オタクさんがベルくんに憑依しました   作:蓮山

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1巻からのスタート


第一話

 異世界にいる母さん、父さん。元気ですか?僕は今ミノタウロスに追いかけ回されてます。

 

「ホ、アアアア!?」

「ブゥモオオオオォォォォ!」

 

 生きるのは諦めませんけど今のステータスじゃあ無理です。基礎が違うから技術あっても潰されます。

 

「うわっちょっ!?かすったよね!?」

「ブモォ!フー!フー!」

 

 ああもうなんでこんなことに…

 

「あかん死ぬぅ!」

「オオオオオォォ」

 

 死んだ記憶もないけど気付いたら白髪の少年に憑依してたし、この体の持ち主の魂がどうなったか心配だけど死ぬなんて選択肢はないし!某奏者とかに怒られる!

 というかこの世界原作あるのかな!?面白そうな作品ありすぎて読めてなかったやつかもしれない!

 

「うわあああぁぁぁぁ!なんで5層にミノタウロス来てんだよぉ!?」

「ブゥモオオ!」

 

 ってマジで不味い。このまんまだと小枝みたいに背骨折られて死ぬ!

 

「ぬわぁん!?もぉーどーにでもなれー!【我が憧憬はここには在らず─」

「オォォォォ!」

 

 魔法の呪文長スギィ!こんなんじゃ終わるまでに俺の命終わっちゃうよ!

 

──────────

 

「なんとかなった…マインドはもうほとんど残ってないけど…」

 

 ミノタウロスの魔石を拾いながら呟く。もうダメ。疲れた。魔石入れてた袋落としちゃったし…稼ぎが…

 

「帰ろ…今回の冒険はここまで!セーブなんてできないけど!」

 

 ステータス更新だと敏捷と魔力伸びてんだろうなあ…。もうレベル1の中堅くらいのステータスはあるらしいし。小っ恥ずかしい名前のスキルのお陰でステータスの上昇幅はおかしいくらいらしいけど比較対象がいないからなあ…。竃火の女神様に拾ってもらったのは有難いけど先達がいないから技術が身に付かないのは問題だよな

 

「ああ…というかエイナさんに怒られる…冒険しちゃ駄目って言われてるしステータス的には格上も格上だし…でも生きて帰るには足を潰しただけじゃ足りないもんな…冒険しないで死ぬか冒険して死ぬかもしれないだったし…許して…くれないだろうなあ…」

 

 美人なハーフエルフのアドバイザーのことを思いだし憂鬱になる。不可抗力です…はい…

 

 英雄を口ずさみながら地上を目指す。1人でトイレ行く時とか歌わない?アレと一緒。銀さんもどこぞの長寿アニメの主題歌歌ってたし。

 

「オーライ!…帰ってきた…シャワー浴びたい」

 

 歌い終わったところで地上だ。8回くらい歌ってたのかな?たまに同業者がこっちを白い目か恥ずかしいものを見る目で見てたけどどうしてですかねぇ?(すっとぼけ)

 全身ミノタウロスの血でサンタみたいに紅く染まってたからかな?ハッハッハッ

 

「まあいいや。ギルドに行こう。よく血塗れで行ってるし」

 

──────────

「いや良くない!」

「アッガイ」

「え?」

 

 血塗れだったら怒られました。ついでに事情聴取でミノタウロスと戦ったことがバレて二重で怒られました。

 

「というかなんでベルくんは無茶するかなあ?」

「ミノタウロスの足を潰したくらいじゃ追ってきそうなのでトドメを刺しました。そうでもしなきゃ死んでます。なので不可抗力デス」

「本当?戦いたかったとかじゃないよね?私心配だよ?ベルくんが無茶して死んじゃうんじゃないかって…というか現時点で無茶しまくってる自覚ある?」

「(無茶しないと生き残れ)ないです。」

「えぇ…」

 

 ウォーシャドーに囲まれたりしてるから今更です。魔法がなかったら死んでますね…本が好きだったことに感謝しなきゃ…。

 

「はあ…叱っても無茶しちゃうよね…ベルくんは」

「しちゃうというか無茶せざるをえないというか…」

 

 不幸だぁぁぁぁ!って叫びたくなる窮地は何度かありますからね。

 

「いつも言ってるけど冒険者は《冒険》しちゃ駄目なんだからね?」

「それは肝に命じております…ハイ」

「じー……」

「そ、その目は?」

「じー……」

「あの?」

 

 ジト目なんてしないでください。萌えてしまいます。ただでさえ巨乳メガネハーフエルフという要素あるのに。

 

「はあ…ベルくんは…死なないでよ?」

「死にませんよ。少なくとも生きるのを諦めるようなことはありませんから。生き足掻きます」

「うん…」

 

 疲れたようにエイナさんがソファーに沈む。あ、

 

「うん?どうしたの?」

「ナンデモアリマセン…」

 

 ちょっと揺れたの見ちゃった…。

 

