今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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今回は戦闘シーンが主になるので、いつもとは違って三人称視点でお送りします。








試合開始! ですわ!

 旧校舎の屋根の上で、姫子はフィールドの全体を見渡す。

 長い髪を掻き上げながら、視線だけを動かしていた。

 

(見れば見るほど、精巧に再現してありますわね。勝手知ったる場所故に、相手がどこをどんな風に利用するのかも分かりますけど)

 

 自分が相手の立場ならどうするか。

 どう動き、どう攻めるか。

 戦闘とは合わせ鏡のような物であると姫子は学んだ。

 今回のようなチーム対抗戦の場合は、その思考がより重要になってくる。

 姫子陣営はたった一人で、チームとは呼べないのだが。

 

(校庭にスリーマンセルの形で綺麗にバラけましたわね。その他には、体育館にも4人ほどいる模様。そして…)

 

 チラッと校舎の三階の方を睨み付ける。

 そこからは、小宇宙とはまた違う、独特の『熱』のような物を感じた。

 

(…あそこにライザーがいる…か)

 

 一気にあそこへと踏み入るのは簡単だ。

 しかし、それではこの戦いを受けた意味が無い。

 今回の戦いで姫子は『全員を倒す』という条件を課せられているのだから。

 

(向こうから出てくるように仕向けるか…?)

 

 どっちにしろ、ライザー以外を全滅させれば嫌でも彼は出てこざる負えなくなる。

 ならば、そこまで深く考える必要は無いか。

 結局の所、今回はとことんまで戦うのは尤もベストな解答なのだ。

 

 姫子が何処から攻めようか考えていると、フィールド全体にいきなりグレイフィアのアナウンスが聞こえてきた。

 

『では、これより川上姫子様とライザー様との変則マッチを開始します』

 

 遂に勝負が始まった。

 十分に勝てる戦いとはいえ、決して油断はしない。

 どんな時も、どんな相手にも全力で立ち向かう。

 それが『姫子流』なのだ。

 

『お互いの勝利条件は、まず姫子様はライザー様を撃破するか、もしくは相手側を全滅させるかになります。ライザー様は姫子様を撃破することになります』

 

 実に分かり易い勝利条件だ。

 ここまでシンプルだと非常にやり易い。

 

『では…試合開始!』

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 試合が始まると同時に、まず姫子は相手の思惑に乗ってやることに。

 普通ならば、数の上で圧倒的優位であるライザー陣営が一気に攻めようとせずに、敢えて戦力を分散させたのは自分を疲弊させる目的があるとすぐに見抜いた。

 そう簡単に疲れるような、軟な鍛え方はしてはいない…が、だからと言って最初から相手を驚愕させては警戒心を強める結果になるかもしれない。

 ここは相手の土俵の上で戦い、その上で圧倒するのが最も聖闘士らしいと判断した。

 

(まずは…あそこですわね)

 

 最初に行くと決めた場所は体育館。

 校舎などと同じぐらいの存在感を放ち、室内でありながら戦い易い場所でもある。

 もしこれがチームVSチームだった場合でも、やっぱりまずは体育館を潰していた事だろう。

 

(変に動いて動きを悟られるのも無様というもの。ならばここは…)

 

 姫子の身体が静かに淡い光を放ち始める。

 そして次の瞬間、彼女の身体は光の粒子だけを残して消え去った。

 

 瞬間移動。テレポーテーション。

 修行の末に異能力すらも身に付けた姫子ならば、この程度の芸当は容易かった。

 

 短距離の瞬間移動の末に到着したのは、体育館の入り口前。

 中に『敵』が待ち構えていると理解した上で、彼女は堂々と扉を開いた。

 

「矢張り来たな…人間!」

 

 そこにいたのは四人の少女達。

 その内の一人には見覚えがあった。

 

(あの棍を持っているのは…あの時、部室で私に襲い掛かろうとして未遂に終わっていた……名前、何でしたっけ?)

 

 あの一度きりだった上に、そこまで印象が深くは無かった。

 名指しで呼ばれていたから記憶にあっただけであって、それでも精々が1が2になった程度の差だ。

 

「どんなに強くてもカンケーなし!」

「このチェーンソーですーぐに!」

「「ばーらばら! ばーらばら!」」

 

 そして、かなり幼い少女と言うよりは幼女に近い子達がまさかのチェーンソーを持って構えていた。

 普通に考えれば危険極まりないが、姫子にとっては全く脅威ではない。

 大量破壊兵器ならばまだしも、チェーンソー程度ならば姫子にとっては玩具に等しい。

 そんな物で本当に聖闘士を倒せれば、誰も苦労などしない。

 

「いかに貴様と言えど、4対1ではどうしようもあるまい!」

「はぁ……」

 

 あの時、部室で仕掛けた金縛りである程度の実力差は見せつけたつもりだったが、どうやら彼女達の『悪魔である』という自負は、その程度のことでは揺らぎもしなかったようだ。

