今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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変わりゆく日常! ですわ!

 廃工場にて『顔の無い者』の暗殺者である『糸使い』との戦いを終えた私は、オカ研の方々と別れて家に帰ることにした。

 今晩の事については後日、改めて支取先輩達と一緒に話し合うとの事。

 

「ふぅ……」

 

 溜息交じりに玄関を潜り、そのままリビングへと向かうと、いつも通りのニコニコ笑顔のお義父様と心配そうにしていたアーシアさん。

 それと、相変わらず何を考えているのか分らないコクトーさんがいた。

 

「お疲れ様、姫子。良く無事に帰ってきたね」

「少しだけ疲れましたけどね…」

「姫子さん!」

 

 アーシアさんが目尻に涙を貯めながら私に抱き着いてきた。

 って…ん? 今、日本語で『姫子さん』って…?

 

「驚いたかい? いきなり彼女が日本語を喋れるようになったことが」

「え…えぇ…これは一体…?」

「アーシアさんの右腕を見てごらん」

「右腕…?」

 

 言われるがままに見てみると、そこには何やら複雑な装飾が施された腕輪が装着されていた。

 まさか、これが原因…?

 

「日本語を学ぶにしても、いつまでも英語で話してばかりというのは日常生活にも支障をきたすからね。だから密かに作っていたのさ。言語翻訳機能付きの腕輪をね」

「さ…流石は錬金術師…ですわね…」

 

 正直、私はお義父様が何を出してきてもあんまり驚かない。

 次の瞬間には本気で『どこでもドア』とか見せてきそうな気がするから。

 

「後は、ゆっくりと読み書きを学んで行けばいい。そうずれば自然と、その腕輪の役目も無くなるだろうさ。それまでの補助アイテムだね」

 

 確かに…これで外出などもし易くなるでしょうし…良いことではありますわね。

 私もアーシアさんと日本語で会話が出来るのは純粋に嬉しいし。

 

「ところで姫子よ」

「コクトーさん?」

「今回の奴は、お前程の聖闘士を『疲れた』と言わせるほどの相手だったのか?」

「そう…ですわね。まずはその事について話しておかないといけませんわね」

 

 アーシアさんを宥めながら体を離し、お義父様が淹れてくれたコーヒーをチビチビと飲みながら、今回の事の顛末を事細かに説明していった。

 

「糸使い…成る程。確かに厄介な相手だ。そんな奴を倒してみせるとは、流石は自慢の義娘だ」

「それほどでも…ですわ」

 

 お義父様の褒め言葉はいつもストレートだから照れますわね…。

 

「で…でも、大丈夫だったんですか?」

「えぇ。怪我などはしていませんわ。少しヒヤッとする場面はありましたけど」

 

 まさか、アイツが邪眼使いだったとは予想外でしたわ。

 今後は下手な先入観をこれまで以上に捨てていかなくては。

 

「しかし…よもや、奴らが明確な目的を持って行動をするとは…」

「最初の邂逅は単なる偶然。ですが、それが切っ掛けとなって奴らは完全に私を敵として認識したようですわ」

 

 邪魔者は全て消す…か。

 実に暗殺者らしいですわね。

 

「あ…言っておきますけど、別にアーシアさんが悪いという訳じゃありませんわよ? あれは私が勝手にやった事。アナタに非は一切ありませんわ。寧ろ、アーシアさんは完全な被害者なのですから」

「はい…ありがとうございます。姫子さん」

 

 なんて言ってはいるけど、内心は色々と抱えてそうですわね…。

 一緒に住む以上、そこの所もちゃんとフォローしていかないと。

 

「姫子。これからどうする気だい?」

「…これまでの私はいずれも後手に回っていた。けれど、もうそんな事は終わりにしなくては」

「と言うと?」

「まずは情報が欲しいですわね。どんな些細なことでも構いませんから。今の私達は、余りにも『敵』の事を知らなさすぎる」

 

 情報収集は兵法の基礎中の基礎。

 敵を知り、己を知れば百戦危うからず…ですわ。

 

「フフ…姫子なら、必ずそう言うと思っていたよ」

「お義父様?」

「だから、私からいい情報源を紹介しよう」

「情報源を紹介?」

 

 それは…どういう意味ですの?

 

「姫子、明日の放課後は暇かな?」

「えぇ…特に予定などはありませんけど…」

「ならば、商店街にあるバー『ヴィディアムー』に行きなさい」

「そこって…まさか?」

「その『まさか』さ。私の方から話を通しておいてあげよう。姫子も知っている相手だから話しやすくはあるだろう?」

「そう…ですけど…」

 

 まさか『あの人』が情報屋みたいなことをしていただなんて…意外過ぎますわ。

 人は見かけに寄らないと良く言いますけど…まさにそれですわね。

 

「念の為、情報を共有する意味でもグレモリーのお嬢さんとシトリーのお嬢さんも一緒に連れて行った方が良い。今回の事は彼女達にとっても決して他人事ではないからね」

「その通りですわね。丁度、明日に今日の事に関する話し合いをする事になっているので、その時にでも誘ってみますわ」

「それがいい」

 

 コーヒーを全て飲んでからリビングを後にし、もう一回シャワーを浴びて汗を流した後に、すぐに部屋に戻ってからのベッドイン。

 心身ともに疲労していたお蔭か、この日の夜はぐっすりと熟睡できた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 朝の通学路。

 昨日のことが嘘みたいに日常的な光景が目の前に広がっている。

 この道を歩いているどれだけの人達が、この町に多種多様の種族が隠れ潜んでいる事を知っているのだろう…。

 

(あら…前を歩いているのは松田さんと元浜さん?)

