エスケヱプ・スピヰド ルートXX   作:lain0730

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其の01 会敵

八洲国の帝都<<東京>>。中央と下町に分かれた八洲国最大の都市である。その中にあって異彩を放つ建物、10人に聞けば10人共が

 

「「「「「「要塞」」」」」」

 

と、答えるに違いない風貌の"集合住宅"。その1室に、戦時下においては脅威として、戦後は伝説として恐れられてきた9匹の虫、"鬼虫"が一人 九番式<<蜂>>・金翅の九曜の姿はあった。

 

「うまい」

 

お萩である。戦場において一騎当千の戦力を有する彼にも今では日常があり、それが彼にとって大切な守るべき物の一つである。

もう一つ、最も大切な守護の対象者。金翅の九曜に取っては"司令"であり、一人の九曜に取っては"パートナー"でもある少女『叶葉』はちょろちょろと部屋を動き回り家事をこなしている。

 

「もうすぐ終わりますから、そうしたら巴さんのところへ行きましょう」

 

「承知した、しかし小生も手伝った方がよかったのではないか?」

 

「いえ、私家事好きですから。でもありがとうございます」

 

「……んむ……」

 

以前、小間使い付の屋敷で過ごしていた時に見た、叶葉の狼狽ぶりを覚えている九曜はそれ以上食い下がらなかった。

 

(……あれは痛々しかった……)

 

目を閉じ思い出しながら、静かにお茶を飲む。

 

「それにしても、鴇子さまが早起きをするなんて、今日は槍が降るかもしれませんね」

 

「確かに。菊丸の新装備の試験がよほど楽しみだったのだろう」

 

悪気なく同居人で友人でもある鴇子に対し失礼なことを言う叶葉と、否定しない九曜。

久しぶりの二人だけの部屋、この空気感を九曜は好ましく思っていた。

 

(叶うなら、ずっと守りたいものだ……いや守ってみせる)

 

人知れず決意を新たにするのであった。

 

 

 

 

東京の中央に出入りする人間でも、極一部の人間しか存在を知らない"虫"専用のドック。

そこでは、行使する彼女にとっては至福の、行使される彼女にははた迷惑な行為が繰り広げられていた。

 

「あぁん、やっぱりこれはいいものよぉ!?」

 

「ちょっ、だから胸を揉むなってぇ!!」

 

「じゃあぁ……こうしちゃおうかなぁ」

 

「ひゃん!?」

 

「あらぁ、以外とびぃんかぁん」

 

ケラケラと笑いなが行使される彼女……菘のふくよかな胸(最近さらに大きくなってきた)をいじくりまわす幼女。

"鬼虫"の開発者して、自身もその一角を担う二番式<<蜘蛛>>・羅刹の巴。

ある意味で日常と化している艶事ではあるが、周囲のドック要員の何人かは前屈みであった。当の菘自身がそれに気づかなかったことが、この際は彼女にとっての救いだろう。

この艶事がドック要員に奇妙な一体感をもたらしているということは、彼らだけの秘密である。

 

((((((今日もゴチになります)))))

 

今日もまた彼らの思考は一つとなり、次々と作業がこなされていく。

ドックに入った九曜と叶葉の目に入ったのは、概ねこのような光景である。

 

「さらに……大きくなっている……!?」

「君が言うべき台詞はそれではないと、小生は愚考する」

「ふわっ!? そ、そうでした」

 

はじかれた様に、巴と菘に駆け寄る叶葉。

 

「菘さんが困っていますよ~やめてあげてくださぁい」

 

「んん~?」

 

<<蜘蛛>である彼女が、二人の入室と叶葉の接近に気付かないわけがない。肩越しに叶葉を見やった紫の両目が怪しく光る。

 

-----それはまるで本物の、蜘蛛のような目でした-----叶葉談

 

しかし、その毒牙に哀れな蝶がかかることはなかった。

 

『彼女に対しても同様の行為を行うのであれば、小生も実力を以って対応することになるが、如何に』

 

