仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
お泊りも終わり、荷物を置くために解散となった。
昨日は本当に楽しかった。
灯台の中に泊まるなんて初めてだったし、静久や紬と話すのは楽しかった。心にあるしこりが取れたみたいで、優しい時間が流れた。
「〜♪」
俺もつい、紬の鼻唄を口ぐさんでいた。
頭に思い浮かぶのは紬。俺に楽しい夏休みをくれた特別な存在。
紬..紬..紬..。
もしかして、俺は紬の事が...。
※
灯台に戻ると既に静久が来ていた。
「静久、もう終わったのか」
「置くと言っても、港のロッカーに預けただけだから」
「紬は?」
「まだ来てないわ。多分、灯台で色々準備してるんじゃない?」
「そうか」
昨日の今日だからな。色々あって当然だ。
「なぁ、静久」
「うん?」
今のうちにと、俺は静久に今の気持ちを伝えようと口を開いた。
「俺、もしかしたら紬の事..」
一息ついてからさらに続けた。
「好きになったかもしれー」
「ダメよ」
※
そんな俺の気持ちを、静久が遮った。いつものおっぱいを思い出すような柔らかい感じではなく、どこか硬く冷たく感じだった。
夏の空気も凍るほどの間が、確かにそこには流れていた。
「いやっ、えっと...えっ?」
思考が固まり、俺は間抜けな声を出すのでやっとだった。
「だってあなた、紬が好きってわけではないでしょう?」
意味が分からなかった。目の前の娘は、俺の抱えている気持ちは偽物だと看破する。
何を根拠に?いや、ずっと一緒にいたのだから、態度とかそういうのはあるかもしれないが、そこまで露骨だったか?俺が嘘をついているとでもーー
「嘘ではないわ」
心を読まれたかのように先回りされた。今日の静久は何かが違う。いや、違うというなら...
「あなたが私と紬が好きなことは嘘ではない。あなたの気持ちもきっとそう。でも、そうね、それが分からない内は、きっと帰れない」
「それってどういう...」
「それにね」
静久が言った。
「紬、もう恋人がいるのよ」
「えっ?そうなの?」
今日一番の衝撃だった。
「遠距離で遠くにいるんだけどね、あなたみたいに夏に出会ってそのまま」
「そうだったんだ」
嘘云々は分からないけど、それ以前の問題だった。
そりゃそうか。あれだけかわいくて純粋な子、恋人がいないと考える方が不自然だ。
「お待たせしました〜!」
ちょうどその時、灯台の扉が開いて紬が出てきた。
「おはよう紬。昨日は楽しかったわね」
話はそこで終わりだった。俺も静久に続いて話しかけた。
それからは、紬に対する好意は忘れるように努めた。
しかし、忘れようとするほどそれを逆に意識してしまうのが人間だ。
そしてそれは同時に、静久の言葉も想起させる結果になった。
『帰れない』と。
どういう意味なのだろう?
考え疲れたのか、その日は夕方の内に眠りについた。