彼の者の盾はどこへ向かうのか。   作:mukurobone

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第13話になります。



第13話

朱錐は遠くに灯りをみつけると、兵にはそのまま森での大王の捜索と索敵を命令して、灯りに向かって馬を走らせていた。襲撃があった時に見えた影が向かった方角とも一致していることから、何かがあると朱錐は確信に近いモノを抱いていた。

 

そうして、村のほとりまで着くと灯りが見えている方角から悲鳴がするのであった。

 

 

 

「貴様たちは何を知っている。早くせねばこやつが死ぬぞ」

 

 

村人の子の首を締めあげて剣の切っ先を向けた刺客徐完は、一種の焦りを覚えていた。それは、先ごろ易々と大王の首をとれると確信して飛び掛かったはずが、仕留めきれず、あまつさえ反撃を受けたことに起因していた。また、任務を完了させようとしたその時、さらなる己の知らない事態が顔を覗かせたことで、焦りは焦燥感に顔を変えて精神に滲みはじめていた。

 

事の発端は、大王に致命傷かと思われる傷をつけた瞬間のこと。突如、兵に切られていた傷に痛みが走った徐完は動きが鈍り、今まさに重傷を負わせた大王からの手痛い反撃を受けることになった。そのため、一時的な後退を余儀なくされた。

徐完は素早く傷の手当をすませると、再び追跡を開始。そして、村の中で力尽きて倒れ伏す大王とそれを遠巻きにみる村人親子の姿をみつけた。

 

徐完は村人を亡き者にするか一瞬の迷ったが、大王の素性を知らぬのなら塵芥と変わるまい。と大王嬴政の首を優先した。そのとき、あきらかに怯えていた童が制止の声を挙げたことに驚き、その動きを止めた。そして、ふとなにか見落としていないかと改めて見渡すと、大王が佩いていた剣がないことに気付いた。そのため、この者たちが何かを隠していると察した徐完は、止めに入った親を突き飛ばすと童を持ち上げて先の言葉を吐いた。のが事の顛末である。

 

 

「そ、そのものはひ、漂といってわ、わたくしどもの下、下僕であったものです」

 

 

「こいつが下僕だと………。まさか 偽物かツ」

 

 

「け、剣は同じ下僕であったものがこ、黒卑村に」

 

「黒卑村………。 なぜだ」

 

「な、な何かを託されたようで、わわ、わたくしどもには………」

 

数拍思考に費やした徐完は目撃者を消すために村人に躰を向けた。

 

「残念だが………お前たちには死んでもらう」 「ひぃっそんなっ」

 

一家の首を刎ねるため動きだそうとした徐完は、咄嗟に後ろに跳躍した。

 

「ドン」と重い音が響き、徐完が先ほどまでにいた場所に目をやると突き刺さる無骨な棍棒が一つ。徐に家屋の影から姿を現した朱錐が言う。

 

「状況はわからないが、とめさせてもらう」

 

尋常じゃない重量を感じさせる棍棒を投げつけて現れた朱錐に徐完はさらに距離をとると武器を構えた。

 

「………」

 

ただならぬ気配に徐完は警戒感を滲ませ、高まる緊張感。

 

 

「退くなら追わないが、どうする」

 

 

にらみ合う二人であったが、朱錐が佩いていた剣を抜き放ち、悠然と歩を進めると事態は動いた。

 

「退く」

言葉を残すと徐完は、すぐに姿を消した。

 

安堵の息を吐く村人をよそに、朱錐はすぐさま倒れている大王の安否の確認に走るのであった。

 

 

その後朱錐は王都に戻ることになる。というのも、朱錐は昌文君から大王が偽物であることを知らされていなかった。そして、状況の推移に寄らずに役割はそこまでて良いとも指示を受けていた。それは、昌文君が朱錐を信用していなかったというわけではない。けれど、行方しれずだった五年という時もまた十分に長い。すでに計画は最終段階まで煮詰まっていたこともそれに拍車をかけた。妻夏夫人から朱錐の帰還と「変わってなかったわ」というお墨付きををもらった昌文君は、それならばと、朱錐には伏兵として待機してもらい、不測の事態の備えとしたのだ。

 

朱錐もまた昌文君の人となりから、そのことを理解していた。そして、村人から彼は大王ではないと知った朱錐は、探していた大王はなり代わった影役であったこと、また死亡した旨を伝えた。そして、兵たちには合流地へ向かうように指示をだした。

 

兵たちを見送り、しばし村に滞在したあと、朱錐は急ぎ王都に馬を走らせた。王都に着くと、すぐに紫夏が指定していた店へと足を向けた。店では紫夏から渡されたものを見せると奥へと通されることになり、奥には紫夏がすでに待っており、朱錐は急ぎの頼みごとを一つお願いした。そして、紫夏からは、王騎の伝言を渡されることになる。

 

 

 

 

 

舞台は、黒卑村を駆け抜けて、政と出会った信がいる掘っ立て小屋の中。

 

