Fate/extra future   作:きちきちきち

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くぎりの一回戦までは頑張る。


第3話

 

 

―――次の日。第1回戦まであと6日……。

 

【マイルーム:陣地作成 D】

 

 おおよそ清涼な背景とは似合わぬ。木漏れ日が、優しく顔をなでる。

 眠っているうちに木々が成長したか、まるで"魔女の森"のごとく空間を作り出している。

 おおよそ、無機質な教室とは思えない生命力。

 昨日は色々本当にいろいろとあったのに、まるで疲れを感じない。

 

【陣地作成】

 キャスタークラスが持つ、魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる能力。

 なるほど、地味に思っていたが拠点による疲労回復は、

 どうしても長期戦となる"月の聖杯戦争"において、万全を維持するのに重要なことだろう。

 殺伐なイメージの付き纏う魔術にこういう使い方もあるのかと、眠気眼にぼけーと感心する中。

 

(……あ)

 こうして余裕が戻ってきたからこそ、頭によぎることもある。

「あー、失敗した」

「……ふぁあ、どうしたのマスター?」

 朝起きて、第一声である。

 それにつられて赤髪メッシュ混りの金乙女、キャスターも寝床より目をこすりながら顔を出す。

 さすがに眠る際には普段の戦鎧は邪魔なのか、脱ぎ捨て紺の薄着姿である。

 

 寝ぼけているのか。

 そのまま無防備の顔を寄せる、その仕草ただの女の子のように見えた。

 

「ちかっ匂、いが」

「むぁ」

 迫る顔を手で押し返す。

 何処か距離感が近い、一瞬よぎった煩悩を追い払い、話を戻した。

 

「いや昨日のうちに第1回戦の対戦相手を確認し忘れてた。もう掲示板に張り出されていたはずだったのに」

「なんだそんなこと、いいよそんなの。どうせいつか戦うんだから」

「ダメだ。『キャスター』は聖杯戦争において不利を背負ってる、セイバー・ランサー・アーチャーの3騎士。これらは霊格によって、魔術を無効化する"対魔力"を必ず持ってる」

 原作知識、有力な英霊に標準装備の対魔力という理不尽を語る。

 それはAランク……一流となれば、そもそも魔術という手段そのものをほぼ無効化してくるのだから。

 英霊とはいえ、それは魔術師にとって致命的。

 故に『キャスター』は聖杯戦争においては最弱と呼ばれるクラスとなるのである。

 

「なにそれ、なんてずるっこい!!」

「ふふ。それはそう、もともとズルのための仕組み。だからこそ相手のクラスを最低限知らないと話にもならない。俺たちは事前準備が、すべてを分けるんだから」

 キャスターの素直な反応がかわいらしくて、笑いをこらえる。

 もともと源流(オリジナル)の聖杯戦争において製作者(御三家)が、三騎士を独占することにより戦争を有利に進めるための仕組みだ。

 そのまま流用する欠片男のオリジナリティの欠如に、思うところがないわけではないが……。

 

「にしてもそう聞くと月の聖杯戦争って思う以上にヘンテコなんだね。もっと厳格な儀式と思えば、子犬がマスターだったり、あんな監督役だったり……」

 キャスターはまるで田舎から上京し、現実を知った若者の如くに遠い目をする。

 多少出自が特殊な「新米サーヴァント」である彼女は、聖杯戦争に参加すること自体が水泡の夢であった。と言うか憧れがあった。それ故の落胆である。

 

「どうせ人が聖杯戦争なんてかっこつけても有象無象の人が集まって作られるもの。格式なんてすぐ崩れる。マスター達もそれぞれに反則も持ち寄ってるだろうさ、それでも勝つよ」

「えぇもちろん」

 身支度を整え、彼らは厳重なセキュリティに守られたマイルームより外へと向かうのだった。

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

―――【月海原学園:廊下】

 

 マイルームから出て歩く学園に備えられた掲示板の前に向かう。

 まだ初戦だけあって学園の中において、マスターらしい人影は多くあった。

 どこか気の抜けた雰囲気に、まだ殺し合いの殺伐さは感じられないだろう。

 やはり原典においては"遠坂凛"が戦争と評したそれとは、如何しても似つかわない空気である。

 

 どこかで、自分の契約したサーヴァントを自慢するような声さえ聞こえる。

 それはまだ、敗者に訪れる電脳死に現実感を持てぬ者が少なからずいることを感じさせられた。 

 

