本当はもっと早くに登場させたかったのですが、私のいつもの悪い癖で登場が長引いてしまいました。
なんかもう毎度恒例になりつつある報告会。
場所は当然のようにオカ研部室。
今回もまた支取先輩もご一緒している。
「…と言う訳で、彼女達の内の一人は私の家で預かることになって…」
「イリナの方は俺んちに寝泊まりすることになりました」
結局、彼女は兵藤さんの家にお世話になることになった。
彼の話では、ご両親はとてもいい人達らしく、久々に会った息子の幼馴染を追い返すような真似はまずしないとのことだ。
このご時世では、かなり珍しい方々ですわね。
「そうなのね。まぁ、町を管理している身としても、年頃の女の子が二人もホームレスになるよりかはずっとマシだけど」
「えぇ。そうなったが最後。ほぼ確実に行政の介入があるでしょうし」
最悪、バチカンへと強制帰国になる可能性もある。
彼女達の場合、その前に偽聖剣の力を使って脱走…なんて事も十分に有り得る。
流石にあの子達を犯罪者にはしたくは無い。
「それで、彼女達はどうしてるの?」
「家にいる間は大人しくしていますわ。アーシアさんとも仲良くしていますし」
「こっちもです。つーか、逆にウチの両親がイリナの事をめっちゃ歓迎するから、アイツの方がタジタジしてたッつーか…」
それはそれでまた見てみたい気もしますわ。
「今日も、朝から町に出てコカビエルの捜索をすると言っていました。彼女達、携帯も持っていないみたいで、念の為に私のスマホの番号を書き記したメモと、偶然にも家にあった使い古しのテレホンカードを渡しておきましたわ。ちゃんとお昼には一度、家に戻るようにと忠告をした上で」
「俺も似たような感じッスね。本当は、イリナは携帯とか持って来ようと思ってたらしいんだけど、相方のゼノヴィア…だったっけ? そいつが頑なにそれを拒否したせいで持って来れなかったって愚痴ってた」
どうやら、紫藤さんは割と柔軟な発想が出来る子みたいですわね。
私も昨晩、ゼノヴィアさんとお話をしてみたけど、どうやら彼女の場合は良くも悪くも教会の凝り固まった思想に憑りつかれている印象を受けた。
そのガッチガチな頭を、日本で少しでも解せればいいのだけれど。
「だが、アイツ等のやっていることは捜索という名の町の見学に等しい」
「そもそもの話、昼間の町中でコカビエルの手掛かりや消息を掴めるとは思えんのだがな」
あらまぁ厳しい御意見。
けど、これに関しては私もソニアやクレイオスに同感ですわ。
「一応、私達も夜の暗い時間帯に絞って使い魔を使って隅々まで見てはいるんだけど…」
「中々に尻尾は掴ませてはくれませんね。聖書に名を刻まれた堕天使と言うのは伊達ではないと言うことでしょう」
分かっていた事とはいえ、やはりレイナーレ達とは完全に別物だと考えた方がよさそうですわね。
アイツ等の場合、余りにも弱すぎたってのもあるけど。
「後で私達も町に出て、彼女達を合流をするつもりですわ」
「それが良いでしょうね。イリナって子は駒王町の出身みたいだけど、昔と今じゃ町の景観もすっかり変わっているでしょうし、地理に詳しい者がいないと迷子になってしまう可能性もあるし」
「俺等が一番危惧してんのが、まさにソレなんスよね…」
兵藤さんの言う通り、私達の一番の懸念材料はそこにある。
昨日のように街中を彷徨われては、探すだけでも一苦労だ。
無論、私達『黄金聖闘士』が全速力を出せば駒王町なんて一瞬で何周も出来る。
けど、手当たり次第に探していても意味が無い。
せめて、彼女達の実力がもう少しあって小宇宙を感じ取れれば楽なんですけど…。
「最悪、コカビエルと戦う以前の問題になりかねませんしね…はぁ…」
「疲れてますのね…紅茶、どうぞ」
「ありがとうございますわ…姫島先輩」
あぁ…先輩の淹れてくれた紅茶が五臓六腑に染み渡る…。
偶にはコーヒーだけじゃなくて紅茶も飲むようにしようかしら…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「あ、姫子ちゃん。昨日振りー」
「お待たせしましたわ」
ちゃんと待ち合わせ場所を指定しておいてよかった…。
というか、その場所をちゃんと分かってくれて助かった。
じゃないと、さっき部室で言っていた事が現実になっていた所だから。
因みに、二人の格好は昨日と同じ謎のマント姿。
ちゃんと私服を貸そうとしたんですけど、出かける際に着替えられてしまった。
「まぁ…分かりきってはいますけど…形式上、尋ねておきますわ。コカビエルに関する情報は得られまして?」
「「全然」」
「だろうな」
クレイオスがバッサリ一刀両断。
一流の剣士はこんな所でも実力を発揮しますのね。
「それで? 主にどの辺りを見て回ったんだ?」
「商店街の付近と、それから住宅街の方を少し…」
「「「「お前らはどこの観光客だ」」」」
あら、思わず四人同時にツッコんじゃいましたわ。
「だってだってだってぇ~! 懐かしくて思わず見て回っちゃったんだも~ん!」
「私は、この街の地理には全く詳しくは無いからな。イリナに着いて行くしかなかった」
「はぁぁ……」
本当の本当に…予想通りの展開と言いますか…。
でも、闇雲に探し回っても意味が無いのはこちらも同じ。
なんでもいいから、少しでも切っ掛けがあれば、そこからなんとかするんですけど…。
「ん?」
「どうした?」
「いえ…ちょっと…」
今…そこの電信柱の物陰から、誰かが私の事を覗き見ていた?
