仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
July 27th
「ハァ...結構距離あるな...」
その日俺は、島に来た初日にたまたま見つけた灯台に向かって歩いていた。
ほんの気まぐれ。夜中に光の灯らない灯台を見て、シンパシーを感じただけ。
とは言え、歩くと思った以上に距離があると知った。あの時はバイクだったから気付かなかった。
日は西へ傾いている。大分疲れてきたし、辞めれば良かったかもな...。
そんなネガティブ気持ちはあっという間に霧散する。
「おぉ..」
初日は流し見のような形だったので気付かなかったのだが、想像以上に立派な建物だった。
もう灯台としての機能はしていないのかもしれない。
それでも、レンガ造りでどっしりと構えてるその姿に尊敬の念すら抱いた。
「〜♪」
「ん?」
ふと、誰かの歌声が聞こえたような気がした。
「〜♪」
『ような気がする』ではない。聞こえる。
どこから?
辺りを見渡し、そして上を見た時だった。
「あっ」
いた。
「私ーはうーたいーまーすー私をさーがーしーてー♪」
金髪の女の子だった。灯台の縁に座って歌を歌っていた。
「むむぎゅぎゅぎゅぎゅ〜む〜むぎゅぎゅぎゅぎゅ〜むむぎゅぎゅむぎゅ〜ぎゅ〜ぎゅ〜♪」
聴いた事の無い歌詞。それでも聴き馴染みがあって安心するのは何故だろう?
「灯台で歌いまーすー見つけーてーもらうーたーめー」
西日が歌っている少女金色の髪に反射しキラキラと光っている。
絵画のような美しさを感じた。
「むむぎゅぎゅぎゅぎゅ〜む〜むぎゅぎゅぎゅぎゅ〜むむぎゅぎゅむぎゅ〜ぎゅ〜ぎゅ〜♪」
「おーーーい!」
「気になって俺は声を掛けた」
「...むぎゅ?」
歌声が止まり、彼女は俺の方に顔を向けた。
「何をしているのーーー?」
俺は再度声を掛けた。
「探し物でーーーーす!」
「何を探しているのーーー?」
「自分でーーーす!」
それはまた高尚なものを。
「で、そんな所にいたら危なくないかーーー?」
「危なくないですよーーー!」
「落ちるんじゃないかーーー?」
「落ちませんよーーー!」
「落ちたら死んじゃうんじゃないかーーー?」
「死にませんよーーー!」
「君は、不死身なのーーー?」
「フジミでーーーす!」
「凄いな」
「キョーシュクです!」
そして謙虚だ。
「とにかくさ、そこにいたら危ないから降りてきてよ」
「...むぎゅ」
またむぎゅだ。変わった口癖だ。
「あのーーー!」
「?」
「私がここから立ち上がると、パンツが見えてしまいまーーーす!」
あぁ、そういうこと。
「後ろ向いてるから降りてきてよ」
そう言って俺は回れ右。今彼女は立っているのかと少しドギマギしていると、
「どもです」
「ウワッ!」
後ろから声を掛けられてびっくりした。ってか降りるの早いな。
「...ども..です」
不意を突かれてつい鸚鵡返し。
「あの、あなたはいい人なんですか?」
「えっ?」
「見知らぬ私を心配して注意をしてくれるなんて、凄くいい人なんだと思います」
「・・・・」
いい人、か.....
『お父さんが死んだのも、あなたの性なんじゃないの!?』
「いや、普通だろ」
引っ掛かる事がありながらも俺はそう答えた。
そう、これは普通のこと。女の子が危ない所にいたら声を掛けるのは当然。
目の前で歩いている人がハンカチを落としたら拾って手渡すのと同じ。
「そですか。ありがとうございます」
「ところで、あなたは何でここに来たのですか?」
「まぁ、観光みたいなものだよ」
「観光...?」
「こんな立派な灯台は見たこと無かったしさ」
「いえ、そうではなく..」
「?」
「....むぎゅ」
またむぎゅだ。そしてそわそわしている。思っていた答えと違ってもどかしそうな。
ここの人にとっては灯台は当たり前のモノで、観光名所としては見ていないから違和感があったのだろうか。
「ところで、君はどうしてここにいたの?」
「キミ?」
きょろきょろしてる。ツインテールがでんでん太鼓みたいになってる。
「いや、あなただよあなた」
「あなた?」
でんでん太鼓が加速する。
「あの、俺たちの他に誰かいる?」
「いません。凄くよいました...」
そう言ってまたむぎゅとしんどそうに言った。
「あの、私はキミでもあなたでもありません。紬です。紬・ヴェンダースです」
「紬・ヴェンダース...」
「あなたのお名前は何ですか?」