今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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なんだかもどかしい終わり方だったので、勢いのまま連続で書くことにしましたわー!

リズムって大事ですわー!







黄金覚醒! ですわ!

 それは、業炎の中から現れた奇跡。

 黄金に煌めく希望。

 

『ほ…炎を弾いて…全く融けてないっ!? 黄金の…鎧…!』

 

 その背には鱗の如き翼を背負い、全身に渡って蛇の鱗のような模様の鎧を纏う。

 翼の間からはこれまた蛇を思わせる黄金の尾が生え、その手には翼飾りを付けた大蛇を模した黄金の錫杖を装備していた。

 まるで、その姿は神話の世界からやって来た黄金の賢者。

 

「チタン。プラチナ。モリブテン。タングステン。マグマで融解しない物質なんて、それこそ探せば幾らでも存在しますけど…それらの物質とこの私が今、身に纏っている鎧は全くの別物」

 

 カシャ…カシャ…。

 そんな音と共に姫子が静かに近づく。

 只それだけのことなのに、木乃伊には凄まじいまでのプレッシャーが掛かっていた。

 

「この鎧は…人類の業で誕生した物ではなく…偉大なる神が造り賜うた…『()』なる『()』」

「な…なんだとっ!?」

 

 神の創造した鎧。

 そんな物を身に纏う少女が目の前にいる。

 三千年生きてきた木乃伊に訪れた、初めての危機。

 これまでずっと『殺す側』だった木乃伊が、初めて『殺される側』になった瞬間でもあった。

 

「この…全身から炎が噴き出すかの如く燃える気配!! これまで一度も感じた事の無い…圧倒的かつ強大な意志の力!! そして、黄金に煌めく最強の鎧!! お前は…お前は一体何なのだっ!?」

聖闘士(セイント)」 

(まだ未熟な私がこの名を語るのは非常に烏滸がましいですけど…でも、私は選ばれた。選ばれた以上…私は名乗らなければいけない)

 

 マントを翻し、周囲の炎を吹き飛ばしながら少女は名乗る。

 今の自分の姿の名を。その称号を。

 

「戦神アテナの元へと集いし、この地上の平和を守る戦士『聖闘士』。皆、自分の守護星座を模した聖衣をその身に纏い戦場へと赴く。私は……」

 

 カンッ!

 黄金の錫杖をコンクリートの地面に突き立て、木乃伊を睨み付ける。

 それだけで炎の勢いが弱まった。

 

「『黄金十二宮(ゴールド・ゾディアック)』に嘗て存在した幻である十三番目の宮『蛇夫宮(だふきゅう)』の主である黄金聖闘士(ゴールドセイント)蛇遣座(オピュクス)』の姫子」

 

 遂に名乗ってしまった。

 今までずっと憧れの存在であった者達と同じ称号を。

 だが、今の姫子にはもう迷いは無い。

 黄金聖闘士の一人として戦うだけだ。

 

「黄金聖闘士…だとっ!? それが…貴様の正体なのかっ!? 小娘っ!!」

「その通り。心正しき人々には私の姿は見えなくても良いもの。ですけど…アナタのように人命を玩具のように弄ぶ『悪鬼』にとっては…私は悪夢(ナイトメア)ですわ」

 

 呼吸が荒くなる。精神が乱される。

 木乃伊は今、確かに怯えている。恐怖している。

 目の前にいる…黄金の鎧を身に纏った一人の少女に。

 体躯だけならば自分よりも遥かに小柄なのに、その内より出でる圧倒的な何かに完全に気圧されていた。

 

(だ…駄目だ…! 勝てぬ…! 我の中の本能が告げている! 一刻も早く逃げろと! 勝ち目など無いと!! さもなくば死ぬのは己の方であると!!)

 

 勝機が無くなったと判断した木乃伊は即座にこの場を切り抜ける術を考え付く。

 それが最悪の悪手であるとも知らずに。

 

(そ…そうだ! あの後ろにいる娘を我が炎で焼き殺し、その隙に乗じて退避するっ!!)

 

 そうと決めた瞬間、すぐさま木乃伊はアーシアに向けて先程と同じ人体発火現象を行おうとした! だが……。

 

「甘いですわ!!」

『きゃぁぁっ!?』

「我が炎を…防いだッ!?」

 

 姫子は一瞬でアーシアの傍まで行き、彼女の体を抱きかかえながら手に持つ錫杖で彼女に襲い掛かろうとした炎を破壊した!!