「……なんというか平和、またぼくが聞いてた話と違うんだけど」

「まだ一回戦も始まっていないからな。ゲームに没入感を持たせるを"設定"だと思ってるマスターも少なからずいるらしい」

 霊体化したキャスターを供に、周囲を廊下の生徒を観察する。

 城井彰人は凡人だ。

 誰もが幼心に一度は思う、歴史の偉人に会ってみたい気持ちも、浮かれる気持ちをわかる。

 半面、退屈に腐った性根は、この場にいるだろう"英雄"の誰もが城井彰人に答えなかったどいう事実に八つ当たりめいた苛立ちも共にある。

 

 故に、靄ついた思いが、皮肉げな笑みが張り付いて取れない。

 

「さて、ついた。けど」

 さて何事もなく掲示板に目を通す。

―――第1回戦"城井彰人"対"コ―ネリー・アルフォンス"という名。

 参加者に応じた多言語、膨大に並べられたその中においても一瞬に見つけられた。、

 それぞれのマトリクスと結び付けられたある種のメタ情報というべきが、何の変哲もない掲示板にしか見えないそれが必要な情報のみを読み取らせるのは、何処か小気味の悪さもあった。

 

 

 それはそれとして。

「困ったな」

「ん、もしかして知り合い……?」

「いや、名前はわかってもこの中の誰かわからない。一端の霊子ハッカーや魔術師(ウィザード)なら占星術やハッキングで情報を奪えるんだろうが」

 こういうところでも、城井彰人が魔術師でないことが大きく足を引っ張る。

 手あたり次第というのは手間とリスクが大きいものだ。

 

(英霊なんて神秘を使役しても平静でいられる大物か、それともアサシンのサーヴァントか)

 だからこそ、"掲示板"にて出向くことで相手からの接触を待った面もある。

 この点において何処か迷子の子犬めいた愛嬌を持つ岸波白野(主人公)は、良くも悪くも伸ばされた手を掴むのがうまかったが、あれはもちろん特殊例である。

 

「そっかよかった、マスターが顔見知りと殺しあうなんていやだからね」

「……そこは心配ない。在り得ないから」

 マスターとして明確に足を引っ張る事なのに、キャスターの言葉に少し面を食らう。

 単純に心配をしてくれていたらしい。

 こそばゆい。そもそもそれはあり得ないことだというのに。

 

「まぁ、それはそれでやりようはあるアリーナの準備を、キャスター」

「へ?」

 それはそれとしてだ。次のため、歩き始める。

 経験値(リソース)を確保するアリーナは対戦者同士の共用空間だ。

 "神代"の環境を再現したムーンセルの仮想空間は、優秀な魔術師であるこそ涎垂の環境である。

 故に、勝利を目指すならここを利用しないことはあり得ない。

 キャスターであればこそ、やり方もあるというものだ。

 

 

 

●●●

 

 

 

―――【アリーナ:第一階層】

 

 バキィ!!

 銀旗の一振りに攻勢プログラム(エネミー)が弾け電子の海に消える。

 赤毛交じりの金髪をはたなびかせて、青タイルの空間を戦靴の音がリズミカルにたたきならす。

 おおよそキャスターとは思えないその威風だった。

 

「どう、マスター!この調子でじゃんじゃん行こうよ」

「落ち着いてキャスターまだ日数はある。抑えて今回の主目的は経験値稼ぎのそれじゃない」

 おそらくだが、スペック自体は大英雄たるジャンヌダルクの近似値となるのだろう。

 クラスという枠に縛られるサーヴァント、その中にキャスターというクラスにおいて一段階スペックダウンを経てなお、最低限の身体能力を持っているのはありがたいことだった。

 

 そしてマスターに観測されることでマトリクスに情報が表示される。

■啓示:C

 直感と同等スキル、これにより戦闘に手をある程度、察することができるらしい。

 単純なエネミー相手であれば、初見であっても有利をとることができる。

 

 それだけでサーヴァントの能力があれば、十二分に戦える。

 

―――カーッ!

 そうこうしてるうちにアリーナ内に、けたたましい鴉の声が鳴り響く。

 

 キャスター"黒鴉の戯れ"、不吉たる魔女象徴(シンボル)の一つである鴉を使役する魔術。

 アリーナの入り口に配置していた事による生き鳴子である。

 

「きた、か。この速さはやっぱり尾行してたか」

「そっか狙い通り、だね」

ギュゥウウ!!

