彼の者の盾はどこへ向かうのか。   作:mukurobone

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2話目になります。
原作に沿いながら、オリジナルな場面を想像するのは、楽しいですね。
なので、キングダム二次作品をもっと世によろおねします!!



第2話

朱錐は昌文君のもとを離れて新天地へ。

 

 

彼の者が治める城塞都市に向かい、城門にて名乗りを上げると守備兵の一人が門から現れたので昌文君から預かった書状を渡す。

 

「しばしの間、お待ちください」

 

守備兵が伝令を呼ぶと、書状は守備兵から伝令へと手渡されて城門内へと消えていった。

そうして伝令の姿が見なくなると、こちらの様子を窺っていた守備兵から話掛けられた。

 

「朱錐殿。少しよろしいですか」

 

「………はい」

朱錐からすると、昌文君のお供として何度か訪れたことがある城塞都市ではあるが、話し掛けられたのは初めてであり、訝し気に守備兵を見つめた。

 

「あッ いえそのぉ、 手を触らせてもらえませんか? 」

 

「?」

朱錐は疑問に思いながら徐に手を差しだす。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「え ええ」

緊張と喜びをの面持ちをして手を触ってありがたがる守備兵にますます「???」となり生返事をした。

 

「ありがというございます」

 

「………何か意味が?」

 

「はっ!? 申し訳ありません。実はーーー」

 

 

曰く、『鬼の面は魔除けである』とのこと。

 

どういう伝わり方をしたのかは定かではないが、朱錐が伝承の鬼を模した面を被り、敵を打ち払っていく姿を面白おかしく伝えたひとりの徴収兵がいた。

 

それを戦場で聞いた彼らは、無事に帰り着いた各々の村で、話のネタとして己の武勇伝とともに話した。

 

するとどうだろう。

 

地方からさらに僻地へと拡がりだすにつれて『「鬼面」の朱錐が「敵」を「薙ぎ払う」』は、それぞれの風土や風習の風に乗っては単語を削除、変換させていったのだ。

そうして「鬼の面」「魔」「打ち払う」となったそれらは、ある時から繋がりをみせて噂となった。

それが嘘か誠か、そんなことは他所に置いて、やがては地方から都市部へという逆浸透をはたして、たどり着いた頃には「鬼の面には魔を打ち払う力がある」となっていた。

 

噂を聞きつけた商人の行動は素早く、彫り師に依頼。

完成した鬼の面はたちどころに売り切れてしまう。ないとなると欲しくなるのが人の情。いつのまにか流行りとなって軒先などに多く飾られるようになったのだ。

 

悲しいかな。朱錐の活躍譚はどこへいったのか。

 

いつのまにか「鬼の面」だけが残り、敵が魔となり薙ぎ払って「魔除け」となったとさ。

 

ただ、民草からすれば鬼の面であるが、鬼面を被る朱錐の名をすこしでも知る兵からすると察しがついた。そのため「現を担ぎたい」兵がこうして朱錐をありがたがる珍事へといたったのである。

 

朱錐としては、この摩訶不思議な噂に困惑気味だが、目の前で喜んでいる守備兵の姿に仕方がないかと内心とは裏腹に平常心を保って接した。

 

ようやくして、使いの者がくると朱錐は守備兵に挨拶をしてから、無言であとをついていく。

たとえ道行く軒先に鬼の面が飾ってあったりしても無言でついてく。

子どもに「あっ 鬼の面」と指をさされようとも終始無言でついていく。

 

そのまま城内に入るのかと思われたが、なにやらかがあったのだろう。振り返った使いの者が「こちらへ」とさっき来た道とは別の通りへと歩き出す。

 

別の通りを歩けども、やはり鬼の面は飾ってある。

鬼の面は確かに流行っていた。

 

そうしてから、ようやく城壁の前で止まり、階段を指し示す。

 

「こちらから上へ 殿がお持ちです」

 

 

 

 

都市を囲う城壁の上には、この城の主である王騎がおり側近とともに遠く水平線のかなたを眺めていた。

 

「よく来ましたね。錐。」

 

王騎は水平線のかなたに向けていた視線を朱錐に向けると、言葉をつづけた。

 

「城下はどうでしたか。」

 

「………。どこも賑わいあり活気がありました」

 

「騰ぉ。」 「ハッ これを」

王騎の副官騰は懐から見覚えのある面を取り出して朱錐に渡した。

 

「これは…鬼の面、ですね」

 

「そうです。言わずもがなですが、元はあなたですよ。」

 

「………」

 

「ンフフフ  魔除けとはよく言ったものです。これはあなたの功績ですよ。現に、あなたは敵に立ちふさがり、そのすべてを払ってきたのですから。」

 

「………はい」

 

朱錐の浮かない声は仮面越しにその表情を悟らせた。

 

 

そんな朱錐と王騎が視線を合わせること数拍。

 

「フウぅ」と息を吐くとすこし困ったような表情をして

 

 

「昌文君から聞いてはいましたがーーー」

 

焦らすような数瞬。

 

「迷いがあるようですね、錐。」 

 

朱錐はかけられた言葉に驚き、無言のままに立ちつくしてしまう。

 

王騎は 一度しかいいませんよ? と朱錐に体ごと顔を付けづけることで意識を向けさせる。

 

「あなたはどんな難敵を前にしても揺るぐことなく立ち向かう盾であり、隊の重しです。そんなあなたを要に、隊は不動の盾となり、敵を押しとどめているのです。」

 

わかっていますね? 諭すように見据える王騎。

 

「そんなあなたが、いまのような蒙昧な体では隊は瓦解するだけです。そのままでは、すぐに死にますよ。朱錐。」

 

錐から朱錐と敢えて突き放すように語ると王騎は朱錐を見据えた。

 

翻って大将軍からの薫陶を受けた朱錐は、己の未熟さに気付かされて、満面に朱が注がれてしまい何も言えずにいた。

 

「ンフッ あなたにもそんな一面があるのですね。いつも鬼の形相ですから、てっきりいつも怒っているのかと。ねぇ 騰ぉ?」 「ハッ! まったくその通りです」

 

朱錐は普段から伝承の鬼を模した面をしている。きっかけは仲間の一言でもあったし頭、ひいては顔をふいの攻撃から守るために着用したものになる。

 

「おやぁ それは仮面でしたねぇ ココココッ。」 「ココココッ」

 

愉快そうに、王騎冗談ですよ?と朱錐に笑いかけた。

己の真似をする騰をひと睨みすることも忘れない。 「ッ!」

 

 

「ですが、仮面越しに悟られるようでは、まだまだですね。」

 

 

揺れ動く内面を的確につかれていることに、己の未熟さに視線を落とす朱錐。

 

「昌文君に頼まれはしましたが、今のあなたに任せる隊はありません。矛をおいて出直しなさい。」

 

朱錐は、これまで昌文君を、その隊を護ることを主命においてその役割を担ってきた。そのため、昌文君が戦場を離れたことで、己の芯に据えるべきものを見失っていた。

 

それを王騎は昌文君の書状から読み取り、実際に目の当たりにしたことで、朱錐のそれを「迷い」と呼んで指摘したのだ。

 

背を向けて歩き出した王騎は最後に一言だけ添えた。

 

「そうそう 顔をだしていきなさい。騰ぉ」  「ハッ!」

 

そうして王騎は朱錐の可否は聞く間もなく歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




応援、コメント、評価とありがとうございます。
何とか2話目を投稿できました。2500字程度になります。
他の投稿者の方々の一話で五千字、一万字という熱量に慄いています。
拙くも続けていけるように、遅筆していきます。

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