今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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本当に世話の焼ける二人組! ですわ!

 鞄を持って学校を後にした私達。

 一応、体裁的には『皆で仲良く帰っている』なので、こうしないと不自然だから。

 

「さてはて…取り敢えず、まずはこうして商店街の方に足を運んでみましたけど…」

「流石に、ここにはいないかなぁ…。人目も多いだろうし」

「あんな恰好で人込みの中を徘徊すれば、まず間違いなく悪目立ちをするだろうしな」

「一発で通報案件だろう。そうでなくとも、SNSなどの良いネタにされるのがオチだ」

 

 クレイオスの口からSNSなんて単語が飛び出すとは…。

 もしかして…やってる?

 

「ふむ…やっぱり、ここには来ていない……ん?」

 

 えっと…気のせいかしら?

 ファミレスの前に非常に見覚えのある奇怪な格好をした二人組の少女が、何やら怪しげな絵画を持って立ち尽くしているのだけど…。

 

(あれは…まさかとは思うけど、正式な許可も無く路上で無断で物を売ろうとしてますの?)

 

 …どこからツッコんでいいのかしら?

 流石に、このまま放置は出来ないから話しかける事にしよう。

 そうしないと、巡り巡って自分達にも被害が来そうな気がするから。

 

「…そこのお二人さん。一体何をしてらっしゃいますの?」

「む? お前達はさっきの…」

「イリナ…お前遂にそこまで…」

「ち…違うのイッセーくん! これには海よりもふか~い事情があって…」

 

 どんな事情があれば、商店街のど真ん中で無許可ワンマンフリーマーケットをする羽目になるんですの?

 

「おい…姫子。なにやら我等も周囲に見られ始めているぞ」

「え」

 

 彼女達の同類と思われるのは普通にやだなー。

 仕方がない…ここは一先ず…。

 

「お二人とも。まずは安心して話せる場所に移動しませんこと?」

「「安心して話せる場所?」」

「えぇ。お二人の後ろにあるお店…ですわ」

 

 そこでもある意味、目立つと言えば目立つけど、それでも外にいるよりは遥かにマシだ…と信じたい。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 今、私達は凄い光景を目にしている。

 

「う…美味い!! 日本食とは、ここまで美味なるものだったのかっ!?」

「久し振りのファミレスの食事…五臓六腑に染み渡るわぁ~…♡」

 

 年頃の少女二人がテーブル狭しと並べられた料理を貪るように食べまくっている。

 恥も外聞もあったもんじゃない。

 お前達はどれだけ飢えていたんだとツッコんでやりたいですわ。

 

「あ、姫子ちゃんって言ったっけ?」

「え…えぇ…どういたしましたの?」

「この『ハンバーグステーキセット』も頼んでいいかしら?」

「…食べれますの?」

「今なら余裕!」

「そうですか…」

 

 食べさせないと話が先に進まなさそうな気がしたので、仕方なく注文をした。

 一応、金には困らない生活はしているので問題は無いですけど…。

 

「心配するな」

「私達も払うよ。黄金同士で割り勘だ」

「クレイオス…ソニア…!」

 

 持つべきものは黄金の血潮を持つ同士ですわね。

 こんな事でそれを実感するのは、なんだか悲しいですけど。

 

 そうして、爆食する二人を余所に私達はジュースなどを飲んで彼女達が食事を終えるのを静かに待った。

 

「ふぅ…満足した…」

「こんなに食べたのいつ振りかしら…」

 

 どんだけ食べ物に飢えていたのよ。

 教会って断食の修行とか行っているの?

 

「で? どうしてお二人はあそこであんな真似をしていらしたのかしら?」

「ふむ…そうだな。これは別にコカビエルの事とかとは関係ないし。話しても構わんか」

 

 そうして、ゼノヴィアと名乗った少女がポツポツと語り出した。

 因みに、兵藤さんの幼馴染である紫藤イリナさんは彼女の隣でデザートであるイチゴパフェを美味しそうに頬張っていた。

 

「今回の任務にあたり、我々は駒王町にある教会を拠点にするようにと言われていたんだ」

「教会…」

 

 え? それって…もしかしなくても、あの『廃教会』ですの?

