一日休んだ次の日。
私達はいつものように登校をしたのだが…。
「こいつはまた…」
「見事に元通り…ですわね…」
あれだけ派手に壊れた校舎は、ちゃんと元通りの姿に戻っていた。
壊した一因である私からすれば安心できますけど…。
「よく見たら、姫子達の戦いで破壊されたと思わしき部分だけ壁とかが真新しいな」
「流石に何から何まで元通り…とはいかなかったんだろう」
ソニアとクレイオスの指摘通り、よーく目を凝らして観察すると、ちゃんと境目などがハッキリとしている。
細かい傷などまで再現しろ…なんて言うつもりは無いから、そこまで気にはしないけど…。
「ここが…いつも姫子さん達が通っている駒王学園なんですね…」
「よくよく考えたら、こうして学校に通うのはこれが初めてだ。なんだか緊張してきたぞ…」
そんな私達の隣に立っているのは、駒王学園の制服に身を包んだアーシアさんとゼノヴィアさんの二人。
一体いつ、どうやって手続きなどをしたのかと言う疑問は残るけど、そこら辺は気にしたら負けなので敢えてツッコまない。
どちらにしても、今日から二人も駒王学園の一員になることだけは確定しているのだから。
「では、まずは職員室に行きましょう。案内しますわ」
お義父様曰く『姫子と同じクラスにするようにしておいた』との事なので、彼女達は私と同じクラスに配属される…んだろう。
お願いだから、学校関係者に変な事はしていないでほしい。
「こんな時期に転入生が二人も来たら、クラスの皆も驚くだろうな」
「少し前に私達が来たばかりだしな」
「普通に考えれば明らかに異常だが…」
「その辺は『なんとなく』で流しそうな気もする」
それに激しく同意ですわ。
今時の高校生は『楽しければよし』的な風潮が有りますし。
最初こそは少なからず疑いの目を向けるでしょうけど、それもすぐに風化していくでしょうね。
「そろそろ参りますか。職員室はこちらですわ」
さてはて…先生のリアクションが見ものですわ。
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「えー…というわけで、いきなりだがこのクラスに転入生がやって来た。しかも二人」
「「「「「えぇ―――――――――っ!?」」」」」
うん…想像通りのリアクション、ありがとうございますわ。
先生もご苦労様ですわ。
「バチカンの方から来たアーシア・アルジェントと申します。これからよろしくお願いします」
「同じくバチカンから来たゼノヴィアだ。よろしく頼む」
女の子が来たことで男子はテンションが上がり、女子は普通のリアクション。
因みに、松田さんと元浜さん達は女子達と同じ普通のリアクションでしたわ。
「確か、川上とは既に知り合いなんだったな? 川上、悪いが放課後でもいいから校舎の案内とか頼めるか?」
「お任せくださいませ」
「はぁ…一時はどうなるかと思ったが、お前のように頼りになる生徒がいると、教師としても本当に助かるよ…」
「それはどうも」
姫たる者、困っている人に手を差し伸べるのは当然ですわ。
黄金聖闘士ならば尚更。
「君達は、そこの空いている席に座ってくれていいから」
「「分かりました」」
どうやら、一先ずは大丈夫…みたいですわね。
基本的に良い人達ではありますから。
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放課後になり、アーシアさん達に校舎の中を案内しながら、最後にすっかり溜り場みたいな扱いになっているオカルト研究部部室に向かった。
「かくかくしかじか…と言う訳で、無事に二人はクラスに馴染めそうですわ」
「それは何よりね」
今日もまたオカ研部室にて紅茶を飲む放課後。
ここに来る前に、ちゃんと生徒会室にも寄ってるんですけどね。
「アーシアさん。ゼノヴィア。二人とも、いつでも好きな時に部室に来てくれて構わないから。部員じゃないからなんて堅苦しいことを言うつもりは無いわ」
「あ…ありがとうございます。リアス先輩」
「私は前にも一度、入った事があるから、そんなに抵抗感は無いがな」
でしょうね。
ゼノヴィアさんにその点のデリカシーを求める方が間違いだって理解してるから、特に気にしてませんわ。
「川上さん…怪我はもう大丈夫なの?」
「えぇ、この通り」