 勝利の充足感に満ちていた先と裏腹に、キャスターが獲物であるその旗を握り締める。

 どうやら緊張しているらしい。彼女は戦闘者ではない。

 

「これから、サーヴァント(英霊)との戦いが」

 頭に過るのは桜色のセイバー、初めて対峙したそれに不覚を取ってしまっている。

 歴然とした圧倒的実力差、真正面で対峙しながら微塵も反応することができなかった。

 気を引き締める、その気になれば己のマスターの首は落ちていたのだから。

 

 引き続いて、配置した鴉の声が響き渡る。それが敵が来る先を教えてくれる。

 これだけ目立てば、この鴉鳴子の意味は察されているだろう。

 

 それでもカツンかつんと、着実にタイルを叩く音が近づいている、

 そして姿を現したのは。

「ほほう、随分小癪な手を使うと思えば、貴様が吾輩の初戦の対戦相手か」

 オールバック、スーツを決めたお堅い印象の男である。

 表現するなら頑固親父といったところか、その目にはどこか怒りを湛えているように見える。

 

 

―――そして重要、その男が従えるサーヴァントはまだ見えない。

 

「ふん学生がこの場にいること自体なんと嘆かわしい蒙昧か、自己紹介をしよう吾輩の名はコ―ネリー・アルフォンス。見ての通り優秀な弁護士である」

 頑固親父は捲し立てわざとらしく、弁護士バッチを見せつけるように胸を張る。

 優秀なと主張する当たり大した自信家である。

 異邦人ゆえに仮に現実においての有力者であってもそれが結び付かないが、どうにもその大言にしては威厳を感じられない。

 

「はじめまして、と。弁護士ね。人を裁く立場でわざわざ罪を犯しに来たか」

 キャスターに目配せして、その背に隠れるように距離をとる。

 マスターの単独行動などありえない。サーヴァント守りなくして容易く命は奪えるのだから。

 故に、行動の意図は透けて見える。姿を隠す技能と併せてほぼ確実に……。

 

【気配遮断 D】

【啓示 C】

 

 風切りの凶刃がひらめく。

 

「ッ……させない!!」

 ガキャン!!

 キャスターがそれに反応し旗を振り回し、剣宣、鋼同士がが弾かれる音が響き渡った。

 そのまま押し返すようにふり抜き帯剣をはじき返し、黒装束の男が飛びぬいた。

 

「よく防いでくれた」

「何が…っ!」

 互いのサーヴァントが構えなおして対峙する。

 覚悟していたとはいえ冷や汗を拭う刹那のやりとりである、やはり城井彰人には追いきれない。

 

「何をしているかアサシン!ワシが気を引いてまでの絶好の機会を不意にしおって!!」

「言っただろうマスター、私はあくまで処刑人だ。暗殺はもとより不得手だとね」

「黙れ、仮にもアサシンの貴様がよく言えたものだ。当たり前のことをやらせるために令呪まで使わせおって」

 剣を厳格な天秤のごとく眼前に佇むプレッシャー、両眼不動たる白髪の優男。

 城井彰人の特異性がその真名を看破する。【アサシン】"シャルル=アンリ・サンソン"。

 革命期のフランスにて効率の良い処刑法たるギロチンの発案者、本人の意思はともかくとして。世界史上2番目の数の処刑を執り行った処刑人の中の処刑人である。

 

 ひりついた思考が回る。

(不味いな)

 直観する、逸話から相性が悪い。とっても悪い。

 

 敵が確定し反則により真名が割れた第一目的は果たされた。

 優れた医療者であり剣の達人でもある彼に、準備もなしにやりあうのは割に合わない。

 

 

 相手は本職の暗殺者ではないが、それ以上に処刑人の中の処刑人なのだから。

 

―――セラフより警告>>アリーナ内でのマスター同士の戦闘は禁止されています。>>警告―――

 ムーンセルからの警告音、鳴り響くアラートである。

 

「とんだ挨拶だ弁護士。人の目がなければいくらでも卑怯なことをするのか」

「ふん、慈悲だよ蒙昧な子供よ。もともと死んだようなものではないか何を苦しむ必要がある」

 月の聖杯戦争において、アリーナでの交戦は違反だ。おおよそ3分程で強制中断となる。

 えらく傲慢な物言いに内心、反感を覚えながら。言葉のやり取りに時間を引き延ばす。

 

「おしゃべりは終わりだ。やってしまえアサシン」

「やれやれ気が乗らないな。流儀をまげて失敗してその上恥の上塗りとは」

 気怠い言葉とは裏腹に それに合わせて悠々とアサシンは祈りのような剣を待ち構える。

 キャスターが高揚に押されてか、その旗の供に踏み出す。

 

ギン!

