人類の帝国を治める君主。
太古の地球の時代に空前絶後なサイカーとして誕生した。本名と出自不明なチートであり、何千年間も影から人類を守ってきた。
渾沌の神々と戦っているためか、神様と宗教が嫌いであり、帝国公理と呼ばれる政策で宗教や迷信、文化を弾圧した。
だが、自分の帝国が銀河統一の目前で、混沌の神々に毒されたホルス率いる数名の側近らに大規模な謀反を起こされ、何とか一騎打ちで撃退するも、相討ちとなって瀕死状態となり、生命維持装置に繋がれて生ける屍同然となる。無論、口も身体を動かせない。
その後、銀英伝の地球教染みた新興カルト教団のてにより、望まない宗教に自身が神として祀られ、挙句自分が何千年もかけて作り上げた帝国を乗っ取られてしまう。
それでも、黄金の玉座と呼ばれる生命維持装置に座りながら、超絶精神力とサイキックパワーで渾沌の神々から銀河中の臣民たちを守護している。
西暦2600年より遥か遠未来、西暦40000年の地球。
人類発祥の母星であり、人類の帝国の首都惑星である
かつてヒラヤマ山脈と呼ばれた場所に、人類の帝国の皇帝が座す荘厳な巨大宮殿である帝殿が建っていた。帝殿の奥深くには、黄金の玉座と言う生命維持装置に繋がれた皇帝が座していた。
人類を憂い、己の才能と類まれなるサイキックパワーを駆使して統一戦争を行って勝利し、人類の帝国を建国したその雄姿はもう無い。身動きもせず、ただ黄金の玉座に座する姿は正に生ける屍だ。
黄金の玉座に座す皇帝が身動ぎもせず、ただ座っているのには理由がある。
それは、今より約一万年前に起きたホルスの大逆と呼ばれる帝国内で起きた大規模な内戦の影響だ。
この対逆の経緯は、同じ将のローガーの部下の一人であるエレバスの企みであった。
エレバスは渾沌の信奉者に落ちており、帝国を混沌崇拝に陥れようと策略を巡らせていた。そこでエレバスは渾沌神の聖遺物の剣で、反乱の制圧を行っていたホルスを刺し、瀕死の重傷を負わせる。
渾沌神の聖遺物である剣で刺された傷は、どのような高度な医学でも治療できず、そのまま皇帝の右腕たるホルスは死を待つばかりであったが、エレバスは計画通りに彼を邪教の神殿に運ばせた。内なる不満と憎悪、権力欲で混沌の神々の誘惑にホルスは乗ってしまい、エレバスの計画通りに彼は渾沌の信奉者となり、治療不可能な傷は嘘のように全快した。
全快したホルスは自らの軍団を「サン・オブ・ホルス」と名乗り、混沌の神々の代理戦士として、親であり、君主である皇帝に反旗を翻す。
これがのちに言うホルスの大逆である。
ホルスの反乱に加わる者は多く、大規模な内戦に突入する。反乱軍ことホルス軍の勢いは凄まじく、首都惑星の地球まで帝国を追い詰めた。
これに皇帝は一か八かのホルスとの一騎打ちを行い、辛うじて勝利をおさめたが、致命傷の一撃を負う。その傷は皇帝を市せる程であり、家臣たちは直ぐに生命維持装置「黄金の玉座」に彼を繋ぎ、一命をとりとめることに成功する。だが、皇帝は物言わずに動かぬ植物人間となり、生ける屍同然となってしまう。
玉座に座らされ、無理に生かされ続け、皮肉にも自信が嫌う宗教である新興カルトに神格化の対象として崇められ、数千年掛けて築き上げた帝国は、人類の迷信と狂信を加速させる道具と成り果ててしまった。
皇帝が守護したサイカーたちでさえ、自分の身体と魂を保つため、毎日四千人ほどがコーラスとして生贄として捧げられている。
それでも皇帝は今も身動ぎもせず、その超絶な精神力とサイキックパワーで宿敵である混沌の神々に抗い、銀河中の臣民たちを今日も守護している。