単なる気のせい? それとも…?
「皆さん、少し移動しますわよ」
「分かった」
まずは、ここから去るのが先決。
歩きながら私は、さっき見た怪しい人影について皆に話した。
「誰かが物陰からこちらを見ていた?」
「えぇ。単なる気のせいかも知れませんけど、今はどんな些細なことでも気を付けるべきだと思いますので」
「確かにそうだよな…」
「慎重に慎重を重ねるぐらいが丁度いい…か」
皆と一緒にチラっと背後を振り返ってみる。
すると、謎の相手は見事に私達を尾行していた。
「本当にいた…!」
「何者なんだ奴は…?」
「それは分かりませんわ。でも、尾行の仕方は余りにもお粗末」
「ってことは、少なくとも探偵とかじゃないってことか」
「だろうな。だが、だとすれば一体…」
「小宇宙も、ここからでは全く感じない。それに、この人込みでは気配が紛れて読みにくい」
ソニアの言う通り、私もそう思ったからこうして移動をしている。
商店街を抜けて、人気の少ない裏路地を進んでいく。
「…まだ着いて来てるか?」
「バッチリと。今は、そこの角の塀に隠れてますわ」
「もし質の悪いストーカーとかだったら、俺がとっ捕まえるぜ」
「我も手伝おう」
こんな時の男性陣の頼もしいこと。
兵藤さんもすっかり男の顔になりましたわね。
「…そろそろいいかしら」
「…だな」
私達以外に人影が無くなってから不意に立ち止まる。
ストーカー男も同じように隠れながら立ち止まった。
「…やるのか?」
「そうですわね。町中で堂々と私達を尾行する不届き者は、コカビエル云々関係無しに捕まえなくては」
「それには私も同感だ」
「教会関係者としても無視は出来ないものね」
紫藤さんとゼノヴィアさんも同意してくれた。
これで心置きなく動けますわね。
「んじゃ、さっき言った通り、俺とクレイオスで捕まえるよ」
「うむ。では、タイミングを見計らって同時に掛かるぞ」
「了解。3…2…1…!」
二人が一斉に飛びかかろうとした…その瞬間。
「やぁ~っと見つけた! この野郎…大人しくしやがれ!!」
「「え?」」
突然、横から現れた『どこかで見た事がある人物』がストーカー野郎を取り押さえた。
あの全身真っ白な格好をした男性は、まさか…?
「アナタは確か…『フリード』さん…だったかしら?」
「おっ!? そこにいるのは、あの時のお嬢ちゃんですかいっ!? しかも、なにやら見知らぬ連中もご一緒と」
どうして彼がここにいて、ストーカーを捕まえているんですの?
流石にこれは状況がサッパリですわ…。
「『旦那』から言われてコカビエルの野郎の手下を捕まえてたら、まさかお嬢ちゃんと遭遇するとはな。もしかして、普通に尾行されてました?」
「えぇまぁ…って、今なんと仰いました?」
コカビエルの手下…ですって?
このストーカーが?
