今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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実は、主人公の守護星座が『蛇遣い座』になるフラグは地味にあったのですわー!

例えば、養父の表向きの職業が『医者』だったり。

主人公が一度も『13人の黄金聖闘士』と言わなかったり。








聖衣装着! ですわ!

 目的地である市役所付近へと向かう最中、私はこちらから支取先輩へと電話を掛けていた。

 

「もしもし? 今、大丈夫ですか?」

『川上さん? どうしました?』

「今、先輩に言われた場所へと向かっている最中なのですが、少し懸念している事がありまして」

『懸念している事…ですか?』

「はい。もしかしたら、例の少女が何らかの事件に巻き込まれている可能性があります」

『なんですってっ!? それは本当なのですかッ!?』

「確実な事は言えません。ですが、その可能性が非常に高いと言うことです」

『…どこから、そのような情報を?』

「…そうですね。もう今更、隠すような事でもありませんし…素直に白状しますか」

 

 走りながら、私が受話器越しの先輩にアテナの神託があった事を伝えた。

 それにより急がなければいけないこと、そうしなくては取り返しのつかない事態になるかもしれないことを。

 

『神託…そのような物まであるのですか…』

「そのお告げを聞く事が出来るのは私だけですが。とにかく、なんらかの危機が迫っている事は確実なんです」

『…私は何をすればいいのですか?』

「フッ…流石は支取先輩。お話が早くて助かりますわ」

 

 これがもしグレモリー先輩なら、長々とこちらに詳しい事情とかを聞いてきたに違いない。

 そうなってたら本気で怒っていたかもしれない。

 

「市役所周辺の半径10キロ圏内に人避けの認識阻害の結界を張ることは可能ですか?」

『私一人では厳しいですが、眷属たちの力を借りれば何とか…』

「上等です。大丈夫。余り長引かせるつもりはありません。出来るだけ早く済ませるつもりではありますが、それでも最大で2時間ぐらいは頑張る覚悟をしておいてくれると助かります」

『2時間…ですか』

「お願いします。私も可能な限り素早くカタを着けるつもりではいますので」

『…承知しました。川上さんが体を張ると決めた以上、私達も覚悟を決めましょう。急いで眷属たちを招集してそちらへと向かいますので、川上さんは真っ直ぐ彼女の所へと向かって下さい』

「助かります。このお礼はいずれ必ず」

 

 通話を切り、スマホをポケットに戻した。

 

「これで、万が一の事態に陥っても思い切り暴れられます」

「流石はシトリーの悪魔。聞き分けが良いのである」

「あるー」

「全くですね。では…速度を上げますよ。しっかり捕まっていてください!」

 

 最悪の事態だけは絶対に避けなくては…。

 アテナ様と私をご指導してくださった皆様方に申し訳が立ちませんわ!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 駒王駅 西口地下駐車場

 

 大量の車両が駐車してあるその空間に『少女』は横たわっていた。

 息はしているが身動きはしない。

 どうやら気を失っているようだ。

 

「ん……?」

 

 地面の冷たさを感じて目を覚ます。

 瞼を擦りつつ、近くに落ちていた帽子を被りながら少女はゆっくりと起き上った。

 

『あれ…? ここは一体…? どうして私はこんな所に…?』

 

 少女自身も今の自分に何が起こっているのか全く理解出来ていない。

 余りに事態が突然すぎたのだ。無理もない事だった。

 

『もしかして…地下…駐車場…?』

 

 周囲にある車を見て、自分が今いる場所が駐車場であることを理解するが、だからと言って自分がここにいる理由が相変わらず分からない。

 

『だけど…一体どこの駐車場なんでしょうか…? 確か私は…』

 

 自分の記憶を手繰り寄せるように、今日の出来事を思い出していく。

 

『バチカンから長い長い空の旅を経て、ようやく日本の地に降り立って…今の自分の居場所すらもよく分からないままフラフラと街中を彷徨い続けて…それから…』

 

 ここでついさっきの事を思い出し、少女の顔が真っ青になる。

 

『そうだ…思い出した…! 大きな建物の上の階で大爆発が起きて…思わず私も皆さんと同じように上の方を見上げて…そして…何かを…見たような気が…』

 

