「うまうま」モグモグ
朝のバベルまでの道で美人さんにちょっと詐欺みたいなことで客引きされ、断るに断りきれず夜の営業に寄ってみることにしました。大変美味い店です(なお値段には目を向けないこととする)
「ミアさんこのパスタ御代わりで」
「あいよ!」
なんかすごい強そうな雰囲気を醸し出してる店主のおばちゃんにもう1皿注文する。昨日の稼ぎはミノタウロスの魔石だけだったけど貯金があるし今日の稼ぎだけで今までに注文した料理の6割は払える。
「ベルさん、すごい食べますねぇ…」
「食い溜めは田舎じゃ基本ですので」
寒村ってわけじゃないけどいつ食えなくなるか分からないので保存食を作りつつ、すぐに悪くなる内臓とかは食い溜めてました。
個人的に美味しかったのは猪の心臓。意外とクセになる味。臭いのは慣れた。
「あ、なくなった…これも御代わりで!」
「次で最後だよ。仕込むのも大変でね」
一番この店で衝撃を受けたのは米麹に浸けた豚肉を醤油で焼いたもの。つまり米と醤油があるのである!あとで売ってる店を聞いておこうと思います。サンドウィッチよりもおにぎり派な俺には朗報。
「うめ…うめ…」
「ホントに美味しそうに食べるね。作った甲斐があるってものだよ」
「美味しいんですよ」
「そうかいそうかい!まあきちんと代金は払って貰うけどね!」
笑ってるけど目の奥は『食い逃げは許さない』って言ってる…!怖ぁ
「おいおい。もしかして…」
「ああ、ロキファミリアだ…」
ん?後ろがザワザワしとる…。うわ、すっげえ美人が入ってきたなぁ…
「ロキファミリア…?」
「え、ベルさん知らないんですか?」
「あまり他のファミリアの情報を知る機会がなくて…」
そういえば100を超える数のファミリアがあるんだったよなぁ…。ゴブニュファミリアとヘファイストスファミリアは武器を売ってるから知ってるし、ミアハファミリアとディアンケトファミリアはポーション売ってるからよく通うから覚えてる。けど探索系のファミリアってホントに同業者ってだけで、提携したりすることはヘスティアファミリアの交遊関係だとないしね。
「オラリオで二大ファミリアとも言われてるのがロキファミリアとフレイアファミリアで、ロキファミリアはうちの店と懇意にさせてもらってるんですよ。確か昨日遠征から帰ってきて今日打ち上げの予約をしてくれてました」
「つまり世界最強の集団の1つと」
「そうなりますね」
「じゃあそろそろ帰った方がいいかもしれないですね…お酒飲んで暴れだすとか、ありそうですし」
レベルの高い冒険者が悪酔いして暴れるとか、ホントに勘弁!俺じゃレベル2までしか対処できないよ。うん。いやレベル3以降の人がどんだけ速くて重い攻撃するかは知らないけど、レベル2でようやく戦えるってなってるミノタウロスがあれだけ強いとまあ、ぷちっと殺られそうだよね。
「ど、どうでしょう…?ガレスさんみたいなお酒に強い人がいるのでそういうことは止めてくれるんじゃないでしょうか?」
「ドワーフだから、乱闘くらいなら笑いながら囃し立てそうですけど?」
「あー…」
ありそうという顔をするシルさん。まあ流石に迷宮都市の代表みたいなのが落ち度のない低レベル冒険者を半殺しにするとかは、信用に直結しそうだからやらないよね?いやでもあの狼人は、やりそうな雰囲気出してない?
