コカビエルとの壮絶な戦いがあった次の日。
「はぁ…久し振りに暇ですわね…」
私は昼間から家でのんびりと寛いでいた。
本来ならば今日は平日。
この時間は学校で授業を受けている時間帯…だけど、今日は特別。
何故なら…。
「あ…姫子さん。お怪我の具合はいかがですか?」
「えぇ、もう痛みはありませんわ。アーシアさんとお義父様のお蔭ですわ」
「それは良かったです。血塗れの姫子さんを見た時は本当に焦りましたけど…」
お茶を淹れてくれたアーシアさんが私の怪我を気遣ってくれる。
今回は本当に彼女に助けられましたわ。
もしアーシアさんがいなかったら、私は今頃もベットの上で寝てますわね。
「はぁ…」
そして、ゼノヴィアさんは昨日からずっと落ち込んでいると。
ローランにデュランダルを奪われた…じゃなくて、強制返却されたことが相当に堪えているみたいですわね。
「おやおや。だが、時には思い切り落ち込む事も大事だ。どん底まで行ったら、後はもう這い上がるしかないんだからね」
「それ…慰めてますの?」
「そのつもりだが?」
お義父様の人生観は独特だから、本当に慰めているのかどうか分からないんですのよね…。
「しかし、今日が休みなのは本当にラッキーだったね。お蔭で一日の全てを療養に充てられる」
「そうですわね」
お義父様が言ってしまったけど、実は本日、駒王学園は臨時休校になっていますの。
理由は単純明快。
私とコカビエルが戦った影響で校舎が半壊してしまったから。
少し前にグレモリー先輩から連絡があったのだけれど、サーゼクス様の部下の方々が校舎の修復作業を行う為に地上に上がってきたまでは良かったけど、余りの壊れっぷりにすぐには修復不可能と判断され、仕方なく今日は休校とし、その間に校舎の修復を行う…ということみたいですわ。
うーん…仕方が無かった事とはいえ、なんだか申し訳ないですわ。
ピンポーン
「あら?」
「誰か来たみたいだね。どれ…」
「皆さんは座っててください。私が出ますから」
あらあら…。
気のせいかも知れませんけど、アーシアさんが妙に積極的になってるような気が…。
「あ…皆さん! どうぞ、入ってください!」
皆さん?
って事は、いつもの面々なのかしら?
「我が王よ。怪我の具合はいかがでしょうか?」
「ちーっす」
「こんにちわー。うっわ…川上さん、包帯グルグル巻きだな…」
「姫子ちゃん…同じ女の子として同情するわ…。で、まだゼノヴィアは落ち込んでるの?」
「仕方あるまい。目の前でデュランダルが本来の持ち主の元に行ってしまったんだからな。それよりも、思ったよりも元気そうで安心したぞ、姫子」
「少し気になって様子を見に来たが…大丈夫そうだな」
これはまた大所帯でいらっしゃって。
ランスロットにフリードさん、兵藤さんに紫藤さん、クレイオスにソニアまで。
家の中が一気に賑やかになりましたわね。
「私なら大丈夫ですわ。アーシアさんとお義父様の適切な処置が功を奏しましたわ」
「本当に良かったぜ…。コカビエルに勝ったは良いものの、結果としては殆ど相打ちに近かったしな」
「王のエクスカリバーが勝敗を決したに等しいが…それを抜きにしてもコカビエルは凄まじい戦士だった。あの執念、実力…円卓の騎士にもどれだけいるか…」
正直、昨日の戦いは今でも鮮明に思い出せる。
あれは間違いなく、私の魂に永遠に刻まれた戦いとなるだろう。
「二人の戦いが凄かったからか、校舎も半壊しちゃったもんね…。こーゆー時の臨時休校って、単位の問題とかもあるから、どこかで振り替えで登校したりするのかしら?」
「うーん…休日登校をさせるよりも、どこかで時間を作って放課後の補習授業をする可能性の方が髙そうですわ」
「補習かぁ~…」
うん。
絵に描いたように兵藤さんが落ち込んだ。
あれから兵藤さんはちゃんと真面目に勉強もするようになったけど、やっぱりそれとこれは別問題なんだろう。
ある意味、学生あるあるですわね。
「ところで、これから皆さんはどうするんですの?」
「そうだった。実は我も、それをお伝えしようと思い、こうして王の様子を見るついでに馳せ参じた次第にございます」
「旦那…言葉が凄いことになってますぜ…」
フランクなのか丁寧なのか…。
中途半端に現代に染まってる感じがしますわね。
「我の目的は、王を守り、王と共に生き、王の敵を討つ事。これだけは永遠に変わりませぬ。故に、我はこれからも駒王町に滞在し続けるつもりです。無論、フリードも一緒に」
「はは…ここまで来ちまったら、もう一蓮托生だろ。俺っちも、とことんまで嬢ちゃんに着いて行くぜ」
それは何とも頼もしい。
けど、一つだけ気になることが。
「それは良いですけど…どこで寝泊まりをするつもりで?」
「住処ならばご安心を。実は少し前より、フリードと一緒に駒王町にある喫茶店にて住み込みのバイトをしているのです」
「意外と条件が良くってさ~。思わず旦那と一緒に応募したら…まさかの一発採用! いや~…割とマジで助かったぜ~」
この二人がまさかの喫茶店の店員。
けど、顔は良いし…意外といいのかしら?
女性客が沢山来そうだけど。
「ソニアとクレイオスはどうしますの?」
「それなんだが…」
「私達も駒王町に残ろうと思う。と言うか、少し前にアテナから勅命が来た」
「アテナさまから…?」
一体どのような勅命が…?