 段々と記憶が鮮明になっていく。

 思い出したくない。けど、もう止まらない。

 忘れていた筈の恐怖が徐々に蘇っていく。

 

 その時だった。

 

「アーシア・アルジェント」

『ひぃっ!?』

 

 『声』が聞こえた。

 まるで地の底から響くような重厚な声が。

 全身を震わせながら声のした方を振り向くと、そこにいたのは……。

 

我を見たな(・・・・・)っ!? 三千年前の時より出ずる…この我の姿をっ!!」

『キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!??』

 

 異形。

 まさにソレはそう表現するに相応しい存在だった。

 

 全体が真紅に染まり、全身に渡ってベルトのような物が覆われている。

 顔面の僅かな隙間から辛うじて白い眼球がこちらを睨んでいた。

 

(そ…そうだ! 完全に思い出した! あの時…私はコレを見たんだ(・・・・・・・)ッ!!!)

 

 常人を遥かに超える巨体。

 その大きさは軽く3メートルは超える『木乃伊(ミイラ)』。

 なのに、その胴体や胸の前で交差する腕は異常なまでに細い。

 

「パスポートに書かれてあった名…実に良い名だ。まるで物語に出てくる聖女のように美しく清らかな娘…」

 

 相手は間違いなく『日本語』で話している筈なのに、なんでかアーシアの耳には木乃伊が何を言っているのかハッキリと聞き取れた。

 だが、混乱と恐怖の最中にいる彼女の精神状態では、その違和感に気付く事は出来なかった。

 

「今より三千年前…我は炎を自由に操る能力を得た。だが…その能力を疎んだ連中によって殺害され…この身も永遠に拘束され醜き屍と化した。だが…」

 

 木乃伊の雰囲気が変わる。

 アーシアは知らないが、これは間違いなく『殺気』だった。

 コールタールのように濃密な殺気。

 嘗て無い恐怖を目の当たりにし、アーシアは涙を流しながら体を震わせ尻餅をつく。

 

「どれだけ肉体が枯れようとも…魂は残った」

『たま…しい…?』

「そうだ。この魂の奥底にある『人を燃やす』という快楽…決して忘れられぬ。特に…」

 

 周囲の温度が急激に上昇する。

 余りの熱気に地下であるにも拘らず蜃気楼が発生する程に。

 

「女子供を燃やし尽くすのは最高の快楽ッ!! アーシアよ…聖女のようなお前には…聖女らしく我が炎で燃やし尽くして灰になるのが相応しかろう…」

『あ……ああぁ……』

 

 死ぬ。ここで自分は死ぬ。

 そう確信したアーシアは、思わず両手を胸の前で組み神に祈った。

 どうか、お助け下さいと。ご加護をお与えくださいと。

 

 

 ―――その祈りは無事に届いた。

 

 

「暗殺だけに飽き足らず、快楽殺人もしやがるのかしら?」

「ぬぅっ!?」

 

 美しく光り輝く結晶の壁が…アーシアに襲い掛かろうとした炎を全て遮った。

 

『ほ…炎が!?』

「防がれただとっ!? 何者かっ!?」

 

 木乃伊の叫びと共に、奥の方から誰かが静かに歩いてくる。

 その足音は軽く、男でない事は確実だった。

 

「何かを燃やすこと自体を楽しむだけでなく…大方、誰かから依頼を受けて、人を燃やすという行為自体を心から楽しんでいる。なんて醜悪でどす黒い精神…」

 

 やって来た人間を見てアーシアは驚愕する。

 そこにいたのは、自分と余り歳も変わらないであろう少女だったから。

 

「自分の醜い快楽を得る…ただそれだけの為だけに引き起こしたのが、つい先程発生した政治家秘書の焼死事件…といったところかしら。私の記憶が正しければ確か…政治献金問題で色々と揉めていましたわね。文字通り『全て』を焼き尽くし…何もかもを灰にしたって感じですかしら? そんなアナタの依頼人は恐らく…その政治家本人なんじゃないかしら?」

 

 まるで見てきたかのように全てを言い当てる。

 この異様な状況に、流石の木乃伊も様子を見ることにした。

 

「そこな娘…人間に見えるが…このような場所に難なく踏み入ってきている時点で普通の人間とは思えぬ。答えよ…貴様は何者だ?」

「はぁ…考えても分からないとは…哀れですわね。三千年も長く生きていても頭の方はお馬鹿なままみたいですわね。私は……」

 

 炎によって生まれた影によって隠れていた少女の全貌が明らかになる。

 それは、本当にどこにでもいそうな普通の少女だった。

 その肩にフクロウを乗せている事を除けば…だが。

 

「通りすがりの単なる女子高生ですわ」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 あ…危なかったー!

