今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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別に姫子は一誠達を嫌ってはいません。

寧ろ、彼らの事を真剣に考えています。

だからこそ、時には厳しいことも言うのです。








謎の女子高生! ですわ!

 次の日。

 私が登校して教室まで行くと、松田さんと元浜さんの二人が隅の方で何かを話していた。

 珍しく、まだ兵藤さんは来ていないようだ。

 

「何をしているんですの? また卑猥な事を話していたりするんじゃあ…」

「げ! 川上!?」

「ち…ちげーよ! つーか…これって川上にも一度相談してみた方が良いんじゃねぇか?」

「そう…だな。俺達だけでうだうだと話していても埒が明かないし…」

 

 ん? なんだか今日は様子が違う。

 何かを本気で危惧しているような…心配しているような…そんな感じが見受けられた。

 

「一体どうしやがったんですの?」

「あぁ…ちょっとな」

「あまり他の奴に聞かれたくないから、こっちに来てくれ」

「はぁ……」

 

 普段はそれこそエロい話しかしていない彼らが、ここまで真剣な表情をするとは本気で珍しい。

 これはマジで只事ではないのかもしれない。

 

「これは、昨日…お前と別れた後の話なんだけどさ…」

「流石に気分も萎えたから、このまま家に帰ろうって話になって、教室まで鞄を取りに行って、んでそのまま真っ直ぐに下校しようと思ってたんだ」

「けど、帰る途中…校門前で全く予想だにすらしない出来事が起きたんだ」

「予想だにしない出来事? それは一体何なんですの?」

 

 話を聞いている内に少しだけドキドキしてきた。

 トキメキ的な意味のドキドキじゃなくて、緊張的な意味のドキドキだ。

 

「突然、見知らぬ女の子がやって来て、一誠に告白しやがったんだよ」

「…………は?」

 

 あの兵藤さんが…告白? 知らない女の子から?

 

「どう考えても怪しさ全開だったんだよ。確かに可愛くはあったけど、あの子の場合はその可愛さが逆に不気味だったって言うか…」

「その子が着てた制服って、駒王のじゃなくて隣町の高校のやつだった。俺達って基本的にあんまり駒王町の外からは出ないから、俺達が知らないだけでアイツだけが知り合っていたって可能性は凄く低いと思う」

「そう…ですわね」

 

 あの無駄に自己主張が激しい兵藤さんの事だ。

 もしも彼女なんかが出来たら、真っ先にこの二人に自慢してくるだろうし、その事を教室で堂々と報告していたかもしれない。

 

「実際、一誠もその子に話しかけられた時はめっちゃ驚いてたしな」

「彼は何と?」

「顔も名前も全く知らないって。本気の本気で初対面だって言ってた」

「ふむ……」

 

 兵藤さんはお世辞にも嘘が得意とは言い難い性格をしている。

 仮に嘘をついても、様子がおかしいのがすぐにバレてしまうに違いない。

 

「…で、ヤバいのはここからなんだよ」

「その子に告白をされた一誠なんだけど、アイツも流石に怪しいと思ったのか断ったんだ」

「妥当な判断ですわね」

 

 それが普通だ。うん。ちゃんと彼にも常識的な部分が残されていたんですのね。

 少しだけ感心&安心しましたわ。

 

「だけど、その子はなんでか諦めなかったんだ。困惑する一誠の目の前で『本当に好きなんです!』とか言って目尻に涙まで浮かべてさ」

「あいつも涙を浮かべられたら罪悪感が出ちまったんだろうな。結局、一回だけデートをしてやるって事で収まったんだ」

「デート……」

 

 別に彼が誰とデートをしようと、それは私とは全く関係ない。

 問題なのは、どうして告白までしたのにデート一回で妥協をしたのかという事だ。

 

「なぁ…これって明らかに怪しすぎるよな?」

「まさかとは思うけどよ…美人局って事は無いよな?」

「流石に高校生に女子高生が美人局をするとは思いませんけど…」

 

