スーパーロボット大戦OG ~求める存在~   作:ショウマ

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考えるより、撃つがやすし

 

 

 双方から放たれる無数のミサイルやレーザー、高出力のビームといった兵器が飛び交う――戦場と化した宇宙空域。

 

 両陣営がぶつかり合う最前線――激戦地となっている中央部では、撃破された両軍の機動兵器が光の華となって咲き乱れている。

 

 それは戦場の両端に位置する互いの艦隊でも――機動兵器に比べれば格段に数は少ないが――起きる出来事であった。

 

 敵側からの主砲を含む艦砲射撃や、機動兵器からの射撃攻撃を受け続けた結果……耐久力の限界を超えた艦が一隻、また一隻と爆沈していく。

 

 その一方側――ゾヴォークとウォルガの連合艦隊の主力を構成しているのは、ゾヴォークで用いられている戦艦〔ゼラニオ〕。

 

 巨大強襲空母として設計され、主力戦艦として用いられるソレは連合艦隊の大多数を占めていた。

 

 同型ばかりで見分けがつかない艦隊の一部、派兵されている親衛隊の第四派遣機動艦隊の内の一隻。

 

 戦場ということもあり慌ただしい艦内。

 

 小破や中破といった機体が帰艦する度に、怒号が飛び交っている格納庫の一角。

 

 機体色である薄紫から“薄”が取れ、特徴である六枚の翼には赤という目立つカラーリングが施された〔ライグ=ゲイオス〕が一機と、通常カラーの〔ゲイオス=グルード〕が二機。

 

 待機状態の小隊が出撃の時を待ち構えている。

 

 ……ように見えた。

 

 コクピット外では先の慌ただしいやりとりが起きているのにも関わらず、その小隊は雑談に花を咲かせていた。

 

 もちろんやるべきことを終え――または行いながらではあるが、そこには今いる場所が戦場であるという緊張感は、欠片も存在していなかった。

 

「やっぱり、艦隊はいらないにしても、専用の艦とか欲しいと思わない? 色はもちろんだけど、機能とか設備とか武装とか」

 

 パイロットシートに腰かけている少女――エルミア・エイン小隊長は、サブモニターに映し出されている部下の一人と喋りながら、忙しく手元の端末に指先を動かしていた。

 

 追加した武装や、改良時に取り入れたばかりの特殊装甲を初めとする各項目に、次々とクリアの表記がされていく。

 

 追加性能を増やし(過ぎ)たため、それまでに搭載されていた従来の内部システムでは、処理能力が追い付かなくなってしまった。

 

 そこで急遽新たなシステムを作り上げ……ている最中である。

 

 試験動作中に発覚……さらに出撃も重なった結果、この土壇場での準備となってしまったのである。

 

 幸い、システムその物は――このような可能性もあらかじめ考慮して――土台は作ってあったため、必要な設定を入力していく。

 

『良いっすね、姉御! 高機能高性能唯一無二の艦!』

 

「そう! ちゃんと分かってるわね、ハイ。通りいっぺんではなく、自分の望むサポートや能力を持つ艦。でも、姉御はやめなさい!」

 

『ですよね! でも、それって難しくないっすか? 専用艦といっても、当然ブリッジクルーや整備の人員とかは必要でしょうし。姉御、自分達やゼブリーズさん、ジュスティヌさん達しか知り合い居ないんじゃ?』

 

「ふふ~ん! 艦そのものは一人でも動かせるシステムを構築すれば良いのよ。整備の方はパイロットが兼ねるとか、後は余り気は進まないけど、バイオロイド兵を借りるというのも」

 

 

『オカシラ。知り合いが居ないのは否定されないのですね』

 

 メインモニターの右下に、もう一人の部下の顔が表示される。

 

「う、うるさいわね、そんなこと気にしなくて良いのよ! 後、姉御もだけどオカシラはもっとやめなさい! モベ、それで外の状況は?」

 

 怒りか羞恥か別の感情か、顔を赤くして逸らしながら部下に問いかける。

 

『機動兵器の損害は帝国軍の方が多いですね。ただ、無人兵器が多数を占めるあちらと違い、有人機が多いこちらの方が、人的被害は大きいでしょう。それを踏まえた上で損耗を比べれば、兵力で勝るこちらがやや優勢といったところかと』

 

