水使いと野生児のカロス旅   作:砂廣ジュン

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スカイバトル大会:決勝

 

 

 ポケモントレーナーに要求される要素は統率、育成、技能、指示、運量の5つである。最後の一項目は現行技術で観測不能であるため実質4つ。

 

 統率とはどれだけ強いポケモンを従え、指示を聞かせることができるかという力である。バッジなどの実績で上乗せできるものの、基本的にはルゥが有しているようなカリスマ性が重要となる。

 

 育成はどれだけ強くポケモンを育てられるか。レベルはもちろん、技の習得や特性の訓練もこの能力が関わってくる。レイカ程にこの能力を極めると、瞬間的に技を習得させたり、習得できない技を覚えさせたり、特殊能力を二つ目の特性として開花させることすら可能である。

 

 技能とはトレーナー側の能力である。例えばスカイトレーナーのフウカは空を飛んで風を読みながら指示することで、"ぼうふう"などの風攻撃のダメージを抑え、"おいかぜ"の効果を上昇させることができる。ポケモンを癒やしたり、サイコパワーを操ったりなど人間が使う異能もこのカテゴリに入る。

 

 指示はポケモンバトルの最も中核の要素。ポケモンと違う視点から大局を見据えて指示を出すことで、弱いポケモンでも強いポケモンに勝つための能力である。ハトウのように、指示能力が高いトレーナーは他の能力が低いことが多い。

 

 

 

 他ジャンルの能力に尖った相手の意見を聞く機会は稀である。そして待機エリアには三項目のそれぞれに突き抜けたトレーナーが集っている。

 

 結果、決勝試合までの空いた時間、待機エリアでは意見交換会が開かれていた。

 

「スカイバトルは3体ルールなので、パーティ全体の戦略を考えてからあと一枠のポケモンを育成したいのです。アドバイスをください」

 

「焼鳥戦法のオオスバメに、電気弱点を突くエモンガ。バランスだけ見るんだったら受けかサポートが欲しいところよね」

 

「僕ならばドータクンなどの氷と岩を半減できる受けが欲しいところです」

 

「受け出し前提のおデブちゃん(ファットな)育成をすればフルアタにもできるわよ。ダメージ軽減くらいだったらタマムシ大学の論文集にあるメソッドで模倣できるしね」

 

「育成で付与する能力も考えねばなりませんね。考えることが多すぎて頭が飛んでしまいそうです……」

 

「火傷で"こんじょう"と"からげんき"の威力を底上げというエース戦略は古典的ですが、それだけ強い下地でもあります。オオスバメを中核に組むのが安定しているかと」

 

「オオスバメの育成ねぇ……飛行技術で素早さや回避は担保できるんだから、"ごりむちゅう"互換に育成して"からげんき"振り回していればいいんじゃない?」

 

「いえ、それでは柔軟性がありません。スカイバトルが少数のポケモンで戦うというスタイルである以上、一体のポケモンでできる範囲は広い方が良いかと」

 

「撃破時とかの条件交替能力を仕込めばいいじゃない」

 

 実はハトウも育成能力が低く、指示能力で強引にその穴を埋めている。

 育成での能力付加論の話題はハトウにとっても学ぶところが多い。

 

 フウカのパーティ編成の話題がひと回りし、とりあえず育成論文を読み漁るとの結論がでた。

 

「僕は本当に最低限の育成能力(レベル100にするので限界)なので、レイカさんのような育成系の人の話は本当に参考になります」

 

「技も特性もまともに活かせない状態まで追い込まれてから逆転した人の話も聞きたいわね。なんであの戦法を思いついたのか聞いてもいい?」

 

「まず前提として、レイカさんとレディアンとの間に十分な信頼関係がないことがあります。咄嗟の指示に従ってもらえるような関係性がないなら、それを突くのが定石です」

 

「即興のバディの弱点ね。捕獲したばかりだと明かしたのは悪手だったかしら」

 

「とはいえ、レディアンのレベルは30程度。50フラットのルール下で勝つにしてもレベル差を覆す必要がある。僕に警戒させることで正面突破の筋を潰したのは正着だったかと」

 

「じゃあどうすれば勝てたのかしらね」

 