 

 あの例の朝礼以降、彼らは本当に変わった。

 松田さんは写真部を辞め、その後に野球部へと入部した。

 今までのことが嘘のように真面目に取り込んでいて、本人は本気で駒王学園野球部を甲子園へと連れて行く気のよう。

 見た目通りと言いますか、やっぱり彼には野球の才能があったみたいで、メキメキと頭角を現しているらしい。

 

 元浜さんは放課後に良く図書室で参考書片手に勉強をしている姿が目撃されている。

 今までのイメージを払拭する為…と言うのもあるのだろうが、それ以上に今までの分の勉強の遅れを必死に取り戻そうとしているようだ。

 かといって、決して勉強ばかりをしている訳でもなく、友人である二人と一緒に歳相応の青春を満喫しているようだ。

 

(人間…変われば変わるもの…なんですのね…)

 

 最初は半信半疑だったけど、どうやら彼らの『変わりたい』という決意は本物だったということなんでしょう。

 じゃないと、こんなにも頑張れないでしょうから。

 

「おはようございます。元浜さん。松田さん」

「おぉ。おはようさん川上」

「はよーっす」

 

 少し早歩きをしてから彼らに追いつき、何気ない話をしながら学校へと向かう。

 そうしていると、後ろから誰かが走って来る気配が。

 思わず振り向くと、そこには非常に爽やかな笑顔をしながら手を振る兵藤さんの姿が。

 

「おーい! 元浜ー! 松田ー! 川上さーん!」

「朝から元気ですわねェ…」

「つーか、元気すぎじゃね?」

「すっげー爽やか青年になってるじゃねぇか」

 

 走っている彼はすぐにこちらに追いつき、息を切らせながらも笑いながら一緒に歩きだす。

 

「やーっと追いついたぜ」

「だからって、人の名前を叫びながら走ってくんじゃねぇよ。普通に恥ずかしいだろうが」

「すっげー注目されちまったぞ」

「別にいいじゃねぇかよ。この間、あんなことしたんだから。今更これぐらい」

「「それとこれとは別だッつーの」」

 

 御尤も。

 

「あ…そうだ。川上さん」

「どうしましたの?」

 

 なっ…!? 急にこちらに顔を近づけて、本当にどうしましたの…?

 

(本当にありがとな! あんなスゲー人を紹介してくれてさ!)

(あ…あぁ…そうですわね。お役に立てて何よりですわ)

(俺、これからも頑張るよ! あの人の元でなら本気で変われそうな気がするんだ!)

(そ…それは何よりですわ…)

 

 恐らく、彼の師となった人物は『伝説の五人』の一人であり、その身に神なる龍を宿す次代の聖闘士『紫龍』さま。

 嘗ては龍座の聖闘士であり、今はお師匠様である童虎さまの意志を継承し天秤座の黄金聖闘士になられている。

 兵藤さんはきっと、ご自身の師匠がそんなにも凄い方なのだと言うことはまだ知らないんでしょうね…。

 少しだけ、真実を知った時の反応を見てみたいですわ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 今日の授業が終了し、私はオカ研の皆さんと一緒に生徒会室へとお邪魔していた。

 勿論、昨夜のことを話す為だ。

 

「町外れの廃工場に向かうと、既にはぐれ悪魔は倒されていて、それとは別に…」

「例の『暗殺者』がいたわ。アイツの言葉が正しければ、バイサーを殺したのは川上さんが『糸使い』と名付けたアイツみたいね」

「そうですか…」

 

 自分の顎に手を当てて考え込む生徒会長。

 彼女がこんな顔になるのも無理は無い。

 まさか、こんなにも早く二人目の暗殺者がやって来るとは誰も予想すらしていなかったのだから。

 

「糸使いは川上さんが倒してくれたけど…」

「彼の口振りから察するに、どうやら目的は自分達の邪魔をしている私の始末のようですわ」

「川上さんが木乃伊の暗殺者を倒したから…?」

「恐らくは」

 

 普通ならば『自分がいなくなれば解決するのでは』と考えるだろうが、事態はもうそんな簡単な問題ではなくなっている。

 仮に私がいなくなれば、奴らは嬉々として駒王町にて殺戮を繰り返していくことだろう。

 無論、三大勢力も黙ってはいないだろうが、既存の勢力で奴等に対抗するのは難しいかもしれない。

 最低でも白銀聖闘士以上の実力者がいなくては話にすらならないだろう。

 まぁ…オルフェさまやミスティさまのように、単独で打倒出来るであろう屈指の実力者は例外ですけど。

 

「糸使いの能力は悪魔にも普通に通用していた。それはつまり、暗殺者達の能力は生物全般に通用すると言うことになる。今までは人間だけが標的にされていましたけど…」

「今後は三大勢力も『顔の無い者』の標的にされる可能性が高い…ということですね…」

 

 奴らは殺戮のみを生きがいにしている異常者の集団。

 心だけでなく、その体すらも異形になり、殺しの快楽だけを求める者達。

 もうそれは『人間』とは呼べない。完全な『怪物』だ。

 

「実は、その事でお話がありますの」

「なんですか川上さん?」

「お義父様の知り合いに裏の情報通の方がいらっしゃるみたいで、今日の放課後にその方に会いに行こうと思っていますの。良かったらなんですけど、グレモリー先輩と支取先輩もご一緒しませんか?」

 

 話に乗ってくれればそれでよし。

 ダメだったら、後でまた報告すればいいだけだ。

 

「そうね…こっちとしても情報は欲しいし…」

「断る理由はありませんね。一緒に行きます」

 

 良かった…これで二度手間をしなくて済みましたわね。

 さて…どんな情報が得られるのやら…。

 

 

 

 

 

 

 

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