 そこだけは普通に感心した。

 

「仕方がありませんわね…」

「「え?」」

「な…何ッ!?」

「なんだ…それはっ!?」

 

 敵を目の前にしているにも拘らず、なんと姫子はその場で『腕組み』をしてしまった。

 完全に相手を舐めている行為だった。

 

「何が悲しくて、アナタ達程度に対して露骨なファイティングポーズなどをしないといけませんの?」

「お前…その言葉、今すぐに後悔させてやる!!」

「人間の分際で我々を舐めた事を!!」

「絶対に許さないんだから!」

「一気にやっつけてやる!」

 

 怒りに身を任せ、陣形も何もない状態で姫子に向かって突撃してくる四人。

 それを見て、姫子は不敵な笑みを浮かべた。

 

「それなら…今から見せて差し上げますわ。あなた達と私との間にある絶対的な実力差を。そして、思い知りなさい…」

 

 姫子の全身から黄金のオーラが立ち上る。

 その背後に浮かぶのは、雄々しき双角を携えし黄金の野牛!!

 

「金色の牡牛…その恐ろしさを!!」

 

 姫子の組んでいる両腕が眩い光を放ち、圧倒的な力と共に超絶的な威力を解き放つ!!

 それは一瞬で飛び掛かってくる彼女達は愚か、体育館全体を包み込んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グレート…ホーン!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」」」」

 

 襲い掛かってきた四人は、逆に凄まじい威力の前に纏めて吹き飛ばされ、その手に持っていた棍やチェーンソーは粉々に消し飛ぶ。

 技の余波はそれだけに留まらず、なんと体育館全体をも巻き込み、文字通り跡形もなく消滅させた。

 

 辛うじて残っていたのは姫子が立っていた場所の床のみで、それ以外は何もかもが無くなってしまった。

 

 ドサドサドサドサ!

 

 遥か上空へと吹き飛んだ四人が、ついさっきまで体育館があった場所へと落下してきた。

 全員が白目を剥き、気を失っている。

 

「まずは先制…ってところかしらね」

 

 戦闘不能と判断されたのか、四人はゆっくりと姿を消していった。

 この辺の説明はグレイフィアから軽く受けているので、今さら驚いたりはしない。

 

『ラ…ライザー様の『兵士(ポーン)』三名…及び『戦車(ルーク)』一名…撃破(テイク)…』

 

 グレイフィアのアナウンスを聞き、姫子は撃破をした安堵よりも、より純粋な疑問を口にした。

 

「ふーん…彼女達、兵士と戦車でしたのね。見た目からじゃ全く分かりませんでしたわ」

 

 一応、駒の特徴については前にソーナから軽くレクチャーを受けた事があるので知っていたが、今回のソレは全くその性能を活かし切れていないように感じた。

 姫子からしたら、全く倒したという実感が湧かない。

 

(まずは四人。そして、位置的に次に来るのは恐らく…)

 

 頭上に明らかな殺気を感じつつ、敢えてそれをスルーする。

 それを知ってか知らずか、その『相手』は容赦なく不意打ちを仕掛けてきた。

 

「む?」

 

 突然、姫子の周囲に大きな爆発が連発する。

 それは彼女の姿を完全に覆い尽くすほどで、真面な相手ならばそれだけで確実に戦闘不能に追い込まれていただろう。

 そう…『真面な相手』…ならば。

 

「どれだけ粋がろうと所詮は人間…。先程の技には驚かされたけど、あれだけの技を放ったのならば相当の疲弊は免れない。倒すのは容易いこと…」

 

 上空にいたのは、フードを深く被った魔術師風の服を着た女が悪魔の翼を広げて悠々と浮いていた。

 その顔には余裕の笑みを浮かべて。

 

「ライザー様には申し訳ないけど、これで終わりね。なんて呆気ないのかしら。では、最後にあの小娘の姿を確認して……え?」

 

 爆煙が消えると、そこにはなんと無傷の姫子が普通に立っていた。

 それどころか、服に汚れすらついていない。

 

「そ…そんな馬鹿なっ!? 確かに手応えはあった筈なのにッ!?」

「その威容…もしかして、アナタが『女王(クィーン)』だったりしますの?」

「だ…だったらどうだというのかしら?」

 

 確実に倒したと思ったら、実は完全に防がれていた。

 彼女の戦意を削ぐには十分過ぎる効果を発揮した。

 

「そう…でしたら、もう一つだけ質問を。今の攻撃から察するに…私が先程の彼女達を倒さなかった場合、仲間ごと体育館を爆破して私を倒すおつもりだったりします?」

「それがどうかしたのかしら?」

「否定は…しないのですわね」

「当然よ。僅か4人の犠牲で目的を果たせるのならば安いものだわ。こっちの総合戦力は16人。分かる? たった四人ぐらい潰れても何の支障もないのよ」

「そう…ですか…」

 

 姫子の拳が怒りで震える。

 敵だったとはいえ、勝利の為の犠牲とされる予定だった彼女達に同情を禁じ得ない。

 久し振りに…本気で誰かの為に怒った。

 

「どんな技を使ったのかは知らないけど…どのみち、お前が選べるのは敗北の一つのみ! 今度こそ確実にトドメを刺してくれる!」

「トドメ…ねぇ…。ならば、私は…」

 

 この時、初めて女王の女は姫子が『目を瞑っている(・・・・・・・)』事に気が付いた。

 だからなんだという話ではあるが、姫子にとっては非常に重要な事だった。

 

「今からアナタに対し…二つの選択肢を与えましょう」

「…なんですって?」

 

 今、危機に陥っているのは向こうの筈なのに、ここで選択肢を与えるとはこれいかに?

