仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
時計の短針は2を指している。それは、午前2時を指している訳ではない。時空の歪みとか、そんなSFじみたモノが無いのなら、それは午後3時、15時を指していたはずだ。しかし外は、そうとは思えないほど暗かった。雲で太陽が隠れているとか、そんな次元の暗さではない。夜のような、闇の暗さだった。
そんな夜の闇に光る赤いパトランプ。
ファウンファウンファウンファウンと高い音を鳴らしながら、複数台のバイクーガードチェイサーーがひた走る。
乗っているのは仮面ライダーG3。G3-Xの前進の特殊装甲強化服。三人一組になり、闇に覆われたそれぞれ都内4箇所を走っていた。
ピーーーー
『G3部隊全員に告ぐ!今回出現したアンノウンは、1体や2体ではなく多数!それも日本全域に同時出現している!海外にも現れている可能性もあるが、まずは東京を防衛する。G3部隊は三人一組に分かれ、市民の安全を優先しつつこれを撃破!分かっているとは思うが、これは訓練ではない!それぞれが今出せる力をぶつけ、全力でこれを乗り切れ!!』
G3トレーラー内。そこにいるG3部隊長、小室隆弘が全員を鼓舞。
G3部隊。それは、相次ぐ超能力犯罪や、いつか来るかもしれないアンノウンの再来に対抗して1年前に発足した部隊である。
G3スーツを量産して作られた部隊であり、15人の仮面ライダーG3で構成されている。それを束ねているのが、かつてG3ユニットに在籍していた小室隆弘だ。
『GM-01 アクティブ!』
3人のG3はGM-01を構えた。前方には、5体の白い浮遊生物。2年前に現れていたアンノウンは、超常的な力があるとはいえジャガーや蟹といったこの世に存在する生物を彷彿とさせる姿をしていた。しかし、今回のアンノウンにはそれが無かった。強いて言えば幽霊。全身真っ白でフワフワと浮いていて、前面と思われる箇所には目がなく、口と思われる器官だけが付いていた。
『撃てーーー!!!!』
小隊長のG3-1の合図でGM-01を一斉射撃。白い浮遊生物は、銃弾の衝撃で体を仰け反らせるとそのまま消滅した。
『効いた!』
『油断するな!周囲を警戒しろ!G3-2、G3-3は一般人の探索を!俺はG3トレーラーに連r』
リーダー格のG3-1が命令をしようとしたその時だった。
G3-2とG3-3が後ろを振り向いたその瞬間、彼らのマスクに赤い飛沫がかかった。
G3-1の頭部が、白い浮遊生物に覆われていた。
『隊長おおおおおおおおおぉぉぉ!!!!』
二人は急いで発砲。浮遊生物は消滅したが、そこにリーダーの頭部は無かった。
※
「いやあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「助けて!助けてくれえええええええ!!!!!」
『逃げろ!!!!』
男性に噛み付こうとした白い怪物にG3-10が体当たりで抑えつける。
「うおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」
G3-10はそのままGS-03を刺して沈黙させたーーーが、
『G3-10!後ろだ!!!』
『えっ?』
※
深い闇の空に突如現れた白い影。人間を卵のように噛み潰すその猛威から逃れようと逃げ惑う人々の姿に東京はパニックだった。
二次災害で頻発する火災。その炎とパトランプに照らされながら、G3-Xはひた走る。
ガードチェイサーに取り付けられた通信機からは悲惨な報告が永遠に流れ続けていた。
ピーーーー
『こちら、G3-11!!アンノウンが多すぎます!至急応e』
ピーーーー
『胸部ユニット損傷!来るな...止めろぉ!ぎゃああああああ#”x’Fvvn』