「ミアさんお勘定~」
「あいよ。26800ヴァリスだね」
「結構食べたなぁ…」
「もう帰るんですか?もう少しいてくれても…」
「あー…その、なんか逃げたほうがいい気がしまして…」
たぶん、苦笑してると思うよ。この2週間、トラブルに巻き込まれたことが妙に多いから直感みたいなのが働いてきてるんだよね。トラブル体質じゃないと思いたいけどなぁ…
この時俺は気づいてなかった。なんかめっちゃ綺麗な人形みたいな剣姫に見られていたことなんて。
──────────
コンコン…
「はーい」
ノック音で今まで読んでいた本から目を上げる。図書館があるとは思ってなかったから、こっちの世界の英雄譚を読み漁ってるんだよね。すごい楽しい。
「誰だろ?」
うちを訪ねる人なんてほとんどいない。というかまず住んでいるとか思われていないんじゃないかな?ボロい教会だし近くには民家ないし。
来るとすると神様の神友のヘファイストス様かミアハ様、人間だとナァーザさんとか?
「どちら様でしょう…か?」
流れるような金の糸。エメラルドみたいな瞳。神にも劣らぬ美貌。数瞬、時が止まる。
確か、ロキファミリアの?
「ええと…」
「…」
互いに沈黙。正直気まずい。
「フゥー……立ち話もなんですので上がりますか?」
「あ、うん」
落ち着け俺。こういうときはこっちがリードしないと。落ち着いて対処だ。そう!タチバナサンみたいなクールな男になれ俺!いやタチバナサンをクールな男とするのはどうなんだ?
「確か紅茶くらいはあったよな…?」
意外とオラリオは上下水が作られてるお陰で水はそのまま飲めるくらい綺麗だ。なんならお金もかからないから水ばっか飲んでる。茶葉は棚にあったよな…?
「あったな…ええと…」
どのくらいの温度でどのくらい蒸すのか、紅茶の知識ないよ。そもそも種類が違うかもしれないし。
あ、説明書あった。なんなら砂時計も付属されてる…あれ、これヘファイストスファミリアの刻印されてる?木工品もやってるのね…
「あの…すぐに終わるので紅茶はなくても…」
「あ、そうですか…ですがまあ、お菓子は出しますので…」
生チョコが入ったクッキーがちょっと路地に入ったところに売ってたんだよね。美味かったからお茶菓子として置いてる。カカオ?ダンジョン産だから割高ですね…
「あむ…美味しい…」
目がキラキラしてますねえ!なんかリスみたいに食べてない剣姫?
「それで…ご用件はなんでしょう…」
「アムアム…んっ…」
目の前に出された見覚えのある袋。中身に硬質な小さい物がいくつか入ってるようでジャリって音が聞こえる。
「ダンジョンで、見つけた君の」
「あ、ありがとうございます!」
ミノタウロスに襲われた日の稼ぎ!
ん?待てよ。袋には名前を書いてあるとはいえ僕は有名じゃないし、顔はわからないはず。つまり…
「もしかして、見ました?」
「うん」
魔法の発動見られてたようだ。剣姫自身は喋ってないだろうけど、すごく不味い。切り札は見せないほうがいいって遊戯王で学んだ!
「ええと、あの魔法のことは内密に…」
バレたところであの魔法は汎用性があるけど、それ故に他のファミリアにバレるのは不味い。善人、もとい善神ばかりに関わってきたけど愉快であればなんでもいいって神がほとんどな以上、秘匿しておきたい。
「わかった…」
「ありがとうございます!」
──────────
剣姫襲来イベントを乗り切り、とりあえず平穏を取り戻したが問題が1つ。
「ナイフ折れちゃったな…」
武器がないのは死活問題。もちろん稼いではいるがそれでも良い武器なんて値段は天井知らず。手に馴染まなければ高くても意味がない。
「でもどんな武器がいいのかわからない」
なんなら素手で戦うことも多いけど、武器があるほうが安全なのは確実。問題は目利きができない。見た目だけかっこいい武器とかザラだし(偏見)
「一番いいのは…戦闘のプロなんだけど…」
剣姫はたぶん武器にはそこまで拘らないタイプだと思うのはなんでだろう。ふわふわしてるからか?
