今こそ燃えろ黄金の小宇宙! ですわ!   作:とんこつラーメン

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親の視線! ですわ!

 まさか、帰宅して早々にアザゼル様から土下座された挙句、衝撃的な発言をされるとは…今日だけで私をどれだけ疲弊させる気なんですの…?

 詳しくは前回の話を参照ですわ。

 

「はぁ…疲れましたわ…。取り敢えず、私は部屋に戻って着替え来ると同時に、聖衣も持ってきますから、貴鬼はここで待っていてくださいまし」

「了解だ。別に急がなくても良いよ」

「残念ながら、今は急ぐ気にもなれませんわ…」

 

 本当に…今日一日だけで支取先輩の気持ちが嫌と言うほどに理解出来ましたわ…。

 こんな苦労とほぼ毎日に渡ってしていらっしゃるとは…冗談抜きで尊敬に値しますわね…。

 次に生徒会室に行く時は、何かお茶菓子でも持参しようかしら…。

 いや、今までにも何回も持って行ってはいるんですけどね?

 次回はもっと疲れに効くような物を…と思いまして。

 

「サーゼクス様とグレイフィアさんも、どうかごゆっくりとしていらしてください。お義父様」

「分かっているよ。こっちは任せて、姫子は早く着替えておいで」

「はーい…ですわ」

 

 やっと自分の領域に戻ることが出来る…。

 まだ自分の宮である『蛇夫宮』に行ったことが無いですけど、少なくとも今の私にとっての聖域は間違いなく自分の部屋ですわね。

 これは私だけでなく、大概の人達がそうだと思いますけど。

 

「姫子さん…大変そうですね…」

「同じ女子高生なのに、この苦労の差…これが偉大なる戦士になると言う事なのか…」

 

 なんだか他人事みたいに言ってますけど、いずれはお二人にも同じような苦労を背負いこんで貰うつもりですからね?

 私の従者になると言う事は、つまりはそう言う事ですわ。

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・・

・・

 

 

 

 

 

 姫子達が去って行ったあと、アザゼルはすぐに元通りになり、酒を飲みながら爆笑していた。

 

「はははははは! あの嬢ちゃんも相当な苦労人だな!」

「その原因の一端を確実に担っている君が言っても何も響かないよ…アザゼル…」

 

 渇いた笑いを浮かべながらソファに座るサーゼクス。

 彼もまた、今回の姫子と同様に苦労人属性なので、彼女の気持ちは痛いほど理解出来た。

 

「貴鬼くんも遠慮せず座りたまえ」

「ありがとうございます」

 

 フィリップスに促され、同じようにソファに座る。

 堕天使総督、錬金術師、四大魔王の一角に囲まれても全く動じていないのは流石と言うべきか。

 他の聖闘士たちならばいざ知らず、貴鬼の場合は瞬や紫龍、一輝たちと共に幼いながらも激動の時代を生き抜いた人間の一人なので、この程度の事ではもう動じなくなってきているのかもしれない。

 

「どれ、新たに来たお客人にも何か出さなくてはね。貴鬼くんはもう成人済みかな?」

「はい。今は20歳になります」

「それは結構」

「あ…でも、今から聖衣の修復をするので、出来ればアルコールは…」

「おっと、そうだった。なら、君にはジュースで良いか。サーゼクスさんは酒でも構わないかな?」

「大丈夫ですよ。こうして誰かと酒を飲むなんて久し振りです」

「そうか。それは良かった」

「フィリップス様。お手伝い致します」

「おぉ…それは有り難い」

 

 フィリップスに続くようにしてグレイフィアがキッチンへと向かって行く。

 その背中を見ながら、アザゼルはニヤニヤとしながらグラスを傾けた。

 

「しっかし…フィリップスの奴は一体いつまで独身を貫くつもりなんだ? アイツも、そろそろいい歳だろうに」

「そうなのかい?」

「あぁ。少なくとも、あの嬢ちゃんを養子に迎えた時点で今みたいな髭面だったしな」

「それから少なくとも16年以上は経過していることになるのか…」

「だから気になるんだよ。確かに、俺から見ても姫子の嬢ちゃんはしっかりしてるよ。そこらの女子高生なんか目じゃないくらいにはな。けど、だからと言って母の温もりを知らないッつーのは流石に不憫だろ」

 

