもしれない。
良くも悪くも小さな頃の俺は本能のままに動いていたから。
・・・・今もか。
水泳に本格的に取り組んでからは練習だ大会だに明け暮れる毎日だった。
小学校に上がってからは宿題もできて、親父が厳しかったから嫌々ながらそれをやったりして、『遊び』は年々減っていく。
それでもまぁ、選んだのは俺だ。そんな毎日に後悔は無かったし、不満だった訳じゃない。
俺の世界に『仲間』ができた。ただ楽しみを共有するための間柄じゃない。日々励まし合い、高め合う、そんな仲間だ。
俺の世界に『先輩』ができた。俺の成長のために色々とアドバイスをくれた。
俺の世界に『先生』が出来た。俺の成長を一番に喜んでくれた。
俺の世界に『恋人』が出来た。水泳の終わりに会って、その時会った事を話す。日記をつける事が苦手な俺でもこれは続けられた。
俺の世界に『後輩』が出来た。先輩や先生が俺にしてくれた事を今度は俺がする番だった。それが恩返しになると思ったから積極的に後輩とは接した。
そのせいか、後輩は水泳以外でも俺を頼るようになった。男子校だった俺に彼女がいるのはバイクに乗ってたからだ。バイク乗りはモテるんだなんて噂が立ってた事もあり、特にバイクについては色々聞かれた。
『楽しむ』という行為が『遊び』から『充実』に変わり、それはそれで満足していた。
でも、だけど、俺の周りにあった世界は唐突に奪われた。
俺が選んだからじゃない。逆だ。俺が選ばれて、奪われた。
世界を失い、俺は一人。
『楽しむ』が無くなり、ただ流れるままに生きている俺は、一体誰なのだろう。