 再度伐りあうサーヴァント同士の戦闘にアリーナが揺れる。

 それぞれの魔力の奔流が空間を彩る。

 

「キャスター、リーチはこっちに理がある。距離をとって時間を稼いで!」

「うん!」

ガキャン!!

 敵意のぶつかり合いに旗槍と剣が競り合う。

 彼女の基本は喧嘩殺法だ、基本長柄と力で叩き潰し、旗を受け止められれば蹴りが出る。

 その殻を被ったの大英雄……、脳筋の動きをどこか思わされるだろう。

 

ギャン!キン

【スキル:人体研究 B】

 

 だがやはり、この短い戦闘の間素人目にも着実に、押されているのがわかった。

 ステータスはほぼ互角であっても、腕の差として確実に表れてしまう。

 

「……っ!」

 BREAK(崩し)防御の合間を通り斬撃に鮮血が舞う、手甲を貫通し腕が斬られたらしい。

 不安に張り付ける心を押さえつける。

 

―――セラフより強制執行>>戦闘を強制終了します。戦闘を強制終了します―――

 

 そして辛くも1分経ったか、両者の間に不可侵の壁が割り込む。

 セラフより強制的に戦闘が中断される。

 

「どうやら監視者に見つかったようだ、こちらから仕掛けたんだから。素直に引くのが道理だマスター」

「っく、セラフめあと一歩のところを茶々入れよって」

 弁護士と名乗る男は相変わらず怒りを湛えた目で吐き捨てる様に言い捨て。

 アサシンことサンソンが変わらず抑揚のない口調で諫める、その様子に戦闘の高揚など感じさせない。

 

 明らかに趨勢は偏っている。

 

「フハハハまぁいい。実力の差は明らかだ。精々、残り6日永らえた命でおびえて過ごすがいい」

「勝手なこと、言って。ぼくはまだまだやれるんだから!」

「いい、キャスター無理をしないで、得るものはあった決戦までにどうにかすればいい」

「吠えよるわ。たかが蒙昧と小娘が」

 横目に見る、強がって見せるがキャスターの腕は震えているのが見えた。

 痛みを堪えての事か、経験不足からくる身震いか、それでも強がるのは聖杯にかける願いの強さを思わせる。

 ならば負けない。

 キャスターは城井彰人のサーヴァント(明日)だ。いくら不得手であろうと経験が不足していようと。

 

(それはそれとしてあの爺はむかつく)

 何より己のサーヴァントが見下されるのは癪である。

 ログアウトか、アサシンとそのマスターのアリーナから消えゆくその最中に。

 

 うす笑って。

 

「―――そうそう久々の人間の裂ける音はどうだった処刑人、かのルイ=16世、"マリー=アントワネット"の時ように」」

「……な、貴様?!」

 唐突に言葉の爆弾を投げつけた、アサシンはその精悍な顔を初めて歪ませた。

 "真名"を抜かれた事の示唆、その反則の種を訝しめばいい。忌避したい過去に刃が鈍ってもいい。

 

 停滞に腐った性根にそう思いながら。

 風が吹く。

 アリーナに戻った静寂に、静まらぬ早鐘の心臓の音の余韻に戦場を感じるのだった。

 

 

 

 

 

●●●

 

 

 

 

 

【月海原学園:購買部】

 

 初めてのサーヴァント同士の本格的な衝突の後。

 アリーナより帰還し、学園内に設けられた購買部へと足を延ばす。

 戦闘によりアリーナより回収した通貨を、道具や礼装へと取引できる聖杯戦争における兵站補給の場である。

 

⇒「エーテルの欠片」

 回復アイテムを購入し手に取り砕いて使用する。

 実在する第五元素、高濃度の魔力と呼べるそれの息吹をキャスター取りまいていく。

 