 自分も余りフィリップスの事を強くは言えないのだが、だからこそ気になってしまうのだ。

 フィリップスは自分のように過剰に忙しいわけでもない。

 容姿や収入だって申し分ない。

 その気になれば、結婚相手なんて沢山いるだろうに。

 

「君の言いたい事も理解出来るけど、そう決めつけるのは早計なんじゃないかな?」

「まぁな…余計なお世話だってのは俺だって分かってるさ。でもな…」

 

 堕天使とは思えない程に人情深いのがアザゼルと言う男だった。

 だからこそフィリップスとも意気投合したのだが。

 

「…俺たち聖闘士は、その殆どが特殊な出生を持つ者ばかりです。二親が存命な者は殆どいないでしょう」

「そうなのかい?」

「えぇ。あの一輝や瞬たちに至っては孤児だったらしいですから」

「そうだったのか…」

 

 初めて会った瞬間から普通ではないと思っていたが、まさか孤児出身だったとは。

 物心ついた時から親がいなかったからこそ、あれ程までに強靭な精神力を持てたのかもしれない…とサーゼクスは考えた。

 

「特に、俺達の先代…師匠たちの時代は凄かった。人材不足だったと言うのもありますが、それ以上に天才児が多すぎた」

「多すぎた?」

「どーゆーこった?」

「そのままの意味ですよ。俺の師匠…『牡羊座のムウ』を初めとする最年少組は、僅か7歳で黄金聖闘士に任命されたと聞きます」

「な…7歳だぁッ!?」

「幾らなんでも…若すぎる…」

 

 7歳なんて言えば、現代ならば小学生に上がりたてで、一番の遊び盛りの時期とも言える。

 そんな頃に世界の平和を担う戦士に任命される。

 どう考えても普通のことではない。

 

「冥王ハーデスとの前聖戦で余りにも聖闘士が死に過ぎた。故に、新たな人材育成こそが聖域にとって必須であり急務だった。そんな中、同じ時代に、まるで運命に導かれたかのように天才的な実力と才能を持つ人間が一度に12人も揃った。これは本来ならば決してありえない奇跡であり、これ以上ない程の行幸。故に教皇シオンは彼らを黄金聖闘士に任命するしかなかった。彼ら以外に有り得ないと思ったから」

 

 僅か3歳で雷光を操れたアイオリア。

 幼い頃から神々と対話して、死の先を知ったシャカ。

 シオンすらも驚愕する程の超能力を使えたムウ。

 物心ついた時から強大な凍気を身に纏うカミュ。

 子供の頃から死霊と対話し続け、それらを使役出来たデスマスク。

 全ての植物に愛され、生まれながらに自然の加護を受けてきたアフロディーテ。

 

 他の者達も、子供とは思えない程の天才的な才能を秘めた者達ばかり。

 その才能を決して無駄にさせないために、シオンを初めとする『彼ら』は『裏技』を使って現代に残り続けた。

 全ては、新たな世代に自分達の全てを継承させる為に。

 

 ある者は霊魂として、またある者は限定的な蘇生をする事で。

 

「姫子はきっと、今の自分の境遇を悲観していないと思いますよ。それどころか、自分は他の人達よりも恵まれていると思っているかもしれません」

「はぁ…三大勢力も大概だが…お前達も壮絶だな…」

「だね…。きっとこれが『神に仕える』と言うことなのかもしれない」

「俺も昔は神に仕える身ではあったけどよ…もうちっとばっかしマシだったと思うぞ?」

 

 本来ならば彼女達は守られる側の筈なのに、完全に守る側になっている。

 しかも、そこらの者達よりも遥かに強大ときている。

 

「お待たせしました」

「おや? 三人で何を話していたんだい? 随分と楽しそうにしていたが…」

「別に。あの嬢ちゃんも大変だなーって話をしてたのさ。な?」

「そうだね。僕達で少しでも彼女達の負担を減らせたらいいね」

「まぁ…そう言う事にしておきますか」

 

 フィリップスとグレイフィアがドリンクを持って来てくれたので、話は一時中断することに。

 

「そうだ。なんかの修復をするとか言ってたけどよ、後学の為に俺にも少し見せちゃくれねぇか?」

「別に構いませんが…また、いきなりですね」

「これは完全に個人的趣味だよ。総督業の傍ら、趣味で神器の研究やら、人工神器の開発やらをやってるもんでな。神の技術で生み出された鎧ってのが、どうしても気になるのさ」