そんな生ける屍同然の皇帝は無意識のうちに、空前絶後のサイキックパワーで太古の地球の危機を感じた。その危機は、謎の艦隊の攻撃を受け、壊滅状態の地球方面艦隊と第十二艦隊の連合艦隊の事である。皇帝の空前絶後のサイキックパワーは、遥か過去の太古の地球を見ることもできるのだ。
傍から見れば、単なる生命維持装置に繋がれ、帝国の権威の為に無理やり生かされる死に体にしか見えない。だが、身体と意識は失っても、精神とサイキックパワーは健在であるのだ。太古の地球の危機を感じた皇帝は、その危機を救うべく、並外れたサイキックパワーを上空へ向けて解き放った。
皇帝が解き放たれたサイキックパワーは、付近に設置されているサイキックパワー計測装置の反応と、皇帝の肉体と魂の維持として集められている約一万の半数に渡る五千人のサイカーたちの死で、臣下らはそれで知る事が出来た。
「皇帝陛下のサイキックパワーが上がって行くぞ、ウォォ!? こ、この数値はビックバンを起こすほどの…!」
計測装置が異常なまでの数値を上げていくのを見て、自らの人体に機械を埋め込んでいる老人は驚愕する。その数値は老人が驚愕する通り、ビックバンを起こすほどであった。
植物人間状態の皇帝が解き放ったサイキックパワーは、荒廃しきった地球を飛び出て宇宙へと上がり、老人の言葉通り宇宙でビックバンを引き起こし、空間に歪みを形成させた。ビックバンを引き起こして空間に歪みを生じさせた皇帝のサイキックパワーは消滅せず、その歪みの中へ消えた。
果たして、歪みの中へ消えた五千人のサイカーを犠牲にして解き放たれた空前絶後のサイキックパワーの行き先は…?
時は過去の西暦2600年に戻る。
圧倒的科学力を誇る謎の艦隊に対し、奮闘する地球方面艦隊と第十二艦隊の連合艦隊であったが、少数の無人艦載機を撃破するも、それで戦況が変わるはずが無く、一方的にやられていく。
「敵機接近!」
「回避ィーッ!!」
「間に合いません! うわぁぁぁ!!」
フリゲートや駆逐艦、巡洋艦は圧倒的機動力を誇る無人機の連携攻撃によって次々と沈んでいき、その残骸でデブリ帯が出来る程だ。
「駄目だ、躱し切れない! のわあぁぁぁ!!」
戦闘機も攻撃機も同様であり、取り付かれるか、火器の攻撃でハエの如く撃ち落とされていた。
「なんて速さだ! 捉え切れない!」
ウォーロード級やリーヴァー級、クエストリス級タイタンは捉え切れず、背後から撃たれるか、集中砲火を受けて撃破された。やはり昭とサルド、ジョージィ、バティストの技量がそれほど凄いと言うことだろう。
「み、味方は!?」
ウォーロード級タイタンに乗る昭は、ウォーハンマーで接近戦を仕掛けて来た敵機を追い払った後、他の味方が居ないのかと問う。
「もう半分以上死んじまってるよ!」
『マジかよ! 次は俺たちが死んじまうぞ!!』
この問いにサルドは半分が落とされていると答え、ジョージィは次に落とされるのが自分たちだと嘆く。現に味方機は次々とやられ、こっちに来る敵機の数が多くなる。
「お前のパワーで、何とかならんか!?」
『出来ねぇよ! 出来たらとっくにやってる!」
サイカーとも言えるバティストに何とか出来ないのかと問う昭であるが、彼はそれが出来ればとっくにやっていると答え、無人機にチェーンソードで斬ってからの一撃離脱戦法を仕掛けた。何度もやっている内に見破られ、数機に集中砲火を浴びせられる。
「艦隊の半数がやられました! 地球艦隊は三分の二を失っております!」