 決して可能性がゼロという訳じゃない。

 今の世の中、どんな犯罪者が蔓延っているのか分かったもんじゃないから。

 こっちが想像も出来ないような犯罪をする連中も本気でいる。

 

「けど、それと類似した事件の可能性はありますね…」

「類似って言うと…例えばどんな?」

「途中まではちゃんとデートをして、帰りとかに路地裏やホテルとかに無理やり連れて行って、そこには本命彼氏な不良と、そのお仲間がズラリと並んでいて…」

「「ゴ…ゴクリ…」」

「ま、あくまで可能性の一つですけど」

 

 ちょっと脅かし過ぎたかな。

 二人とも完全に黙ってしまった。

 

「そう言えば、その女子の名前は何と言うんですか?」

「えっと…確か…」

「『天野夕麻』…だったと思う」

「天野夕麻…」

 

 そこまで珍しい名前じゃない。

 それが逆にその少女の特定をし難さを物語っているんだけど。

 

「見た目はどんな感じだったんですの?」

「割と普通の女の子だったよ。黒い髪が背中まで伸びてって…感じの」

「顔立ちも割と整ってたし」

「そうですか……」

 

 そこまで目立った特徴のない女子…。

 恐らく、町中とかで大衆に紛れたら見つかりにくくなるだろう。

 黒くて長い髪というのは、変装も容易にし易いし。

 

「私も気になりますね。白と黒とか関係無しに調べてみた方が良いかもしれません。例え僅かな可能性だったとしても、駒王学園の生徒に危険が及ぶ事であるのならば放置してはおけませんわ」

「や…やってくれるのかッ!?」

「えぇ。兵藤さんのご両親が悲しむ姿は見たくはありませんので。あ…勿論、兵藤さんの事も心配ですわよ?」

「最後に取ってつけたように言われてもな…」

「一誠…本当に哀れな奴…」

 

 何が『哀れ』なんですのよ?

 私、何か変なことでも言いましたかしら?

 

「おーっす。おはよーさん」

 

 噂をすれば何とやら。

 兵藤さんが教室に入ってきた。

 見た感じでは別に昨日と変わりが無いように思えるけど。

 

「ん? お前ら隅の方で揃って何やってんだ…って、川上さん? また珍しい組み合わせだな…」

「ちょ…ちょっとな」

「俺達だって偶には川上と普通の事を話したりするもんさ。なぁ?」

「…その通りですわ。昨日の数学の授業で少し分からない所があったから教えて欲しいと言われていたところなんですの」

「そうなのか。今度の数学の小テスト…難しそうだもんな。相談する気持ちも分かるわ」

 

 意外とすんなりと信じるんですのね。

 はぁ…この純粋さがエロ方面に行かなきゃ、一人の友人として楽しい人物なんでしょうけど…。

 

(…念の為、放課後に生徒会室に行くべきかしら)

 

 事件性があるかどうかは不明だけど、それでも教えておくことは損にはならないと思う。

 けど…なんでだろう。

 話を聞いた瞬間から、胸の奥で嫌な予感がしまくってるんですけど…。

 これが杞憂であることを祈るばかり…ですわね。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 支取蒼那。

 駒王学園の生徒会長にして三年生。

 私がこの学校で数少ない尊敬している先輩であり、同時に学内で唯一『姫』と呼ばれても不思議じゃないと思っている女性。

 似たような人物だけならば他にも約二名ほどいるけど、私は彼女達の事は決して『姫』とは認めない。

 

「なんですって? 見知らぬ他校生がいきなり校門前までやって来て我が校の生徒に接触を…?」

「はい。私のクラスメイトの兵藤一誠さんですわ」

「例の三人組の筆頭の彼…ですか」

 

 今、私は生徒会室に足を運んでいる。

 別に私は生徒会のメンバーではないけど、個人でよく学内の色んな事(主に覗き事件について)を報告しに来ているので、割と普通に歓迎はされていたりする。

 