戦闘のプロかぁ…探索系ファミリアには縁がないせいで頼れる人がいない。
「となると…エイナさんかな?」
エイナさんはアドバイザー。ダンジョンの、ひいては冒険者に対しての知識は凄まじい。とはいえだ
「デートの誘いみたいで気持ち悪がられない?」
そう、そこだ。もちろん自惚れてるわけじゃないが言ってしまえばビジネスパートナーであって色々お世話になってるとはいえ美人を武器選びに連れていくとかちょっとどうかと思うんだ。(早口)
「しかしこれは…死活問題…!」
背に腹はかえられぬ!キモいと思われても命には変えられない!
「いやまあなんか異性というよりはやんちゃな弟的な目で見られてる気がするけど」
それはそれでなんだかなぁとなるのが悲しい男のサガってやつ。ゾンサガ見れんかったなぁそういや。曲は聴くことあったんだけど。
「このナイフ、使い続けてたから愛着あるんだけどね…」
保管してもただの金属でしかないし融かして再利用しようにも他の金属使った方がいいという。
「ままならないなぁ」
どれだけ安価でも、作りが雑でも、しばらくの間は相棒だった武器を棄てるのも元日本人的な精神なのか嫌だと思う。
「墓作って供養かなぁ」
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「エイナさん、ちょっと相談があるんですが」
「ベルくん、今日は珍しくダンジョンに潜ってないんだね」
翌日、エイナさんを訪ねたらダンジョンに潜ってるほうが基本みたいな扱いされた。まあ、ほぼ毎日潜ってるし休暇は週1日くらいだけど。
「その、ギルドから支給されたナイフが折れてしまって…新しい武器を買いたいんですが、どういうのがいいのかわからないくて…」
「…えぇ?」
なんだろう、馬鹿を見る目というか。非常識なやつを見た目をされた気がする。
「ちなみにベルくん?」
「なんでしょう」
「その…今まで倒したモンスターの中で真ん中くらいの強さはどんなモンスター?」
「ええと…オークですかね?」
皮膚と脂肪と肉で覆われてて倒しにくいけど、まあ削いでいけばいつか倒しきれるし鈍重だからヒット&アウェイしてれば安全だし。
「普通ね?オークを倒すような冒険者はまあまあいい武器使ってるの。しかも複数スペアを持った上で」
「はあ…」
「支給のナイフ1本でオークを倒すのはおかしいのよ。というかナイフなくなったらどうするの?」
あー、折れたりしそうだもんね。骨太いし。
「ナイフなくなったら石を投げますしそこら辺の枝やら石やらで殴りますけど」
環境利用殺法!(たぶん違う)
「…なんでそんな野生児」
「いや石って優秀じゃないですか」
硬い、重い、角がある。昔から人間が投擲してたのも納得だよね。高位の冒険者なら手で砕いて目潰しになるんじゃない?
「まあ、そこは今に始まったことじゃないしいいか…良くないけど。で、武器だったよね?」
「はい、できればナイフか短刀かなぁと」
逆手持ちはあんまし強くないっていうけど刃の届く範囲が順手と逆手で2倍になるんだから慣れておいて損はなかったと思う。
「まあ、大剣だろうがしばらく使ってれば無理矢理慣れますけど」
モンハンだと大剣使いでした。たまに弓。
「大剣は扱いが難しいし、ホームじゃ保管も難しいでしょ?」
「そうですね」
大剣のメンテとか専門の人間いないとツラくない?あと壁に立て掛けておくと刃が床に潜っていきそうだし保管に困る。
「じゃあナイフと短刀、あと有れば普通にロングソードもあってもいいんじゃない?それと防具の新調もね」
出費ぃ!
「いくらくらい必要なんでしょう…?」
砥石と防具くらいしか買ったことないんだよね。
しかも肘膝の防具とブレストアーマーってやつだけ。
「まあそこは人によるけど20万はあったほうがいいと思うよ」
じゃあ多めに30万必要かなぁ…。貯蓄あるし。
「でもスリとか気を付けてね?武器防具を買おうとする人は大金持ってるから、それを狙う人も出てくるし」
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