そりゃもう容赦なくいきますわー!
オカルト研究部の部室にて駒王町の管理をしているというリアス・グレモリー先輩と、彼女の眷属である方々に情報開示をし、その後に兵藤さんを家まで送り届けてから私は匙さんと木場さんと一緒に堕天使達の拠点となっているであろう町外れの廃教会へと向かう事に。
「まさか、また川上と一緒に行動することになるなんてな。会長から聞かされた時は驚いたぜ」
「いいじゃありませんの。少なくとも、私は匙さんなら信頼も信用もしているので問題無いと思いますわよ?」
「お…おう…そこまで言われたら、俺も頑張らねぇわけにはいかねぇよな…」
あらら。また顔を赤くしちゃって。
もしかして照れてるんですの?
匙さんにも可愛らしい一面があるんですのね。
「君達は前々から知り合いだったのかい?」
「そうですわね。同じクラスと言う訳じゃありませんけど、私は一年生の頃からよく生徒会の手伝いをしておりましたので」
「会長も川上は特例として生徒会室への自由な入室を許可してるぐらいだしな。もしも定員が一杯じゃなかったら、絶対に役員にしてたって言ってるぐらいだし」
生徒会役員と言うのは、多すぎても少なすぎてもいけない。
人数もまた絶妙なバランスが求められるものなのですわ。
「ところで、もうすぐ私のクラスでは数学の小テストが行われる予定なんですけれど、お二人のクラスはどうなんですの?」
「え? いきなりだな…ウチも近々するとは聞かされてる。みんな慌てて勉強してたっけ」
「僕のクラスも同じだよ。ご丁寧にちゃんと範囲まで指定してきて、今も勉強している最中さ」
感心感心。
どんな事情があろうとも、学生の本分は勉学。
それを疎かにしていい理由なんて何処にも無いのですわ。
将来、後悔するのは他の誰でもない自分自身なのですから。
「しっかし…いきなりだな。今から堕天使の拠点に踏む込もうとするときにする会話じゃないぞ…」
「だからこそなのですわ。どんな時も平常心を保つ事。それこそが自分のポテンシャルを最大限に発揮させるコツなのですから。入試の時やテストの時なども、ガチガチに緊張していては、どれだけ勉強していても意味がありませんでしょう?」
「なんつー分かり易く絶大な説得力のある言葉だ…」
「テストに例えられたら何も言えなくなるね…」
高校生である私達には、これが一番いい例えだと思ったので。
物凄く実感が湧いたでしょう?
「そういや俺、あんまし町外れって行ったこと無いかも。よく会長達とはぐれ悪魔退治には出かけるけど、それでも町の隅から隅にまで行く訳じゃないしな…」
「僕も、ここまで町の端の方に行く機会は余り無いかな。こっちには特にこれといった施設もないし。辛うじてあった教会も、今じゃ知っての通り廃墟と化してるからね」
「私も同じですわ。一応、町の地理を把握するという意味で来た事はありますけど、それでも過去に一回だけ。それ以降は一度も足を踏み入れてませんわ」
長い間町に住んでいるからと言っても、何もかもを全て把握しているという訳じゃない。
寧ろ、住んでいるからこそ『いつでも行ける』という気持ちがあるせいでいかなくなるもの。
今後はもっと、今まで以上に駒王町を探検しておく必要があるかもしれませんわね。
「段々と民家が少なくなってきましたわね」
「ここから一気に注意していかないとな」
「人気が少ないって事は、同時に奴らが活動しやすくなるって事だしね」
レイナーレ達だって、自分達から堂々と姿を晒すような真似はしない筈。
だからこそ、天野さんの名と姿を借りて行動をしていたのだから。
「…どうやら、早くもお出ましのようですわよ」
「みたいだね」
「え? ど…どこだ?」
キョロキョロとしている匙さんの肩を軽くポンポンと叩いてから、傍にある電信柱の上を指差す。
そこには、コートを着ている少し老け顔の男の堕天使が立っていた。
「貴様等…一体どこへ行こうとしている?」
「どこでもよろしいじゃありませんの。そんなの、私達の勝手ですわ」
「勝手なものか。お前の隣にいる小僧どもは悪魔だろう。お前は人間のようだが…そんな奴等と一緒にいる時点でお前達を止める理由には成り得る」
意外と頭が回りますのね。
もしかして、レイナーレよりも頭がよろしいんじゃありませんの?