「ん。こっちにも無人機がいないわけではないんだけどね。ウォルガの方とは違って、ゾガルにはバイオロイド兵の数も少ないし、それどころか最近になってようやく配置され始めたくらいだし」

 

 部下の報告に首肯するも入力の手は止めず、エルミアは肩を竦めるとそう答える。

 

「機械化の監察軍ばかり送りこんできて。愚帝の頭に進化を促す宇宙線が降り注いだら、あそこはちょっとはマシになるのかしらね……」

 

『姉御? 何か言ったっすか?』

 

「え? あたし、何か言った?」

 

 無意識に何かを呟いたのか、ハイ・カーエに思わず聞き返したエルミアの耳には、小さな電子音が届けられる。

 

 機体と繋いでいたコードを外し、入力していた端末を閉じて正面にあるメインモニターに目を向ければ、そこには全てのチェック項目の完了と異常無しの表示が出ていた。

 

 今度は機体の方の端末に指を走らせながら、入力を終えたばかりのシステムを次々と起ち上げていく。

 

 コクピット内の器機に灯が点り、全天囲モニターが周囲の景色を映し出した。

 

「よし、オールオッケー!」

 

 少女が満面の笑みを浮かべると同時に、ブリッジからは出撃が伝えられる。

 

 それを聴いたエルミアは、パチン! と指を鳴らすと二人に指示を飛ばす。

 

「グッドタ~イミン! 二人とも、準備は良いわね?」

 

『待ってました!』

 

『いつでも』

 

「さあ、あたしとどこまでも覇道を共に歩みなさい。〔ライグ=ゲイオス ゼフィリーア〕、行くわよ!」

 

 ――いつか乗る日を夢見て数年。

 

 ――譲り受け、改良を行うこと半年。

 

 エルミアは操縦桿を握ると、足下のペダルを踏み込んだ。

 

 顔を上げたゼフィリーアのツインアイに、この時を待ちわびたかのように強く光が灯る。

 

 三対六枚の赤い翼を展開し、背部にあるバーニアに火が入ると一気に噴射を始め――。

 

 艦内の照明に照らされて、機体の各所に取り付けられたレンズがその色である緑の煌めきを返しながら、加速を強めたゼフィリーアが宇宙(そら)へと躍り出た。

 

 その後には、二機のゲイオス=グルードも続く。

 

「二人とも、流れ弾なんかに当たるんじゃないわよ? むしろ、当たりそうならあたしの近くにいなさい!」

 

『ラジャーっす!』

 

『了解です』

 

 母艦のゼラニオから飛び出したエルミア小隊は艦隊から離れ、激戦地を目指す。

 

 近付くにつれ、小隊に飛来する攻撃も飛躍的に増加する……が。

 

 先頭を行くゼフィリーアの見えない何かに阻まれて、実弾はおろか非実体弾もその効果を成さない。

 

 ビームに至っては、バリアで弾かずに直接受けた装甲が、そのまま吸収する始末である。

 

「ほぼ完璧な慣性中和も可能にする、イナーシャル(ディフレクト)フィールド。これはそう簡単に抜けないわよ」

 

 ゼフィリーアが発動しているバリアフィールドは後方の部下二人にもその効果が及び、敵弾を回避し損ねた二機をしっかり守っていた。

 

『姉御ー! そんなのがあるんなら、俺たち避けなくても良いんじゃ?』

 

「戦場でずっと一緒にいられる保障は無いでしょ? 常に回避を試みるべし! これはあくまでも保険よ。遠すぎると効果は無いし、味方全部を守れるってわけでもないんだから。変な弾が直撃しても知らないわよ?」

 

 疑問を投げかけるハイに、エルミアはそう答えを返した。

 

『き、気を付けるっす』

 

 前線に近付いたことで、敵機の数も増え始める。

 

「さて、二人とも。守備隊は控えているけど、敵を一機たりとも後方に抜かせるんじゃないわよ! 彼らの仕事をなくしてやる! くらいの気持ちでやりなさい」

 

『了解っす!』

 

『了解』

 

 敵軍――ゼ・バルマリィ帝国軍の保有する甲虫型の偵察用機動兵器〔メギロート〕が、ゼフィリーアを確認すると群がるように襲いかかってくる。

 

 そこに背部ブースターを噴かしながら自ら飛び込むと、まるで飛んでくる小虫を払うかのように、ゼフィリーアはロングレーザーソードで横薙ぎに斬り払う。

 