「彼の普段の所業に付いては今は置いておいてください」

「そ…そうですね。彼の素行がどうあれ、駒王の生徒である事には違いありません」

 

 こういう割り切りの仕方が本当に素晴らしいと思う。

 理想の上司とは彼女のような人物の事を指すのだろう。

 

「友人である元浜さんや松田さんの話によると、その女子は隣町の学校の生徒の可能性があると仰っていました」

「隣町…ですか」

「はい。そして、兵藤さんとは完全に初対面でもあると」

「なのに、いきなり告白をして、断られたら半ば無理矢理にデートをさせるようにした…確かに怪しいですね」

「会長のご意見をお聞かせ願えますか?」

「個人的見解を言わせて貰うと…限りなく黒に近いグレーだと思います」

「私も同意見ですわ」

 

 別に個々人の恋路を否定するつもりはないが、だからと言って初対面の相手にいきなり告白するというのは流石に怪しすぎる。

 しかも態々、隣町から駒王までやって来て…だ。

 その天野とか言う女子が相当に兵藤君に惚れこんでいない限りは、そんな事はまず有り得ないだろう。

 

「川上さんはどう思っていますか?」

「最悪の事態になる前に手を打った方がよろしいかと」

「例えば?」

「まずは今日の放課後辺りにでも隣町に行って調査をしてみようかと思います。松田さん達から相手の特徴や制服のデザインなどは教えて貰っているので、なんとかなるかと」

 

 情報は足で稼ぐ。

 一昔前の探偵みたいだけど、結局はこれが一番確実だったりするのだ。

 

「本当に兵藤さんの事を想っているのならそれでよし。けど、もしも何らかの謀があった場合は……」

「その時は、川上さんの判断に任せます。貴女ならば大丈夫でしょうから」

「ありがとうございます」

 

 個人的には、本当に『天野夕麻』なる人物が実在しているかどうかも怪しいと思っている。

 今時、高校の制服なんてお店でも買えるし、過去にも金銭目的で何も知らない男子高校生を騙して…なんて事件も実際に起きている。

 私達だって現代に生きている以上は決して無関係とは言い難い。

 

「でも、いざという時の為に人手は少しでも多い方が良いですね……匙」

「は…はいっ!? なんスか会長!」

 

 支取先輩に名前を呼ばれて返事をしたのは、この駒王学園生徒会における黒一点である二年生の『匙元士朗』くん。

 噂では支取先輩に惚れて生徒会入りしたらしいが…。

 

「放課後、川上さんと一緒に隣町まで行って調査を手伝ってあげなさい」

「えぇっ!? こいつなら大丈夫ですって! そこらの男連中よりもよっぽど腕っぷしもありますし!」

「確かに川上さんの武道の腕は超一流かもしれませんが、それとこれとは話が別です。幾ら強くても川上さんは女性なんですよ?」

「そ…そりゃあ…そうですけど…」

「それに、調べ事をするなら一人より二人の方が遥かに効率が良い。違いますか?」

「ち…違いません…」

「よろしい。では、お願いしますよ」

「はい…分かりました…」

 

 匙さん…完全に尻に敷かれてるじゃありませんの。

 他の役員の皆さんもクスクスと笑ってるし。

 

「よろしくお願いしますね。匙さん」

「お…おう……」

 

 そう言えば、最初にあった時からずっと気になっていたけど…この生徒会全体から奇妙な小宇宙をずっと感じていたんですのよね…。

 これは一体何なのかしら?

 何と言うか…小さい小宇宙が散らばってる感じ。

 支取先輩や匙さんからも感じるし。

 もしや、小宇宙を燃やせる素質を持つ人って意外と多かったりするのかしら?

 ここ以外にも、僅かではあるけど学内で小宇宙を感じる事があるし。

 

 ま…今はそれは置いておいて、まずは調査ですわ。

 姫たる者、自分の通っている学校の平和は自分自身の手で守らなくては!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、姫子と匙の疑似デート?

そして、少しだけ真実に近づく…かも?
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