──────────

 

「あの子…強かった」

 

 私はミノタウロスを倒した白髪の子に隠れて一部始終を見送った。

 凄まじい魔法(?)だった。そして何より、彼自身が諦めていなかった。

 

「レベルはたぶん…1。上級冒険者にはあの子はいない…と思う」

 

 技術は未熟。まるでなってはいなかった。見よう見まねでだいぶ不恰好だけど…

 

「ガムシャラに武器を使っていたわけじゃない」

 

 ナイフでミノタウロスの相手は難しい。皮膚は堅く、筋肉は断ちづらく、骨はあの巨体を支えるほどに太く強靭。よしんば内部に入ったとしても即死させることはできない。

 

「受け流しのためと牽制。あとは眼球と腱への攻撃」

 

 しかし即死させないなら傷を付けられるのも確か。だからヒト型である以上、必ず存在する弱点を狙ったんだろう。

 でも、腱を断ち切るにはナイフの強度が足りないはず。

 

「肉体変化の魔法?それとも…」

 

 ミノタウロスの腱を断ち切るほどに強化する魔法。それをもし彼がより強くなった時に使えば…

 

「あれ?これは」

 

 足に当たった固い感触。魔石の袋?

 

「あの子のかな?」

 

 何度もミノタウロスの武器が掠める時があった。そのときに落としたのかも知れない。

 

「会えたら…渡そう」

 

 意外とすぐに会えるかもしれないと期待して皆のところに戻る。

 

「あん?アイズ、なんか機嫌よさそうだな?」

「うん。ちょっと、面白い子を見つけて…」

 

─────────

「ただいま…」

 

 神様はバイトらしい。神なのに。

 

「おやすみなさい…」

 

 ベッドで横になる。流石にミノタウロスとの鬼ごっこは疲れます。

 

──────────

「ただいまーベルくん。ってまた寝てるよ…」

 

 ボクのたった1人の家族のベルくんはたまにこうやってすぐに寝ることがある。だいたいそういう日は死にかけたりしてる時だけど。

 

「また冒険を重ねたのかい?」

 

 彼は答えない。まあ眠りが深いタイプらしく生半可なことでは起きないけど。

 

「じゃあステータス更新っと」

 

 勝手に服を脱がしても起きない。こんなんで大丈夫かなぁ?悪いやつに身ぐるみ剥がされたりしないかボクは心配だよ。

 

「うげ、またすごい伸びてる」

 

 この子はレアスキルを持ってる影響でステータスの伸びが早い。しかも魔法も強力だから格上にも勝ててしまう。いつかこれが慢心として足元を掬わなきゃいいけど…。

 

□■□■□■□■

ベル・クラネル

Lv.1

力:F361→E402

耐久:G245→G284

器用:H196→G225

敏捷:E422→D536

魔力:E407→E496

《魔法》

【ウェイクアップ・マイ・ヒーローズ】

・強化魔法。

・???

・???

・???

【】

【】

《スキル》

英雄憧憬(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

・憧憬が強いほど効果上昇。

・憧憬が続く限り効果持続。

 

□■□■□■□■

 

「ベルくん、もうD評価が出たんだねえ…」

 

 ランクアップの条件の1つはクリアした。あとは偉業を成せばいいんだけど…

 

「すでに偉業な気がするのはボクだけなのかなあ?」

 

 恐らく…というか、絶対この子が行なってきたことは偉業に値すると思うんだけどなあ。

 

「まあいいや。今日も添い寝しよ」

 

 ベルくんが暖かいからよく寝れるんだよね。

 

──────────

 

 起きたら幼女神の抱き枕だったでござるの巻。意識なかったけど事案ですよこれは。もしもしポリスメーン?私が犯人です。

 

「なんか身体軽いなぁ。また寝てる間に更新されたのかな?」

 

 正直なところ、ステータスの伸びはあんましわからないほうがいいかもしれない。慢心して突っ込んだら強敵で逃げられませんとか洒落にならないって。ただでさえジャイアントキル可能な魔法あるんだから…。

 

「自惚れるなよ俺。陰キャオタクだったからって舞い上がるな。結局借り物の力なんだ。頼れるのは自身のちっぽけなもんだけ。俺は一般人。凡才。持たざるもの!よっし気合い入った!」

 

オタクだった俺から、ベル・クラネルとしての僕に意識を切り替える儀式みたいなもの。自惚れてはいけない。主人公のような存在足り得ない、英雄足り得ない自分はちょっとしたことで死ぬ。だからこそ必要じゃない「冒険」はしない。

 

「じゃ、行ってきます。神様」

 

僕は冒険者、ベル・クラネル。日銭を稼ぐために今日もダンジョンに潜る一般人。

 

「ナイフ、そろそろ折れるかもなあ…」

 

ちょっと武器の心配があるけど武器が買えない貧乏冒険者でもあるな!うん!




無事折れたナイフくん
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