まだ包帯こそ巻いてはいるが、実際には殆ど怪我は治りかけている。
これも偏に、素早い対処をしてくれたお義父様とアーシアさんのお蔭ですわ。
「それにしても、まさかあのランスロット卿たちが喫茶店でアルバイトをしているとはね…ある意味、僕としてはそっちの方が驚きだよ」
「お店の人も、まさか彼が本物の円卓の騎士ランスロットとは絶対に思ってないでしょうから、疑われる心配は無いでしょうけどね」
確実に同姓同名の別人としか考えないだろう。
コミュ力は高そうだし、客商売は意外と合っているかもしれない。
「一応、報告しておくけど…コカビエルとの戦いの一件は全てお兄様に報告しておいたわ」
「サーゼクス様は何と?」
「『そうか…』とだけ。恐らく、お兄様としても色々と思う所があったのかもしれないわ」
無理も無いですわね…。
話によると、そうやらサーゼクス様も例の三大勢力戦争の当事者だったみたいですし。
当時の自分達の中途半端な決定がコカビエルの憤りと苦しみを生み出してしまったと知れば、王として嫌でも色んな事を考え、同時に思い出す事になる。
「気になるのは、あれだけ派手にコカビエルが動いたにも拘らず、総督であるアザゼルが動く気配が見られない事だな」
「だよな…。ある意味じゃ俺達以上の当事者なのに、詫びを言う事もしなけりゃ、敵討ちに来るみたいな事もしてないし…」
ふむ…確かにクレイオスと兵藤さんの言う事も気になりますわね。
コカビエルを倒したと同時にローラン登場と言うトンデモイベントが二連続で起きてキャパオーバーになりかけてたから、そこまで考える余裕が普通に無かったですわ。
「あれから、あのローランって人はどうしたんですか?」
「全く姿を見せていない。念の為にランスロット達にも確認を取ってみたが、彼らの所にも現れていないそうだ」
相手は伝説に名を遺すほどの聖騎士。
隠蔽術も生半可じゃないってことですわね。
それはそうと、いつの間にかソニアとランスロットが連絡先を交換していた事の方が驚きですわ。
「今回は完全にしてやられましたわ…。なんと言うか…『試合に勝って勝負に負けた』…そんな感じですわ」
「…そうだな。確かにコカビエルは倒せた。だが、結果として奴の思惑を叶える結果になってしまった」
もしかしたら、コカビエルが駒王町に現れた時点で私達は既に敗北していたのかもしれない。
だからと言って、あの場合は別の選択肢なんて無かったんだけど。
「まだまだ修行の余地あり…ですわね。力だけでなく、戦術眼なども…」
「姫子さん…」
従者であるアーシアさんを心配させてしまった。
主人としても精進しなくては…ですわね。
「君が気に病むことは無いよ。姫子さん。これはあの戦争に参加した僕達の責任だ」
「え?」
いきなり聞こえてきた、この声はまさか…?
「お…お兄様ッ!? どうしてここにッ!?」
「色々と用事があってね」
「よ…用事…?」
魔法陣から現れたのはサーゼクス様。
勿論、彼の妻でありメイドでもあるグレイフィアさんも一緒だ。
「姫子さん。君達は本当に良くやってくれた。本来ならば我々が受け止めなければいけないコカビエルの想いを、君達が代わりに受け止めてくれた。正直…どれだけ詫びても詫びきれない程の借りだと思っているよ」
「私達は、私達が成すべきだと思った事をしただけですわ。ですので、サーゼクス様こそ、お気になさらないでくださいまし」
「君には敵わないな…」
だって、正真正銘の本心ですし。
戦った事に関して後悔は全くしていない。
「彼女の近くに座っているのが、姫子さんと同じ黄金の鎧を纏う仲間達か…」
「我が名はクレイオス。守護星座は『
「私はソニア。守護星座は『
「守護星座…そんな物があるのか。なら、姫子さんは…」
「私の守護星座は『
「成る程…いずれもが『黄道』に位置している星座か」
なんか話が逸れてる気がしますわ…。
ま、誰かが修正してくれるでしょう。
「お…お兄様? 地上に来た用事と言うのは何なのかしら?」
「おっと。そうだった」
地味に一瞬だけ忘れてましたわね。
「一つは授業参観に出る為さ。勿論、当日はお父様もやって来る予定だ」
「お…お父様も…」
そう言えば、まだグレモリー先輩のご両親は見たことが有りませんでしたわね。
お兄様がこうだからー…パターン的にお父様はウチみたいなナイスミドルなおじ様だったりするのかしら?
