いきなりの顎クイからのハーレム入れ宣言。
うーん…見事に女子から嫌われるコンボ炸裂ですわね。
「ちょ…いきなり何を言ってるのよ!?」
「か…川上さん!」
隣にいる兵藤君とグレモリー先輩が自分の事のように憤ってくれた。
それとは別に塔城さんも凄い形相で睨みつけているし、姫島さんも持っているカップがパキンと割れた。
木場さんに至っては、なんかもう彼の神器である魔剣を出す寸前になっている。
「皆さん、落ち着いてくださいな。私ならば大丈夫ですから」
ここで暴れても何の意味もない。
なので、私は今にも飛び掛かりそうになっていた皆の事を手で制した。
(こんな状況なのに全く何もしようとしない…成る程。グレイフィアさんはついでに私の事を見極めようとしていらっしゃるようですわね)
私と兵藤さんがいる事は彼女にとって完全にイレギュラーな出来事ではあるが、だからと言って、そのまま引き下がるような事だけはしない…か。
確かに、彼女はどこに出しても恥ずかしくない立派な『
「そのような一方的で乱暴な申し出…この私が了承するとお思い?」
「するんじゃない。させるんだよ」
なんという暴論。
だけど、それならこちらも遠慮なくやることが出来る。
「婚約者が傍にいるにも関わらず、目の前で別の女を口説こうとする…そんな男にホイホイと付いて行くほど、私は尻の軽い女ではなくてよ?」
「ほぅ…? 言うじゃないか。ならば、どうすればお前は俺のハーレムに入る?」
掛かった!
ここから一気に畳み掛けますわよ!
「そんなの最初から決まっているでしょう? アナタも仮にも男ならば、自分の欲しい物は…」
ずっと私の顎に添えていた彼の手を払いのけ、そのままの勢いでライザーの眼前に拳を突き付ける!
因みに、彼の事は『さん』付けでは呼ばない事にした。
別に尊敬もしていなければ、先輩と言う訳でもありませんから。
「!?」
「己の力で掴み取りなさい。古来より一切変わっていない、最も単純な方法ですわ」
まさか、自分の手が払いのけられるばかりか、拳を向けられるとは想像もしていなかったのか、さっきまでの余裕の表情は完全に消え、その顔には冷や汗が流れていた。
「ふ…ふふふ…言うじゃあないか。つまり、お前が欲しければ力尽くで奪えと…そう言いたいんだな?」
「その通り…ですわ」
「いいだろう…この俺に向かってその言葉…増々気に入った! お前の事を捻じ伏せ、必ずや俺の女にしてやる!!」
「出来るものならば」
これで話の流れは大方決まった。
けれど、こんな事になれば当然…。
「少々お待ちください」
グレイフィアさんが介入してくる。
これもまた予想出来た事ですわ。
「いきなり、そのような事を申されても簡単に認める訳には参りません。『レーティング・ゲーム』ならばまだしも、人間の少女とライザー様との勝負などと…」
レーティング・ゲーム?
何やら聞いたことのない単語が飛び出してきましたけど、それはまた後でグレモリー先輩か支取先輩にでも尋ねればいいだけですわ。
「いえ。私は一向に構いません。これはこちらから持ちかけた勝負。私は一切引くつもりはありません」
「ですが…」
「それに」
足を組み直してからの少し温くなったお紅茶を一気飲みグビー! ですわ!
そこから更に、上目づかいでライザーの事を睨みつける。
これで彼の防御力がガクっと下がりましたわー!
「私…勝てる自信がありますから」
「ほほぅ…?」
「なんでしたら、そちらの『
「フッ…知らぬが仏とはよく言ったもんだな。ならば教えてやろう。この俺の『全戦力』をな!」
ライザーが指をパチンと鳴らすと、部室の端の方に三度の魔法陣が出現。
今度は数が多い…これがライザーの眷属の数か。
(支取先輩の話では、貴族悪魔の眷属とはチェスの駒に例えられているとか。この人数…まず間違いなく、一人に付き一つの駒を使用していると見るべきかしら。その分、質の方で劣っているようですけど)
ハーレムを作るという目的だけが先行して、キチンとした戦力を作る気が全く無いみたいに思えますわ。
本当に…これでフェニックスを名乗るだなんて、烏滸がましいにも程がありますわよ。
「もうリアスから聞いているかもしれないが、悪魔の眷属とはチェスの駒に例えられている。そして、俺の眷属はご覧の通りのフルメンバーだ」
私が心の中で呟いたことをもう一回言われた。
にしても…マジで『数だけ』って感じがしますわ。
約数名だけ、ほんの少しだけマシな方もいるようですけど…。
大半は今の兵藤さんや、下手をしたら姫島先輩一人だけでも無双出来るんじゃありません?
