放課後になり、私と兵藤さんは一緒に旧校舎にあるオカルト研究部の部室へと赴く事に。
向こうも私だけが来るとばかり思っていたようで、兵藤さんが一緒だったのを見た途端、普通に驚いていた。
「…というわけで、俺も一緒に来させて貰いました」
「ま…まぁ…確かに私も『川上さん一人だけで』とは一言も言ってないし…」
「そゆことですわ」
下手に反論してもすぐに論破されると学習したのか、グレモリー先輩はすぐに引っ込んだ。
うんうん。時には自ら引くことも大事なのですわ。
それにしても、この姫島先輩がお淹れになった紅茶…美味ですわー。
「でも、まさか兵藤君にも師匠が出来たとはね…どんな人なんだい?」
あら。ここでまさかの木場さんからの質問。
兵藤さんはなんてお答えするのかしら?
「なんて言えばいいのかな…兎に角、スッゲー人だな。色んな意味で凄すぎて、どう言葉で表現したら分からねェぐらいに凄い」
兵藤さん…その答え、大正解ですわ!
そう…その通り!
あの方々5人の凄さを言葉などで表現するなど絶対に不可能!
これまでに幾度となく世界滅亡の危機を救ってきた勇者たちなのですから!
「君にそこまで言わせる人とは…是非とも一度、会ってみたいものだね」
「うーん…出来るかな…?」
まぁ…実際に修行をしているのは夢の中の空間ですしね。
私も幼少期からずっと利用してますけど、あの場所の事を説明するのはかなり難解ですわ。
「因みに、これが俺の神器だ!」
そう言って兵藤さんが左腕を掲げると、そこから真っ赤な光が溢れ出し、龍の鱗を彷彿とさせる真紅の籠手が装着されていた。
なんとまぁ…この籠手から凄まじいまでの小宇宙を感じますわ。
それと同時に、兵藤さんからも確実に小宇宙を感じるようになっている…。
成る程、どうやら修行の成果はちゃんと出ているようですわね。
「こ…これは…まさかっ!?」
「『
「ということは、彼が…!」
「現代の…赤龍帝…?」
彼女達がここまで驚くとは…どうやら、この籠手は相当に凄い物みたいですわね。
ここで色々と説明を聞くのも良いですけど、家に帰ってからお義父様に聞いた方がより詳細に聞けそうな気がしますわ。
なので、この場では敢えてスルー。
「『逃がした魚は想像以上の大物だった』って顔をしてますわね」
「えっ!? そ…そそそそそそそんなことはないわよっ!?」
動揺し過ぎですわ。
本当に見せるだけだったのか、すぐに赤龍帝の籠手を仕舞った。
あれが彼の中に秘められていた力…そして、レイナーレに狙われる切っ掛けともなった力…か。
皮肉なものですわね。
あんな目に遭ったからこそ目覚めた力だなんて…。
「にしても、『川上さんの戦いを見学させてくれ』…ねぇ…」
「お願いします! 俺の師匠も言ってたんです! 『強者の戦いは見ているだけでも立派な修行になる』って!」
「視稽古ってやつだね」
剣道部兼任をしている木場さんにはすぐに意図が理解出来た御様子。
こんな時、武道を収めている人物がいると話がスムーズになって助かりますわー。
「部長。僕は良いと思います」
「裕斗?」
「というか、気持ち的には僕も一緒ですから。堕天使達との一件で僕は川上さんの秘めた力の片鱗を目撃し、あの廃工場で更なる力を体感した。純粋に興味があるんです。あれが川上さんの力の全てとは思えないので…」
意外と鋭い眼をお持ちのようで。
その予想は大当たりですわ。
まだ私は習得した技の一割も見せていない。
「リアス。男の子たちがここまで言っているのだから、希望を叶えてあげたら?」
「そう…ね。私も川上さんの持つ力が気にならないってわけじゃあないし…あら?」
良い流れになってきた…そんなところで、急に部室内に強大な小宇宙と共に魔法陣のような物が展開された。
「この紋章はグレモリーの…? 一体誰が…」
「私です。リアスお嬢様」
「あ…あなたは…!?」
魔法陣から出現したのは、銀髪が眩しい美人のメイドさん。
グレモリーさんのお知り合いかしら?
「グレイフィアッ!? どうしてここにっ!?」
「今日、ライザー様とお嬢様がお会いになると聞き、その仲介役として参上しました」
仲介役…成る程。
どうやらグレモリー家の方は、最初から話がもつれる事を前提にしているようですわね。
言葉は聞いておらずとも、その気持ちの方は把握していた…そんな所かしら。
「あの人…本職のメイドさんだな」
「分かるんですの?」
「あぁ。スカートの丈がめっちゃ長いだろ? あれは、そこらのメイド喫茶の子が着ているようなスカートの短いコスプレ用のメイド服じゃあなくて、従者と書いてメイドと読む本職の人が着ている『制服』だよ」
「おぉ~…」
昔取った杵柄というやつかしら…。
どんな知識も決して無駄にはならないってことですわね。
それが今後の人生において役に立つかどうかは別として。
「…リアスお嬢様。なにやら見覚えのない方々がいるようですが?」
「こ…この子達は私の後輩であり友人である子達よ。ほら、前に報告したでしょう? 例の堕天使侵入事件の時の当事者で、そっちの女の子が堕天使達を倒して事件を解決してくれた功労者で、こっちの男の子がその堕天使に狙われた子よ」
「…思い出しました。成る程…あの事件の…」
ふーん…ちゃんと報告とかはしているんですのね。
ちょっとだけ見直しましたわ。本当にちょっとだけ。
「初めまして。グレモリー家に仕えるメイド長の『グレイフィア・ルキフグス』と申します」
「こちらこそ。初めまして。駒王学園二年の川上姫子と申します」
「お…同じく二年の兵藤一誠です!」
グレイフィアさんが素晴らしく丁寧な自己紹介をしてくださったので、私も姫を目指す者として、スカートの端を摘まみながら自己紹介をした。
因みに、兵藤さんは慌てて普通の挨拶をしていた。
「何と丁寧な挨拶…姫子様は高貴な家の生まれでいらっしゃるのですか?」
「いえまさか。この程度、姫として当然のことですわ」
「素晴らしいお心掛けです。本当に…」
「ど…どうして、そこでこっちを見るの?」
本職のメイドさんからお褒めの言葉を頂きましたわー!