「提督、これでは第四艦隊の救援まで持ち堪えられませんぞ!」
「まだだ! 救援が来るまで何としても持ち堪えるのだ!」
第十二艦隊の旗艦、巡洋艦「ロッテルド」の艦橋内では、既に第十二艦隊の戦力が半数以下になっていると言う知らせに、ギョルンは何としても持ち堪えるように怒号を飛ばす。
「複数の敵機が艦隊を抜け、当艦にも接近中!!」
「直ちに迎撃!」
決死の抵抗を行う連合艦隊であるが、やられていくに連れ、無人機の集団は戦闘宙域の外に退避していた安土を初めとする空母にも牙を剥いた。接近してくる敵機の集団に、直掩機のタイタンや直掩艦のフリゲートが迎撃を行うが、それらすら圧倒的機動力に躱され、何機かが空母まで向かってくる。接近の報告に恵梨香は額に汗を浸らせつつ迎撃を命じる。
迎撃ミサイルや対空レーザーによる迎撃も躱されており、数機は居た直掩のクエストリス級があっと言う間に撃墜された後、接近を許した数機にライフルなどを撃ち込まれた。
防御力は艦隊戦を想定していない為に低く、ましてや数機の敵機、それも現行の戦闘機やタイタンを上回る無人機に取り付かれれば自力で追い払えず、次々と設備や抵抗手段、発艦前の艦載機を破壊され、嬲り殺しにされる。
「被害甚大!」
「直掩機は!?」
「敵機に阻まれ、向かえません! 護衛艦も同様!」
「田舎の地球で死ぬなんて…!」
続々と来る損害報告に、恵梨香は直掩機が戻ってこないのかと問うも、無人機にやられるか、防戦一方で来られないと通信手は返答する。これに恵梨香は死を覚悟した。
最新鋭空母「安土」が複数の敵機の攻撃で各所が炎上する中、同じ最新鋭艦である戦艦「大和」も、複数の無人機の猛攻に晒され、大破していた。
「まさかここで沈むことになるとは…!」
大破しながらも、何とか戦闘を継続している大和であるが、艦橋にも攻撃が及び、艦長である輝虎も負傷していた。
「か、艦長…! もうこれ以上は…!」
「分かっている。だが、ここで抵抗を止めて投降したところで、相手は応じない。我が艦を攻撃する敵機の攻撃は苛烈だ。確実に、この大和を沈めようとしている…!」
投降を提案する部下に対し、輝虎は負傷した左腕の出血を右手で抑えつつ、敵は投降に応じないと返す。輝虎の言う通り、敵の攻撃は苛烈だ。撃沈された味方艦より脱出した脱出艇でも、容赦なく撃沈するほどのプログラムが無人機に施されている。
「我々は第四艦隊の救援が来るまで、持ち堪えねばならん! それまで、否、地球に住む七千万の人々の為に戦い続けるしか無いのだ!」
冷静沈着な輝虎が凄まじい剣幕で言えば、部下もそれに応じ、群がって来る数十機の無人機に決死の抵抗を行った。
「嫌ァァァ! 私死にたくない!!」
「しっかりしなさい! 貴方軍人でしょ!?」
旧式巡洋艦アドマイルベガも被害を受けており、中破していた。次々と来る損害報告に若い女性通信手が頭を抱えながら恐怖し、鳴き声を上げる。これにアリストテレサは落ち着かせ、地球の人々を守る為に戦えと輝虎のように言う。
だが、地球方面艦隊は二級戦どころか掃き溜めのような左遷部隊であり、パニックを起こして戦線を勝手に離脱する艦も居た。だが、逃げたところで謎の艦隊が逃すはずが無く、戦意喪失した敵艦にさえ容赦なくレーザーを浴びせ、轟沈させていく。
「各戦隊、被害甚大!」
「第四艦隊はいつ来るんだ!? これ以上は持たんぞ!!」
「後もう少しのはずですが…」
「もう少しじゃ持たん!」