「これを見てもまだ、さっきと同じような台詞が吐けるのか?」
「吐けますわ。それどころか安心すら覚えました」
「なに?」
「この程度ならば…本当に私一人でも楽勝だと、たった今確信しましたから」
「貴様…!」
さて…と。
ここらで軽く実力差を見せつける為の『仕込み』をば。
精神を集中させてか~ら~の~…えい。
「まだ、そんな強がりを抜かすとは…いい度胸だ。ならば…ミラ!」
「は…はい! ライザー様!」
「この小娘に現実を教えてやれ! 人間と悪魔との力の差というやつをな!」
「ラ…ライザー…様…!」
効いてる。効いてる。
自分達の身に一体何が起きているのかすらも、彼女達は正しく把握できていないでしょうね。
「う…動けません…いや、
「なんだとっ!?」
あらあら。大変ですわね~。
オカ研の皆さんや兵藤さんは、私が何か仕掛けたとすぐに察して、凄く良い笑顔を浮かべていますけど。
「ミラだけではありません…!」
「我々の身体も…!」
「全く動かないのです…!」
「そんな…馬鹿な…!?」
…そろそろ種明かしでもしますか。
このまま見ていても不憫なだけですし。
「たかが『金縛り』程度で、何をそんなにも動揺していらっしゃるのかしら?」
「金縛りだと…!?」
「えぇ。人間と悪魔の身体的内部構造は殆ど同じ。つまり、体が動く原理もまた同じという事。ならば簡単。脳から送られてくる電気信号を首の辺りから私の『サイコキネシス』で妨害してあげればいい。そうすれば、あら不思議。彼女達は首から下を全く動かせなくなるという寸法ですわ」
これは前にムウ様から直々に教わった事ですわ。
実際に金縛りの原理を聞いた時は目から鱗でしたけど。
「あ…有り得ん! たかが人間如きに、こんな芸当が出来るなどと! はっ!? ま…まさか貴様…神器使いかっ!?」
「残念ですが、私は神器の類は一切所持していませんわ。これは全て、私が長きに渡る厳しくも激しい修行によって得た物。決して道具の力などに頼ってはいませんわ」
この力自身は本当に私が小宇宙に覚醒することで身に付けたもの。
聖衣はあくまで身を守るプロテクターであり、自身の小宇宙を極限まで増幅してくれる大切な相棒。
力に依存し、溺れる者達とは根本からして違うのですわ。
「それにしても…思った以上に『動揺』していらしたわね?」
「何が言いたい…」
「動揺する…それは『恐怖』しているという事ではありませんかしら?」
「恐怖…だと…! このライザー・フェニックスが…人間の小娘如きに恐怖するなどと…絶対に有り得ん!!」
そう言いつつも、さっきから凄い冷や汗ですわよ?
「もしも本当にそちらが勝つ事が出来れば、その時は喜んでアナタの女にでもなんでもなって差し上げますわ。そして、私も同じように勝った時の報酬を要求しますわ」
「要求だと…!?」
ここでチラリとグレイフィアさんの方を向かって目配せをする。
彼女もまたコチラに気が付き、私が何かを企んでいる事に気が付いてくれた様子。
ま、ここまで露骨な『お膳立て』をすれば、余程の間抜けでもない限りはすぐに気が付くでしょうけど。
「私が勝った時に求めるもの。それは……」
「それは…?」
「…グレモリー家とフェニックス家による話し合いの場を設けて頂く事を要求しますわ」
「「「……は?」」」
なんとも予想通りの反応。
グレモリー先輩やライザーのみならず、グレイフィアさんも目が点になっている。
「先輩。これが私に出来る最大限の譲歩ですわ」
「じょ…譲歩って…?」
「正式な場でご自身のご両親と、フェニックス家の方々に自分の考えを言ってくるのです。私に出来るのは、その場を整える事だけ。後は、グレモリー先輩自身の手で自分の未来を切り開くべきですわ」
「川上さん……」
今まで彼女は一度も自分の考えをはっきりと両親やフェニックス家の方々の前で口にしていないと聞く。
正式な場でない場所で幾ら吠えても、それは所詮『子供の我儘』に過ぎない。
けど、ちゃんと両家の方々の前で訴えれば、それは立派な『意見』や『主張』となる。
いい加減『子供の時間』は終わり…と言うことですわ。
「リアスお嬢様…まさか、最初からこれが狙いで姫子様を…」
「うぐ…!」
恐らく、彼女的には勝負に勝って婚約そのものを破棄させるつもりだったのだろうが、そうは問屋が卸さない。
私がするのはあくまで、そこに至るまでの『道筋』を作るとこだけ。
そこから先は自分自身の力でなんとかしなくては。
「グレイフィアさん…先ほど言った事は可能で?」
