部室を出てから、私と貴鬼のテレポーテーションで目的地である駒王中央病院付近の裏路地へと移動する。
流石に大通りにいきなり出現するわけにもいかないですし。
「転移の魔法陣も無しに、ここまで正確に瞬間移動をするとは…」
「これが『超能力』…魔法とも神器とも違う力…なのですね」
もう既に驚きに耐性が付いている先輩方は、少し目を見開いただけで済んでいたが、サーゼクス様とグレイフィアさんは、そりゃもう凄く驚いていた。
今までずっと、異能力と言えば魔法か神器かの二つしか無い価値観だったんだから無理はないけど。
「では、病院に参りましょうか。すぐそこですわ」
私達がいるのは病院の向かい側にある歩道。
なので、必然的に横断歩道を渡って行かなくてはいけないのだけれど…。
「なんかさ…スゲー目立ってね?」
「10人近くの集団で歩いていれば…な」
「嫌でも目立ちはするだろうな」
「ですわね…」
今更ながら、自分達の特異性というモノを自覚しますわね。
これもまた慣れですけど。
なんて言ってたら信号が青になり、私達はそのまま病院の中へと入りロビーへと直行する。
「さて…まずは受付に行ってから…」
「その必要はないよ」
「「「あ」」」
非常に聞き慣れた澄んだ声。
この声は…間違いありませんわ。
「知っている小宇宙を複数感じたから、もしかしたらと思っていたけど…やっぱり君達だったんだね」
そこにいたのは、亜麻色の髪を持つ美女…じゃなくて美青年。
立派な白衣を着て、そこにはちゃんと名札も付けられている。
「お久し振りでございます…瞬さま」
「うん。久し振りだね、姫子」
本当に…いつ会っても、いつ見ても変わらない方ですわね…。
美容の秘訣とかあるのかしら?
「君達も久し振り。ソニア。クレイオス。そして…貴鬼」
「あぁ。久し振りだな」
「忙しいと聞いていたが、元気そうで安心した」
「また会えて嬉しいですよ…瞬」
私達からすれば懐かしの再会。
でも、他の方々からすれば別となる。
「えっと…川上さん。この人がまさか…?」
「えぇ…そうですわ」
兵藤さんは恐る恐る尋ねてきたけど、ここはご本人に言って貰った方が良いでしょうね。
「初めまして。君が紫龍に弟子入りしたって言う兵藤一誠くんだね」
「は…はい。兵藤一誠…です。師匠にはいつもお世話になってて…」
「あはは…別に緊張する事は無いよ。君の事は兄さんからも聞いてるしね。『見込みがある面白い奴がいた』って」
「に…兄さん?」
「あれ? もしかして聞いてないのかな?」
あら…すっかり言い忘れてましたわ。
姫としたことが…不覚。
「兵藤さん。前に私の立会人をしてくださった一輝さまは、この瞬さまの実のお兄様になるんですのよ」
「い…一輝さんの弟…!? そーいや、前にそんな話を聞いたことがあるような…」
あら…そうなんですのね。
もしかして、私がライザー陣営と戦っていたと気かしら?
「こ…この方が一輝さんの弟さん…!?」
「君がアーシア・アルジェントさん…姫子の従者になった子だね?」
「ひゃ…ひゃい! 初めまして…アーシア・アルジェントです…」
あらら…完全に委縮しちゃってますわ。
緊張しているから無理も無いですけど。
「その隣にいる君は確か…」
「ゼノヴィアと申します。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ、よろしくね」
なんかもう恒例になりつつあるけど、後は残りの皆さんの紹介をすれば…。
「ね…ねぇ? 川上さん?」
「なんですのグレモリー先輩?」
「この人…本当に男…なのよね? 何処からどう見ても女性にしか見えないんだけど…」
「正真正銘の立派な成人男性ですわよ?」
「そう…よね…」
その気持ち…分かりますわ。
実際、幾度となく瞬さまは『少女のような顔』と言われてきてますし。
主に敵対する相手から。
「ふふ…良く言われるよ。でも、僕は男だよ?」
「ご…ごめんなさい…」
「別に気にして無いさ。言われ慣れてるしね」
慣れって…怖いですわね…。
「ところで、君達が例のグレモリー眷属の子達かい?」
「は…はい。初めまして…」
ってことで、ここからはちょっと省略。
展開自体は前と同じですし。
「彼に弟がいるとは聞いていたが、まさか医者だったとは…」
「僕は昔から争い事が苦手…と言うよりは嫌いなんです。だから、命を救う医者になろうと思ったんです」
「立派な考えだね。本当に素晴らしいと思うよ」
「ありがとうございます」
サーゼクス様と瞬さまが大人な会話を。
そのついでちゃんとお互いに自己紹介まで済ませてるし。
しれっとグレイフィアさんも。
「もしや…姫子さんが言っていた乙女座と言うのは…?」
「はい。それは僕の事ですね」
病院内とは言え、ここは大きくて意外と喧騒もあるので堂々と色んな事を話していてもバレなかったりする。
「
あのシャカ様が自身の後継者として選んだのが瞬さまだった。
今思えば、あの方は聖域での戦いの後から瞬さまの後見人にもなっていた。
それ故に、瞬さまがシャカ様の後を継ぐのは必然だった。
その判断は決して間違っていないと断言出来る。
「皆してココに来たのは…」
「はい。『お見舞い』ですわ」
「そうだと思ったよ。今なら部屋にいると思うから、案内するよ」
「お仕事はよろしいので?」
「うん。大丈夫。今は小休止中だったし。それに…」
「それに?」
「君達が来る少し前に、面白い人が来たんだ。特に一誠君にとってはね」
「俺にとっては?」
兵藤さんにとって面白い人?