 今回もまたギリギリセーフでしたわー!

 どうして私ってばいっつもこうなのかしら!

 

(にしても…こいつが例の人体発火事件の犯人? なんという異形の姿をしているのかしら…)

 

 予め調べておいた情報通り、この近くにあるホテルにはとある政治家の秘書が泊まっていた。

 狙ってくる可能性があるとすれば彼だと思っていたけど…まさか本当にドンピシャだったなんて…。

 もっと早くにこの可能性に気が付いていれば、彼を助ける事も出来たかもしれないと思うと悔しいですわ…。

 

『そこのお嬢さん…大丈夫ですか?』

 

 彼女が日本語が出来るという保証はどこにも無いので、念の為に英語で話しかけてみる事に。

 こんな事もあろうかと、通信教育の英会話教室に通っていたのですわー!

 どんな技術も決して無駄にはなりませんわー!

 

『あ…はい! だ…大丈夫…です…』

 

 ちゃんと通じて安心しましたわー!

 けど、やっぱり日本語は話せないようですわね…。

 もしも話せるならちゃんと『日本語でも大丈夫』と言う筈ですもの。

 

 しかし…なんて可哀想に。

 日本に着いた早々にこんな目に遭うだなんて…。

 しかも、彼女はレイナーレ達の本来の目的も知らされずに来ている訳だし…。

 

『一応確認を。貴女がアーシア・アルジェントさんですの?』

『そうですけど…どうして私の名前を? どこかでお会いしましたか?』

『いえ…そうじゃありませんわ。その辺の事情は後でちゃんとお話ししますので、今は少し下がっていてくださいまし』

『さ…下がる? まさか…!?』

 

 どうやらすぐに察してくれたようで、震える体で必死に立ち上がってくれた。

 見た目は清楚でも、芯の部分はしっかりしてるって感じですかしら。

 

「コクトーさん。彼女の事をよろしくお願いします」

「うむ。任されたのである」

「あるー」

 

 コクトーさんが導くようにしてアーシアさんを下がらせた。

 これで心置きなく戦えますわ。

 というわけで、指をパチンと鳴らしてクリスタル・ウォール解除っと。

 

「女子高生…だと? 戯けたことを抜かす…」

「事実ですので」

「一介の女子高生風情が我を見て何の反応もしない筈がない。先程言った事も知っている道理が無い。今一度尋ねよう…貴様は何者で、どうしてこの場に来た?」

 

 なんか面倒くさくなってきましたわ…。

 どうせこの場で倒す事は確定しているのだし…話してしまっても問題無いかしら。

 

「…『神託(オラクル)』ですわ」

「なにっ!?」

 

 姫として、人間として、この町に住む者として、彼がしたことは絶対に許せない。

 話を進める度に自分の小宇宙が怒りで燃え上がるのを手に取るように感じますわ…!

 

「そもそも、貴方が人一人を殺害する為に起こした火災でどれだけの人々が死んだと思っていますの?」

「ふん…知らぬな」

「死者八名。重軽傷者含め十五名。火傷の苦しみと戦っている方々…あなたはその『痛み』を少しでも考えた事がありまして?」

「ある訳が無かろう…愚かな」

 

 …今、心の中にあったほんの僅かな同情心すらも完全に消滅しましたわ。

 もう容赦はしない…こいつは私が絶対に倒す。

 

「嘗ては貴方も一人の人間であったでしょうに…」

「そんな昔の事は既に忘却しておる」

「…いいでしょう。人としての痛みすらも忘れ、数多の人命を身勝手な理由で奪った貴様の罪は…我の敬愛する偉大なる神が罰を決定する」

「神…だと…!? 娘…貴様は一体……!?」

 

 後ろに控えているアーシアさんと、その傍にいるコクトーさんの方を振り向く。

 