教皇からばともかく、アテナ様からというのは非常に珍しいですわ…。
「『これからも駒王町を中心に事件が起きる可能性が高いので、引き続き『
「成る程…」
確かに、この短い間に多くの事件が起きすぎている。
アテナ様でなくても、警戒するのは当然ですわね。
「と言うことで、今後も我々は駒王学園で世話になる。改めてよろしく頼む」
「こちらこそ」
これは何とも心強いですわ。
黄金聖闘士が三人もいれば、守りは盤石ですわ。
「私は報告の為に一度、バチカンに戻ろうと思うわ。と言っても、すぐに戻って来るつもりだけどね」
「あら。そうなんですの?」
「うん。今回の事件で色んな事を知っちゃったからね…。その事はもう教会側にも知られてるかもだし…。多分、今の教会に私達の居場所は無い。それだったら、いっそのこと…ってね」
どうやら、紫藤さんは彼女なりに覚悟を決めてるみたいですわね。
バチカンに戻るのは、本当は報告の為じゃなくて、色んな事にケリを着けるためだと見ましたわ。
「んで、ゼノヴィアはどうするの?」
「私は…」
話の流れ的にゼノヴィアさんも戻るのでしょうか?
少し寂しくなるような…。
「私は…残る」
「いいの?」
「あぁ。今回の一件で私は自分の未熟さを思い知った。だから、私は姫子の元で己を鍛え直したい」
「私の元で鍛え直す?」
「そうだ。姫子!」
「きゃっ!?」
いきなりゼノヴィアさんが私の足元に跪いたっ!?
このポーズは…まさか…?
「アーシアと同じように、私も君の従者にして欲しい! 頼む! この通りだ!」
「い…いきなり言われても…」
助け舟を求めてソニアとクレイオスの方を見るが、二人は苦笑いを浮かべてこっちを見るだけ。
「まぁ…いいんじゃない?」
「別に従者は一人だけじゃないといけない…という規則も無いしな。問題は無いだろう」
ダメだこりゃ。
「川上さん…頑張れ」
兵藤さんに至っては、サムズアップをしながら考えを放棄した。
気持ちは分かるけど、少しは味方をして欲しかった。
「はぁ…分かりましたわ。アナタがそれを望むのなら、ゼノヴィアさんをこの私…蛇遣座の姫子の従者に指名しますわ」
「有り難き幸せ! アーシアと共に、君の従者に相応しい働きをしてみせよう!」
「ハハハ…」
ほんの少しでも寂しいと思った私の気持ちを返して…。
「結局、紫藤さん以外は全員残留って事ですわね」
「私としては、これからも皆さんに会えると思うと嬉しいです。特に、ゼノヴィアさんと一緒に姫子さんの従者になれた事が特に」
「それは私もだ。これからもよろしく頼むぞ」
「はい。こちらこそ」
…まぁ…いいか。
折角できた同郷の友人を引き離すような真似は出来ませんしね…。
「ふむ…それならば良い機会だし、アーシア君とゼノヴィア君も駒王学園に通ってみるかい?」
「「いいんですかッ!?」」
「構わないだろう。アーシア君はすっかり日本に馴染んだし、ゼノヴィア君も従者として姫子と常に一緒にいた方が良いだろうしね。それに、こんな事もあろうかと思い、実は密かに二人がすぐにでも入学できるように準備はしていたんだよ」
「「ありがとうございます!」」
さ…流石はお義父様…!
裏工作はお手の物って事ですわね…。
「となると、目下の問題は…」
「あれだな…」
私の傍に置いてある黄金の箱。
蛇遣座の聖衣箱。
箱こそ綺麗だが、その中身である蛇遣座の黄金聖衣は文字通りのズタボロだ。
これからも戦いは続くのだから、一刻も早く修復しなければいけないんだけど…。
「その事ならば心配は無用である」
「あるー」
「コクトーさん?」
何処からともなく飛んできて、私の肩に停まったコクトーさん。
心配は無用って…まさか!?
「もう既に我の方から『奴』の派遣を要請しておいたのである」
「あるー」
「もしや…彼が…?」
「うむ。『最強の超能力者』の後を継ぐ者が…あの『
遂に…彼も来る…!
これで駒王町の黄金聖闘士が四人に…!
「え? その人って、そんなに凄いのか?」
「えぇ。兵藤さんのお師匠様である紫龍さまとは幼い頃からの付き合いで、彼のお師匠様は紫龍さまの盟友。そして、教皇陛下のお弟子様でもあらせられるのですわ」
「な…なんだそりゃぁっ!? 師匠の昔馴染みで、教皇様の弟子の弟子っ!? その時点で滅茶苦茶スゲェじゃねぇかッ!?」
「その通りですわ。正直、私も驚いてますわ…」
久し振りに会えるのは嬉しいけど…なんだかお小言とか言われそうですわ。
「実は、それだけではないのである」
「まだあるのか…」
あ。クレイオスが珍しく呆れてる。
ちょっとだけ面白い。
「今回のコカビエルの一件、奴の思想に加えて、その実力をも加味して、アテナはかなり重く事態を受け止めているのである。故に…アテナは決意を成された」
「その決意とは…まさか…!」
「姫子の想像通りである」
いやいや…これは冗談でも笑えない…!
気持ちは分かるけど…そんな事が本当に許されていいの…!?
「駒王町にて『
はい。
新世代黄金聖闘士全員集合フラグが立ちましたー。
メンバーはまぁ…ソニアがいる時点で半分は想像出来るかと。
後の半分は当然、元青銅聖闘士一軍の方々ですけど。