「…ところで一つお聞きしてもよろしいかしら?」
「なんだ? 命乞いならば聞いてやろう」
ムカ。ちょっとカチンときましたわ。
「どうしてこんな場所にいらっしゃるのかしら? 大人しくしているように言われた筈じゃありませんの? ねぇ…ドーナシークさん?」
「貴様…どうして俺の名を知っている!? しかも、レイナーレ様から言われた命令も…まさか!」
あら。これまた察しが宜しい事。
ほんと…なんであんな女の下に付いてるんですの?
「昨夜、戻って来てからレイナーレ様の様子がおかしいと思っていたが…貴様の仕業だったのかっ!」
「御名答。私の友人に手を出そうとしていたので、返り討ちにしてあげたのですわ」
「矮小な人間風情が…よくもレイナーレ様を! 堕天使を舐めたらどうなるか…この場で貴様等を殺して思い知らせてくれる!!」
うーわー。思い切り睨まれて怖いですわー。
なんて、この程度の殺気なんて私にとっては微風にすらなりませんわ。
しかし…住宅地から大分離れたとはいえ、まだ周辺には家屋が点々としている。
あまり派手な技を使う訳にはいかない。
となると…星矢さまのお師匠様である『あの御方』の必殺技がいいですわね!
「だってよ。どうする?」
「そんなの最初から決まってますわ。それよりも…いいんですの?」
「何がだ!」
「いつまでも、そんな高い場所にいたら……」
両足に力と小宇宙を込め、ドーナシークに目掛けて全力でジャンプ!
一瞬で彼の頭上を取った。
「な…なんだとっ!?」
「『白銀の翼を持つ聖なる荒鷲』によって切り裂かれてしまいますわよ?」
右足に全小宇宙を集中させ、相手の急所目掛けての全力キック!!
耐えられるものならば耐えてごらんなさい!!
これが、白銀の鷲の大いなる一撃!!
「イーグル・トゥ・フラッシュ!!!」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
私の攻撃を受け、ドーナシークは地面に向けて真っ逆さまに落下、地面に激突してクレーターを作った。
なんか右手に光の槍を作りかけてたけど、私の攻撃の方が圧倒的に速かったですわね。
「が…ああぁ…!」
全身から血を出しピクピクと痙攣している。
全力なんて言いましたけど、実は少しだけ手加減をしておりましたの。
だから、まだ息はある筈ですわ。
「か…下級の堕天使とはいえ…一撃かよ…」
「これが…川上さんの実力の片鱗なのか…」
片鱗…確かにそうですわね。
『黄金の十二人』に比べれば、こんなのは小手先の技に過ぎませんし。
「…で、こいつってどうするんだ?」
「こうします…わ!」
指をパチンと鳴らすと、気絶していたドーナシークの身体が一瞬で掻き消える。
「何をしたんだい…?」
「彼の身体を廃教会付近にテレポーテーションさせたんですわ。今頃は適当な場所に落ちていると思いますわ」
「徹底的だな……」
「意識ある状態で瞬間移動させても、すぐに戻って来るでしょうし。それに、どっちみち町に入り込んだ堕天使達は一掃すると決めてますし」
もしも何か事情があるのならば私だってここまでしない。
けど奴らは既に私の目の前で堂々と犯行に及んでいる。
レイナーレの中枢神経から読み取った事が本当ならば、彼女達には微塵も情状酌量の余地が無い。
というか、どこまでも他種族を見下している時点で既にアウトだ。
「さて…先を急ぎましょうか。さっきので私達の存在に気が付いたと思いますし」
「お…おう」
「そうだね」
さてはて…今度は誰が来るのやら。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
廃教会付近にある林。
私達三人はその中へと入っていく。
「どうした?」
「いえ…ちょっと」
林の中に入った瞬間から小さいけど確かに小宇宙を感じるようになった。
数は…二人か。
レイナーレに、さっきのドーナシークと合わせるとこれで合計四人。
早くも王手ですわね。
「はっ! 川上さん!」
何かに気が付いた木場さんが私の前に出て、どこから出したか分からない剣で飛んできた光の槍を切り裂いた。
「おぉ~…お見事ですわ」
「『
成る程…剣に纏わる能力なんですのね。
剣道部ではないにも拘らず、彼が頻繁に剣道場に足を運んでいるという話を聞いたことがありますけど…これで納得しましたわ。
「ちっ! 防がれたか!」
「まさか、神器持ちが一緒にいるだなんて…聞いてないッスよ!」