「成る程…」

 

 貴鬼としては、修復作業を見られること自体は何も問題は無い。

 そう簡単に真似できることではないし、聖衣が無い別の勢力の者が技術を習得しても殆ど意味が無いから。

 

「お待たせしましたわー。聖衣、持ってきましたわよー…って、あら?」

 

 私服に着替えた姫子が、その背に蛇遣座の聖衣箱を背負ってリビングに戻ってきた。

 傍には当然、アーシアとゼノヴィアも一緒だ。

 

「なんか…空気が柔らかくなってる? 何かありましたの?」

「なんでもねぇよ。だた、大人同士で色々と話してただけさ」

「ふーん…?」

 

 大人の男同士の会話なんて姫子達には分からないので、小首を傾げながら適当に受け流す事に。

 下手に考えても意味が無いと判断したから。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一体何があったのかは知りませんけれど、空気が良くなったのは良いことですわ。

 大人達の中に未成年が混じると、どうしても緊張してしまうものだから。

 

「では早速…はい。聖衣を持ってきましたわ」

「じゃあ、まずは状態を見させて貰おうか」

 

 私が箱を床に置き、貴鬼がそれを開くと、中から黄金の光が溢れ出る。

 

「おぉっ!? なんだこりゃっ!?」

「何と言う輝き…」

「黄金の光ですね…」

「ふむ…実に美しい光だ」

 

 なんか大人達がそれぞれに感想を言ってますけど、ここは一先ず無視。

 

「…成る程。これは中々に重傷だな」

 

 改めて確認する蛇遣座の黄金聖衣のオブジェ形態は、見るも無残な姿となっていて、全身の至る所が罅だらけになっていた。

 

「それだけ、コカビエルが強敵で、壮絶な戦いだったと言う事か…」

「えぇ。その通りですわ」

 

 これから先も、彼ほどの強敵と巡り合うことはそう滅多にないでしょうね…。

 コカビエルは心も力も本当に強かった。

 敵ながら、私は彼の事を本気で尊敬してますから。

 

「全てが黄金に光ってやがる…! こいつが…嬢ちゃんの鎧…か?」

「そうですわ。今は休息の為にオブジェ形態となってますけど」

「休息?」

「えぇ。私達『聖闘士』の聖衣は単なる鎧に非ず。ちゃんと生きて、命があるのですわ」

「生命がある鎧…そんなのがあるとはな…」

 

 神器だって似たようなものじゃありませんの?

 ドライグさんとかがそんな風に思えましたけど。

 

「生きているが故に、聖衣の修復には材料や道具の他に、その中に小宇宙を秘めた聖闘士の生き血が必要になる」

「い…生き血…ですか…!?」

「まさか…今から姫子に血を流せなんて言う気じゃ…」

「その心配は無用だよ。お二人さん。前の戦いの時に流れた流血で十分に事足りているから。この聖衣はその時の姫子の血を既に吸収している。後は俺の手で修復作業をするだけだ」

「「よ…よかった…」」

 

 ま、普通に考えれば中々にグロですわよね。

 二人が心配する気持ちも分かりますわ。

 

「じゃあ、隣の部屋を借りるよ。集中したいからね」

「分かりましたわ。好きなだけ使ってくださいまし」

「なら俺も、さっきの約束通りに見学させて貰うか」

「え? 見学?」

 

 私が着替えている間に、そんな約束をしていたんですの?

 貴鬼も普通にしているし…問題が無いのであれば私から何も言う事は無いんですけど…。

 

「それなら、貴鬼が仕事をしている間に、私達で夕飯の支度をし始めますか」

「はい。分かりました」

「うぅ…まだ料理は不得意なんだ…器用なアーシアが羨ましい…」

 

 ゼノヴィアさんには別方面での活躍を期待してますから、気にする必要はないですわよ。

 

「姫子様。私もお手伝いをさせて頂きます」

「グレイフィアさん…お願いしますわ」

「ありがとうございます」

 

 客人に手伝いをさせるなんて論外だと思われるだろうが、相手が善意から申し出ているのに、それを断ることなんて私には出来ない。

 きっと、グレイフィアさんの中にあるメイドとしての矜持が、ここでただ黙って見ている事を許さなかったのだろう。

 なので、ここは遠慮なくプロのメイドさんの実力を見せて貰いましょう。

 必ず私の糧になると思うから。

 

 

 

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