そういや、ハリウッド版の星矢、なんかめっちゃ評判悪いですね。
ぶっちゃけて言うと、私もあんまり見に行きたいとは思えない作品です。
だからこそ頑張りたいって気持ちが強くなりました。
ある意味で最高の反面教師になってくれたかもしれませんね。
「「「「コカビエル?」」」」
「えるー?」
「そうだ」
アテナと教皇の勅命で私の元までやって来たクレイオスとソニア。
二人を自宅まで招き入れ、私達は話を聞いていた。
「コカビエルさまと言えば…聖書にも名が刻まれている程の堕天使では…」
「フッ…良く知っているな。流石は元シスターだ」
「そ…それほどでも…」
あら。クレイオスに褒められてアーシアさんが照れてますわ。
ま、傍目から見てもクレイオスは立派な美少年ですけど。
「コカビエル…旧約聖書偽典『エノク書1』に現れる天使ではあるが、後に堕天使と成り『
「コカビエルは人間達に天体の
「伊達に錬金術師ではないと言うことか…凄い物知りだな…。それに対して平然と追加情報を加える姫子も姫子だが…」
「そうですか?」
「そうだ。私なんて、今回の任務に際して急いで勉強をして、その時にようやく知ったぐらいなのに…」
ソニアは真面目で努力家ではあるんですけど、どこか抜けている所もあるんですのよね。
そこが彼女の魅力でもあるんですけど。
「で、そのコカビエルがどうかしたのかな?」
「…この駒王町に密かに潜伏しているらしいという情報が来た」
「なんですって?」
あの雑魚雑魚堕天使共とは完全にレベルが違う、最上級とも言える堕天使が町中に隠れ潜んでいる…ですって?
「その目的は?」
「戦争…だそうだ」
「はぁ?」
戦争って…このご時世に言うセリフですか?
ある意味、最も禁句な単語ですわよ?
「どうやらコカビエルと言うのは俗に言う『戦争狂』という部類の奴らしくてな。遠い昔に行われた三大勢力間の戦争の時の事を未だに引き摺っているらしいとの事だ」
「なんとも傍迷惑な堕天使サンですこと」
昔の事が忘れられないって気持ちは理解出来ますけど、嘗ての因縁をこの時代にまで持ってくるのは間違ってるでしょ。
「平和な時代に馴染めない…いや、三大勢力の今の関係に納得がいっていないと言う方が正しいのかしら?」
「…その通りだ。姫子」
「我々とは違い、悠久の時を生きる三大勢力たちにとって、数百年前の戦争はついこの間のような感覚なのだろう。故に、今のように不干渉状態に等しい関係がもどかしいのだろう」
「はぁ~…なんと言いますか…」
三勢力間のバランス…と言う面では私達も決して他人事ではないんですけど。
地上のアテナ。海界のポセイドン。冥界のハーデス。
幾多の聖戦の末に、この三大勢力は休戦協定を結んだ。
これ以上の戦いは互いにとっても無意味であると判断したから。
オリュンポス十二神族も、この協定には納得をしているようで、大神ゼウスや月光神アルテミス、太陽神アポロンなども、特に何も言わなかったらしい。
「まさか…駒王町に来たのは、グレモリー先輩や支取先輩達がいる事が関係して…?」
「鋭いな姫子。その『まさか』だ」
やっぱり…。
いつの世も、嫌な予感だけは当たってしまうものね。
「ど…どういうことですか?」
「簡単な理屈さ。アーシアさん。リアス・グレモリーとソーナ・シトリーは現四大魔王の妹たちだ。もしそれを傷つけられたら…もしくは殺害でもされたらどうなるか…」
「間違いなく、魔王様たちは激昂して戦争を視野に入れてしまうでしょうね」
実際問題、別にこれはあの二人を殺さなくても構わない。
要は『戦争の火種』さえ起こせればいいのだから。
「でも待って下さる? 確かに血族を殺されれば悪魔たちとの戦争には発展するでしょう。でも、それだと二大勢力だけで終わりますわよ? コカビエルはどうやって天使たちにも喧嘩を売るつもりで?」
「『聖剣』だ」
「…なんですって?」
聖剣って…あの『聖剣』の事を指してますの?
それにしても、まさかクレイオスの口から、その単語を聞くことになろうとは…因果ですわね。
「正確には『聖剣の贋作』だがな」
「ほぅ…贋作?」
「そうだ。天使勢力…と言うよりは教会側は密かに『聖剣エクスカリバー』の偽物を作りだしていた。それを自分達の組織の旗印とする為に。だが、その偽物も嘗ての戦争で砕けてしまった」
「偽物だから当然ですけど」
「今は、その偽物の破片を再利用して、そこから七本の『偽エクスカリバー』を生み出して保管をしていた。これまた組織の象徴とする為に。だがしかし…」
「それがコカビエルによって盗まれた…ですか?」
「正解だ。姫子は聖闘士だけでなく、探偵にも向いているかもしれぬな」
「御冗談を。私は聖闘士であると同時に『姫』を目指す者。寧ろ、私は探偵に依頼をする側ですわ」
因みに、こういった推理力が鍛えられているのは、単純に最近の私のマイブームが推理小説だからですわー!