 右手に持った大型の実体剣の刀身を包みながら伸びる光の刃が、メギロートの装甲を――そこに埋め込まれたクリスタルの欠片ごとやすやすと斬り裂いていく。

 

「あたしは人型を中心にやるから、二人はメギロートを中心に壊しなさい! 全部ね!」

 

『りょうか……って無茶っすよ、姉御!? あれめちゃくちゃ数が多いじゃないっすか!』

 

 両の手のひらから伸ばしたデュアルレーザーソードで二機のメギロートを破壊しながら、ハイが悲鳴を上げる。

 

「はい、つべこべ言わない! あれは偵察機なんだから、放っといたらこっちの情報がいっちゃうでしょ。傭兵隊は新型に乗っていることも多いんだし」 

 

 ゾヴォーク側にいる傭兵隊。エルミアの恩人の一人であるグロフィスも所属しているそこは、その多くがゾヴォークに機動兵器を提供している軍事商人『ゴライクンル』のお抱え部隊である。

 

 戦争商人とも言われる雇い主の関係で、彼らの開発した新型機を扱う者も多い。

 

 エルミア自身は、何かと黒い噂も多いゴライクンルに対して、余り良い感情は持っていない。

 

 しかし、彼らのおかげで助かっていることが多いのもまた事実なので、必要悪……と割り切ることも出来ない少女は複雑な感情を抱いていた。

 

『ハイ、さっきも言われていただろう? つまりそれくらいの気概でやれ、ということだ』

 

 両腕の小手部分に備えたダブルキャノンで、ハイや自身、エルミアに迫るメギロートを撃ち抜いていくモベ機。 

 

『あ、そういう意味っすか!』

 

「むしろ本音なんだけどね……」

 

 メギロートをまとめて斬り捨てながらエルミアがそう呟くが、直前に通信を切っていた直属の部下二人には届かない。

 

 カレイツェドやレストレイル、他チームのゲイオス=グルードといった友軍機の支援も時に行いながら、二機は弾薬の関係で前衛と後衛を入れ換えつつエルミアからの指示を実行していく。

 

「あれで腕も悪いなら怒るところなんだけど、やっぱりあたしが甘いからかな」

 

 解析した例の金属細胞で構成されたクリスタルには、相手の機体を解析し他の個体に情報を伝える機能が備わっていた。

 

「この子の性能テストをしたいけど、どこまで使ったものか悩むわね」

 

 乱戦になっている状況下ではあるが、ゼフィリーアはバリアに阻まれ無傷である。

 

 自陣は無人機ばかりということもあり、気にせず主砲を撃ってくる敵艦から、エルミアは自分を盾に味方を護る。

 

 メギロートや魚型のヨエラ、人型のゼカリアといった帝国軍を、主に剣だけで相手にしていたゼフィリーア。

 

「ま、多少は使わないとね」

 

 突撃してきたヨエラの頭部に、剣の柄を直接叩き込む。

 

 柄がめり込み、勢いを止めきれずに貫通した機体が爆散していった。

 

「撃ち抜いて、斬り裂きなさい! プラネイト・ガン・ソード!」

 

 手元の端末を操作すると、メインモニターに映っていた敵機のいくつかにロックオン表記。

 

 六枚の翼の付け根に取り付けられた菱形のパネル状という外見のパーツが外れると、それぞれが単独に飛行を始め、変幻自在な動きで敵機に攻撃を始めた。

 

 四隅の角には移動や姿勢制御用の可動式スラスターが、縁にあたるライン上を開くことで連装式のビーム砲が現れる。

 

 それらは絶え間なく光弾を吐き出して帝国軍の機体の足を止めると、蜂の巣になった敵機に止めを刺すためにビームの刃を構成。

 

 弱まった装甲を、生み出した刃で一気に貫いていった。

 

 設定を変えることで自立式の誘導兵器としても使えることから、周囲に展開して死角のカバーに用いる他にも、左腕に六基まとめて装着して盾としても使用することもできる。

 

 ずっと使用し続けるのはエネルギー消費の関係で無理だが、本体から供給することで再度用いることは可能である。

 

 別のゼカリアを破壊したゼフィリーアの翼の付け根に、戻ってきたガン・ソードが装着された。

 

「ん~、もうちょっとエネルギーの消費を少なく出来るかな」

 