「授業参観かー。そーいや、少し前にプリントを渡されてたっけかー」
「ウチは、プリントを見た途端にお義父様が嬉しそうにしてましたわ」
いい歳してイベントとか大好きなんですのよね…あの人。
錬金術師として好奇心が旺盛なのかしら?
「僕達は一足先に地上に来て、授業参観当日までいるつもりだ。一応、ホテルなどを取るつもりでいるが…」
魔王さまがホテルに泊まるって。
それはそれでどうなんですの?
「もしよろしかったら、我が家に泊まりませんか?」
「姫子さんの家に? いいのかな?」
「お義父様なら快く了承してくれると思いますし、あの人もサーゼクス様のような大人の話し相手が出来る事は嬉しいと思いますから」
「そこまで言ってくれるのなら、お邪魔させて貰おうか。グレイフィアもそれでいいかい?」
「はい。サーゼクス様が宜しいのであれば」
「決まりだね」
うーん…ダメ元で言ってみたが、まさか本当にOKになるとは。
後でちゃんと電話でお義父様に事情を話さなくては。
「うぅ…ごめんなさい…川上さん。本当なら私の部屋に泊めるべきなんだろうけど…私は今、マンション住まいだから…」
「お気になさらず。これもまた聖闘士としての義務ですわ」
「後輩の女の子に借りばかりを作ってる…我ながら情けないわ…」
自分を情けないと思うのなら、これから頑張って精進すればいいだけですわ。
「もう一つの用事は…この駒王町で…」
「あら?」
「む?」
「ほぅ…」
「ん? これって…」
どうやら、気が付いたのは私とソニアとクレイオスと兵藤さんの四人だけ。
他の皆は何事かと小首を傾げている。
「川上先輩? どうかしたんですか?」
「どうやら、こちらの待ち人もやって来たみたいですわ」
「え?」
この小宇宙から察するに、恐らくはすぐ近くまでやって来ている。
テレポーテーションでここまで来ましたわね?
なら、ここは念話で…。
(もしもし? 聞こえますか?)
(聞こえるよ。久し振りだな)
(そうですわね。もうすぐ傍まで?)
(あぁ。今は木造の校舎と思わしき建物の前にいる)
(敷地内に入ってますの?)
(ちゃんと許可は取ってあるさ。聖域から直々にね)
(それはそれで哀れですわね)
(全くだ。で、俺は入って来ても良いのかな? この建物内から姫子達の小宇宙を感じる)
(態と出してますから。入って来て構いませんわ。一応言っておくと、今は四大魔王の一角であるサーゼクス様も来てますわ)
(それは好都合だ。こっちとしても一度、挨拶をしておかなくては…と思っていたところさ)
(それは重畳。では、また後ほど)
念話終了…っと。
彼の事だから、すぐにやって来るだろう。
コンコン。
「ノック?」
「誰かしら…?」
「私の『待ち人』ですわ。中に入れても?」
「え…えぇ…川上さんの知り合いなら…」
「…だ、そうですわよ?」
「ならば、遠慮なく失礼する」
扉を開けて入って来たのは、今時の若者らしいラフな格好をした茶髪で麻呂眉な一人の美青年。
私達は知っている。
彼の事を誰よりもよく知っている。
「よく来たな」
「待っていたぞ」
「二人とも、久し振り」
歳が近いせいか、実はこの三人は仲が良かったりする。
年代が近いってのは、それだけで好印象ですわよね。
「ふむ…君も姫子さんの仲間なのかな?」
「えぇ。お初にお目に掛かります。魔王サーゼクス・ルシファー様」
「僕の名前を知っている…と言う事は…君も姫子さんと同じ…?」
「えぇ…その通りです」
ポケットから手を抜いて、改めて彼はこの場にいる初対面の相手全員に挨拶をした。
「俺は『