うーん…予想出来るようなー…出来ないような?
んんー?
「部屋に行けば分かるよ。こっちだよ。着いて来て」
そうして、私達は瞬さまに案内される形で『あの方』の病室まで行くのでした。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「着いたよ」
部屋の前に到着した瞬間、全身の産毛が逆立った。
恐ろしく強大で、それなのに非常に穏やかな小宇宙。
「な…なんだこれ…! 冷や汗が…」
「でも…怖い感じはしないです…。それどころか、不思議と安心できるような…」
「私もだ…。緊張している筈なのに…何故か心は穏やかだ…」
それが『あの方』の凄い所。
それでこその教皇。
(最上階の一番端…そして、部屋の前には名前は書かれていない。当然ですわね)
あの方が、この病院にいると言う事は最重要機密に匹敵する筈。
私達でなければ、近づく事すら許可されないだろう。
「む? この小宇宙は…」
「他にも誰かいるな…これは…まさか…?」
「成る程ね…そういう事か」
あぁ…納得しましたわ。
確かに『あのお方』ならば、ここに来ていても不思議じゃありませんわ。
「じゃあ、入るよ」
瞬さまが扉をノックし、中に確認を取る。
「瞬です。姫子さん。ソニア。クレイオス。貴鬼の四人と、姫子さんの従者の二人。それから他の客人をお連れしました」
中からの返事は無い。
けど、小宇宙は感じた。
「『入っていい』って。失礼します」
瞬さまがゆっくりと病室の扉を開ける。
すると、そこにいたのは…。
「よく来たな。姫子…ソニア…クレイオス…そして貴鬼」
窓から差し込む陽光に照らされて、美しく光り輝く教皇猊下のお姿だった。
「「「「「はっ!」」」」」
猊下の姿を見た瞬間、私達黄金聖闘士五人はすぐにその場に跪いた。
それはアーシアさんやゼノヴィアさん、兵藤さんも同様だった。
「お久し振りでございます…教皇『シオン』猊下…」
よもや…現実世界でも会う事が叶うとは…。
正直、どれだけ心の準備をしてもし足りなかったですわ…。
「な…なんか…無意識のうちにしゃがんじまった…」
「あれが教皇猊下…なんて荘厳で美しいんでしょう…」
「何という威厳…うぅ…自然と涙が出て…」
はぁぁ…心の中で感嘆の溜息が漏れますわ…。
「こ…このお方が…教皇猊下…」
「リ…リアス…! 私達も…」
「そ…そうね…」
少し遅れて、グレモリー先輩達もその場に跪いた。
うーん…貴方達は聖闘士ではないのだから、そのままでもいいと思った反面、ちょっとだけ嬉しかったり。
「そうか…これが『真の王』…なのか…」
「サーゼクス様…」
「あぁ…僕なんかとは全く違う…この方は…『生まれながらの王』だ…」
あわわ…なんと、サーゼクス様たちも跪いてしまいましたわ…。
これっていいのかしら…?
「頭を上げて貰いたい…サーゼクス・ルシファー殿」
「僕の名前を御存じで…?」
「あぁ…報告は聞いている。よくぞ参られた。隣にいる奥方も」
「あ…ありがとうございます…猊下…」
もう既にお二人の事は存じている…と。
流石ですわ…。
「それに…君達もだ。リアス・グレモリー嬢と、その眷属達よ」
「わ…私達の事もご存じで…?」
「あぁ…ちゃんと聞いているよ。随分と、我が聖闘士たちと仲良くしてくれているようだね。感謝する」
「い…いえ…寧ろ、私達の方がお世話になりっぱなしと言うか…その…」
完全に『借りてきた猫』状態の先輩方。
ある意味、物凄くレアな光景かもしれませんわ。
「姫子」
「はい」
「よくぞ試練を乗り越えた。お前こそ地上の平和を守る真の聖闘士だ。お前のような者が黄金聖闘士になった事を、私は心から誇りに思う」
「有り難き幸せ…」
シオン様に褒められましたわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
今日は間違いなく人生最良の日ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
「そこの二人の少女が、姫子の従者となった者達か」
「「は…はい」」
「まだ姫子は黄金聖闘士になったばかり。これからも彼女の事を支えてあげて欲しい。頼んだぞ」
「「はっ…。我等の命に代えても、必ずや姫子さまをお支え致します」」
アーシアさんだけでなく、あのゼノヴィアさんすらも余所行きの口調になっている…。
なんだか凄い光景を見た気がしますわ…。
「そして…そこの少年が、あの紫龍の弟子となった赤龍帝の少年か…?」
「は…はい。兵藤一誠…です」
「修行の日々は大変だったろう。よくそこまで己を鍛え上げた」
「いえ…大変ではあったけど…それ以上に充実してました。師匠には、どれだけ感謝してもしきれません」
「…だ、そうだぞ?」
え? シオン様が私達以外の誰かに話しかけている?
先程の小宇宙の相手…ですわよね。
「ほっほっほっ…どうやら、紫龍の奴めも中々に師匠と言う立場が板についてきたようじゃの」
((((やっぱりか…))))
その姿を見た時、私達の予想が確信に変わった。
中華風の服を着た小柄な老人。
だけど、その内から溢れる、シオン様にも匹敵する圧倒的に強大な小宇宙。
「久しいな…姫子よ」
「はい…お久し振りにございます…『老師』様…」
このお二方が一緒にいるだなんて…私、緊張によるストレスで胃に穴が開くかもしれませんわ…。
後で瞬さまに胃薬を頂けるかしら…?
シオンのCVは勿論『飛田』さん一択で。