先日、間違えて投稿したやつになります。
読まれた方もいるかも?
若干修正されています。
大王を追っていたのは、王騎や竭氏の兵だけではなかった。
竭氏は大王が忽然と王宮から消したことで追っ手の兵を差し向けていたが、先の失敗からの念を入れて、さらに、お抱えの暗殺者にも追跡の命を下していた。
王騎と昌文君が火花を散らす戦場の最中。
竭氏からの刺客徐完は、戦場近辺に潜伏しながら、大王を暗殺する機を窺っていた。両者の争いは次第に規模が大きくなり合戦の様相を呈し始めた。最悪大王の死亡だけを確認できればいいと両者に発見されない距離を保ち移動を繰り返していた徐完であったが、まさか標的が単騎で包囲網を駆け抜けることになるなど想像もしていなかった。そのため、朱錐たちと同じく徐完は大王の姿を見失う結果となっていた。
朱錐たちが痕跡を追うのに対して、身を潜めてあとを追っていた徐完は事前の情報と方角などから、大王がどこに向かったのか当たりをつけていた。徐完は明瞭となった大王の行く先に暗殺の成功と捜索のために拡がって森に分け入った捜索隊の姿に嗜虐的な私情を滲ませた。
「……大王側の兵か。ふん、面白い。駄賃代わりに首をもらっていくか」
徐完が大王を見失ったのは己の失態ではあるが、そのことが癪に障ったのも事実であった。そこで、行きがけの駄賃と称して己の慰めに大王派の兵の首を刎ねていこうと軽い面持ちで奇襲を仕掛けることにした。すでに夜の帳は降りており暗く視界の悪い森であったこともそれに拍車をかけた。気配を消して兵たちの後ろに回り込むと跳躍。兵が騎乗している馬の背に乗ると素早くその首を切り落とした。馬は突然乗せていた人間のバランスが崩れたことと、背に乗った新たな何かに驚いて、嘶きを挙げて振り落とすように暴れて駆けていった。異変を察知したもう一人の兵が振り向くと、そこには転がる同胞の頭と横倒しになっている躰があった。あわてて佩いていた剣を抜き放って構え左右に視線を向けるが、敵らしき姿を発見することはできなかった。
「な、なんだっ なにが起こった」
ガタガタと震える両の手と定まらない剣先は男の心境を如実に物語っていた。
瞬の間、ゾワっと背後に寒気を覚えた男は振り返り様に剣を薙いだ。けれど、後ろには誰もいない。たまらずに安堵の息を吐こうとしたその時
「動くな。声を挙げれば首を落とす」
男は首筋に当たる冷たい感触とそれを成した何者かの温度を感じさせない声に恐怖した。
「貴様は大王を居場所を知っているか」
ふるふると首を振る男。
「だろうな。だが当てはある。まあ生き残ったとしても、どの道大王は呂不韋によって始末されるだろうがな」
その言葉に「ツ⁉」と驚愕を覚えたように震える男の躰。
「ん、なんだ知らなかったのか。冥途の手向けに教えてやる。竭氏を焚きつけていたのは呂不韋だ。此度の遠征も計画の一部。知らなかったのは竭氏一派とお前たちだけだ」
竭氏側の刺客であるが徐完も馬鹿でない。暗殺者として魑魅魍魎である王宮内の情報は常に集めていた。
男はもたらされた言葉で味方だと信じていた呂氏陣営がまさか敵であるなど考えが及びもしていない事実を知った。その驚愕は頭の中が瞬間的に真っ白に染まるほどであった。男が信じていたものが崩れ去った瞬間でもあった。だが、そのおかげか、駆け巡っていた恐怖を忘れる結果となった。
「絶望したか? ックク お前たちはただの道化だったわけだ」
嗜虐的な一面を持つ徐完は、男が絶望に満ちた表情をしているだろうことに愉悦を感じていた。
「さあ 手向けはここまでだ。あの世で大王と再会したときにでも話してやるんだな」
充分に愉しんだ徐完が首を切り落とそうしたが、先に動いた者がいた。
「この身に グぅぅ かえてでもツ だいおぅs」
「ツ⁉ きさまっ」
男は素早く剣を両手で持つと、ためらいなく自身に突き立てたのだ。躰の芯を貫くように差し込まれた剣は、確かに徐完に届いていた。けれど、間一髪、身の危険を察知した徐完は、咄嗟に躰をひねることで致命傷を避けていた。すぐに力を込め男の首を切り落とした。
「ッチ 雑魚の分際で」
と徐完は捨てるように吐いたその時「どうかしたかっ」と左方から声が掛かったことで、すぐに意識を入れ替えて、この場をあとにした。
徐完は再び気配を消して当たりをつけた集落へと移動を始めていたが、脇腹に絶えず走るじりじりとした痛みに顔を歪めた。
「クソツ クソツ クソツ クソツ クソツ」
徐完は片手間に始末しようとした雑魚からの反撃を許したうえに、手傷まで負わされたことで頭に血がのぼって、徐々に刺された脇腹の痛みすら忘れていった。
それでも、冷静な暗殺者としての一面は顔を覗かせる程度には経験を積んでいた徐完は、大王の行方に思考を傾けた。
大王派の情報の一つ。それは、昌文君がこの辺りの村から下僕の子どもを引き取ったという話であった。それはそのときの御者を脅して吐かせたので、間違いない。だが、貴族が気に入った下僕を引き取るなど、そうめずらしい話ではなくその時は気にも留めていなかった。けれど実際に見失った大王がその近辺に向かっている事実は、やみくもに探すよりも可能性がある。と。
そしてもうすぐ森を抜ける直前まできたとき、前を走る人影を発見した徐完はニタリと口角を挙げると迷わず剣を抜き放って襲い掛かった。
「大王ツ 覚悟!」
不意をついた一撃は大王の首を確かに捉えようとしていた。
名もない兵。男の活躍になります。
刺客徐完さんの視点があってもいいだろう精神。
先日、間違えて投稿してしまい、あわてて削除しかけて手をとめてよかったです。
元データの挿入という形で投稿していたため第12話を完全消去するところでした。