 

「丁度いいですし…種明かしといきましょうか」

「何を…言っている…!」

「アナタの能力は『人体発火現象』だなんて大層な代物じゃございませんことよ。自分の能力で生み出した業火球を超高速で対象に向かって発射しているだけ」

 

 能力を完全に見破られた。

 今まで誰にもバレなかったことが、出逢ったばかりの少女に易々と看破されてしまった。

 

「な…何故だ!! 何故お前には見えたッ!? 我が業火球の速度は音速を余裕で越える!! どうやってその娘の前に移動し、攻撃を防いだのだっ!?」

「それもまた簡単。単純に業火球が飛ぶよりも早く、私がアーシアさんの元まで駆けつけた…それだけですわ」

「我が火球よりも早く…!? では…貴様は…!」

「そう…その通り…」

 

 認めたくは無い事実。

 だが、姫子の行動がその全てを物語っていた。

 

黄金聖闘士(わたくし達)最高速度(トップスピード)は…光速

「バ…馬鹿なっ!! 絶対に有り得ん!! 形ある物が光の速さで動けるなどッ!!」

「信じられないでしょうけど…紛れもない事実ですわ。そして、アナタの動きは最初から手に取るように見えていましたの。まるでスローモーションのようでしたわ」

 

 木乃伊に説明をしながらも、姫子はアーシアから離れつつ彼女に下がっているように注意を促す。

 それを聞き、アーシアも無言で何度も頷きながらコクトーの元まで戻って行った。

 

「最後に覚えておきなさい。私達『聖闘士』の目は一度でも見た相手の技を完璧に見極め、その中に存在する勝機を絶対に見逃さない。故に…」

 

 手に持つ錫杖を突き付けられ、木乃伊の動きが止まる。

 

「『聖闘士(セイント)に同じ技は二度も通用しない』」

「二度も…だとっ!? そんな馬鹿な事があるか!! 貴様と会うのは今日が初めての筈だ!!」

「確かに、私もアナタと会うのはこれが初めてですわ。けど…いたんですの。アナタが犯行をする瞬間を体を張って映像に残した勇気ある人が。その映像を何度も見直したお蔭で、アナタの攻撃のトリックにも気が付けたんですわ」

「わ…我の炎が…見られていた…!?」

 

 愕然とする現実。認めたくない事実。

 自分の攻撃は通用せず、逃げ場も無い。

 完全に詰み。

 

「アナタは炎を操る能力を得る代償として人としての『痛み』を失った。その時からアナタは体だけでなく、その心すらも人ではなくなっていたんですわ。だから…」

 

 姫子の指先に小宇宙が集中していく。

 人差し指の爪が赤く染まり、黄金の輝きを宿す。

 

「最後に私が人としての『痛み』を…思い出させてあげますわ」

「や…止めろ…! 止めろっ!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 恐慌に駆られ逃げ出そうとする木乃伊。

 しかし、その動きは精細を欠き、普段よりも動きに無駄が多かった。

 

「この期に及んで逃がすと思って? さぁ…受けなさい! これが…黄金の身体を持つ蠍の毒針から放たれる『真紅の衝撃』!!」

 

 防御する暇もなく、躱す暇もなく、天蠍の聖なる毒針が穢れた炎を穿つ!!

 

「スカーレット・ニードル!!!!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

 

 傍から見ると何が起きたか分からない光景。

 だが、確かに攻撃は受けている。

 それは木乃伊の反応を見れば明らかだった。

 

「い…一瞬で十四発…だと…!? 蠍座の形に貫かれた!? しかも…それだけではない!! 極小の針のような傷跡が…我が肉体がずっと忘れていたものを強制的に思い出させる!!」

 

 想像を絶するような激痛に悶え苦しむ木乃伊を、姫子は無表情のまま見つめ続ける。

 その顔には何の感情も写っていない。

 

「三千年間…忘れていた感覚…そうか…これが痛みか!!!」

「スカーレット・ニードルは相手の中枢神経を刺激することで、その想像を絶するような激痛で全身の動きを奪う技。元来、これは一撃必殺の類の技はなく、十五発の激痛が訪れる間に、敵に『降伏』か『死』かを選択させる権利を与える慈悲深き技。ですが…アナタは『痛み』を忘れてしまった者。それ故に…『痛み』を思い出させる為に十四発を一度に打ち込みましたの」

「そう…か…!」

「この衝撃で『痛み』は蘇った筈。残りの一撃は蠍座を構成する十五の星の中心…真紅に輝く星の位置に穿つ!!」

 

