兜虫だ......。何か文句でもあるのか? 作:デンデ・テンゲン君
俺は今ただひたすらに走っている。理由?そんなの後ろを見ればわかる
「「「「「「「「「「「ギャァァァァァァーーーーーーーーーー」」」」」」」」」」」
俺は今、恐ろしい数の猿に追いかけられている、数が多すぎてこの山が揺れるほどのソレに
いやおかしいだろう。なんでこんなに来るんだ?
こいつらが俺を追いかけてくる理由、そんなものはとうに解りきっている。
「復讐」だ、仲間を殺した俺への。
解らないのはその数だ、俺一人に対して向こうは何匹だ?
軽く百は超えている気がする。
「仲間意識が強いから」で片付くようなものではない。ヤクザの報復でもこんなことにはならないだろう。
木の陰に紛れて、縦長の影が俺の影に重なる。
それを確認し、横に跳ぶ。
直後に俺のいた場所に木が落ちてきた、そう、木だ。
猿の中には力強い個体もいるらしく、そいつが俺に向けて木を投げてきているのだ。
ゴリラでもそこまでの腕力はないぞ。
さて、本当にどうしようか。
先程からずっと逃げ続けているが何も策らしきものが浮かばない。
奴等一匹一匹は雑魚だ、攻撃も俺にダメージを与えられるほどのものじゃない。
だから返り討ちにすることは出来る、だがそれも十数匹単位での話だ。
あの数が一気に俺に覆いかぶされば、人雪崩と同じ要領でその重量で押しつぶされる可能性がある。
それにさっきの木投げの個体は俺の甲殻を貫通してくるかもしれない。
こうなったら火攻撃で周りの木を燃やして山火事でも起こすか?
そんなことを考えながら走っていると
っ!!まずい。
俺はすぐに足を止める。
そこは広場のような場所だった。
そしてその周りの木の上や草むらには猿が集まっていた。
待ち伏せされたか...
それに気づいたとき、後ろから追ってきた猿も追いついてきた。
追いついた猿は散開し、均等になるように周りの猿のもとに着く。
ここまで統率が取れているのか、どうやらただの猿というわけではないらしい。
もはや逃げの手は使えない、やるしかなさそうだ。
俺は覚悟を決め、目の前の猿を見据える。
ここまでやるのだ、こいつらを全滅させるしか他に生き残る道はないだろう。
意識を集中させ、どこからの攻撃にも対応できるよう構える。
そして、どの猿かは分からないが一匹の猿が叫び声をあげる。それが合図となり周りの猿が一斉にこちらに襲い掛かってきた。
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アノグラッチ、またの名を「復讐猿」という。
彼らは主に群れで行動し、山や洞窟に生息している。
その繁殖力はすさまじく、小規模の群れが一週間後には大規模のソレに変化しているほどである。
一匹ごとの強さはそれほど高くないが、その尋常ではない数の力によって敵を殺す人海戦術を得意とする。
しかし、この世界の人間や魔物が真に恐れているのはそこではない。それは別名にもなっている「復讐」の習性である。
アノグラッチのスキルには「復讐」というものがあり、効果は読んで字のごとくであり仲間が何者かに殺されればその対象を仲間とともに捜索、追跡し殺すのだ。
その復讐には全てのアノグラッチが参加するため、もしうっかり一匹でも殺してしまえば取れる選択肢は「自分が死ぬか」、「群れを壊滅させるか」の二つに一つである。
また、この復讐にはアノグラッチだけでなくバグラグラッチも参加することもある。
バグラグラッチはアノグラッチの進化種であり、基礎能力は倍以上。
常に三体前後で行動しており、その凶暴な性格から危険度は高い。
幸い、バグラグラッチに進化するとスキルから「復讐」が消えるため復讐に加わることはまれである。
またここ魔族領の北の大地には、バグラグラッチを遥かに凌ぐ大きさと強さを持った個体がいると言い伝えられており、その地の住民もその存在を「猿神様」とよんで畏怖している。
非常に興味を惹かれる存在だが、アノグラッチより強いバグラグラッチ、それより強い魔物の調査など命がいくつあっても足らないため断念する。
「..........」
読んでいた文章に句点が打たれたのを確認し、男は本を閉じる。
そして感慨にふけりながら、テーブルのカップにある茶でその時の情景を腹の中に流し込む。
部屋の壁には少女が佇んでおり、カップが空になったことを確認し寄ってくるが、男はそれを片手で制止する。止められた少女は何も言わず元の場所に戻っていった。
その後男は立ち上がり、少女に目を向ける。相手も男が伝えたいことを理解したようでゆっくりと目を閉じた、「何も見ないことにする」とでも言わんばかりに。
「.....」
少女の意を汲み取った男は無言のまま一瞬で姿を消した。
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はぁっ...はぁっ......
あれから..どれほど経っただろうか.....
一時間か、三十分か....いや、それより下かもしれない。
周りには既に大量の死骸と血が飛び散っている。何匹殺したのかは覚えていない、三十を越したあたりで数えるのをやめた。
だがそれでも向こうの猿の数が減った気がしない。
しかも襲ってきているのはこの猿だけではない。
猿の輪の中から跳び上がってくるものが一つ。
またか!
