仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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第1部
私の最良の日々は過ぎ去った(前編)


香川県讃州市、観音寺と呼ばれていたのは今は昔。その場所にある中学校の1つが讃州中学校。校内には家庭科準備室という部屋があるのだが、放課後、その部屋を部室として使っている部活動があった。

 

「結城友奈、東郷美森、三好夏凜、乃木園子入りま〜す!」

 

「あーーーー来たね...」

 

放課後、2年生組がいつものように揃って部室へ入室。いつもなら部長が元気よく迎える所なのだが...

 

「?どうしたんですか、風先輩?何かグデーっとしちゃって」

 

その部長、犬吠埼風は、今日は机の上に突っ伏していた。

 

「大丈夫?体調が悪いとか?」

 

「大丈夫ですよ。夏凜さん」

 

突っ伏してる本人の代わりに答えたのはその妹の犬吠埼樹だった。相変わらずタロットカードを広げて占いをしている。

 

「ふーみん先輩に何かあったの、いっつん?」

 

「あーーー実はですね...」

 

 

※以下、昨夜の犬吠埼家※

犬吠埼風は3年生。季節は秋。それはつまり、受験生にとっては勝負の季節。特に風は、夏は”いろいろ”あり勉強をあまりしなかった分なおさらだった。

 

とはいえ、その危機感ですぐに10時間20時間勉強ができるほど、人間は単純な構造をしていない訳で...。

 

「あーーーーダメだ...全っっっっっっ然集中できない...」

 

人には機嫌の良い時悪い時があるように集中力が続くとき続かない時がある。この日の風はそれが顕著だった。

 

「もうダメ!休憩!!」

 

「20分位前もしてたような...」

 

「いいの!長く悶々としてたら女子力下がっちゃうし、どこかの通信教材だって1回20分って言ってるでしょう!?」

 

「それ受験にも当てはめていいのかな...」

 

「取り敢えず、掃除掃除!もうさっきからここに溜まってる埃が気になって気になって...って、ん?これは...」

 

「『スリムダンク』?」

 

「はい。西暦の時に流行っていた漫画です。掃除の時に偶々出てきてそれをずっと読んでいて...」

 

「なるほど。それであんな感じなわけね」

 

樹から話を聞いた夏凜は苦笑した様子で風を眺めた。要は、「感動してその余韻が抜けていない状態」なのだ

 

「あーーーもう顧問が欲しいーーーーー!!!」

 

「うわぁ!びっくりした~って、顧問?」

 

「そう!スリムダンクの27巻が凄く凄く凄く凄く痺れたのよ!」

 

「あーー私知ってる。寝てたときに暇つぶしで読んでたから。確か、『諦めたらそこでゲームオーバーだよ』でしたっけ?」

 

「そう!それ!もーーーーーう本っっっっっっっっ当に感動したの!私もああいう青春を送りたい!」

 

「?今送れてると思いますよ?毎日楽しいですし」

 

「私も、東郷さんや皆といられて楽しい!」

 

「分かってないわね〜友奈、東郷。確かに、我が部活には部長である私を筆頭に新入部員やかわいい後輩たちに恵まれている!だけど、この部活ではまだ出来ていない青春があるのよ」

 

「それは...?」

 

ゴクリと東郷が次の言葉を待つ。

 

「顧問との青春!!!先生という私達より一つ上の立場から時に優しく時に厳しく、そんな青春を私達は送れていない!!!」

 

「あれ?そう言えば、勇者部の顧問って誰かいたんでしたっけ?」

 

「それがいないのよ、園子」

 

「えっ?」

 

「そう言えば、バンド活動の時もカラオケの時もキャンプのときも顧問はいなかったね」

 

「古参の友奈もその事情知らなかったんだ...まぁそうでしょう。元々ここは勇者候補生を集めたサークルみたいなモノなんだし、大赦の圧力とか何とかで今まで何とかしてたんじゃないの?」

 

「うん。まぁソンナトコ」

 

「だったら任せてふーみん先輩!乃木家の力をフル活用して顧問を連れてくるんよ〜」

 

「園ちゃん当てでもあるの?」

 

「園っちまさか...」

 

※数分後※

「断られたんよ〜」

 

「そりゃそうよね...」

 

園子が電話を掛けたのは、彼女と東郷美森もとい鷲尾須美、そして三ノ輪銀の担任だった安芸先生だろうけど、東郷は深く言及しなかった。

 

「さて、話はそこまでにして、今日のミーティング始めるわよ〜」

 

讃州中学勇者部。それは、この中学に通っている人なら知らない人がいないほどに有名なクラブ。「みんなのためになる事を勇んで実施するクラブ」という趣旨に則り犬吠埼風が結成し、主に部活の助っ人やボランティア、個人の相談に乗っていたりしながら日々活動している。

 

部員は部長の犬吠埼風を筆頭に結城友奈、東郷美森、犬吠埼樹、三好夏凜(現次期部長候補)、乃木園子の6人だ。

 

ミーティングはほぼ毎日行われ、それで日々のタスクを決定していく。今日は黒板にたくさんの犬や猫の写真が貼り出されていた。全て讃州市にいる人から届いたペット捜索の依頼だ。