地球方面艦隊旗艦の巡洋艦「アームストロング」にも無人機の集団が接近し、苛烈な攻撃を加えていた。既に被害も出ており、提督であるホルスは第四艦隊の救援がまだかと通信手に問えば、彼はもう少しだと返した。これにホルスは持たないと激怒する。
「…嬉しくも無い大当たりだ」
時間が経つごとに悪化していく戦況に、ライアンは自分の予想が当たったことを呪った。こうならないように戦力を十分に整え、オルクの次に攻撃を仕掛けて来る黒幕にも備えたが、黒幕の戦力が未知数な故に、今の惨状に至っている。
それにこの予想が当たらなければ、地球方面艦隊と第十二艦隊の将兵は死なずに済み、自分は不名誉除隊となり、就職安定所で就職先を探すことになっていたはずだ。だが、それはもしもの話だ。そう思ったところで、時間が巻き戻らないし、死んだ将兵たちが蘇るわけでもない。
「敵機、更に当艦に接近!」
「ここまでか…」
更に旗艦を攻撃する無人機が増える報告が来れば、ライアンは責任を取り、確実に死せる戦いに引きずり込んでしまった将兵等と運命を共にすることを誓った。
「んっ!? なんだ!? 身体が…!」
死を覚悟するライアンであったが、突如となく身体に凄まじい痛みを感じ、苦しみ始めた。
どうやら、遥か未来の皇帝が解き放ったサイキックパワーが、この時代に届いたようだ…。
西暦40000年のサイカー五千人を犠牲にし、西暦2600年の地球に届いた皇帝のサイキックパワーは、その時代のサイカーたちにただならぬ身体的にも精神的な疲弊を負わせた。
「あ、頭が…! それに、身体も、鉛のように重い…」
地球からかなり離れている距離の惑星に住むサイカーでさえ、頭痛と身体的怠さを感じさせていた。そのダメージは、人類の領域に居る全てのサイカーに及んでいたのだ。サイカー全員が疲労を感じるのは、皇帝がその時代に送り込んだサイキックパワーの所為である。このサイキックパワーを維持する為に、この時代のサイカーたちの精神力とサイキックパワーを吸収しているのだ。
「なんだこの痛みは…!? 一体、何が起きてる!?」
当然、皇帝がこの時代の地球圏に送り込んだサイキックパワーの出現近くに居た者たちは苦しむ。ライアンもサイカーであるらしく、サイキックパワーに精神力を吸い取られていた。
「う、うわわぁぁぁ!? 頭が! 頭が割れるように痛い…!」
サイカーであるバティストも当然ながら頭を抱え、苦しみ悶える。他にもサイカーは居たのか、彼ら彼女らも苦しんで動きを止めていた。
苦しめる為に時代を超えて来たと思われる皇帝のサイキックパワーであったが、それはこの時代の人類、果ては皇帝が居る時代の人類を救うための代償であった。過去の人類のサイカーたちの精神力を糧とした皇帝のサイキックパワーは、かつて最強の軍団を作り上げ、その武力を持ってして人類を救い、あるいは統一し、人類の帝国を建国した全盛期の巨大な皇帝の姿となる。正確には巨大な皇帝の幻影であるが、その姿を見た数百鬼の無人機は動きを止めた。
「なんだありゃあ…!?」
突如となく現れた巨大な幻影は人類にも見えており、彼らも驚きの余り思わず戦闘を止め注目していた。
『過去の地球を攻撃する者共よ、否、心持たぬ機械共よ。余が気付かぬとでも思っていたか? 此度の過去の地球への襲撃を含め、既に混沌の邪神共が五度行っておる。現世の余の意識が目覚めぬとも、誰であろうが過去の地球は滅ぼさせぬ』
敵味方双方が注目する中、この時代に来た皇帝の幻影は謎の艦隊へ向け、語り掛ける。サイキックパワーを使っており、宇宙の人類にも聞こえていた。