「む~う、いいじゃなぁい減るもんでもないんだしぃ」

 

九曜の通信に対し、両手をあげるオーバーリアクションと言葉で返す巴。

一方の菘は開放された胸を抱きながら、その場に座り込んでいる。頬が桃色に染まっている様に見えるのは果たして気のせいだろうか……。

 

「アタシの精神力は大いに磨り減ったよ……」

 

菘の悲痛なつぶやきはドックに虚しく消えていくのであった。

 

 

 

 

 

ややあって、菘は持ち場に戻り、叶葉はその手伝いに同行していった。

そうして場が落ち着いたと見た巴が切り出す。

 

「最近、みょ~な反応があるのよねぇ……」

 

「黒塚部隊か?」

 

真っ先に思い当たる最有力候補の名を出す九曜に、珍しく難しい表情(のように見える)巴が答えた。

 

「それがわかんないのよねぇ。反応自体"捉えた"っていうか"捉えさせられた"って感じだし……」

 

巴の言葉に表情こそ変わらないが、怪訝な声色で返す九曜。

 

「捉えさせられた? よくわからん、説明を求める」

 

「ん~だからね? わざとっぽいのよ、反応したかと思うとしばらくチョロチョロしてすぐ消えるし、かなりの距離を転々としながらだし……まるで……虫で移動してるように」

 

そこまで言われて、尚のこと九曜は最初の候補の可能性について考える。

 

「それこそ甲虫による偵察や示威行為ではないのか?」

 

「違うわね、そもそも下町どころか中央の管制室にまで奴らの内通者がいたのよ? 超遠距離からの偵察なんて意味が無いし、示威行動の為に姿をさらすようなお馬鹿さん達だと、九曜ちゃんは思うわけぇ?」

 

一刀両断で考えを否定されたあげく、ちゃん付けまでされた。九曜も愚問だったと考えを改めたが、言いたいことはきっちり言う。

 

「思わん。ちゃんはやめろ」

 

九曜の強い視線と言葉をスルリと交わして、巴は続ける。

 

「でっしょお? で、こっからは可能性の話」

 

ここまで言われれば九曜も巴の言いたいことに察しがつく、つまり……

 

「"アタシ達"でもなく、"カレラ"でもない"ナニカ"がこの八洲にいる……それなら示威行動でも頷けるのよねぇ」

 

最後には妖しい笑みを浮かべ巴は言った。

 

 

 

 

ここは八洲国に在るが、街に生きる人々は疎か、この国を動かす者達にすら存在を知られていない或る場所。

其の場所で蠢く影は、確かに其所にあった。

旧軍における軍の暗部であった特四○四旅団、今も八洲国の為……否、八洲国の"勝利"の為にだけに存在する黒塚部隊である。

巧妙に隠匿されたこの場所にあっても、正体不明の反応を断続的に捕らえ続けていた。

 

「我々でなく、鬼虫のそれとも違うこの反応……」

 

黒塚部隊の隊長は虎杖は呟く。

 

「隊長、我々とて全員が全員、この場にそろっているわけではありません、よもやとは思いますが……」

 

並んでいる初老の男の一人が可能性の一つを重々しい表情で口にする。

 

「我らの知らぬ虫が存在するのかもしれません……」

 

その言葉を受けて虎杖に浮かぶのは……笑み。

 

「興味深い……本官自ら動きたい所だが……」

 

言うがすぐに頭を振り、部屋の端へ目をやる。

 

「朧、<<鍬形>>の運用試験も兼ねて会敵し、これを撃滅、可能ならば鹵獲せよ」

 

「了解。っと、あっちもこの反応は補足してるだろうし、場合によっては鬼虫とも鉢合わせると思うけど?」

 

「判断は任せる」

 

「了解」

 

<<鍬形>>は鬼虫ではない。彼、否、彼等が駆るのは甲虫。戦後、黒塚部隊によって造られた虫型兵器。その中でも特機と呼ばれる機体は鬼虫に勝るとも劣らない一点物である。