地味に感動していますわ…。
それと、グレイフィアさんがそちらを見たのは単純に『少しは見習ってくれ』という気持ちからだと思いますわ。
「…どうやら来たみたいね」
「赤い…魔法陣…」
このまま穏やかな雰囲気が続くと思われた瞬間、またもや部室内に魔法陣が展開。
今度のはさっきとはまた違う魔法陣で、色や形も全く違っていた。
感じる小宇宙はグレイフィアさんとは違って、かなり微量ですけど。
「この魔法陣は…」
「フェニックス…」
木場さんがポツリと呟く。
成る程、これが例の……。
「ふぅ…こうして地上に来るのは何年振りかな…」
金髪で赤いスーツを着て…え? 何この人。ホスト?
これが本当にフェニックス?
見た目の時点で威厳も何も感じないんですけど。
「会いに来たぜ。リアス」
にしても、この声…気のせいかも知れませんけど…あの男にそっくりですわね。
冥界三巨頭の一角であるワイバーンと…。
ぶっちゃけ、彼の方が威厳も実力も圧倒的に格上ですけど。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
この男がライザー・フェニックス…。
グレモリー先輩の婚約者…。
今なら、なんとなく彼女の気持ちが分かりますわ。
同じ女として、確かに彼と結婚するのはイヤですわねぇ~…。
同じ『フェニックス』でも、一輝様の方が遥かに『良い男』ですわ。
もし仮にどっちかを選べと言われたら、私は即座に一輝様のお嫁さんになりますわね。
(というか、さっきから妙に近くありませんこと?)
部屋にやってくるや否や、すぐにグレモリー先輩の横に座り、彼女の肩を抱き寄せてた。
明らかに相手が嫌がっているのに、恐ろしく馴れ馴れしい。
私の隣にいる兵藤さんも流石にドン引きしていた。
しかも、どうやら女性陣からも相当に嫌われているようで、さっきから姫島先輩はこめかみに血管を浮き上がらせてピクピクとしているし、塔城さんに至っては、さっきから一心不乱にお菓子を食べ続けている。
木場さんは、ずっと愛想笑いを浮かべたまま。
完全に思考を放棄してますわね…。
「何度来られても、私の答えは変わらないわ」
「子供みたいな事を言うもんじゃあない。これは俺達の親同士が決めた事なんだぞ?」
「私の意志を無視してね! というか、婚約云々の話は私が大学を卒業するまで保留にする約束でしょう!? どうして今するのよ!? まだ高校も卒業してないのよッ!?」
「それがどうした? どっちみち結婚するのなら、今しても同じだろう? それに、この日本の法律では男は18から、女は16から結婚できると聞いたぞ?」
「それは日本の話でしょう!? 私達は日本人じゃあないわ!」
なんか…論点がずれてません?
別の意味で不安になってきましたわ…。
「ところでリアス」
「な…なによ」
「さっきから、そこにいる二人は一体なんだ? お前の眷属って訳ではなさそうだが…」
「あの子達は私の後輩であり、友人でもある子達よ。一緒にお茶を楽しんでいた所にタイミング悪くアナタが来てしまったのよ」
「ふーん…後輩…ねぇ……」
なにかしら…まるで全身を舐め回すに見られてますわ…。
これが生理的嫌悪感というものかしら…。
余りの気持ち悪さに鳥肌が立ってしまいましたわ…。
「そこの小娘」
「私ですの?」
「そう…お前だ。名前は?」
「川上姫子…ですが。それが何か?」
「姫子…姫……良い名だ」
ん? いきなり立ち上がって来て、こっちに近づいてくる?
んでもって目の前に立って…顎クイされた。
「この俺を前にしても、決して怯える事のない強い瞳…顔もスタイルも悪くない…寧ろ、極上の部類に入る」
「お褒め頂きどうも」
ちっとも嬉しくは無いですけど。
隣で兵藤さんが怒りに体を震わせてますけど、もう少しだけ我慢してくださいまし。
「お前…人間だな?」
「えぇ」
「ここにこうしているって事は、俺たちが悪魔であることも承知していると見ていいか?」
「はい。知っておりますわ」
「そうか……」
なんでしょう…妙な胸騒ぎがしますわ…。
聖闘士と言うよりは、女としての勘が猛烈なアラームを出していると言いますか…。
「フッ…気に入った。姫子とやら」
「何ですの?」
「俺のハーレムに入れ。女としての喜びって奴をたっぷりと教えてやる」
なんとな――――――く予想はしてましたけど…やっぱり言ってきたか…。
けど、これはこれで良い流れではありますわね。
正直な話、どうやって『本題』に入ろうか悩んでいたので。
彼のおバカな発言のお蔭で、その悩みが一気に解消できましたわ。
その一点だけに置いては礼を申し上げますわ。
さて…ここからはコチラのターンですわ。