「それは『聖剣計画』と呼ばれ、違法な研究所で身寄りのない子供達を利用しての人体実験などを繰り返していたそうだ。偽物を扱うには『因子』と呼ばれる者が必要らしく、その子供達に人工的な『因子』を埋め込む事をしていたらしい」
「…その研究所は?」
「今はもうない。計画を危険視した悪魔たちによって消滅したと聞いた」
「それを聞いて安心しましたわ」
もしもまだ続けているのなら、私がこの手で粉々にしていたところですもの。
「だが、生き残りはいたようでな。その内の一人をあろうことかコカビエルが連れ出したらしい」
「『バルパー・ガリレイ』。聖剣計画を主導していた男で、聖剣に対して異常なまでの執着心を持っていたとのことだ」
「異常なまでの執着心…ね」
聖剣に憧れる気持ちは理解出来ますけど…『執着』ってのは頂けませんわね。
古今東西、何かに執着している奴に碌な奴はいないと相場が決まってますから。
「どうやら、この駒王町にある龍脈を利用して、7本ある偽聖剣の内の盗み出した4本を統合しようと企んでいるようだ」
「偽物を幾ら束ねても、本物以上には絶対にならないでしょうに」
「全くだな」
一応、例外はありますけど、それは『作り手』が文字通り死に物狂いで研鑽を重ねた結果であって、薄汚い欲望に塗れた心で同じことをしても全く意味が無い。
最悪、元の偽物にすら劣る代物が出来上がる可能性すらある。
「それを知った天使たちは、辛うじて無事だった三本の偽聖剣のうちの二本を教会からの使者に託し、日本の駒王町へと向かわせたとの事だ」
「…馬鹿ですの?」
「初めて聞かされた時、私達も全く同じ事を思った」
「でしょうね」
聖書に名が記される程の相手に対して、派遣したのがたった二人?
しかも、偽物の聖剣を持たせて?
冗談抜きでアホか。
そんなの単に、敵に餌を与えに行くようなもんでしょうが。
もういっそのこと、その二人を派遣した奴が密かにコカビエルと内通していたって言われた方が自然ですわよ。
「その二人と言うのが、我等と同い年ぐらいの少女達らしい」
「え? 自殺志願者?」
「違う…と信じたい。少なくとも、本人達は『本気』だろうしな」
「聖闘士ならばいざ知らず、偽物聖剣を持っただけの素人では…」
「まず間違いなく、無駄死にするだけだ。最低でも、白銀聖闘士1名に青銅聖闘士4名ぐらいは派遣しなくては。もしくは、黄金聖闘士一人」
「それって…私達の存在自体が過剰戦力って事になりません?」
「黄金聖闘士3人だしな…」
その気になれば、私達だけで国と戦えますわよ?
黄金聖闘士というのは、たった一人いるだけでも戦局を決する程の実力を有しているのですから。
「私達がいるのは、万が一の事態に備えての事だしな」
「戦争経験者であるコカビエルが、単に力押しだけで事を起こすとは思えない。必ず何かの協力を得ている筈だ」
「例えば?」
「『顔の無い者』」
「「「!!!」」」
顔の無い者…異形の姿を持つ暗殺集団…。
いや…金次第で動く奴等なら有り得るか…。
「それに関しては確証がある訳ではない。だが、姫子はこれまでに駒王町で二回も遭遇し、これを撃破してきた」
「二度あることは三度ある…ですの?」
「少なくとも、教皇はその可能性も無視できないと判断した」
「だから、私達が派遣されて来たんだ」
「やっと納得しましたわ…」
顔の無い者の暗殺者とコカビエルを同時に相手をするのは少し面倒ですし。
分担出来れば、それに越したことはありませんわ。
「それに伴い、我等も一度、グレモリー勢力やシトリー勢力とコンタクトをする必要があるだろう」
「それが良いですわね。情報の共有化は重要ですから」
いざと言う時に情報不足で連携が出来ない事態だけは絶対に避けたいですしね。
「でも、どうやって接触する気ですの? 駒王学園は基本的に部外者は立ち入り禁止ですわよ?」
「それならば問題無い。実は今回の任務に際し、私達は姫子と日中に渡って行動を共にしろと言われているんだ」
「日中…? それって…もしかして…!」
一つの可能性が私の頭の中を過る。
それを証明するかのように、クレイオスとソニアが揃ってポケットの中から見覚えのある生徒手帳を取り出して見せた。
「そ…それって…駒王学園の生徒手帳…やっぱり…」
「そう言う事だ」
「明日から、私達は駒王学園に転入生になる…ってわけだ」
「完全に職権乱用ですわ…」
「それと、紫龍の弟子にも会ってみたいと思っていたしな」
「…そうですわね」
クレイオスは、あのシュラ様の一番の盟友…。
そして、紫龍さまはシュラ様から聖剣を継承した唯一無二の人間。
その弟子である兵藤さんの事が気になっても無理はありませんわ。
「あと、今回の事件と関係あるかどうかは不明だが、姫子に伝えておかねばならぬことがある」
「なんですの?」
「この町に…謎の『第三勢力』が潜り込んだ。姫子…お前を追ってな」
「私を…追って…?」
なんでまた私を?