天道と蛍はすでに墜ち、稼働中の特機は3機、最強の五号丸<<鍬形>>は暗闇に溶けるように出撃した。

 

 

 

 

現在、巴のドックには鬼虫がそろっていた。かれこれ数十分もの間、会話が堂々巡りを繰り返している。

 

「やはり小生が当たるべきだ」

 

「あ"あ"ぁ!? なに抜かしてやがるっ!! 敵の正体がわからねぇなら、いざって時に重要なのは火力だろうが!! すっこんでろ!!」

 

「おぅおぅ、若いってのはいいねぇ」

 

「てめぇもすっこんでろっ!! 奥歯ガタガタ言わすぞゴルァ!!」

 

「ははっ怖い怖い」

 

「殲滅戦や掃討戦ならともかく、反応に対し即応する機動力は蜈蚣には皆無であろう。やはり小生が……」

 

その瞬間その場の全員が切れるはずのない、人工血管の切れる音を聞いた(気がした)。

 

-----いやぁ、あの時は敵味方識別信号を切り替える寸前までほぼイキかけました-----角○書店刊・蜈蚣伝より

 

「ててててめぇ……言うに事欠いて蜈蚣の機動性が皆無とかほざきやがったか……」

 

俯いて震えるのは頬に傷を持ち、軍服を着崩した短髪の男。

 

「(飛行型の蜂と比べれば)事実であろう」

 

一言足りない九曜である。ただしその一言があったとしても<<蜈蚣>>・弩将の井筒の怒り納めるには不足であったであろうことはこの場の全員が察するところだ。

 

「じょぉぉおぉぉぉおおおおおとぉぉぉおぉぉおおおおだぁぁぁっぁぁっぁあああ!? 白黒つけてやんぞ蜂っころぉぉぉおぉおおおおおぉ!!」

 

それまでなぜか会話に参加せず、どこか楽しそうに男達を眺めていた巴がここまで話が拗れるに至って口を開く。

 

「はぁいっ、そこまでぇ。井筒くんどぅどぅ」

 

「あ"あ"っ!?」

 

声のする方向へ反射的に鋭い三白眼を向ける井筒。

 

「んん~? なにかなぁ?」

 

一切臆することなく微笑み(?)ながらその眼を正面から見返す巴、次の瞬間には……。

 

「すいやせんっしたぁ!!」

 

見事な五体投地をさらす井筒であった。

その姿は参番式<<蟷螂>>・夜叉の剣菱をして「見事だ」と言わしめるほどであったという。

 

「んふっ、まぁ今回の場合は九曜くんが適任よねぇ。唯一の空中機動型でスピードはアタシ達の中で一番だし。それに……」

 

紫の両目を九曜に向け、今度こそ微笑みながら

 

「<<蜂>>と、征きたいのよね?」

 

「然り」

 

短く応える九曜の赤い瞳には、強い意思の力とほんの少しの気恥ずかしさが見えた。

 

 

 

 

新たに反応を感知したのはそれから3日後。場所は"横須賀"。

そして、その地へ向け<<蜂>>と<<鍬形>>が同時に動いた。

 

 

 

 

 

----------------------------------------

 

 

 

 

 

 

横須賀。戦前は異国との交流が盛んな重要な海運拠点、戦中は帝都防衛及び制海権確保の為の最重要海軍基地、戦後においては嘗ての盛況な海運都市の面影も、強大な海軍基地の面影もないただの廃墟群。

帝都にほど近いこの地にあって、不明機(アンノウン)が全てのステルス機能を切ったのが1時間前。隙間からこぼれる光を受け、その巨体は周囲の空間へ奇妙な存在感を放っていた。

ふ、とその目がチカチカと反応した。

 

『Caution / A movement reaction perception(警告/動体反応確認)』

 

巨体からの報告に、巨大なコンクリートの欠片の上に座っていた男の眼鏡の奥にある目が眠たげに開き、アイスブルーの瞳を向ける。

 

『そうカ、どちらの八洲ダ?』

 

『The two reaction(反応ハ二ツ)』

 