あまりにも惨い、目を背けたくような通信。そんな通信を氷川誠は歯を食いしばって耐えた。
『氷川くん、左方向に民間人を追っているアンノウンがいるわ。阻止して!』
『了解』
G3-Xは急いで言われた方向へ急行。だがーー
『あっ...』
ぐちゃぐちゃと、混沌とした世界に響く小さな音。白い怪物が、男性の内蔵を食い散らかしていた。人人人人人人人人人人...。
どこからか、爆発音が聞こえた。火の粉が暗い闇を赤黒く染める。
『ぐっ...!』
氷川誠は刑事として、G3として、今まで多くの惨状を見てきた。しかし、この状況は、今まで見てきたどんな悲劇よりも酷く恐ろしかった。
『132』
この状況から逃げ出したい衝動を必死で耐え、氷川誠はボタンを押す。
『カイジョシマス』
爆炎や悲鳴が飛び交う中呟かれる機械音。氷川誠はGS-05を構えた。
『GS-05 アクティブ』
※
「きゃああああああああああ!!!!」
「しろは!!」
羽依里はしろはを抱えて横へ飛んだ。
先ほどまで二人が立っていたコンクリート地面に、大きなヒビができていた。一瞬遅ければ俺たちは...。
白い浮遊生物は、地面からゆっくりと体を離すと、顔と思われる部位をこちらに向け、口を開けて突進。
羽依里もしろはも金縛りに遭ったように動けなくなっているとーー、
「ぐうおぁ!!」
「葦原さん!」
葦原涼が白い怪物へ渾身の体当たり。怪物は少し体制を崩した。
「鷹原!彼女を連れてここから逃げろ!」
「でも、葦原先輩は!?」
葦原は二人を守るように前に立つと、腕を構えて叫んだ。
「変身!!」
次の光景に、羽依里は目を疑った。
目の前にいる葦原涼の体が徐々に変貌していくのをこの目に見た。体が緑に変わり、ゴツゴツとした体表に。
「ウワアアアアアアアアアア!!!」
葦原涼ー仮面ライダーギルスーは己を鼓舞する様に叫ぶとそのまま突進。
目の前にいる化け物の横面を思い切り殴った。一撃で、白の怪物は消滅した。
「葦原先輩...」
「羽依里!上!」
しろはの指差す方向を見ると、そこから先ほどの白い怪物が5体同時に襲いかかってきた。
「ウジャウジャと!クソッ!ウワアアアアアアアアアア!!!」
ギルスはさらに一際大きな声を叫ぶと、全身からさらに牙のようなモノが生えてきた。エクシードギルス。
エクシードギルスはその場で跳躍。爪や触手を使って口を開けて襲いかかってくる怪物を全員ほとんど一撃で倒していった。
ギルスは変身を解くと、羽依里のもとに駆け寄った。
「鷹原!大丈夫か!?」
「葦原先輩、今のは...」
「説明は後だ!それよりも、早くここを離れるぞ!数で攻められたら、俺も守れそうにない!」
「でも、どこへ!?」
「鳥白島...」
「えっ?」
「羽依里、鳥白島に行って!」
「鳥白島?鷹原、それはどこだ?」
「しろはが住んでいる島です。香川県の。だけど...」
現在地は東京。香川までは遠すぎる。精神的に参っているから帰りたいという意味で言ったのかと羽依里は思ったが、違かった。
上手くは言えないが、鳥白島に今行かなければならないような、そんな確信づいた目をしていた。こんなしろはの目を、羽依里は初めて見た。
「分かった。葦原さん、俺たちは鳥白島に行きます」
「マジか。だけど、ただ帰りたいだけってのでも無さそうだな。分かった。どうせ行く宛は無いんだ。そこへ行こう」
「はい!」
葦原は手早く、バイクを二台用意し、犬を自分のバイクの後部座席に固定。しろはは羽依里の後ろに乗ると香川方面へと走り出した。
だからこそ、しろはは気づくことができた。
「はい...り?」
羽依里の背中が、小刻みに震えていた。羽依里の手には、大きな脂汗が浮かんでいた。
※
Restaurant AGITΩ
掃除を終え、これから翔一スペシャルを堪能しようと思った矢先にそれは起きた。