黄金聖闘士になったから…じゃないですわよね。
それなら、クレイオスやソニアも狙われるでしょうし。
「これはあくまで我の推測だが…姫子が『聖剣』を継承しているからやもしれぬ」
「えっ!? 姫子さんが聖剣をっ!?」
「ほぅ…?」
あらら…遂に言っちゃいましたわね。
出来れば、ギリギリまで黙っておこうと思っていたのに。
「それを言うということは、その『第三勢力』とやらは聖剣が関係している相手…?」
「恐らくはな。今のところは敵意ある小宇宙を出してはいないが、だからと言ってこれから事態がどう転がるか分からない。警戒しておくに越したことはない」
「肝に銘じておきますわ」
全く…コカビエルの一件だけでもお腹一杯なのに、そこから更に謎の第三勢力って…一介の女子高生を過労で倒れさせるつもりですの?
今になって、後始末に追われている支取先輩の気持ちが理解出来ましたわ…。
「ところで、学園に転入するって事は、お二人は何処かに住むと言うことになるんですの?」
「あぁ。その辺も抜かりはない」
「聖域の方で、私達の取り敢えずの住居も確保しておいてくれたのさ」
「因みに何処ですの?」
「「駒王マンション」」
「はぁっ!?」
それって…町の中央区にそびえ立ってる高級マンションじゃないですの!
流石は聖域…金の使い方が派手ですわ…。
「と言う訳だ。少しの間になるかもしれないが、よろしく頼む」
「分かりましたわ…」
なんでしょう…何故か幸先が不安になってる自分がいるんですけど…。
主に学園生活的な意味で。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
駒王町 某所
暫く姿を消していた、はぐれ神父であるフリードは、とある相手と対峙していた。
「…どうしても協力は出来ないと言うのだな?」
「あぁ。どれだけ言われても答えは『NO』の一択だ」
五対十枚の雄々しくも黒い翼。
強さと威厳を兼ね備えた歴戦の堕天使。
「コカビエルさんよ…確かにアンタは強い。少なくとも俺よりはな。それは認めるさ。けどな…」
「なんだ」
「どんな場所にも『上には上』がいるもんなんだよ」
いつも飄々としているフリードではあるが、流石に今は緊張しているようで、先程からずっと冷や汗を掻きつつ足を震わせていた。
それでも気丈に振る舞っているのは、彼が『真の強者』を知っているから。
「俺は知ってる…見ちまった。どんなに逆立ちしても絶対に勝てないって思わせる奴を。あの嬢ちゃんは…俺達とは立ってる場所が…次元が違う」
「ふん。どんなに強かろうと所詮は人間。俺にとっては蛆虫も同然よ」
「その強気が、あの嬢ちゃんを前にしても続けられたらいいな」
「なんだと?」
まるで、フリードの言う相手が自分よりも強いと言っているような台詞。
コカビエルのプライドがそれを聞き逃さなかった。
「その人間が俺よりも強いと抜かすのか?」
「そう言ってんだよ…実際にな。悪いがな…最初から『絶対に負ける』と分かりきってる喧嘩をする程、俺様も馬鹿じゃねぇンだよ。あの嬢ちゃんがいる以上、アンタの企みは絶対に成就しない。負け戦は御免だっつーの」
「貴様…!」
何があっても『あの子』を敵に回すような真似だけはしたくない。
あの時、レイナーレが手も足も出せずに倒された時…フリードは見た。
『彼女』の全身から迸る『黄金の力』を。
どんな奴が相手でも関係なく、正義と平和の為ならば必ず倒す。
そう思わずにはいられないような、圧倒的な『善』の力を。
「別に俺ちゃんは『愛』とか『正義』とか『平和』とかはどーでもいいけどよ…だからこそ『何があっても絶対に敵に回してはいけない奴』ってのが分かるんだよ」
「俺は敵に回してもいいと?」
「少なくとも、あの嬢ちゃんよりは万倍マシだ…ね!!」
「クッ!?」
話しながらも密かに準備をしておいたサングラスを掛けながら、地面に向けて閃光手榴弾を叩き付ける。
この場に一瞬だけ全てを覆い尽くすほどの光が出現し、コカビエルも反射的に右腕で自分の顔を覆う。
光が止むと、そこにはもうフリードの姿はどこにも無かった。
「ふん…まぁいい。はぐれ神父の一人や二人、どうなろうとも関係ない。俺は『目的』さえ果たせればいいのだからな」
暗い笑みを浮かべながら、コカビエルはその手に巨大な光の槍を作りだし、それを天に掲げた。
「さぁ…『戦争』を再開しよう」
フリードの仲間化フラグが立ちました。
元から彼は敵キャラとして出す予定は無かったので。
その分、『例の二人組』は序盤だけ冷遇するかもしれませんが。