その存在は周りの猿とは少し違う。
肌の色が黒く、体は二回りほど大きく、口は鰐のようになっている。
そいつ(以後差別化のため鰐猿と呼称する)が俺の体に両拳を叩きつけると重い衝撃が俺の体に走り、ぐらりと俺の体勢が崩れる。
こいつの一番の違いはその力強さ、軽く岩を破壊できることのできる威力は確実に俺にダメージを与えてくる。
背に残る鈍痛に耐えながら前翅を展開し、鰐猿を落とそうとばたつかせる。
しかし、さっきの一撃で翅が損傷しているのと鰐猿の力が強いのとでなかなか落ちない。
とっとと落ちろ、もうあと何匹もいるんだろう。
恐らくだが、この鰐猿は猿の成長個体だ。口の作りが明らかに違ってはいるが。
それのもととなっている猿がこれ程いるのだ、この鰐猿が一匹二匹で終わるわけがない。
これを二匹以上同時に相手取るなど面倒極まりない。
翅を何度も羽ばたかせていたからか、鰐猿が地に落ちる。
そこを逃さず、鰐猿が起き上がる前に爪を目に向けて振り下ろす。
脚に生暖かい感触と鰐猿の叫びでつぶれたことを確認する。だが、俺はそこから電気攻撃による追い打ちをかける。
このままの状態でも死ぬだろうが、鰐猿が他にいると分かっている以上一匹にそう長い時間足を取られるわけにはいかない。
つぶれた目の内から直に電撃を喰らった鰐猿は少しの間激しく暴れた後、物言わぬ骸に変わった。
《経験値が一定に達しました。個体、リアニゾラノスがLV4からLV5になりました。》
レべルアップの報告が聞こえ、同時に体が眩く発光する。そしてその光が収まると、俺の背にあった痛みが消えた。
割と重症であった気がしたが、それも完治するのか。原理は相変わらず不明だが。
それ以降も俺と猿の戦いは続いた。
日が傾き、沈み、夜が訪れてもなおこいつらは引くことはなかった。
俺の方はというと、正直まずい状況である。
別に夜になって猿が見えずらくなったわけではない、むしろはっきり見える。これもスキルの効果だろうか。
では何が問題かというと、
ぐぅぅぅぅぅ~~~~~
戦いの場にそぐわない音が響く。
ついに俺の腹の虫が鳴き声を上げたようだ。
あぁ、腹が減った。喉も乾いた。
空腹の状況でも猿を倒し続け、レベルアップで体力の方は回復していたのだが、空腹はどうにもならないらしい。
しかもそのレベルアップの必要経験値量も上がってきているのか、それ自体が無くなってきた。
猿の数は減ってきてはいるが、何処が終わりなのかわからない戦いにただ体力を消耗し続けている。
いや、食料がないわけではない、ないのだが.....
ちらと、周りを見る。
これを食え、というのはさすがに厳しい。
俺が殺した猿の死骸が周りに転がっている、倒した数より少ないが、邪魔に思った周りの猿が後ろの森に放り投げているからだ。仲間意識が強いと思ったが、死体は適応外らしい。
確かに火攻撃で焼けば腕や腿は食えるかもしれないが.....
ぐぎゅるるるぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~
目の前が少しだけ霞んできた、腕の先の感覚も鈍いような気もする。
まずい、本当にまずいかもしれん。このままでは餓死だ。
すっ、とまだ腐っていない猿の両足を持ち上げる。
そして、火攻撃で足を焼く。
今ので体力を完全に持っていかれ、足が折れ地に伏す。
少ししか出せなかったが、レベルアップによって上がった火力で火は少し通ったらしい。
生焼けの足を口に持っていく。
そして、開いた大口でその両腿に噛み千切った。
噛むごとに鉄の味が口の中に広がる、耐えきれずにそのまま飲み込む。
いまので少しは回復したがまだまだ足りない。
そうして俺は他の猿の腕と腿を食い続けた、周りの猿が殴ってくるが無視。
次第に生焼けの肉に抵抗が無くなり、最後には生のままで食っていた。
だが抵抗が無くなったとはいえ、不味いことに変わりはないが。
そして俺は。不快感と引き換えに腹を満たした。
再び猿を見据える、まだこいつらとの戦いが終わったわけではない。
俺にここまで不快にさせたのだ、もう生かして帰すわけにはいかない。
ここにいる猿全員喰いつくしてやろう。そうしなければ俺の気が済まん。
そうして俺は殺意を固めた。
だが、それは
「ゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
たった一つの咆哮でかき消されることとなった。
キャラ紹介2
・リアニゾラノス
転生者、竹島兜が転生させられた魔物。
それほど強いわけではないのに経験値を大量に持っていたため、レベル上げのため狩られ続け、絶滅した。
主人公が転生できる魔物は他にもいたが、「名前が『兜』だから」という理由でこの魔物に転生させられた。