「こ、声が聞こえるぞ…!? 一体何者なのだ!?」
同じく皇帝の幻影を見ていた輝虎が驚きの声を上げる中、無人機の集団はいつでも殲滅可能な人類の軍を無視し、その幻影に総攻撃を始めた。だが、幻影であるために攻撃は効かない。
『機械ゆえに余に攻撃が通じぬことを知らぬか。なれば、機械らしく壊れるが良い!』
幻影に無意味な攻撃する無人機の集団と艦隊に向け、皇帝の幻影は何処からともなく刀身が燃え盛る剣を取り出し、それを振るった。斬撃は衝撃波となり、一機撃墜するのがやっとだった無人機を容易く撃破、それも一振りで全てを全滅させたのだ。当然の如く、驚かずにはいられない。それに人類の兵器だけを避け、敵だけを撃破したのである。
「剣一振りで…」
『あの無人機を全滅させたのか…!?』
安土と大和の艦長らが驚く中、皇帝の幻影は無人艦隊に標的を定め、二振り目を放つ。無人艦隊は強力なエネルギーシールドで守られているはずだが、遠未来の皇帝が送り込んだサイキックパワーの幻影の前では紙切れ同然であり、敵艦隊は一瞬にしてデブリとなった。
「あれは一体…!?」
いきなり現れ、自分らを壊滅寸前まで追い詰めていた敵を容易く片付けた皇帝の幻影に驚く中、幻影は彼らに語り掛ける。
『地球の時代の人類よ。余が汝らを助けるのは一度だけぞ。まだ成長途中な汝らは、迷妄や渾沌に憑りつかれている訳でもあるまい。遠未来の余の助けを借りずとも、汝らの力のみで危機、あるいは敵を退ける程に繁栄できるはず。奇跡に頼るな、宗教や神を捨て、技術を磨け! 論理と理性のみが唯一信じるに足るべき理想ぞ!!』
皇帝の幻影は最後に論理と理性のみが唯一信じるに足る思想と語った後、その姿を消した。人類は遠未来の皇帝に、助けられたのだ。
「何が、何が起きたんだ…?」
「奇跡だ、未来が助けてくれた…!」
「未来が助けてくれた…? 何の話だ?」
痛みより解放されたライアンは、付近で茫然としているホルスに問う。これにホルスは奇跡に助けられたと答えた。これにライアンが首を傾げる。当然だろう、自分が痛みに悶え苦しんでいる間に、敵艦隊が全滅など、信じられるはずもあるまい。
遠未来の皇帝の助けがあったにせよ、地球は窮地を脱することが出来た。地球方面艦隊と第十二艦隊の連合艦隊の損害は馬鹿にならなかったが、全滅は免れた。
残存戦力は以下の通り。
地球方面艦隊
ライアン・ギャリバン
ホルス・オットー
金本昭
サルド・ヴァルカン
アリストテレサ・シャルドネ
ジョージィ・タチカゼ
バティスト・ノトス
その他生存者
第十二艦隊
ス・ギョルン
小澤恵梨香
真田輝虎
ギブソン
その他生存者
その後、救援の第四艦隊が到着し、双残存艦隊は脱出した将兵と負傷兵の救援活動に行った。
西暦40000年、惑星タウ。
その惑星はタウ・エンパイアと呼ばれる
人類の帝国と対をなすほどの巨大勢力であり、高い技術力を有し、大善大同の為に尽力している。厳格なカースト制度を設けており、防衛に拡大のための武力を担当する軍事階級の火のカースト、人口の大半を占める労働者や職人、建築者、技術者階級の地のカースト、役人や行政官、政治家に文官等を担当する水のカースト、宇宙において全ての運用面と宇宙軍を担う風のカースト、タウ・エンパイアにおいて全権を握っているとも過言ではない導師階級の霊のカーストを含め、合計五つのカーストだ。
タウ人は身体的に人間に劣り、接近戦は軍人や戦士階級の火のカーストの者たちを除き、同化政策で吸収した他の種族たちに任せており、主な保有兵器は射撃を前提した物ばかりだ。
