一誠が毒龍の暗殺者を、裕斗とランスロット達がパルパーを、クレイオスとソニアがケルベロスを撃破し、残るはコカビエルのみとなった。
「奴等は倒されたか…。流石と言っておこう」
用意した戦力が全滅したにも関わらず、コカビエルは全く怯む様子は無い。
それどころか、さっきよりも闘気が増加しているほどだ。
「皆さん、お疲れ様でしたわ。後は…私にお任せくださいませ」
「いいのか? 全員で同時に掛かって来ても構わんのだぞ?」
「我等『聖闘士』の戦いは基本的に『一対一』が鉄則。例え、誰が相手であっても例外はありませんわ」
「成る程…あの潔癖症の女神が言いそうなことだ。その分だと武器の使用すらも禁じてそうだな」
「よくお分かりで。アテナは武器と言う存在すらも嫌うが故に、私達は無手で戦うのですわ」
「本来ならば、それは大きなハンデとなる行為。だが…お前達の場合は違うようだな?」
「えぇ。素手であっても関係が無い程の実力を身に着ければいいだけの事。故に…」
姫子は徐に地面に、手に持っていた黄金の錫杖を突き刺してから、少しだけコカビエルの方に近づいて行った。
「私達は小宇宙を用いた『破壊の究極』を会得した」
突如として姫子の小宇宙が爆発的に増大し、全身から黄金のオーラが溢れ出る。
リアス達は、その光景を知っていた。
嘗て、自分達を暗殺者から守って戦ってくれた時の姿。
姫子が本気になった証でもあった。
「こ…これが川上さんが小宇宙を全力で燃やしている状態か…!」
『なんと言う強大な小宇宙か…! あれで相棒と同い年とは…信じられん…!』
籠手の中にいるドライグすらも戦慄する程の力。
改めて思い知らされる。
アテナの聖闘士の異次元の強さを。
「これが王の全力…! ここからでも分かるほどの強さと威厳…!」
「おいおい…冗談キツすぎだっつーの…! これが本気って…レイナーレん時はどんだけ手加減をしてたんだよ…!」
ランスロットは歓喜に打ち震え、その隣ではフリードが引きつった笑いを浮かべていた。
「むぅ…少し見ない間に、また一段と強くなってないか…あいつ…」
「どうやら、修練は怠ってなかったようだな。安心したぞ姫子よ」
そして、同じ黄金聖闘士であるクレイオスとソニアは平然として普通に会話をしていた。
88の星座の頂点に君臨する彼らにとって、自分達の同胞が更に強く、頼もしくなることなんて日常茶飯事なのだ。
「面白い…! そうでなくては意味が無い! 俺とお前が死力を尽くしてぶつかることで奴等に思い出させてやる! あの時、死んでいった全ての英霊たちの願いと無念を!!」
その黒く強大な翼を広げ、コカビエルは静かに宙に浮き始める。
彼の全身からは、姫子の負けず劣らずの圧倒的な小宇宙が溢れていた。
「戦う前に改めて聞いておこう。貴様の名を」
「黄金聖闘士…蛇遣座の姫子」
「姫子か…良い名だ」
腕組みを解き、コカビエルの両腕が自由になる。
それは、彼が最初から全力でいくという証拠。
「では…行くぞ姫子!!」
「どっからでも掛かって来いですわ! コカビエル!!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「まずは小手調べだ!!」
「むっ!?」
コカビエルの周囲に無数の光の槍が出現する。
最早、数えるのすらバカバカしくなる程の量に、普通ならば驚愕して後ずさりの一つでもしそうなところだが、怯むどころか姫子は強気な笑みを浮かべ、右手でチョイチョイとして挑発までする余裕まで見せた。
「いい度胸だ…くらえ!!」
無数の光の槍が姫子に向かって飛んでいく!
その速度は余裕でマッハの域に達していた!
(回避自体は容易に出来る…。それは防御も同様。でも、それではダメだ。コカビエルにこちらの力を見せると言う意味でも…ここは敢えて迎撃する!!)
なんと、姫子は自分に向かって降り注ごうとしている光の雨に飛び込んで行った!
傍見ていると完全に常軌を逸した行動!
だが、生憎と姫子は普通ではない!
「そちらが光の雨で来るのなら、私は…」
その拳に雷光が迸る。
黄金の輝く獅子の牙が、眼前に迫る光を打ち砕く!!
「雷獅子の牙にて迎え撃ちますわ!!」
優に億を超える幾多の閃光が、一瞬で光の槍の雨を粉砕する!!
瞬く間に全ての槍が打ち消され、コカビエルの攻撃は不発に終わった…かに思えたが…。
「なっ!?」
いつの間にかコカビエルの姿が消えていた。
それを見て瞬時に理解する。
(今の技は…単なる囮!? と言う事は…!)
瞬間、姫子の背後に強大な小宇宙が出現する。
それがコカビエルであると理解するのに時間はいらなかった。
「見破ったか! だが!! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ここでも敢えて姫子は防御ではなく攻撃を選択する!