それを聞いた男の目が、今度はハッキリと開き、口角が歓喜……いや狂喜でつり上がる。

 

「くっくっ、それは面白イ。さぁ"再開"しようじゃないカ!!」

 

『Select action』

 

「もちろン……出撃シ!! 撃滅シ!!!! 勝利すル!!!!!!」

 

『Yes sir』

 

この会話の中ですでに彼等は一体になっている。待機していた地下の広い廃ホールを抜けて、唯一残っている第三司令センタービルへ。

 

「まずは挨拶かナ、失望させないでくれヨ。八洲の虫……」

 

 

 

 

『まもなく横須賀上空だが、おかしい……"不明機"の反応が二つに増えた』

 

九曜が東京へ報告をしていると、通信の中に割り込んでくるもう一つの声があった、朧である。

 

『また会ったな、<<蜂>>は……直ったのか』

 

九曜は朧の質問には応えなかった、応えたくなかった。

 

『それが貴様の……<<鍬形>>……』

 

実際のそれと同じような大きなあごを持ち、禍々しさを隠そうともしないその出で立ちに、九曜は本来の目的を忘れそうになった。

 

『殺気をこちらに向け過ぎだ、今日の目的は……あっちはず』

 

蜂と鍬形の目が同時に向く、この街の中でもっとも高いビルのフロアに身を伏せ、二人を観察するように目を光らせながらその"虫"は居た。

彼もまた通信を以て会話に参加してくる、ゾロリと背中を不快感が駆け下りるような感覚のする声だった。

 

『ヤァ、君たちが八洲の虫だネ。あえてこちらの自己紹介をさせてもらうヨ。ワタシは灼禍(しゃくか)、Type-破虫(ハチュウ) Ser.No.02 <<蠍擬/サソリモドキ>>・鋏襲(きょうしゅう)の灼禍ダ」

 

名乗りながら、蜂や鍬形よりさらに大きな巨体をビルの壁にズルズルと這わせつつその姿を現した。

一見すると蜘蛛、しかし巨大な鋏がある。一見すると蠍、しかし天を反り返る尻尾がない。これが地球においてもっとも危険な虫のひとつ<<蠍擬>>であり、それを模した虫型兵器が木偶の坊で在るはずがない。

 

「くっくっ、アァ……君たちの自己紹介はいいヨ。どうせ最後は全部持って帰るつもりだからネ」

 

蠍擬のディープパープルの目は馬鹿にしたように、数度点滅した。

九曜と朧は動じない、どちらにせよ相手の宣戦布告は終わり、あとはこちらが受けるか否かだ。

寸分違わず、二人は同じ決定した。「ヤツを黙らせる!!」である。

 

「笑えん冗談だっ」

 

と、九曜が呟いたその瞬間"金翅の九曜"と<<蜂>>は戦場から姿を消した。超高速機動に入ったのだ。

 

「なんであろうと関係ない。とりあえずそれ、破壊するよ」

 

朧は言い。<<鍬形>>は<<蠍擬>>へ必殺の一撃を打ち込むべく一気に間合いを詰める。

 

 

「当たらないヨ~当たっても問題ないけど、ネッ!!」

 

鍬形の先制攻撃を余裕を持って回避した蠍擬は、その場で反転しその長い鞭のような触角を鍬形に打ち付ける。

 

「くっ!?」

 

予想以上の衝撃にエラーが走るが、それを無視しなんとか距離をとる朧。

代わって仕掛けるのは九曜の<<蜂>>である、ニードルカノンを見舞いつつ必殺の距離まで急降下していく」

 

『あっはっは、くすぐったいナァ。そんなおもちゃデ……』

 

ここまで言って灼禍の雰囲気が変わる。

 

『"オレたち"に勝てるつもりカァァァァァァアア!!??』

 

『こんなおもちゃにオレたちハ、戦友ハ、アアアァァッ!!』

 

ニードルカノンを全く意を介さない上に、狂ったように通信を吐き、暴れる<<蠍擬>>。それを見やる九曜は、冷静だった。

 