保有する軍事力も強大で戦略に長け、兵法にも精通し、このおかげでタウ・エンパイアの拡大はほぼ停滞することなく進み、勢いが完全に阻止されたことは一度も無い。
だが、今回行われた多数の
「三万六千年前の
導師階級の霊のカーストの者は、作戦の失敗に激怒していた。オルクと謎の艦隊をあの時代の地球に送り込んだのは、タウ・エンパイアであったのだ。タウ・エンパイアの技術をもってすれば、タイムマシンの発明など造作も無いようだが、幾度かの失敗で計画は凍結されたようだ。
だが、人類の帝国領域への侵攻を画策するその導師は、虫けらで宿敵であるオルクと、人畜無害な無人機を主力とする艦隊を送り込み、地球を破壊せんとしたが、地球と人類を数万年にも渡って守護する皇帝の執念の前に打ち砕かれた。
「やはり失敗しましたな、アゥン=コウメイ殿。やはり人類は、第六次天球拡張でとどめを刺すべきかと…」
「分かっておるわ、全くとって忌々しい! 彼奴等の狂信が
隣にいる地のカースト出身の技術者ゼルガリエは、火のカーストの出では無いが、やはりこの作戦は失敗すると思っており、予想通りに失敗したことで、次なる拡大攻勢計画「第六次天球拡張」に全力を注ぐべきだと指摘した。それにコウメイと呼ばれる導師は怒り混じりながら人類の帝国の狂信に、自分らの大善大同より勝ることを忌々しく思い、近くに置いてある机に八つ当たりの拳を叩き込む。
過去の地球を破壊し、その影響で人類の存在が消え去った後でそこをタウ・エンパイアの支配下に置く腹積もりであったが、成功するかどうか分からない怪しい計画であり、過去に送り込んだドローンの反応の喪失で失敗したと判断され、本来の抵抗を排除しながらの侵攻計画に戻った。
「まぁ、そう怒ることもありますまい。人類の帝国は腐り果てた木その物。第六次天球拡張が成功すれば、
既に迷妄と度重なる戦争で疲弊しきった人類の帝国など腐った木も同然であり、第六次天球拡張で倒せるとゼルガリエが言えば、コウメイは地球、否、人類の帝国がある方向に視線を向けた。
「人類の狂信者共との決着、この時代で付けるほか無いと言うことか。なれば今度こそ大善大同の理念、成し遂げよう! 今は亡きアゥン=ヴァ殿の為に!!」
かくして、人類の帝国の領土に対する大規模な侵攻作戦「第六次天球拡張」が開始された。
本国や各地域から発進した多数の増援艦隊は、帝国との最前線であり激戦区であるネム=ヤール環礁に集結し、そこで予め待機していた艦隊と合流して一気に雪崩れ込もうとしていた。
その雪崩れ込む無数の艦隊と艦載機の中には、過去の人類を襲った無人機「タウヴァ」の
その侵攻作戦に参加したタウ・エンパイアの全ての将兵等は、自国の帝国が掲げる理念を叫び、士気を上げた。
『大善大同に勝るもの無し! 我らの希望、我らが果たすべき大義! 我らとの共存と理想を分かち合う事こそ、我らタウの望み! その理念に反する者には死を!!』
その姿、人類の帝国と変わらぬほどの狂信ぶりであった。大善大同を掲げ、身を捧げる宗教帝国軍勢は人類の帝国の領域に踏み込むのであった。
戦争しか残されていない世界で、この銀河でまた大規模な戦争が始まろうとしていた。
G-20さん
リオンテイルさん
有部理生さん
ご応募いただき、ありがとうございました。
そしてご協力いただいた方々と読者の皆様の含め、打ち切りのような終わり方をして、ごめんなさい!
さて、三日前に柴犬のアイリスディーナの誕生日だったな。内のマリマリとレズ物SSでも書こうかな。