ここから間髪入れずに次に行くか、それとも少しだけ閑話を挟むかはまだ未定です。
無事にライザーとの勝負も終わり、私の日常に再び平穏が戻ってきた。
まだまだ若いので、お風呂にゆっくりと浸かってから、一晩ぐっすりと眠れば体力も小宇宙もすっかり元通り! ですわ!
昨日の今日なので、まずは色々と心配してくださった支取先輩にご報告する為に、私は昼休みに兵藤さんと一緒に生徒会室へと足を運んだ。
「報告は聞いています。川上さん…まずはおめでとうございます」
「ありがとうございます」
一番最初に祝いの言葉を言うとは…流石ですわ。
普通なら、このような場面では先に色々と言ってしまう所でしょうに。
「アナタなら勝つとは思っていましたが、まさかたった一人で圧勝してしまうとは。本当に感服しました」
「いえいえ。それ程でも。それに、向こうにも見所がある人物が少しいましたし」
「そうなんですか?」
「えぇ。寧ろ、王である筈のライザーの方が一番ヘッポコに感じましたわ」
「ヘッポコ…」
もし仮に、カーラマインさんやイザベラさんに鳳凰幻魔拳を使ったとしても、彼女達ならば無様に倒れたりせず、幾多の強敵たちのように最後の一瞬まで抗う事を止めなかったでしょうね。
本当に…出会い方さえ違っていれば、良い友になれていたかもしれないのに。
いや…別にあのような出会いでも構わないか。
友人を作るのに『遅すぎる』ということは無いのだから。
「な…なぁ…お前も試合を見てたんだろ? どんな感じだったんだ?」
「いやもう…一言じゃ言い尽くせねぇよ。大抵の奴は殆どワンパンだったし」
「マジかよ…! 上級悪魔の眷属を一撃って…」
「しかも、色んな必殺技を使って、スゲー迫力だった…! 魔王様たちとかポカーンって顔になって、開いた口が塞がらなくなってたし」
「冗談だろ…? 何をどうすりゃ、魔王さまにそんな顔をさせられるんだ…?」
向こうでは男の子たちがらしい会話をしているし。
あの二人…何気に仲が良いですわね。
「今回の試合で、私も正式にアテナ様に認められました。これからはより一層、気を引き締めて、人々と世界の平和の為に邁進していかなくては」
「本当に…あなたって人は…一体どこまでストイックなんでしょうか…」
ストイックと言うか、これが聖闘士にとって当たり前の事ですし。
私達の戦いに終わりはなく、この命尽き果てても、この意志と魂は次なる世代へと受け継がれていく。
実際、私達も先代達の魂を継承して、こうしているのだから。
「そう言えば、リアスの事はもう聞きましたか?」
「まだですわ。なので、放課後にでもオカ研の方にお邪魔して、グレモリー先輩の口から直接伺おうかと」
「成る程。確かに、その方が良いかもしれませんね。リアスも、自分の口で報告をしたがっていましたし」
「あの方が?」
そんな事を言っているってことは…どうやら、上手くはいったみたいですわね。
「もしよろしければ、今後の参考の為にどんな風に戦ったのかを教えてくれませんか?」
「勿論。そうですわね…まずはー…」
そうして、私が時間が許す限り、支取先輩に試合の時の様子を自分なりの主観で話していくのだった。
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放課後になり、私は当初の予定通りに兵藤さんと一緒にオカ研の部室まで向かい、昨日の報告を聞くことに。
「…で? あれから話し合いはどうなったんですの?」
「うっ…単刀直入に聞くわね…」
「回りくどいのは苦手なもので」
こーゆーのはストレートなのが一番でしょう?
「そう…ね。結果だけで言えば、婚約自体はちゃんと破棄出来たわ」
「おぉ~…! 良かったじゃないスか!」
「それでこそ…ですわ」
そうじゃないと、私がお膳立てをした意味が無くなってしまいますもの。
「実は、会談に向けてちゃんと話すべき内容を書いたメモを用意してたんだけど、いざ実際に話し合いの場になると急に緊張しちゃって。結局、最初から最後まで自分の言葉で話してたわ」
「それが一番ですわ。ご両親も、フェニックス家の方々も、グレモリー先輩の本心が聞きたかったでしょうし」
「お父様たちもそう仰っていらしたわ」
親として、子供の本心を知りたいと思うのは自然な事。
それだけ愛しているという証拠なのだから。
「とは言っても、少し怒られたりもしたのだけれどね。もう少し早く、こんな風に行動出来なかったのかって」
でしょうね。
だって、彼女が言っていた事は殆ど子供の我儘でしたし。
それが通用するのは小学生まででしてよ?