全てが一瞬だった。食事をしていた時、急に真魚が頭を抱えて苦しみ出し、津上翔一と岡村可菜も、何かを感じたように窓の外を睨みつけていた。その直後、空は暗くなり、窓を突き破って、白いお化けのような怪物が現れたのだった。
「キャアアアアアアアアアア!!!!」
店内に真魚の声が響いた。声に反応したのか、怪物は真魚に向かって突進していった。
「真魚ちゃん!!!」
翔一の行動は早かった。怪物の横っ腹に思い切り蹴りを食らわせ、怪物の体を壁に激突させた。
翔一は急いで真魚達の前に立ち、白い怪物と対峙した。
「真魚ちゃん達は急いで逃げて。早く!」
津上翔一は腕を構えた。すると、どこからともなくベルトが現れる。
右腕を前に突き出すと、叫んだ。
「変身!!」
翔一が腰に手を当てた次の瞬間、津上翔一の体は光に包まれ、姿を仮面ライダーアギトにへと変貌していった。
美杉義彦も太一も、変身を目の当たりにしたのは初めてだったので、大いに驚いた。
そんな二人を余所にアギトは拳を一発。怪物は消滅した。
風谷真魚ら三人は急いで店内から脱出し、暗くなった空を見つめた。
黒い空に浮かぶ白い点。星にも思えるその点が3つ、三人に近付いて来た。鳥や星とは似ても似つかない、ただの怪物。三人は、金縛りにあったかのように動けなくなっていた。
白い怪物の歯が、三人に届かんとしたーーその時、
「ハァ!!」
怪物の胴体に、何者かが衝撃を加え、怪物は消滅した。
それは、角を大きく開いたアギトだった。最初それは、津上翔一だと思った。だが次の瞬間、それは違うと分かった。
「皆さん大丈夫ですか!?」
「その声、可奈さん?」
「はい!アギトになれるのは、翔一さんだけじゃありませんから!」
そう言って、腰を一叩きし、青い姿ーストームフォームーに変身し、薙刀、ストームハルバードを構えた。
「驚いた?真魚ちゃん!」
「翔一くん」
「皆の居場所は、俺たちが守る!!」
店内から出てきたグランドフォームのアギトは、バーニングフォームへと変身し、シャイニングカリバーを構えた。
「行きます!」
アギトストームフォームは大きく跳躍すると、3体の怪物を斬り裂いた。
バーニングフォームはシャイニングカリバーで一閃。そこから発生した炎の一撃で、目の前に迫っていた怪物の軍団を倒した。
「今のうちに逃げるぞ!早く!」
「でも翔一、逃げるってどこへ...」
太一は怯えたように空を見つめていた。太陽が完全に隠れた空を泳ぐ白い生命体、あちこちから上がる炎と悲鳴。安全な場所は無いと、誰もが感じていた。
ただ一人を除いて。
「四国...」
「翔一くん、四国よ!四国に行って!!」
現在地は東京。700km以上も離れた場所へ行くのは無謀だ。しかし、風谷真魚には、安全な場所はそこにしかないという確信があった。もちろんその根拠はーー
「真魚、視たのか?」
「うん。よく分からないけど、イメージみたいなのが!翔一くん!信じて!」
「分かった!俺は真魚ちゃんを信じる!ちょっと難しいけど、今から四国にーー」
「ぁ...」
その時、小さく、しかし確かに聞こえた叫びが翔一の耳に届いた。翔一は咄嗟に振り返った。そこには数分前まで、ストームハルバードを構えて、多数のアンノウンと空中戦をしていた岡村可奈の姿があるはずだった。
「えっ」
しかし、振り返った先にいたのは、下半身を噛まれている仮面ライダーアギトこと岡村可奈の姿だった。
「ーーーーーー」
その時、翔一の中の世界は確かに止まっていた。
「翔一くん!!!!」
次の瞬間、風谷真魚は咄嗟にアギトの体を横に逸らさせた。
その時初めて、翔一は横から怪物が迫っていたことに気付いた。
真魚の起点によって、翔一は怪物の餌食にならずにすんだ。
しかし、次の瞬間翔一の目に映っていたのはーー、
「あっ…」
右半身を怪物の歯で噛み切られていた風谷真魚の姿だった。