 それは、蠍座で最も強く輝く星であり、象徴とも言うべき星でもあった。

 だからこそ、その一撃が必殺となる。

 

「紅の星は蠍の心臓と同じ位置に存在している。即ち…最後の一撃こそ『スカーレット・ニードル』最大の致命点。撃ち込まれたが最後…その先に待っているのは絶対的な死だけ…ですわ」

 

 一度は下げた指が再び持ち上がり木乃伊に向かられる。

 それはある意味で死刑宣告。

 木乃伊にとっては救いの一撃でもあった。

 

「アナタを倒すこと自体は簡単ですが…このままではアナタは『化け物』のまま死んでいくことになる。だから…これは私の慈悲にして自分勝手な我儘。痛みを思い出し、人としての心を思い出す事によって…最後に『一人の人間』として涅槃へと旅立たせてあげますわ」

「慈悲…か…。我に罰を与えるのではなかったのか…?」

「これも立派な『罰』だと思いますわよ? だって…全身を激痛に苛まれながら逝くのですから。まるで拷問。これ以上の罰は無いのではなくて?」

「フッ…確かに…な…」

 

 もう抵抗する意志も無い。

 木乃伊はジッとその場に立ち尽くし、最後の瞬間が訪れるのを静かに待っている。

 

「もう…十分だ…。我を…逝かせてくれ…」

「分かりましたわ。それでは…さようなら。古く時代より出でた哀れな暗殺者さん」

 

 木乃伊の懇願に応え、姫子は渾身の力を込め、最後の一撃を放つ!!

 

「スカーレット・ニードル…アンタレス!!!」

 

 心臓部に毒針を受けた木乃伊は、断末魔も残さずに十五の傷跡を起点にバラバラとなった。

 そのまま木乃伊の『遺体』は炎に包まれながら消滅していき、彼が死んだのと同時に周囲の炎もあっという間に収束していった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ふぅ…なんとか無事に『初陣』を終わらせることが出来ましたわ…。

 本当の本当に緊張しましたわよ…。

 

『あ…あの! 私の事を助けてくれて、ありがとうございます!』

『いいえ…寧ろ、駆けつけるのが遅かったですわ。もっと早くに来ていれば、こうして誘拐される事も無かったのに…怖い思いをさせてしまって本当にごめんなさい』

 

 これは偽らざる本心だ。

 自分の未熟さが今回のような事態を招いた。

 今後はこのような事が無いように、もっと心身共に精進していかなくては。

 

『い…いえ! あの…その…貴女は…一体…?』

『詳しい話は後でしますわ。でも…そうですわね。だからと言って何も説明しないのもアレですし…簡単に言ってしまえば…』

 

 一応、本当の事を言うべき…ですわよね?

 

『アナタを保護する為に、ずっと待っていた者…ですかしら』

『私を…待っていた…ですか?』

『えぇ。それよりも今はここから移動するべきですわ。こんな場所じゃ落ち着いて話も出来ませんし』

 

 あ。その前に外で人避けの結界を張っていてくれた支取会長たちに連絡をしなくては。

 えっと…スマホスマホーっと。ありましたわー!

 

「もしもし? 川上ですわ」

『川上さんッ!? もう終わったのですか!?』

「はい。無事に例の少女を保護。彼女を誘拐した者もこちらで撃破いたしました」

『流石は川上さん…お見事です。二時間どころか、まだ三十分も経過していないのに…』

「色んな意味で急ぎましたから。詳しい報告は明日にでも改めて。彼女は一先ず、今晩はこちらで保護する形にしようと思います」

『それが一番妥当でしょうね。出来れば彼女からも色々と話を聞いてくれると助かります』

「勿論ですわ。では、お疲れ様でした。他の皆さんにもそうお伝えくださいまし」

『はい。川上さんもお疲れ様でした』

 

 通話終了…っと。

 黄金聖衣を纏った状態で文明の利器であるスマホを使うって…考えてみると、かなりシュールな光景ですわね。

 

『では、参りましょうか』

『ええっと…どこへですか?』

『私の家に。こちらの話や事情に関しては、家で休みながらゆっくりとする事に致しましょう』

 

 今出来る精一杯の微笑みをしながら手を差し出す。

 それで彼女も安心してくれたようで、こちらの手を取ってくれた。

 姫たる者。そして黄金聖闘士たる者。

 助けた人は最後までエスコートするべし…ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は蠍座の技で締めましたわー!

次回以降はまた日常回になるかもですわー!



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