「ごめんなさいマスター。また後れを取った」

「そんなことはどうでもいい。さっきアサシンに斬られた腕を見せて握って」

「え?あ」

 キャスターは萎れた花の様に落ち込んだ。それを尻目に腕をとってその調子をよく確認する。

 サーヴァントを構成するのはセラフとマスターによる二つ魔力である。

 無能のマスターによっても外部供給さえあれば傷は癒える、表面的には治っているようだ。

 

「あっ、あっ」

 しかし。

ずきっ

 武具を整える様にその手に触れ確かめる。どこか、その掌の握り方がぎこちなく見えた。

 

「まだ動きが不自然だ。どこか痛むかキャスター?」

「っそ、そんなことない。もうぜんぜんへっちゃらだよ」

 痛みからかだろうか少し、キャスターは頬に赤みの染めながら。

 それを誤魔化すように、己の獲物である旗を握りなおしてブンブン振るう。

 

「強がらなくていい。きっと腱でも傷つけられたあのアサシンの技能(スキル)だ」

【人体研究 B】

 処刑技術、そして医術の「裏側」に位置する概念。

 人体のどこを傷つければ死なずに済むのか、後遺症が残らないか、などの研究を怠らなかった。

 翻って言えば、戦う際にはどこを傷つければいいのかが理解できるという技能である。

 

 仮に本職が医者でない彼がこれを高ランクに所持するは、

 シャルル=アンリ=サンソンが処刑人という業に、ただひたすらに真摯であったことの証明だろう。

 仮に彼以上の処刑人を語るにはこの世の原罪を背負いし神の子を刑した。

 結果論的な神殺し。ゴルゴダの丘の"聖・ロンギヌス"を除いて他にいまい。

 

「あれの真名はシャルル=アンリ=サンソン、本職の戦士じゃない誰かを救った英雄じゃない。ただ処刑人の中の処刑人、断罪という己の業に悩み、より良きを苦しみを除くために苦心した職業人(プロフェッショナル)だ」

 先ほど対峙したかのサーヴァントを語る。

 城井彰人にとっては元の世界において、文字に触れ尊敬していた偉人の一人であるが今はただの敵だった。

 

―――キーワードを認識、マトリクス(2)入手。

 応じて、先の戦闘も併せ、セラフが提供する情報端末であるアテリアルにて多くが解放される。 

 

【CLASS】アサシン

【マスター】コ―ネリー・アルフォンス

【真名】シャルル=アンリ=サンソン

【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具■

【クラス別スキル】

 気配遮断:D サーヴァントとしての気配を断つ技能。

【固有スキル】

 処刑人:A++ 悪を以て悪を絶つ、究極の裁断行為。属性「悪」に対するダメージが向上する。

        また、そのサーヴァントの行為が悪と見なされた場合でも対象となる。

 ■■:■

 人体研究:B 処刑技術、そして医術の「裏側」に位置する概念。

       人体のどこを傷つければ死なずに済むのか、後遺症が残らないか、

       などの研究を怠らなかった。翻って言えば、

       戦う際にはどこを傷つければいいのか理解できるということ。

 

 赤髪メッシュ混りの金乙女、キャスターはそれを聞いて目を丸くする。

「すごい、本当にそんなにわかるんだ」 

 己のマスターを信じてなかったわけではない。

 それでも一見で、こうすらすらと語られたら呆気にとられる他ないだろう。

 サーヴァントの一人としてまじまじと実感する、確かにこれは反則(チート)であると。

 

「ならきっと、マスターは本当は、ぼくが弱いこともわかってるんだよね」

「………」

 ほうと弱気めいた、ため息めいた声が漏れてしまう。

 答えは返ってこない。

 声には出さないが、及ばないことに、彼女も自身が劣ることをさんざんと実感している。

 やっとのことで掴んだ機会に、思い描いていたような、華麗な活躍はない。

 

【無■の生■】

 一つの概念のもとに集合霊となり果ててる前の、少女の骨子はただの■娘でしかないのだから。

 ただ一人の聖女の慈悲によってここにいる。

 

「だからぼくに教えてマスター、勝つためにサーヴァント(凄い人たち)との戦い方を」

「そう簡単に思いつけば世話ないんだが、歯がゆいけど実際に戦うのはキャスターだ。でもそれでこそ」

 それでも勝つ。それが彼らの共通認識である。

 キャスターは混ざり混ざってなお染みついた、聖杯にかける宿願の強さにかけて。

 城井彰人はただただ、明日を求めて、先を思うのだった。

 

 

 

 

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