彼の者の盾はどこへ向かうのか。   作:mukurobone

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初投稿となります。文章力がないためにわかりにくい部分が多々見受けられるかもしれませんが、生暖かい目でご覧ください。
キングダムの二次をもっと下さい。おねがいします。


本編 原作開始年前
第1話


その時代、人間の欲望は解き放たれていた。

五百年の大戦争時代、「春秋戦国時代」である。

 

紀元前245年中華西方の国。

のちに中華に名を轟かす大将軍がいた。

その名を「信」

まだ無名な少年は中華に夢を馳せ、ここから歩き始める。

 

………。

なのは漫画『キングダム』の主人公だ。

 

 

改めて今作品の主人公、朱錐(しゅすい)について、その生い立ちから三つある転機を交えて紹介する。

 

 

 

 

秦国にて、それなりの貴族家の三男として生まれ落ち、幼き頃に聞かされた戦神昭王の輝きに魅せられた大将軍の活躍譚に心を躍らせた少年が自然と求めたのは、彼らの傍に少しでも近づくことだった。それから少年は、単純なまでに武を求め、武功をもとめ、大将軍の傍を目指すことになる。

 

ただ残念というべきか、生家は『武』でなく『文』の家系であったこともあり家族、親族にはいい顔はされなかった。それはつまり、武官として成り上がるための土台がないことを意味していた。

 

だが、ここで一つ目の転機が訪れる。

 

それでも、ひたすらに武を求めて鍛錬を続ける朱錐に絆された父は、伝手を頼りに一人の武官に面会を申し入れて、息子のことを話したのだ。

 

「うむ、わかった。儂もそちらには世話になっている身だ。お主の息子、武を持って国に仕えたい想いは受け取った。任せておけ」と、私の知らぬ間に話を付けてきた父により、翌日には生家を離れて彼の元へ弟子入りとなった。

 

それからは修練の日々に入るわけだが、現役武官の鍛錬は想像を超えた過酷なもので、基礎体力こそ正義の限界突破のリアルに体は正直だった。ことわざの血反吐を吐くとはまさにあのことだろう。

 

本格的な鍛錬を積むうえで、適性を知るために剣や槍などおおよそ武器と呼ばれるものを試した結果、弓が性に合ったのか手に馴染み「狙いは雑だがは威力はある」と評された。

 

朱錐は幼き頃の夢を純粋に追いかけて鍛錬を怠らなかった。

 

それは、次第に花開いていく。

 

少年の成長とともに血反吐を吐くような鍛錬の日々が頑強な肉体を作り上げていく。齢15をむかえる頃には、おおよそ同年代の者よりも剛に優れ、弓の威力は他を圧倒するようになった。しかしながら、どうあっても狙いの粗さは改善できずにいた。近い距離ならまだしも、戦場で敵将を一矢で穿つような腕にはなれずにいた。

 

そしてそれは、同時に主武器としての弓との別れにもなった。体格があり剛力に優れているがゆえに、低確率だが、一撃必殺という憧れ(ロマン)は戦場では使い道が乏しかったのだ。それならば剛力を持って敵と直接ぶち当たれる武器を持つ方が有用だったのだ。しかしながら、当たれば一撃必殺の強弓であり、牽制など群れに向かって射る方向に変わっていく。

 

弓から次の武器を模索する朱錐だが、およそ剣舞を舞うような才も敵手をよみ打ち合いを制するほどの器用さもなかった。そうして試行錯誤の末に、棍棒を武器にと定めた。ただし、べらぼうに重い。常人なら両手でなんとか扱うような代物でなる。

 

使い方はいたって単純であり、それは棒術など『優れた技巧で打倒す棍棒』でなく、およそ術とは呼べない『優れた膂力にまかせた打ち払う棍棒』になった。

 

次第にそれは、敵陣を薙ぎ払って道を拓く術となっていくは当然の帰結ともいえた。考えても見てほしい、乱戦のなかでべらぼうに重い棒を薙ぎ払える漢がいたら、どうなるだろうか、と。

 

棍棒を薙ぎ払えば、敵は体ごと宙を舞う。

 

それすなわち、宙を舞った敵が今度は武器として周囲の敵に体ごとぶつかっていくことになる。そうすると振るう度に、敵の隊伍は自然と乱れていくことになる。乱れは乱れを呼び綻びとなる。つまりはそういうことだ。

 

 

それからは正式に私兵団の一員として、諍いの仲裁から賊の討伐、果ては戦場へ従軍したりもした。その頃仲間から言われた「お前は顔が穏やか過ぎて迫力がないな」という言を受けた朱錐は、古来より伝わる伝承の鬼を模した面をかぶるようになる。

 

それ以降、朱錐の活躍は『鬼面の朱錐』という名でひっそりと中華へと拡がっていくことになる。

 

 

季節が巡れば、新たな戦は起こる。

 

それが戦国の世の習しか………。

 

 

 

ただ戦うだけではない。ときには将を狙った奇襲という名の暗殺の一刀から、身を挺して将である師を守り通して死にかけたり、化け物をとめるために馬と棍棒を犠牲にしたりと、なかなかに濃厚な経験を積んでいく。

 

殊更、おおよそ人の枠をはみ出したいち個との遭遇は、朱錐に戦うとは「生き残ること」だと自覚させていく。そしてそれは『攻』から『守』へと朱錐の意識が変わり始めた瞬間でもあった。

 

打倒するために振った武器をいつしか味方を守るために振るうようになる。

 

将を守るために、敵将の足を止める。

 

すなわち、敵の勢いを止めることを生業として行動するようになった。

 

恵まれた膂力を武器にする朱錐は決して弱いわけではない。

 