「後輩の女の子に背中を押されなきゃ、話し合うという選択肢すら思い浮かばなかった。流石に今回は本気で反省したわ…」
まぁ…この人の口からまさか『反省』なんて単語が飛び出してくるだなんて。
明日は雪でも降るかもしれませんわ。
「…なんで驚いた顔をしているの?」
「それが、普段の貴女の評価ってことよ、リアス」
「朱乃!?」
私が言おうとしていた事を姫島先輩が言ってくれた。
きっと、普段から同じような事を考えていたんでしょうね。
その心中…お察ししますわ。
「けど、あの時の川上さんの戦いぶりは本当に凄かったよ。まさに『無双』って感じだったね。一体、どれだけの過酷な修行をすれば、あれ程の域に到達できるのやら…」
「どれだけと言われましても…ねぇ…?」
「そうだよなぁ…とてもじゃねぇけど、一言だけじゃ言い表せねぇよなぁ…」
この中で唯一、兵藤さんだけが私の気持ちを理解出来ている。
彼もまた、現在進行形で過酷な修行をしている真っ最中なのだから。
「あの…川上先輩」
「塔城さん? どうしましたの?」
なにやら真剣なお顔。
いつものクールな彼女はどこへやら。
「私も修行をすれば、先輩のように強くなれますか?」
「うーん…どうでしょうか…」
なんとも答えにくい質問を。
普通なら『はい』と言いたくなるのでしょうけど、これに関しては資質などの問題もありますし…。
「やってみなくては分からない…としか言えませんわ。ごめんなさい」
「いえ…気にしないでください。ハッキリと否定されなかっただけでも嬉しいですから」
あら前向き。
向上心があるのは良いことですわ。
「今度、暇な時で構わないので、少しだけ私の修行を見てくれませんか?」
「私で良ければ喜んで」
「ありがとうございます」
後輩の面倒を見る…か。
なんだか初めて先輩らしいことをする気がしますわ。
「あれ? なんで小猫ちゃんはOKなんだ? 俺の時は断られたのに…」
「あの時はまだ、私は聖闘士になっていませんでしたし。けど、今は違いますから」
「そういうもんなのか…」
「そういうもんなのですわ」
女心は複雑なんですわよ。兵藤さん。
「あら?」
「ん?」
「これは…」
部室内に突如として現れた魔法陣。
この形状は…フェニックス家の?
「まさかライザーが…」
だとしたら、相当に面の皮が厚すぎますわよ。
今度は幻魔拳では済ませませんわよ?
「姫子さん!!」
「レ…レイヴェルさん?」
なんと。
魔法陣から現れたのは、ライザーの妹であるレイヴェルさんだった。
これまたどうして彼女がここに?
「やっぱりここにいましたのね! もしかしたらと思って来て正解でしたわ!」
「は…はぁ…」
私に会いに来た…?
けど、なんで?
彼女が私に会いにくる理由が全く思いつきませんわ。
「一輝さまは? 一輝さまはどこにいらっしゃるのッ!?」
「い…一輝さま?」
ま…まさか…一輝さまを追って地上にやって来たんですの?
なんともまぁ…恋する乙女の行動力は凄まじいですわ…。
「ね…ねぇ…一輝って、あの試合の時に来ていたアナタの立会人の…?」
「えぇ…あの方ですわ。どうやらレイヴェルさん…彼に惚れてしまったようでして…」
「まぁ…それはまた…」
「実際にカッコよかったですしね…」
はい。この場にいる女子だけでの緊急の女子会開幕ですわ。
当然のように兵藤さんや木場さんは完全放置。
「なんか俺等…蚊帳の外だな…」
「仕方がないよ…一誠くん…」
男の悲しい性ですわ。
大人しく諦めてくださいまし。
「えっと…その…一輝さまは昨夜、お帰りになられてしまって…」
「そうなんですの…」
うーん…流石に心苦しい…。
レイヴェルさんの気持ちが理解出来るだけに余計に。
「だ…大丈夫ですわ! 別に一生会えないという訳じゃございませんし! 元から神出鬼没な所がある方ですので、また何かあれば会える機会もあるかもしれませんわ!」
「また何かあれば…分かりましたわ! このレイヴェル・フェニックス…めげずに一輝さまを待ち続けます!」
その綺麗な瞳をメラメラと燃やして決意をするレイヴェルさん。
一輝さま…随分と厄介な女の子に惚れられましたわね…。
「ところで、ライザーはどうしているのかしら?」
「お兄様なら、姫子さんに負けた事が相当にショックだったみたいで、部屋に引き篭もっていますわ」
妹と兄の、この差よ…。
完全に仮面が取れましたわね。
「それとは逆に、眷属の皆は姫子さんに対するリベンジに燃えて修行をしていますわ」
「それは…今から実に楽しみですわ」
カーラマインさんやイザベラさん辺りは、本当に修行の仕方次第じゃ大きく化ける可能性を秘めている。
っていうかぶっちゃけ、下手をしたらライザーよりも強くなりますわよ?
いやマジで。
「お父様もお母様も『暫く放っておけ』って言ってましたし」
「こればかりは時間が解決するのを待つしかない…のかもしれませんわね」
私がしたのは精神攻撃ですし。
心の傷は時間経過でしか癒せませんし。
「それよりも姫子さん」
「なんですの?」
「あなた…一輝さまと親しげでしたけど、どういう関係なんですの?」
「どういう関係…」
改めてそう聞かれると、私とあの方々ってどんな関係になるのかしら?
少し前までは師と弟子みたいな感じでしたけど、今は…。
「仲間…ですかしら?」
「仲間?」
「えぇ。正確には『私が仲間入りを果たした』って言った方が正しいですけど」
新世代の黄金の十二人。
そこに本来いない筈の『十三人目』として私が加入した。
本来ならば完全なイレギュラーではあるけれど、遥か神話の時代には確かに『十三人目の黄金聖闘士』が実在した。
そしてそれは、今から243年前にも…。
その方こそが、この私の先代である人物…。
「あの一輝さまと仲間…羨ましいですわ…」
深い深い溜息。
これはまた重傷ですわね。
一輝さまも罪深いお方。
「この子…こんな感じだったっけ…?」
「うふふ…♡ 恋する乙女はいつの時代も無敵ですもの」
グレモリー先輩はドン引きし、逆に姫島先輩は完全に楽しんでいる模様。
こうして、私の日常に再びの平穏が訪れた。
けれど、この時の私はまだ知らなかった。
この駒王町に『悪意ある者』の魔の手が迫っている事を。
そして…それが、この右腕に宿る『聖剣』を解き放つ事件になることを。
私以外の『次世代の黄金聖闘士』が降臨している事を。
『聖剣を持つ者』達が集結しつつあることを。
私はまだ…何も知らなかった。