「僕側としては……」

 

「ハトウさーん。準備お願いしまーす」

 

 スタッフにハトウが呼ばれる。それは決勝開始の合図。

 

「では行ってきますね」

「頑張ってください!」

「私に勝ったんだから勝ってね」

「無論、そのつもりです」

 

 準決勝後の休憩時間の終わりを告げるアナウンスが流れるとともに、ハトウはフィールドに立つ。

 ハトウは対面のフィールドに立つ男を映像越しに知っていた。

 

「カロスリーグ準決勝進出のルイ、ですね?」

「そうだぜ。ホロンでの修行から帰ってカロスリーグにリベンジさ」

「なるほど。なればジムバッジを狙うライバルということですね」

「ほぉーう、お前さんもバグバッジ目当てか。じゃあジムリーダーへの挑戦権を賭けてバトルと行こうかい」

 

『決勝戦、ハトウ対ルイ。はじめ!』

「俺の相棒、ペリの字ィ!」

「万太、参りますよ」

 

 ハトウのボールからはパーティで唯一空を飛べるマンタが、そしてルイのボールからは体に静電気を纏わせながら(・・・・・・・・・・・・)ペリッパーが飛び立つ。

 

「デルタ種、ですか。これは厄介ですね」

「応よ。ホロンでの修行の成果だぜぇ」

 

 デルタ種。ホロンの地を包む磁場、ホロンヴェールの影響で本来とは異なるタイプを発現したポケモンのことである。

 種族ごとに変化するタイプの傾向は決まっており、例えばペリッパーのデルタ種は電気タイプである。

 そしてデルタ種のポケモンは変化したタイプに適合したタイプの技を覚えることもある。カロスリーグ準優勝の実力者ならば当然、電気技を覚えさせているだろう。

 

「上から"ほっぺすりすり"だぁ!」

「"たつまき"で妨害してください!」

 

 初手は麻痺状態にして動きを封じ、あわよくば墜落を狙う。見た目に反して堅実な一手である。

 電気技を警戒したハトウの応手は"たつまき"。通常のバトルではまともな威力を持たないドラゴン技だが、ことスカイバトルにおいては話が変わってくる。

 

「スカイトレーナーじゃなきゃ対応しきれないでしょう!」

「落ち着いて立て直せぃ!」

 

 地上で受ける強風よりも上空で受ける強風の方がポケモンへの打撃は大きい。

 空に舞い上がったペリッパーが"たつまき"の気流でバランスを崩して、万太に接近することにすら失敗する。

 

「よぉし、立て直したな。近づけねぇんなら特殊技だ、"ほうでん"!」

 

 デルタ種へとペリッパーを進化させたならば平均以上の育成能力を持っていると考えても良い。立ち上る野生の雰囲気からして統率にも寄っているだろう。

 

 才能に溢れ、経験も積んでいる。知識も必要なだけ備えていることだろう。自分よりも強いポケモンを従え、より強く育て上げる。そんな相手に勝つにはどうすればいいか。

 

 考えた展開へと誘導し、ハメて倒す。それしかない。

 

「気合で耐えて"ミラーコート"!」

「まぁぁぁぁ…………まぁッ!」

 

 電撃の四倍弱点のダメージを耐えきれない分、きあいのタスキが請け負う。耐え切った分の電流は万太の身体を覆う鏡面に反射して、受けたダメージの倍の火力を持つ光線がペリッパーに命中する。

 

「ペリの字ィ!」

 

 ルイが呼びかけても返事はない。ひんし状態であることは一目瞭然。意識を失い、力なく地面へと落ちていくペリッパーを墜落する前にルイがボールに回収する。

 

『そこまで! ハトウ選手の勝利!』

 

 歓声がハトウと万太を包む。これが優勝者の栄光。そして、この後こそがハトウ達にとっての本命である。

 

『決勝戦を勝ち抜いたハトウ選手は、ジムリーダーのビオラさんとのエキシビションマッチとなります』

 

 それらに続く再開時間のアナウンスを聞き流しながら、二人は地に横たわる。

 

 三連戦での疲れはどちらも溜まっている。それでも次は勝たなければならない。

 次回、ジムバトル。

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