なにやら賑やかな声と共に現れたのは二人の女性の堕天使。
一方はボディコンっぽいのを着た大人な女性で、もう片方はゴスロリを着た子供っぽい少女。
どちらも背中からは真っ黒な翼を生やしている。
レイナーレの記憶によると、確か……。
「そっちのゴスロリを着ているのが『ミッテルト』さんで、もう一人が『カラワーナ』さん…ですわよね?」
「な…なんで私達の名前を知ってるんスかっ!?」
「あの小娘…何者だ…!?」
ありゃりゃ。この人達は私が何をしたのか分らないだけでなく、木場さんと匙さんが悪魔である事にも気が付いていない様子。
雰囲気的にもレイナーレと同じような感じがするし…『類は友を呼ぶ』なのかもしれませんわね。
「私達が何者かなんてどうでもよろしいでしょう?」
「なんだと?」
「あなた達は私達が住む町に不法侵入した挙句、一般人に被害まで出そうとした。これは到底看過できることじゃありませんわ」
「だったら、どうだって言うんスか? 別に人間の一人や二人、殺したところでどうでもいいじゃないッスかぁ? どーせ、寿命も肉体も堕天使には遠く及ばない弱小種族なんスから! アハハハハハハッ!」
プッチーン。
今の発言は流石に聞き逃せんわね。
いいでしょう…そんなに人間を見下すのであれば、それにふさわしい一撃を見舞ってやりますわ。
「木場さん…私なら大丈夫ですので、後ろに下がっていてくれませんか?」
「分かったよ」
少しも渋ることなく大人しく下がってくれた。
さっき技を出したことが良い方向に働いてくれたみたい。
「あれぇ~? いいんスかぁ? 王子様を後ろにやっちゃって」
「別に構いませんわ。だってもう…あなた達の攻撃は私に当たる事は無いんですから」
「言ったな…人間の小娘風情が!!」
「その生意気なお口…グッチャグチャにしてやるッスよ!!」
二人の堕天使から放たれた光の槍が私に迫る!
けどそれは、私の眼前にまるで『見えない何か』に阻まれるようにして弾かれ消滅した。
「はぁっ!?」
「ふ…防がれただとっ!?」
「私の産み出した『気流の壁』は、あらゆる攻撃を弾き返す」
実戦で初めて使いましたけど、思ってるよりも便利ですわね…これ。
あの流星拳を完全に防いでみたのも納得の防御力ですわ。
「寂れたとはいえ…この先には教会があり、私は『女神アテナ』に忠誠を誓う者。ならば…やることは一つしかありませんわね」
「何を言っている…!?」
「安心なさい。身の程すらも弁えられない哀れな貴女達の魂…この私が救って差し上げますわ」
まずは全身から小宇宙を燃焼させ、一気に最大限にまで高める。
落ちてきた枯葉が私の肩に落ち、一瞬で燃え尽きた。
「今から10秒数えます。その間に…あなた方の信じる『神』に祈りなさい」
「よりにもよって『神』に祈れって…私達を馬鹿にしてるんスかっ!!」
「生意気なぁっ!!」
自棄になって何度も光の槍を投げてくるけど、さっきと同じように全てが『気流の壁』によって阻まれる。
「
「このっ! このっ! このぉぉっ!! なんで死なないんスかぁっ!!」
「こいつは本当に人間なのかッ!?」
何度やっても無駄なのに…見ていて可哀想になってきた。
「
指先に全ての小宇宙を集中させ、極限まで凝縮する。
それを一気に眼前の敵へと向かって解き放つ!!
「
それは、大気を震わせ、空間すらも消し飛ばす白銀の奥義!!
その一撃は全てを消し飛ばす!!
「マーブル・トリパー!!!!」
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」
舞い散る木の葉が渦を巻き、周囲にあった木々が全て木端微塵となって消滅していく!!
その威力に地面は抉れ、今までずっと隠れていた廃教会までの道をハッキリと見せてくれた。
技を受けた二人も回転しながら廃教会の方へと吹き飛んで行き、そのまま空高くまで行った後に屋根から中へと落下していった。
「あら。色々と手間が省けましたわね」
「な…なんじゃ…今の攻撃は…!」
「なんて物凄い技なんだ…! 堕天使を二人纏めて一撃で倒すだなんて…!」
ふふ…これこそが『白銀の鱗を持つ美しき蜥蜴』の一撃ですわ。
さて…それじゃあ、一気に目的地まで参りましょうか。
次回はレイナーレをぶっ飛ばしますわー!
放つ技は勿論『アレ』!!
ペガサスの誇る王道にして象徴とも言うべき必殺技ですわー!!!