両者の拳が激突し、凄まじい衝撃と共に空気が震えた。
「「まだだ!!!」」
二人の姿が一瞬で掻き消えたかと思ったら、なんと駒王学園の上空にて金と白金の二色の流星がぶつかり合い、その度に地響きのようなインパクトが辺り一帯に炸裂した。
黄金聖闘士二人と一誠以外の全員が呆気に取られる中、リアスの肩に乗っていたコクトーだけがポツリと呟いた。
「姫子…本当に強くなったのである。幼き頃から見守ってきた身として、本当に誇らしいのである」
「あるー」
梟ゆえに表情は変わらないが、口調から嬉しそうに感じた。
「嬢ちゃん達が降りてくんぞ!!」
フリードの叫びとほぼ同時に、二色の流星はグラウンドに落下した。
二人の小宇宙の発露によって、すぐに周囲に土煙が霧散したが、そこにあった光景に一誠とソニアとクレイオスは目を見開いた。
「ちょ…マジかよッ!?」
「な…なんだとっ!?」
「ば…馬鹿な!? あれは!」
「「「
目の前では、姫子とコカビエルが互いに睨み合いながら組み合っている姿が。
一見すると、なんて事の無いような光景に思えるが、実際にはそんな事は無い。
「ワ…ワンサウザンド・ウォーズ?」
「な…なんなのですか? それは…」
事情を知っている者達だけで驚き、何も知らない者達はポカンとしている。
そこに、コクトーからの解説が入った。
「よく見るのである」
「え?」
「姫子の拳はコカビエルの掌底に阻まれ、また同じようにコカビエルの拳も姫子の掌底に阻まれているのである」
「「あ…」」
「そして、二人の両足は相手の蹴りに備えて牽制の形をしたままになって、両者の視線は一切逸らす事無く相手を見続けている」
先程までの激闘が嘘であるかのように静寂に包まれた。
だが、分かる者達には分かる。
あの二人の頭の中では、もう数千回にも渡る牽制が繰り返されている事を。
「これこそが『
「あるー」
「「せ…千日ッ!?」」
いきなりとんでもない事を言われ、もう何度目になるか分からない驚きを見せるリアス達。
姫子の実力もさることながら、コカビエルの実力がこちらの想定を圧倒的に凌駕していた事に恐怖すら感じた。
「「チッ!」」
流石に、このままでは埒が明かないと判断したのか、二人は拳を離して距離を取った。
「流石は聖書にすら名が刻まれている堕天使…コカビエル!」
「それはこちらの台詞だ。よもや、現代の人間にここまでの実力者がいようとはな」
呼吸を整えながら次の攻撃を模索する。
お互いに、生半可な攻撃では決定打にはならないと、この数百手によって嫌と言うほどに理解をした。
ならば、どうすればいいか。
答えは簡単だった。
「はぁぁぁぁぁぁ…!」
コカビエルの拳に光が収束する。
光は徐々に巨大化し、すぐにコカビエルの拳自体が光の塊と化した。
「ならば…!」
姫子の小宇宙も増大し、その背後には純白のペガサスのオーラが浮かび上がる。
左腕全体が青白いオーラに包まれ、激しい風が渦巻いていた。
「「…いくぞ」」
その声と共に、姫子とコカビエルは一瞬で間合いを詰め、渾身の一撃を叩きこむ!!
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」
二人の必殺技がぶつかり合い、その威力でグラウンドのど真ん中には巨大なクレーターが出来上がり、それとほぼ同時に姫子とコカビエルは吹き飛ばされた!
「「ぐぅっ!?」」
しかも、良く見ると蛇遣座の黄金聖衣の左腕部が大きく破損し、コカビエルの天衣の右腕部もまた巨大な罅が走り砕ける寸前となっていた。
だからと言って戦いを止めるような二人ではないのだが。
「ならば!!」
「これでどうだ!!」
空中で体勢を変えてから地面に足を着き、そのままの勢いで右足を曲げてからコカビエルは大きく飛び上がり蹴りの構えを取った!
一方の姫子も、コカビエルの今度の攻撃が蹴りであると予想していたので、即座に飛び蹴りの体勢に入った!
「「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」
最大の威力を誇る蹴りがぶつかり、両者の身を包む鎧の右足部の装甲が砕ける。
鮮血が飛び散り、黄金と白金の破片が散乱するも、その動きが止まる気配は全く無い。
「「まだまだぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」」
もうズタボロな二人の拳が顔面に直撃し、その威力で互いのマスクが吹き飛ぶ。
これで頭部を守る物が無くなってしまったが、そんなのは今更だった。
「カイトス・スパウティング・ボンバー!!!」
「受け身の効かない投げ技だとッ!? それなら!!」
大きく投げ飛ばされながらも、コカビエルは姫子目掛けて光の槍を発射する!
勿論、そんな物が当たるとは思っていない。
重要なのは、どんな状況になっても決して攻撃を止めない事だ。
少しでも攻撃の手を緩めたら、そこから一気に勝負がついてしまうから。
「ミリオン・ゴースト・アタック!!!」
「そのようなまやかしなどでぇぇぇぇぇぇっ!!!」
一進一退の攻防。
終わりの見えない勝負。
決着は…今だつかず。
聖剣?
安易に出したりはしねぇよ。