 私が木場さんや匙さんを連れてレイナーレ率いる身勝手行動堕天使一派をぶっ飛ばした?

 確か、あそこは今…。

 

「実際に地図も渡されて、駒王学園に行く前に一度、二人で足を運んでみたんだが…」

「どうしたんだ?」

「行った場所は見事な工事現場になっていた。見た感じ、教会を解体しているのではなくて修繕しているように見えたから、私達は特に何も言わなかったんだが…」

 

 結局、修理をして再利用することになったんですのね。

 完全に壊れているとは言い難かったし、プロの手に掛かればどうにでもなりそうですしね。

 今時、原形が無いレベルのビフォーアフターなんて全く珍しくは無いですし。

 

「だが、そうなると我々が寝泊まりする場所が無い」

「お金は? 日本に渡るに際して貰ったりはしてないのか?」

「してない。聖なる任務をするのに金を集るような真似は出来んからな」

 

 …アホか。つかアホか。

 恐らくは、彼女達を送り出した教会の人達もそれなりの資金を用意してくださっていたでしょうに、この子達の意味不明な拘りのせいで無意味となってしまったのでしょう。

 私たち聖闘士も、任務の際には聖域からちゃんと資金や旅券などを手配して貰っているのに。

 この差は一体、どこから生まれてくるのかしら…。

 

「はぁ…教会の方々と言うのは、ちゃんと情報のアップデートをしていないのかしら? 私にも原因があるとはいえ、少しだけ呆れますわ…」

「なに? それはどういう意味だ?」

「姫子ちゃんにも原因って…どういうこと?」

 

 ここで紫藤さんも話に参加してきた。

 っていうか、クリームが口の端についてますわよ。

 

「実は…」

 

 ここで私は今年の初め頃に発生した、堕天使レイナーレ一派が引き起こした事件の概要を説明した。

 兵藤さんはもう知っているから良いとして、詳しいことはまだ知らなかったソニアとクレイオスもウンウンと頷くながら聞き入っていた。

 

「そうか…出世欲に目が眩んだ下級の堕天使が、この街でそんな事をやっていたのか…」

「しかも、狙われたのがイッセー君だったなんて…大丈夫だったの?」

「あぁ。川上さんがギリギリのところで助けてくれたからな」

「そうだったんだ。姫子ちゃん」

「はい?」

「イッセー君を助けてくれて、本当にありがとう」

 

 あらまぁ…ちゃんとお礼は言えますのね。

 てっきり、場違いな罵倒の一つぐらいは言われるかと覚悟していたんですけど…意外ですわ。

 

「しかし、君は一体何者なんだ? 人間の身でありながら、先程の席にも悪魔たちに交じって普通にいた上に、神器も無しに堕天使を倒すとは…」

「そうですわね…立場だけで言えば、アナタ達と同じ…ですかしらね」

「私達と同じ? では、君達も神に仕えし者なのか?」

「アナタ達とは違う神ですけど」

 

 我等聖闘士が忠誠を誓うのは、聖書の神ではなく、大神ゼウスの娘にして聖なる戦の女神アテナ。

 『支配』ではなく『調和』を尊ぶ偉大なる神。

 

「私達がこうして街に繰り出したのは情報収集の為。目的自体はお二人と同じですから」

「そうか…君達もコカビエルの打倒を…」

「この街に住む人間として当然ですわ」

「フッ…そうだな」

「今では、私達も駒王町の住人だしな」

 

 アテナの聖闘士として、駒王町の人間として、コカビエルの暴挙を看過することは決して出来ない。

 必ずや見つけ出して倒さなくては。

 

