水使いと野生児のカロス旅   作:砂廣ジュン

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ハクダンの祭り

 

 

 

 地方を跨いで興行を行う移動式遊園地、ポケモンパーク。本日、ハクダン祭りにて営業中。

 

「なあハトウ」

「どうかしました?」

「手、じゃま」

「手を繋いでいないとはぐれるでしょうに。ミアレでのことを忘れましたか」

「時効だろ」

「昨日の話が時効になるわけないでしょう!」

 

 ハクダンシティで行われているハクダン祭り。その喧騒の中をハトウとルゥ、それにプラターヌ研究所で仲間に加わったフォッコのマフォとハリマロンが歩いている。

 

「こっからどうするん?」

「まだこちらの用事までは時間がありますし、適当に出し物を回りましょうか」

「よっしゃ」

 

 そう言って走り出そうとするルゥが、繋いでいる手によって引き止められる。

 

「こうなるから手を離さないんですよ。ハーネスをつけないだけマシだと思ってください」

「くそ」

 

 出店の多くは食べ物やお菓子類であるものの、ルゥに好き勝手食べさせては財布が持たないと先にカレー大盛りで食事を済ませたハトウの英断により、ルゥの視線は食べ物以外に向いている。

 普段は古式ゆかしい街並みも祭りの中にあっては出店の背景。祭り特有の出店の数々を物色しながら歩いていると、ある出し物でルゥの目が止まる。

 

「ハトウ、アレなんだ?」

「くじ引きですね」

「お嬢ちゃん引いてくかい?」

「うん!」

 

 くじ引きの屋台にはよりどりみどりのカラフルな景品の数々が並んでいた。

 ハズレ枠のゴムボールや、大当たりの光る鳴るポケリウムレプリカ、普通の当たり枠にはヒトツキ型の風船剣から、テッポウオ型の水鉄砲、オノノクスの牙を模した風船の斧。特に最後の景品がルゥにはクリティカルだったようである。

 

「ハトウも引け」

「僕ですか? 運は良くない方なのですが、まあ良いでしょう」

「せーので引くぞ」

 

 せーの、の掛け声で引いた結果は、ルゥがオノノクスの風船斧、ハトウがゴムボールであった。満面の笑みで斧を振り回すルゥのもう片手から手を離さないようにしつつ、ハトウは手持ちと遊ぶ用にしようとゴムボールをリュックにしまう。

 

「やはり、ルゥは天運を持っていますね」

「てんうん?」

「ええ。運がとても良いです」

 

 天運。天に、運命に愛されていると言えるほどの運量。

 色違いのポケモンや天賦の才能を持ったポケモンを引き寄せたり、咄嗟の場面で良い指示を出せたり、そういった場面で関与してくる不可視のレール。

 運量はトレーナーにとってはある意味で最も重要なものであり、生まれた時点で決まっているものでもある。

 

 天運を持つとされる人間は何人かいるものの、その生涯は波瀾万丈。良いことも悪いものも全てを引き寄せる。サイコロを振れば1か6が出るようなもの。

 暇つぶしの与太話として、ルゥもこれを持っているのではないかとジムトレーナーと話していた。

 

 ルゥの場合、生い立ちと、黒いオノノクスの統率の二点が特出している。当時はエスパーに診てもらおうと笑ったが、存外笑い事ではないのかもしれない。

 運命はオカルトの領域であり、ヒャッコクジムなどのエスパータイプの専門家によって未来視や運命視などの研究は進んでいるものの、未だ解明には至っていない。

 素の運量がゴムボール(・・・・・)のハトウとしては、運命の研究資料はメガシンカや変異種のものと同様と同様に手にしておきたいデータである。

 

(ゴジカさんとコネクションは作っておきたいですね。方策を考えなければなりません)

「ハトウ、あれ何?」

「あれは……なんでしょう」

 

 次にルゥの意識が出店の一つ、小物やアクセサリーを売っている店に向く。

 その店頭に飾ってある木製の小物は、八等分にしたピザを皿に背を向けて配置したような、奇妙な構造をしていた

 

「お嬢ちゃん買ってくかい?」

「これ、何?」

「おお、お目が高い。これはウィッシュメーカーって代物でさぁ」

「うぃっしゅめーかー?」

「ホウエンの方からの輸入物で、この三角形の部分を毎日一つずつ折り曲げてって、七日目まで連続で折ると願いが叶うそうでさぁ」

「へぇ。ハトウ、買えば?」

「僕がですか? ふむ……」

 

 普段であれば一蹴したものの、お祭りの喧騒に加えて先ほどまでの思考に引き摺られる。願いが叶うものをルゥが見つけた。その時点で買いかもしれない。

 

「買います」

「まいどあり!」

 

 ハトウ、祭りの熱に侵されウィッシュメーカー購入。隣のマフォが軽く呆れたような表情をしているように見えるのは気のせいか否か。

 

「一日目。ログインボーナスのようなものですね」

「何を願うん?」

「そうですね……良い出会いか、育成力の伸びか。悩むところです」

 

 そのまま歩いているうちにお腹が空いてきたルゥによってハトウの財布が致命的な打撃を受けながらも、二人は目的地のテントまで辿り着く。

 

「参加登録お願いします」

「名前と使用ポケモンを書いてください……ありがとうございます、参加証は首からかけておいてください」

「分かりました」

 

 ハトウがハクダン祭りにきた理由は、祭りの目玉でもあるスカイバトルの大会である。

 空飛ぶポケモンだけが参加できる大会。優勝者に贈られるのは———

 

「ジムリーダービオラとのエキシビションマッチ。公式戦扱いなのでバッジがもらえるチャンスは逃せません」

「予約外れて叫んでたもんな。おもろかった」

「9割当選で1割サイドになれば発狂もしますよ」

 

 ジム戦の代替。トーナメントを勝ち進んでいけば予約に失敗したジムリーダーとの公式戦が叶う。

 おそらくは参加者の半分程度がハトウと同じような連中。十分に警戒する必要があるだろう。

 

『ハクダンスカイバトル大会が、始まります。参加者の方は……』

「それでは行ってきます。二匹とも、ルゥが客席から離れないように見張っていてください」

「こん!」

「リマ!」

「いってら」

「ではバグバッジも、颯爽と獲得して粛々と次へ進みましょうか」

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