『案ずるなこれが本命だ!!』

 

<<超電磁砲>>

 

これが<<蜂>>の持つ最大の針である。まともに食らえば鬼虫や特機とて無事では済まない大針が<<蠍擬>>をめがけて必殺の軌道を描き、直撃----

 

『だからおもちゃだってんだヨォォォォオオオ!!』

 

『Deployment(展開)』

 

瞬間、蠍擬の姿が闇に消えた、正確には密度の濃い霧に覆われ姿が確認できないのであるが。

<<蜂>>と<<鍬形>>のレーダーはそろって目標喪失のエラーを繰り返し吐き出し続け、濃く深い霧の影響で目視での着弾のダメージ評価もできないで居る。

だが九曜は確かに見た。自身の放った電磁を帯びた超高速の弾が、霧 に 触 れ た 瞬 間 溶 け て 消 え た こ と を。

そして今現在、建物があり得ない勢いで腐食していくのを、九曜と朧は見ている。

この戦況は誤算。状況不利、成果よりもリスクが多いと判断するや朧は決断する。

 

『ここは撤退させてもらうよ。まだ墜とされていい機体じゃないからね、この<<鍬形>>は』

 

言うや、すでにそこに朧の姿はなかった。

九曜にしても一度撤退し体制を立て直したいのは山々だったが、横須賀は帝都の目と鼻の先。

ヤツが九曜を追い帝都に至り、さきほどの霧を使用したら……その可能性がある限り引けない、守ると決めたモノがあそこにはある。

 

「しかしどうしたものか……迂闊に近づくことはできんし、このまま放ってもおけん」

 

触角での反撃を受けた<<鍬形>>はともかく、<<蜂>>は損害を受けていない。一か八かあの霧……濃すぎて繭の様にも見えるあれに突貫をかけるか。

否、高出力で帯電した超高速の弾丸を貫通されることなく消し去った。鬼虫の装甲ならば同じ時間でそうなる可能性は低いであろうが、レーダー異常にビルの腐食。

懸念すべき要素が多すぎる、当の灼禍とも通信は途絶したままだ、あの中に居るのかすら妖しいものだ、と九曜は思考と行動選択のまとめに入る。

 

(ヤツを帝都には行かせない、少なくとも小生はここでヤツがこの霧を隠れ蓑に移動しない様、索敵をしながら待機するほかはなさそうか)

 

行動は決まった。一度、上空から帝都に通信を送ろうと空に上がった瞬間。<<蠍擬>>のいるはずのビルは倒壊した。

あの霧の作用によるものと簡単に想像はできた。では本体は? 倒壊の爆風で文字通り霧散している霧の中に蜂は降りた。

 

『警告/本機ノ外装ニ著シイ腐食反応アリ/本機ヲ離レ本体ノミデノ行動ハ推奨シナイ』

 

『了解した、大丈夫か?』

 

『是/腐食部分ハ外装表面デアル』

 

少しでもこの霧に関する情報を得ようと、パッと思いつくレーダーや通信のテストと並列して<<蠍擬>>を探す九曜。

結果、薄い霧の中ですら九曜と<<蜂>>の持つ無線装置では接触している当人同士はともかく無線通信は不可能であった、はずなのだが<<蠍擬>>から無線が届いた。

 

『あぁ~蜂? 生きてるカ?』

『ああ、貴様も生きていたのか』

『自分の毒で死んだら戦友に馬鹿にされル。ちょっと遊ぼうと思っただけだがムキになっタ』

『だガ、また本当の戦争は始まル。その時は鍬形も蜂もワタシが殺すヨ?』

 

Type-破虫 Ser.No.02 <<蠍擬/サソリモドキ>>・鋏襲(きょうしゅう)の灼禍。そう名乗った新たな敵は言いたいことだけ言って通信を切り、その存在を完全に闇に溶かした。

 

 

 

 

時間にして30分足らずのほんの小さな戦争は終わった。これは後に起こる大きな戦争の縮図であったのか、前哨戦であったのか、それは誰にもわからない。

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