「………ひ、漂なのか」

「違う。政だ。」

「せい?」

「お前が、信か」

「な、なんで俺の名をっ そ、それに漂と同じ顔のお前はなんなんだっ」

 

「……説明している暇はなさそうだな」

 

政の言葉と視線のさきには、小屋の外に何者かが剣を振り下ろそうとしているところであった。脆くもほったて小屋は両断されて崩れ去る。転がるように外に飛び出した信と政の前には、全身を赤黒い布で覆った男でいた。

 

「ほう。躱したのか。アレで死んでおいた方が楽に死ねただろうに」

 

気負うこともなくそこに立つ刺客の威容から察しがついた政が言葉を発した。

 

「刺客。その姿、朱凶か」

 

朱凶とは200年続く暗殺を生業とする一族の総称である。けれど、そんなことを知る故もない信には、まったく相手の脅威度は伝わっていなかった。

 

「しゅきょう?」

 

恰好から下僕と察しの付いた信を眼中から外した刺客徐完は己の目的を告げた。

 

「察しの通りだ。オレからは逃れらんぞ、嬴政。恨みはないが死んでもらう」

 

「んんだてめぇはっ こいつにはまだ用があるんだっ 俺の邪魔すんじゃねぇぞ赤いおっさん!!」

 

餓鬼のたわごとに、カチンとくるものがあれど、先までの失態続きに徐完は慎重になっていた。

 

「よせ信。迂闊に飛び込めがお前が死ぬぞ。」

「んだと!?」

「きけっ 信。朱凶とは200年の歴史を持つ暗殺者の一族だ」

 

徐完は下僕にそんなことを教えたところでどうなるものでもないと蔑むように言葉を発した。付け加えた一言が信の闘争心に火をつけることになるとも知らずに。

 

「ふふふ。教えたところで小僧がここで死ぬことに変わりはないぞ。大王に瓜二つだったあの男と同じようにな」

 

「!! てめぇが漂をやりやがったやつかっ ぜっていにゆるさねぇぞ」

 

「なんだ貴様、知り合いか。とどめは刺せなかったがまあ地獄で再会するんだな」

 

「ん 暗殺者のお前がとどめを刺さないとはどういうわけだ」

 

徐完は、つい口を滑らせた己の失態を目ざとく拾った政の言葉に冷静さどこかに置き忘れたかのように、いら立ちが再燃した。

 

「ッチ 面を被った変なやつの邪魔がはいっただけだ。どうせ長くはない。それに優先させるべきは本物の大王嬴政。お前だからなぁ」

 

多分にいら立ちを滲ませる刺客徐完に、もともと気が短い信がもう我慢がならないと野生さを滲ませて飛び込み、切りかかった。

 

 

 

「糞がぁ 漂の仇だっ 絶対にぶっ殺してやる!!」

 

 

 

この戦いを制したのは信であった。その後、黒卑村は追っ手の軍に包囲されるが、信と政の二人は河了貂の助けを借りると村を脱出。そのまま行方をくらますことになる。また王騎の関与によって、昌文君は始末したと報告がはいった。そこで乱を起こした竭氏は、大王派の筆頭はすでになく、さらには実権のない大王などどうにでもなると判断して、標的を呂氏へと切り替えた。そして、現在二十万の兵をひきつれて魏の小梁にいる右丞相呂不韋を逆賊として始末するための準備に取り掛かった。けれど、ここで玉璽を発見できなかったことが響き、呂氏の二十万を超える数十万の大軍を起こすことができずないばかりか、十万にも満たない数しか集めることができずに、その対策が必要とされていた。

 

 

 

そして今、秦の王都ではひと騒動が起こっていた。

 

山の民が山を下りて、ここ咸陽に現れたというのだ。それは、四百年前に秦王穆公が開いた国交の門を閉ざして以来初のことであった。蜂の巣をつついたような騒ぎとなった王都の中心である王宮内。その一角に陣取り、様子を眺める王騎の姿があった。

 

「山の民ですか。これは面白くなってきましたねぇ。そうは思いませんか 騰。」

「ハッ 何が起こるのか楽しみです」

「錐はどうですか。」

「………なるようになるとしか」

 

「ンフフ 昌文君の言葉が本当かどうか 確かめさせてもらうとしましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 




朱錐さんの強者感に尽力!
キングダムの二次小説の沼に皆さんが嵌ることを期待しています。


第12話より。主武器に関して。
でコメントを頂いたことで、朱錐さんの主武器は漫画封神演義の黄飛虎(武成王)が持っている棍棒を太くした感が作者感イメージです。感にイメージと曖昧さです。それぞれのイメージに合うものでいいと考えています。

それと、横文字はなるべく排したほうがよさそう。との理解をしましたので、そのあたりには注意していきたいと思います。

最後に、時間の吸い取れ感が半端ないので、あらたな趣味を模索しているかたはどうぞこちら側へお越しくださいませ。(ニッコリ)
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