「…両家ともお忙しい身故に、正式に会う機会などは設けられませんでしたが…ちゃんとスケジュールさえなんとかすれば或いは…」
忙しいというよりは、半ば放置状態だったから今みたいに拗れているような気がしますけど…そこに一々ツッコんでいたら、それこそキリがありませんわね。
「しかし…本気なのですか? 本気で姫子様は彼らと戦うおつもりで?」
「はい。というか、こちらは最初から戦る気満々で来てますから」
それがアテナの神託ですしね。
彼らには精々、地上の愛と平和の為の礎になっていただきましょう。
「…承知しました。両家の方々にはこちらから事情の説明と諸々の連絡をしておきます」
「ありがとうございますわ」
「ですが、すぐに勝負をするという訳には参りません。非公式の事とはいえ、それでも準備のためには最低でも一週間ぐらいの時間は頂くことになります」
「構いません。そちらは?」
「お…俺も構わん…」
はい成立。
「では、そろそろ金縛りを解除してあげますか」
ライザーの真似をして私も指パッチン。
すると、眷属の女性達の金縛りが一斉に解除され、力が抜けたかのように全員がその場に座り込んだ。
「くっ…! だが、実際の勝負はこうはいかんぞ!! 覚えておけ姫子!!」
「嫌ですわー。そんな事を覚えている暇があるなら、数学の公式や英単語を覚えた方が遥かに有意義でしてよ?」
「ちっ…! 俺はもう帰る! お前達、行くぞ!!」
「「「は…はい…」」」
完全に負け惜しみな台詞を残して、ライザー一味は魔法陣の中へと消えていった。
ふぅ…やっと室内がスッキリしましたわ。
「スッゲー事になっちまったな…。けど、流石は川上さんだぜ! あのホスト野郎にも全く怯むことなく立ち向かうなんてよ!」
「あの程度、どうと言うことはありませんわ」
マジで脅威に値しない相手でしたし。
あれなら『顔の無い者』の暗殺者達の方が遥かに恐怖を感じる相手でしたわ。
「あの…川上さん? さっきのは…」
「勝負には絶対に勝ちますから、先輩は両家の方々に言うご自分の意見を今から考えておくことをお勧めしますわ」
「わ…分かったわ…」
一足飛びにゴールに向かおうとしても先輩の為にはなりません。
自分の望む未来は自分自身の手でしか得られないのだから。
「それはそれとして…グレイフィアさん。いきなり無茶な事を言って申し訳ありませんでした」
「いえ…もう気にしてはおりません。ライザー様がいた時点で、このような事態を想定出来なかった、こちらにも落ち度はありますから」
なんて御心の広い…。
これがメイドの本来の姿なのですわね。
勉強になりますわー。
「ですが…これは前代未聞ですね。人間の少女と悪魔の貴族とその眷属たちとのハンデマッチとは…」
「普通に考えれば無謀極まりないんでしょうけど」
こちらからしたらハンデになるかどうかすらも本気で怪しいんですわよね。
本気の本気で全力を出したら最悪の場合、秒殺を通り越して瞬殺で終わってしまう可能性もありますし…。
「先程も申した通り、準備には時間が掛かります。時が来たらリアスお嬢様を通じて連絡を致しますので」
「よろしくお願いしますわ」
仕方がない事とはいえ…結果としてグレイフィアさんにご迷惑を掛けるのは心苦しいですわね…。
いつの日か必ず、この御恩は返さなくては。
「ところで姫子様。一つだけ伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい? なんでしょうか?」
「先程の『金縛り』…あれは貴女様の『能力』の一端に過ぎない…と見てもよろしいのでしょうか?」
「一端と言うよりは、私からしたら単なる『小手先の技』に過ぎないんですけど」
「あれで…ですか?」
「えぇ。あの程度の事、少し超能力が使える者でしたら誰でも出来る芸当ですわ」
実際、ムウ様ほどでは無いにしろ、
やろうと思えば不可能ではない筈だ。
「…どうやら、ここに来たのは正解だったみたいですね。報告するべき事が沢山あります」
あらら。もしかして、お仕事を増やしてしまった?
なんだか本当に申し訳がないですわー…。
「当日、私達も見学に行ってもいいのかしら?」
「はい。構わないかと」
「お…俺もいいですか?」
「いい…と思います。この場に同席していらしたので…」
「よっしゃ! ありがとうございます!」
これで兵藤さんの一応の目的も達成ですわね。
「それでは皆様方…これにて失礼致します」
来た時と同じように、丁寧なお辞儀と共にグレイフィアさんは魔法陣の中へと姿を消した。
こうして…私の『最後の試練』が始まった。