 

「こんなにもまだ未完了が残っているのよ」

 

「以前に盛りの写真をアップしたときに閲覧数が伸びた影響ですね」

 

「それに加えて海岸の掃除。こっちは随分前から依頼があったものだから、対応しない訳には行かないわ。というわけで、今日は役割分担!友奈、樹、夏凜の三人は海岸の掃除、私と東郷、園子は猫たちの捜索に行くわよ」

 

「「「「「はーーーい!」」」」」

 

「というわけで、ティップオフ!!」

 

「あんたまだスリムダンク抜けてないのね...」

 

ということで友奈、夏凜、樹の三人がやって来たのはかつて有明浜と呼ばれていた海岸。海水は非常に澄んでいて、目の前に広がるは水平線ーーーではなく巨大な木の壁。

 

三人がやって来ると、大人の女性が出迎えてくれた。

 

「あなた達が勇者部ね。今日は本当にありがとう!人手が足りなくて、困っていたから」

 

「いえいえ、大丈夫です♪」

 

「依頼にあった通り、ゴミ拾いをするで大丈夫ですか?」

 

「ええ。ゴミ袋やトングがあっちにあるから、それを持ってここ周辺のゴミを拾って欲しいの。当日はいっぱい人が来るから、転んで何かを踏んで怪我させないようにしたいから」

 

「了解しました。お任せください!!」

 

必要なものを持ってゴミ拾い開始。空き瓶やら花火やら、この海岸で遊んだ人たちの置土産を一つ一つ拾っていく。

 

「ねぇ、友奈」

 

ゴミを拾いながら、夏凜は友奈に声をかけた。

 

「なぁに?夏凜ちゃん」

 

「さっきあの女の人、『当日はいっぱい人が来る』とか言ってたけど、何かお祭りでもあるの?」

 

「あれ?夏凜ちゃん知らないの?『灯籠祭り』の事だよ!」

 

「トウロウマツリ?」

 

「えっとね、灯籠をここに置いて日をたいて明るくするお祭りの事!」

 

「何よそのアバウト説明」

 

「夏凜さん、灯籠祭りというのはですね、灯籠で明かりを灯して、その光で『ご先祖さまありがとう』と感謝するお祭りの事です。昔、別の場所で開かれてたお祭りみたいなんですが、今年は神樹様の結界が出来てからちょうど300年のミレニアムなので、特別に復活するそうなんです。神樹様に感謝を捧げる、そんなお祭りみたいですよ」

 

横で聞いていた樹がそう口を挟んだ。

 

「神樹様ね...それならきっと大赦が絡んでるお祭りなんでしょう?何か気乗りしないわね」

 

大赦は勇者部皆を騙してバーテックスと戦わせていた組織だ。そんな組織が関わってるイベントを手伝っていることにどうしても嫌悪感を感じてしまう。

 

「そうかなぁ?神樹様とか大赦とかはともかく、このお祭りは大切だと思うよ」

 

「何でそう思うのよ?」

 

「ほら、少し前に勇者御記読んだでしょ?乃木若葉さんの。乃木若葉さん達西暦の勇者たちがいたから、私達はいるんだよ。ありがとうって伝えてあげようよ!きっと灯籠全部に火がついたら、綺麗で明るくて皆きっと気付いてくれるから!」

 

「友奈...」

 

そうだと思った。大赦の為にイベントを手伝うのは気乗りしない。だけど、こんな世界を救おうと奔走した人たちがいるなら、その人たちにお礼を言うのも今を生きる勇者にとっては重要かもしれない。夏凜は心からそう思った。

 

「よし!そうと決まれば、ゴミ拾い頑張っちゃいましょう!!行くわよ!いつ...き?」

 

決意を新たに、樹に呼びかけてゴミ拾いを頑張ろうとしたその時、樹がある方向をずっと向いて固まっていることに気が付いた。

 

「どうしたの?樹ちゃん」

 

友奈も気付いて駆け寄る。

 

「友奈さん、夏凜さん、あれ...」

 

樹が指差す方向。そこには、ゴミ拾いをしていた別のボランティアの姿が....否。それは様子がおかしかった。

 

ボランティアの一人は、トングで空き缶を掴んだまま止まっていた。別方向を見れば、ゴミ袋に花火を突っ込んだまま微動だにしないボランティア。

 

先ほど、勇者部を迎えてくれた女性も、隣の人と話していたのか口を開けたまま止まっていた。

 

まるで、友奈たち以外の全ての時間が止まったかのように静かだった。

 

この現象を、三人は知っていた。

 

「まさか...」

 

「でもどうして!?大赦からは何も連絡は来てないわよ!?」

 

その時、空が縦に切れた。

 

切っ先から光と花びらが溢れ、三人を包み込んだ。

 

三人はギュッと目を瞑った。

 

やがて、光や花弁が舞うのが収まった事を目の奥で感じた。

 

何も聞こえない。

 

友奈は恐る恐る目を開けた。

 

そこはもう、三人がいた海岸ではなかった。海は消え、砂浜も消え、後ろにあった家屋も消え、代わりに木の根が全てに広がっていた。

 

もう二度と来たくないと勇者部が望んでいた場所だった。

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