仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
「ここは...?」
気付くと俺は灯台の中だった。何度も訪れ、掃除をしたり泊まったり、歌を歌ったり、この夏休みに何度も通った見慣れた光景だった。
しかしーーー、
「暗い...」
灯台は夜のように暗かった。太陽が眩しかった時間にここの扉を開けたのに。
いや、夜というのも正確では無い。
何も感じなかったのだ。
夜の虫の声は聞こえず、太陽によってもたらされる暑さの余韻も感じない。
そこにあるのに何もない。まるで、映像の中の灯台を見るような、俺と灯台がずれてるような感覚に襲われた。
その時、外に赤い光が灯った。
どういう事だと急いで窓を見た。そこには、
「あ..」
声にならない声が漏れた。
「何だよ...これ...」
そこは異様な光景だった。
燃えていた。
灯台の周りに咲いていた花々が全て燃えていた。灯台の周りの風景がいつもと違うとか、そんな事も忘れる光景だった。
花の周りに飛んでいた光る蝶が炎に包まれ消えていく。炎が羽をもぎ、蝶が落ちていく。
蝶が落ちる、蝶が落ちる、蝶が落ちる、蝶が落ちる。
俺はこの光景を識っている。
あらゆるものを奪い、命を弄び、心に深い傷をつけ、俺たちの積み重ねを全て崩していく。
燃える花畑の中心に大きな木があった。
燃えた花が、蝶が次々と燃え移り、炎はゆっくりと一本の樹へと近付いていく。
花々に囲まれて立っている一本の樹に。
「止めろ!!!!!!」
気付くと俺は叫んでいた。
ダメだと思った。
もしも燃えたら、あの樹が無くなったらもうーーーー、
何故焦るかは分からない。でも、俺の直感がダメだと叫んでいた。
俺は外に出ようと窓に力を加えた。が、開かない。びくともしない。
割るつもりで力を入れているのに、窓は頑として開こうとしない。
映像を前に俺が何を言っても無意味なように、扉に俺の力が伝わることは無かった。
焦りだけが募る。
ここが何か分からない。だけど、あの炎はダメだ。とてつもなく哀しい。
何とかしないといけない。俺はここにいるべきじゃないんだ!!!!
※
その時だった
※
「お待ちしていました」
後ろから声が聞こえた。誰もいなかったはずなのに。
後ろを振り向くと、そこには一組の男女がいた。
一方は背が高い男性だった。歴史の授業に出てくるような軍服に身を包んでいる。
もう一人は着物の少女だった。彼女の髪は、黄金のように眩しい金髪だった。
俺は、似た特徴の女の子を知っている。
「ようやく、ここまで来れましたね」
少女は言った。
「もう少し、もう少しだけ時間を」
すると、それと呼応するように、じっくりと燃え広がっていた火が止まった。
少女の不思議な力に俺はただただ驚いていた。
この世界にいるのもそうだ。彼女は一体何者なのか。
「しかしそれも、しばしの間だけ。いずれは私たちもろとも消滅します」
「ーーー!」
男の方を見て唖然とした。男の身体が、透けて薄くなっている。
ガチャリと音が聞こえた。
音のした方を見ると、今までは確かに無かったドアがそこにはあった。
「ここは、迷いのある人は戻れない」
少女は言った。
「だけど、あなたは迷いが無かった。ただ少し見えなくなってただけ」
彼女の言ってる事は分からない。だけど、俺はここにいるべきで無いことだけはハッキリ分かった。
「行ってください。そして必ず、戻って来てください」
少女は薄く微笑んだ。
その微笑みを背に、俺はドアに力を込めた。
※
今度は確かに伝わった。