『罪と…罰…?』

『アーシアさん。アナタはこの木乃伊野郎に気絶させられ誘拐されただけに過ぎません。もうこれ以上、怯える必要はありませんわ』

『は…はい…』

 

 うん。ちゃんと頑張って前を見ようとしている。

 目を逸らそうとしないだけ本当に立派ですわ。

 

「だが貴様は…今からその罪の重さを測られる事になりますわ。コクトーさん」

「どうしたのであるか」

「るかー」

「神託を教えてくださいまし。『神』はなんと仰られておりますの?」

 

 コクトーさんはこちらを見ながら静かに一言だけ告げた。

 

有罪(ギルティ)

「ぎるてぃー」

「…承知しましたわ。ならば……」

 

 私は着ていた上着を脱ぎ、それをコクトーさんに預けた。

 彼はそれを爪で器用に掴み飛び上がる。

 

「その意味すらも分からずに体を焼かれ死んでいった人々…今この瞬間もベッドの上で苦しみ続けている人々…そして、ご遺族の方々…。私はその方々の声無き声を聞き届け…これよりお前に大いなる罰を与える」

「罰だとッ!?」

「そう…私は……」

 

 拳を握りしめ、極限まで精神を集中させる。

 幾ら例外であっても、これが私にとって『初めての戦い』になるから。

 

「人々の心に宿りし…一筋の『希望』になる」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「希望になる…だと? そのようにか弱き体で? 生意気な事を言う! ならばなってみせるがいい…我が炎を受けても同じ台詞を言えるのならばな!!」

 

 瞬間、何も無い場所から爆炎が出現し姫子の全身だけでなく、その周囲の空間ごと燃やし尽くそうとする!! それはまさに……。

 

 

 人  体  発  火(Spontaneous Human Combustio)

 

 

『キャァァァァァァァァァァッ!? ひ…人が! 何も無いのに燃えてるっ!?』

 

 自分を助けてくれた少女が目の前で燃やされようとしている。

 その悲劇と恐怖でアーシアは再び悲鳴を上げた。

 

「我が能力は『人体発火現象』。一度でも狙ったが最後…どんなに火の気がない場所であろうとも…一瞬で全てを燃やし尽くすっ!!! 我が炎は例え誰であっても絶対に逃さん!!!」

 

 一瞬で地下の空間が真紅の地獄へと変貌する。

 周りの車にも引火し、いつ爆発を起こすか分からない。

 それであるにも拘らず、木乃伊は嬉々として炎を巻き散らかし続けた。

 

「我が炎の熱量は軽く一千度を凌駕する。即ちマグマと同じ力! 人間風情では生き残る術など…有りはしない」

 

 もう終わりだ。

 アーシアはその事実に愕然とし、もうすぐ自分に降り掛かる死よりも、恩人を死なせてしまった事による悲しみに涙を流した。

 

『全てが…燃えていく…私のせいで…』

「何を泣いておる」

『え?』

 

 不意にどこからか声が聞こえた。

 けど、自分と目の前の木乃伊以外には、服を掴んでいるフクロウしかいない。

 

「泣くのであれば、それは我が友が本当に死んだ時にすればよかろう。違うか?」

『フ…フクロウさんが…喋ってる…!?』

 

 常識的にはまたもや有り得ない光景。

 あろうことかフクロウが人の言葉を話しているではないか。

 しかも、何故か自分には彼が何を言っているのかが理解出来る。

 

「さぁ…見ているがいい。どんなに強大な力を受けようとも…彼女の『心』は決して砕けない」

『『心』が…砕けない…?』

「その通りだ。そして、この場で燃え上がっているのは何も奴の炎だけではない。我が友も同じように燃えているのだ。マグマなどよりも熱く…激しく。そうであろう? 『十三番目の星座』に選ばれし…我等の新たな同胞よ」

 

 その時、地下空間を覆い尽くしていた全ての炎が跡形もなく消し飛び、その中から圧倒的な輝きと美しさを誇る『黄金』が姿を現す!!

 

「『蛇遣座(オピュクス)』見参!!!」

 

 絶望の中…遂に最強の希望が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 




次回は本格戦闘ですわー!

思ったよりも文字数が多くなって大変ですわー!



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