 女王には姫子が何を言おうとしているのか全く分からなかった。

 

「もし、この私を恐れて自分の身を案じる事が出来るのであれば、今すぐにこの場から立ち去り、リタイアしなさい。そうすれば、私は貴女の事を許して差し上げましょう。ですが、もしこの場に残ってまだ戦うというのであれば…アナタは…」

 

 姫子の全身から、さっきまでとはまた違う異様な気配が漂い始める。

 それは、まるで宇宙の深淵を覗くが如き、深く澄んだ小宇宙。

 どこまでも神聖で、どこまでも穢れの無い力。

 

(な…なに…? この異常とも言える気配は…!?)

 

 流石の彼女も、今の姫子は明らかにおかしいと本能で感じたのか、思わず後ずさりをしてしまう。

 

「とても…悲しい選択をしてしまったことになります」

 

 その掌を静かに顔の前まで持っていく。

 それだけで、彼女の雰囲気が激変した。

 

「今の私に慈悲は無い。刃向う者は全て滅ぼす」

 

 力の上昇は止まらない。

 悪魔たちが知る『力』とは完全に異質な種の『力』。

 それが徐々に膨れがっていく。

 

「我を畏怖せよ。我に跪き…我を崇めよ」

 

 完全な上から目線に、女王の怒りが恐怖を消し去った。

 彼女は怒髪天を突くかのように、先程と同じ爆発攻撃を仕掛けてこようとする。

 

「世迷い事を…抜かすな!! 人間の小娘風情が…神を気取るなぁぁぁっ!!!」

 

 攻撃が当たる寸前、姫子は真言を唱え始める。

 一言、一言の度に小宇宙が増大していくが、女王はそれに気が付かない。

 

 そして…全ての真言を唱え終えた時…姫子は静かに呟いた。

 

 霊  験  在  リ

 

「カーン」

 

 瞬間、姫子の周囲に真紅に輝くドーム状の障壁が出現し、女王の攻撃を全て防いでみせた。

 

「は…弾かれたッ!?」

「『カーン』とは『不動明王』の意。今、この身に宿る力だ」

「不動…明王…!?」

「全てを焼き尽くす『迦楼羅焔(かるらえん)』は一切の悪を浄化する。この焔が我が身に宿る限り、悪意ある力は私には一切届かない」

「ば…馬鹿な…!? 有り得ない…!」

 

 この『有り得ない』は、自分の攻撃が防がれたことに対して言った台詞ではない。

 姫子から感じる『小宇宙』の強大さに思わず口にした言葉なのだ。

 

「そして…お前は己の行った選択を後悔する事となる」

「あ…あぁぁぁ!!?」

 

 さっきからずっと閉じられていた姫子の瞼が…そっと開かれた。

 

 

 必   滅   セ   ヨ

 

 

(な…なに…これは…!? 突如として、有り得ない程の圧倒的な力が解き放たれた!! けれど…この娘がしたことはたった一つ…その両目を見開いただけ(・・・・・・・・・・・)!!)

 

「私は、とある『偉大なる御方』を見習い、自らの目を意図的に閉じて、それを開放した時に『自らの小宇宙が爆発的に増大する』という自己暗示を掛けている」

 

 現時点で既に超絶的な領域にあるというのに、姫子の小宇宙はまだまだ増大し続ける。

 その勢いは全く留まることを知らない。

 

「故に、この状態の時の私の瞳に映る敵は必ず……滅ぶ」

 

 胸の前に翳した両手の掌の間に『宇宙』が生まれる。

 それはもう人知を超えた何かだった。

 

「オーム…!」

 

 その時、確かに女王は垣間見た。

 姫子の背後に『曼荼羅』が浮かんでいるのを。

 

「こ…この小娘の力は…悪魔だけではなく…堕天使も…天使たちすらも超越して…完全に神の領域に到達している!!! お前は…お前は本当に人間なのかっ!!??」

 

 だが、その疑問に応える者はいなかった。

 あるのは純然たる一つの真実のみ。

 

 自分は…自分達は、絶対に挑んではいけない相手と戦ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天     魔     降     伏!!!!!」

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ試合は続きますわー!

最悪、三話ぐらいに分ける可能性もありますわー!

その時は『またか』と思って素直に諦めてくださいましー!




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