 武器の状態を知らせるモニターにチラリと目を走らせる。

 

 装甲材質に用いた金属細胞は、強力な自己再生能力を有していた。

 

 それは損傷や、使用したエネルギーさえも回復するほどに強力なもの。

 

 強力過ぎるがゆえに、この能力の“先”にある力を警戒したエルミアはリミッターをかけていたが、気を付けて使えば有用なものであった。

 

 解析したつもりではあるが、大事な人達に何かがあっては困るため、ゼブ達の機体には使用しなかったが。

 

 そのうち再生機能だけを取り出したものを作り出して、彼らの機体に用いる予定である。

 

 

「MAPWマイクロミサイルポッド、射出!」

 

 エゼキエルという名称のどこか騎士を思わせる機体と剣を交えながら、ゼフィリーアの右肩にあるレンズが開く。

 

 そこに内蔵されていたランチャーミサイルを排除し、代わりに装備していた三角柱状のポッドがエゼキエルの肩越しに発射され――。

 

 敵の砲弾やビームを避けながらある程度の距離を飛ぶと、三つある側面が一斉に開いた。

 

 中にあるのは、一面につき二列十発の小型ミサイル。

 

 計六十発のミサイルが一斉に放たれ、それぞれが敵機を捕捉して追尾を始める。

 

 追われたメギロート達がすぐに回避行動を取るものの、彼我の速度差に大きな差があったこともあり、戦場で一斉に光の華が咲いた。

 

 メギロートやヨエラくらいだと撃破までいくようだが、人型では一番量産されているゼカリアで良くて中破、当たりどころ次第で大破。

 

 ゼフィリーアが両断したばかりのエゼキエルや、太めの体格で砲撃用のハバククといった装甲の厚い機体に関しては、小破や僅かに中破が出るという結果になった。

 

 その残った個体をゼフィリーア――ライグ=ゲイオスが標準装備している両肩の砲塔、ドライバーキャノンで砲撃する。

 

「狙い撃ち! 大人しく逝きなさい」

 

 集束され撃ち出されたエネルギー弾は、狙い過たず吸い込まれるようにエゼキエルやハバククに元へ。

 

 見た目通りというべきか、ハバククは堪えきれなかったようだが、エゼキエルの中には火花を散らしながらもまだ動くものがあった。

 

 もっとも、射出されたプラネイト・ガン・ソードによってすぐに後を追うことになったが。

 

 エルミアが付近の状況データを呼び出すと、ゼフィリーアが暴れたせいもあり、バルマリィの機体はかなり減少していた。

 

 ハイとモベの二人も健在で、コンビで協力しながら奮闘している。

 

「旗艦の“花”も居ないみたいだし、この子以外には当たると危険な威力の主砲がある、敵艦の〔フーレ〕を全部落としたら終わりかな?」

 

 敵の艦隊がいる場所のデータを呼び出したエルミアが操縦桿を動かし、ゼフィリーアがゆっくりとその向きを変えた。

 

 機体の各所に取り付けられたレンズが一斉に光り輝き――。

 

 コクピット内に小さくアラームが鳴った。

 

 次いでメインモニターの端に、こちらに向かってくる敵の小隊の映像が表示される。

 

「ん? 新型? 見たことない機体ね」

 

 両肩には単筒タイプの砲門、手には変わった形をした棒状の得物を持ったオレンジの機体が三つ。

 

 先頭には隊長機らしき、似た形状だが細部があちこち異なる黒い機体が居る。

 

 どちらかといえば丸みを帯びたオレンジに比べて、黒いのは鋭角的で禍々しさを醸し出している。

 

 さらに四機とも――黒いのはさらに――速度も速く、ゼカリアやエゼキエルとは明らかに性能が違うことが分かる。

 

「……黒いのは、何か嫌な感じね。それなら、まとめて消えてもらいましょうか!」

 

 ゼフィリーアのツインアイが輝き、各所のレンズからエネルギーが放たれると、機体の前で収束――黒い球体が生まれた。

 

「有人機なら、心静かに死を受け入れなさい! ギガブラスター、ファイア!」

 

 

 

 ライグ=ゲイオスの最強兵器であり、ゼフィリーアにも当然装備されているソレが、間に四機を挟む形で発射される。

 

 

 黒い光の奔流はメギロートやヨエラといった機体も巻き込みながら真っ直ぐに突き進み――。

 

 

 

 

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