「お…お前ははぐれ神父のフリード・セルゼン!」
「どうして、アナタがこの町にいるのよッ!?」
あら。彼女達も彼の事を知っている様子。
しかも、しれっとフリードさんのフルネームが判明ですわ。
「えっと…川上さん? こいつと知り合いなのか?」
「知り合いと言うよりは、顔見知りですわね。レイナーレの一件の際に彼女に雇われていたはぐれ神父の一人だったんですけど、彼が食事に行っている間に私がレイナーレを倒してしまって、しかもその瞬間を目撃してしまっていたようで、すぐにレイナーレを見限ってから、どこかへと逃走していた筈なんですが…」
「成る程…こいつが例の…」
まさかの再登場に私が一番驚いてますわよ。
けど、このタイミングで出てきた上に気になる事を言ってましたし…まず間違いなく、今回の一件に深く関わってますわね。
「オレちゃんの事を知ってるッつーことは、そこのマント女二人組は教会の連中かよ。ったく…何考えてんだ? たった二人でコカビエルの野郎をどうこう出来る訳ねぇだろうがよ。幾らなんでも舐め過ぎだぞ」
それには激しく同感ですわ。
「つーか、今は俺の事よりも、この野郎の事だよ。ほれ、こいつの額の所…見てみな」
フリードさんが手招きしたので、私達も近づいて倒れた男の顔を見てみることに。
すると、男の額にうっすらとではあるが刻印みたいなものが刻まれていた。
「これはコカビエルの魔法で精神操作されてる人間に浮かび上がる紋章なんよ。しかもこいつは…」
男の首元を緩めると、そこから出て来たのは銀色に光る十字架のネックレス。
「ロザリオ…! この人は神父様だというのっ!?」
「正解。この神父だけじゃなくて、コカビエルの野郎はホームレスや独身の人間とかを対象に捕まえて洗脳を施して、こうして町中を徘徊させて自分の邪魔をする奴が出て来た時に備えて監視させてやがったのさ」
「やってる事はモロに先輩達と同じですわね…」
同じように監視をしていたから、先輩達の目にも捕まらなかったってことか。
どうやら、単なる戦争馬鹿って訳ではなさそうですわね。
「ところで、どうしてはぐれ神父である貴方が、彼らを捕まえるような真似を? まさかとは思いますけど、自主的に町を守るために活動なんてことは…」
「いやいや。元神父ではあるけど、俺っちはお世辞にもそこまで正義感に溢れたタイプじゃございませんことよ? これは『旦那』に命令されて仕方なく…」
「「「「「「旦那?」」」」」」
さっきも同じ事を言ってましたわね。
と言うことは、今のフリードさんは誰かの下に付いていると言うこと?
なんてことを考えていると、突如としてこの場に強大な小宇宙が出現した。
「なっ!?」
「これは…」
「アイツか…」
「デ…デケェ…! 一体誰だ!?」
「「??」」
紫藤さんとゼノヴィアさんは小首を傾げているけど、私達には分かる。
この小宇宙…間違いなく黄金聖闘士クラスだ!
「ここにいたかフリード。どうやら、きちんと使命は全うしているようだな」
「そりゃね! そうしないと、どんな目に遭うか分かったもんじゃないっすからね!」
完全に尻に敷かれてますわ…。
「こちらも捕まえた。『我が王』が住んでいる街に、このような不届き者を蔓延らせるとは…コカビエルめ。万死に値する」
そう言いながら現れたのは、褐色肌に水色の髪という、一見するとクレイオスと似たような特徴を持つ青年。
だが、その目つきや顔つきはクレイオスとは全く異なる。
ある種の『狂気』が混じっているようにも感じた。
「あ、そういや旦那。旦那が言ってた嬢ちゃん、ここにいましたぜ?」
「なんだと?」
え? この人も私を探してたんですの?
少なくとも、こんな知り合いはいないんですけど…。
「お…おぉ…おぉぉ…!」
な…なんですの?
こっちを見た途端、急に目が…というか顔が輝き始めたんですけど。
「王よ!!」
「はい?」
王? 誰が? 私?
「ようやく…ようやくお会いできた…! この日を…この瞬間をどれだけ待ち侘びた事か…!」
「え…っと…?」
凄い勢いで近づいてきたかと思ったら、いきなり私の前に跪いてきた。
ちょ…マジで意味不明ですわよッ!?
「『
ま…まさか…この人は…!?
でも…そんな事がある筈が…!
「『湖の騎士』ランスロット…参上仕りました」
やっぱり…ランスロット…。
けど、流石に本人ではないですわよね…?
同姓同名の誰かさんと言う方が自然ですし…。
「我はもう二度と…王の事を決して裏切らない。同じ過ちは二度も繰り返さない。故に、今一度…貴女に忠誠を誓うことをお許し頂きたい」
いや…許すも何も…それ以前に私は…。
「騎士の中の騎士にして、王の中の王。ブリテンを統べし偉大なる王…」
違うんですって…言いたいけど…今の空気じゃ言い出せない…!
「
やっと出せたランスロット(エピG仕様)。
漫画とは違って、今作は色々と違います。
少なくとも敵にはなりませんので、その辺はご安心を。