仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
July 25th
ピンポンパンポ~ン♪
『まもなく、鳥白町漁港に到着します』
島の輪郭がハッキリと目にでき始めた頃、間もなくの到着を知らせるアナウンスが流れてきた。
改めて俺は、前方に見える島を眺めた。
緑に覆われた低い山が連なり、海沿いにちらほらと家屋が並んでいる。
鳥白島。瀬戸内海にそんな名前の島があったなんて今まで知らなかった。鳥が集まって白く見えたとか、そんな由来があるのかもしれない。
「さしずめ俺は...」
島を眺めながら、誰に言うでもなく俺はポツリと呟いた。
「毒を失くしたサソリといったところか」
「なんて?」
「うわっ!」
いつの間にか現れたおばーさんに俺は飛び上がった。
「誰が毒を失くしたサソリって?」
「あーーー...俺が」
「何で?」
「傷ついてるから」
「どこが?」
「うんっと...何となく」
「ほ?」
「何でもないです」
慌てて俺は顔を島の方に向ける。
どこが傷ついてるのか。その質問に俺はきちんと答えることが出来なかった。
着岸するために、船はゆっくりと速度を落としていった。
接岸した船から港に降りる。
「ん?」
見ると、さっき隣にいたおばーさんがキャリーを引いて降りている所だった。
「大丈夫ですか?」
「悪いね」
「いえ」
俺はおばーさんの荷物を持ちながら歩き始めた。
「あの、おばーさん」
「ん?」
「さっきの質問ですが...」
そこで少し息を切ると、さらに続けた。
「多分俺は...」
何故か言葉が詰まる。だけど俺は言わなければならないと、そう思っていた。だから無理矢理口を開いた。
「心が...心が傷ついてるんだと思います」
「ほ?」
誰が見ても分かるクエスチョンマークの表情。どうやらさっきの会話を忘れてしまってるらしい。
「あんた」
「はい」
ふと、おばーさんは口を開いて言った。
「ゆっくりして行きや」
短い言葉だったけど、俺は凄く嬉しくなった。
「ありがとうございます」
荷物を降ろすとおばーさんはお礼を行って町の方へと歩き出した。
俺もそれを見送ると、反対方向へ歩き出した。
※
港を出て30分。俺は住宅街に来ていた。
「加藤...加藤...っと」
表札を一軒一軒見ながら俺は先へ進む。
地図だと住宅街の真ん中位にあるらしいから恐らくこの辺だ。
「ここだ」
表札を見て、俺はインターホンを押した。
誰も出ない。中でチャイムの音はしてるみたいだが...。
「お邪魔します」
鍵は開いていた。玄関や居間は古い日本家屋のそれだった。時々吹いてくる風が心地良い。
誰もいなかった。
裏にグルリと廻ると土蔵があった。中から人の気配がする。
「ごめんください」
「はーい」
中で作業をしていた女性が振り返る。
「えっと...どうも」
「・・・・」
一瞬ポカンとしていた女性だったが、すぐに『あぁ』と手を叩いた。
「もしかして、羽依里くん?」
「いえ、俺は葦原...」
「えっ?」
違うの?と女性はまたもやキョトン顔。
「・・・・」
「・・・・」
蔵の中でまた沈黙が流れる。
「アシハラ...?」
女性が恐る恐る沈黙を破った瞬間、俺はハッとなった。何で俺はそんな事を言ったのだろうか。
「いえ、俺は鷹原です。鷹原羽依里」
その疑問も、すぐに雲散霧消に消えていった。