「目的を同じとする者が増えるのは心強いが…それならば尚更、今後の拠点の問題が出てくるな…」

「うぐ…!」

 

 地味に心にグサッと来る事を言いますわね…。

 

「そう言えば、工事をする前は教会はどんな状態だったんだ? もし何もされていなかった場合、私達はどんな場所で寝泊まりをしなくてはならなかったのか知っておきたい」

「そう…ですわね…」

 

 これに関してはマジで半分は私が原因みたいなもんですし…ちゃんと説明しないとダメですわよね。

 

「まず…床は至る所に穴が開いてましたわ」

「「え」」

「私が堕天使をぶっ飛ばした影響で、屋根には大きな穴が二つ開いてて…」

「「えぇ…」」

「軽く触れただけでドアが倒れましたわ…」

「「うぇぇ…」」

 

 二人揃ってドン引き。

 いや、彼女達だけじゃない。

 クレイオスやソニア、兵藤さんも普通に引いていた。

 

「もうそれ、殆ど野宿と変わらないじゃない…」

「いや、ある意味では野宿よりも酷いかもしれませんわ。あのまま放置しておいたら、下手したら浮浪者や野良猫の住処になっていた可能性もありますし…」

「野良猫はともかく、浮浪者と一緒なのは嫌だな…」

 

 猫は良いんだ。気持ちは分かるけど。

 猫最高。

 

「一応、町を管理している先輩方がそれとなく市役所に教会の事を伝えたらしく、あそこをどうするかを行政の判断に委ねたらしいのですが…」

「その結果、取り壊しにはならずに修理をする事にしたのか。良い判断だ」

「きっと、神の御加護があったに違いないわね」

 

 ここで御加護と来ましたか。

 単純に市民の声を拾っただけな気もしますけど。

 

「はぁ…仕方がありませんわね」

「「ん?」」

 

 このまま無視すると言うのも非常に後味が悪いし、人として放置も出来ない。

 彼女達が拠点を失った理由の一端を担ってしまっている以上、私が動かない訳にもいかないだろう。

 

「お二人とも、私の家に来ると良いですわ」

「「えぇっ!?」」

 

 何ともいいリアクション。

 と、ここでソニアに肩を引っ張られて顔を近づけられた。

 

「おい姫子! 大丈夫なのか!? お前の家にはアーシアがいるだろう! 彼女達とあの子を会わせるのは色々と拙いんじゃないかっ!?」

「ご心配なく。それに関しては少し考えがありますの」

「考え?」

「えぇ。彼女達が教会で植えつけられた先入観…それを逆に利用しますわ」

「ふむ…?」

 

 こうして直に話して少しだけ分かった。

 彼女達はそれ相応の常識的観点を持ち合わせてはいるが、そこに教会で刷り込まれた考えが融合している感じだ。

 ならば、そこを突く。

 

「お義父様たちには私から説明をすれば問題は無いでしょう」

「いや…こちらとしては非常に有り難いが…本当に良いのか?」

「構いませんわ。こちらとしても、アナタ達に街中でホームレスの真似事をされても困りますし。そうなったら、まず確実に警察の御用になりますわよ? そちらの紫藤さんならば御理解いただけるのではないかしら?」

「そ…そうね。確かに、警察の世話になるのだけは避けたいわね…」

「でしょう? なら、もう選択肢は決まっているのではなくて?」

「うむ…そう…だな」

「はい決まり。では、早速行きましょうか」

 

 領収書を手に取ってから席を立つ。

 値段を見た時、一瞬だけ決意が揺らいだけど、鋼の精神でなんとか耐えた。

 

「心配だから、我等も同行しよう」

「そうだな」

「なら俺も一緒に行くよ」

 

 こうして、皆で私の家まで行くことになりました。

 問題は、我が家の住人に彼女達がどんなリアクションをするか…ですわね。

 ま、大丈夫でしょうけど。

 

 

 

 




次回、教会娘達とアーシアとの和解。




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