それこそ命を顧みなければ、おおよその者をうちのめせるほどに強くはある。

 

けれど、朱錐は己が欲するものをそこには見いだせなかった。

 

敵の足を止めるには出鼻をくじくに限る。そうして探る癖を身に着けた頃から、負けない才覚とでも呼ぶべきなのか、難敵が相手であろうと揺らぐことがない確固たる己を見出していくことになる。

 

戦に生き残り続けることで、戦場の嫌な空気や微妙な機微を読むことにも長けていく。

 

勘というのか、予感というのか、ふと今ここで奇襲があったら………。が不思議とよく当たり九死に一生を得る戦働きを要所で発揮するようにもなる。これは、後発的に戦場で拓いた才能といえるだろう。

 

朱錐は、そのおかげで奇襲から皆を守ることができたし、生き残ってこれた。

 

終わることのない戦場を転戦するうちに、英雄のごとく活躍する憧れの将軍と会話する機会を得る。

 

「ンフフフ あなたが昌文君の盾である鬼面の朱錐ですか」と。

 

本人談によると「そのあと何を話したのかよく覚えていない」らしい。朱錐にとって夢見心地とはまさにあの瞬間のことだったのだろう。

 

そう、朱錐が弟子入りしていたのは昌文君である。

 

ところで、功績を挙げている武官である昌文君と一文官である朱錐の父とがなぜ繋がることになったのかは、ひとえに昌文君の秦国を想う心がゆえである。彼は武官としてだけでなく、文官としての目を持つことで、より国のためになると、魑魅魍魎がはびこる宮廷の中では中立的な立場をとる父に教えを請うたことが縁の始まりである。

 

昌文君は、武官として功績を挙げながらも同時に武官として国のためにできることの限界も悟り始めており、その先を見据えていたのだ。

 

 

昌文君の盾として侍り、戦場を駆け抜けるうちに廻る歳月。

 

二つ目の転機が訪れる。

 

「副官は朱錐とする。お前ならば誰も文句はあるまい」

 

それは、前任の副官が戦死したことによる任命であった。

 

新たな副官になり、隊を預かる側になる。それしてそれは、本当の意味での一兵卒では味わうことのなかった隊の命運を決める指示をだす辛さ知ることになる。

 

昌文君を、隊を生かすために「盾になれ」と命令を発した瞬間から、次々と散っていく同胞たちを背に転進の号令を出す。

 

ともに駆け抜けてきた顔が一人、また一人と「殿を頼む」と消えていく辛さを痛いほどに味わった。

戦いに一区切りがついた頃、朱錐は一人思い悩むことになった。

 

「いまのままでは先に逝った皆の命に顔向けできない」と。

 

 

隊の損害を少しでも減らすためには、より深く戦場を知らなければならなかった。兵から将へ。より遠くから戦場を見渡すような視点をもたなくてはならなかった。

 

だからこそ国内、他国を問わず、戦が起こると知れば時間の許す限りに移動して、戦場を俯瞰できる場まで赴いていく。

 

他国には他国の文化や風習が存在しており、また秦国で得ることのなかった話など、貴重な知識を得ていく。

 

その一つが嚆矢になる。

鏑矢(かぶらや)であり「鏃(やじり)」の先端部分に「鏑」と呼ばれる笛のようなものを付けることによって、矢を放つと大きな音が鳴る矢である。古来合戦の合図として使われていたものになる。

 

朱錐は、かつて弓を主武器として鍛錬をしたことも幸いして、一つの着想を得ることになる。それは合図としての嚆矢ではなく、武器としての嚆矢の姿である。

 

 

朱錐が将としての戦いを知るために戦場を駆けまわっていたこの時代。

名だたる大将軍から、のちにそうなるであろう勇将、智将が数多の戦場でぶつかり合っていた時代である。名高い智将が魅せる芸術的な敵を絡めとる手腕から勇将が魅せる敵の策をもかみ砕く剛力が幾多の戦場で、その盤上を彩らせていた。

 

朱錐はこうした将たちの才に慄き、とても同様な働きができるとは、到底思えなかった。

 

そうして今の己を知ったからこそ、逆の発想にいきついた。

 

それこそ「ありえないだろう」ことを前提にした対処を常に模索していくことだ。

 

そうした思考は一つ武器にも表れることとなった。

 

 

古来より弓矢は遠くから将兵を射抜く必殺の武器となる。当然、敵には警戒されている。

 

それを逆手にとる武器。

 

すなわち矢を放ったことがだれでもすぐに音でわかる矢であり、以後これを『嚆鳴矢』(こうみょうし)とする。

 

甲高い音色を響かせながら、必殺の威力で矢が放たれる。これがどういう事象を為すのかを現代的に、例えるならば発砲音になるだろう。

 

音に人間は反応してしまう。それが命を奪い去る威力の矢であったならば、常人ならば恐怖を煽られる音になるだろう。

 

こうして合戦の始まりの合図と使われていた嚆矢は、嚆鳴矢として生まれ変わり武器としても役立っていくことになる。

 

そうした思考があらたな経験を積ませて、いつしか糧となり、隊を守る術へと変わっていった。

 

数多の戦を戦い、時に訪れる危機を乗り越えていく日々は過ぎ去り、前任の副官に顔向けできる自信ができたころ、三つ目の転機が訪れる。

 

「錐よ。儂はこれからは文官として戦っていくことにする。だが、そなたの才は戦場にこそ相応しい」

 

それは、昌文君が武官から文官へとその在り方を変える決意をしたことに起因していた。

 

「やつには話を通してある」

 

こうして、副官の任を解かれた朱錐は、新天地へと送り出されるのであった。

 

 




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