病弱TS娘と女騎士   作:レーズンモン

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倒れる

 今日も今日とてニーナと一緒に遊ぶ。俺は知り合ってから毎日のように家に迎えに行って、広場に行って子供達と交じって遊ぶ。日が暮れてきたらニーナの家まで送って家に帰って飯を食って寝る。こんな日々。あ、そうだニーナのお母さんに会えました。やはりというかイケメンな女の人でした。見た目が若々しくてこれで一児の母親とは...まぁうちの母さんも負けていませんが。口調が男みたいな人だったそんな人だからよく女の人から告白されていたらしい。これはニーナも大変だな母親の遺伝子を濃く受け継いでるし、将来ニーナも騎士団に入るために頑張ってるみたいだし。俺の容姿は可愛い感じだからなー羨ましいな。今は俺も女だが恋愛対象は女だしな。男とは絶対嫌だ。

 

 ニーナにべったりくっついてる毎日を送っていると自然と親同士も仲良くなってニーナの家に泊まりに行ったり逆に俺が泊まりに行ったりと家族ぐるみで距離が近くなった。今日はニーナと一緒に素振りの稽古をやっている。ニーナ毎日やっているらしい。やる前から分かっていたがめっちゃしんどい。十回あたりから腕が上がらない。これを毎日百回はやっているらしい。恐るべし五歳児...。俺の腕がぷるぷるとバイブレーションの如く震えているの見たニーナが休憩を申し出てくれた。俺はすぐに木刀を放り出し後ろへと大の字で倒れた。

 

「はぁ...はぁ...う、腕が」

 

「お疲れ、ソニアほら」

 

 ニーナがタオルと水の入ったコップを渡してくれた。だが俺の腕は上がらない。仕方ないこれは甘えるしかないや。

 

「ニーナ~飲ませて~」

 

「...しょうがないな」

 

 ニーナが俺の上半身を支え起こしてコップを口に近づけてくれる。俺はコップに口をつけて飲みはじめたがニーナがそんな俺をガン見してくる。それはもうガン見だ。俺の口を見ている何故かはわからんが。そんなに見られると流石に恥ずかしいぞ。

 

「ね、ねぇニーナ流石にそんなに見られると恥ずかしいんだけど...」

 

「あ、ああ...すまない。ついな」

 

 ついってなんだよ。そんなにちっさい口が気になるか?しょうがないじゃんそりゃあニーナと比べたらちっさいよ俺は。...他の子と比べても小さい部類だけど。あーあなんで俺はこんな小っちゃいのかね~っま!まだ焦る時間じゃないし大丈夫大丈夫...大丈夫だよね...?

 

 水を飲ませてもらいタオルで汗を拭いてもらい切り株に腰掛けて駄弁る俺とニーナ。ニーナはあまりしゃべらないので、俺が大体一方的にしゃべってニーナが相槌を打つというのがいつもスタンスだ。今日はこんな夢をみたとか昨日寝る前に読んだ本の内容とか魔法を使えるようになったら何したいとか将来なにしたいとかそんななんの変哲もない話をする。平和だ、こんなファンタジーな世界に転生した元男だが変わらないなーと思ったりした。前世では忘れていた平和の感受。前世で働いて働いて働いて働くために生きてるような生活をしていたからこんな穏やかな日々がささくれていた心に染みわたる感じがする。ずっとこんな日々を過ごしたいなーと思っていた。

 

 そんな平和の日々を過ごしていたある日。その日は珍しく雨が降っていた。今日は勉強に集中しようかなとか考えながら二階にある自室から階段を下りている最中にそれはきた。

 急に胸に痛みが走った。思わず胸に手を当てるがそんなことで痛みがなくなるわけもなくおもわずしゃがみこもうとしたが場所が悪かった。俺のいる場所は階段、しかも中々の角度の階段だ。気を付けていてもたまに落ちたこともあるそんな場所、そんな所で体勢を崩せばまぁ、こうなる。

 

 階段から落ちた衝撃で全身に痛みが走るがそんなことより胸が痛い...胸というよりか心臓が痛い。汗が滲みでる。呼吸が浅くなる、シャツを握りしめ痛みを逃がそうとする。無意味な行動だとわかっているがやめられない...涙がでる...でる...。止まらない汗と涙。呼吸は上手くできなくて喘ぐ。助けも呼べない...どうしよう。

 たすけて...誰か、たすけて。この痛みをどうにかしてほしい。

 願いが通じたのかバタバタと足音が聞こえてくる。どうにか足音の方に涙でよく見えないが目を向ける。それは両親だった。そうだった、今日は休みだったなとか働かない頭で思い至った。そんなことを考えていたら突然の浮遊感。顔を上げると父さんに抱きかかえられたようだ、初めてお姫様抱っこされたなーとか場違いなことを考えるそうしないと痛みでどうにかなりそうだったから。

 

「大丈夫か!しっかりしろ、どうしたすごい汗だ」

 

「ぁ...はぁ...ぃたい...」

 

「どこがだ!どこが痛い」

 

「お父さん、取り合えず病院へ行かないと」

 

「そ、そうだな俺が運ぶお前は病院へ連絡してくれるか?」

 

「わかりました、急いで連絡します」

 

「頼む」

 

 どうにか返事しようとしたがうまく声が出ない。両親の声も遠い...なんだか眠くなってきたまずいような気がするけどこの痛みを誤魔化せるならと俺は瞼を閉じた。

 

 

 

==========

 

 

 ソニアの両親からソニアが倒れたと連絡を受けたみたいだ。母が珍しく焦ったようで声が震えていた。今からみんなで病院に行くから着替えろと言われた。私は急いで支度をする。私は震える手を抑えながら服を着替える。落ち着け私、私がパニックになってどうする。母の焦りようが事態の重さが嫌でも伝わってしまう。まさかと思うが...いや、やめておこう。取り合えずソニアの所に行かなければ、急いで支度を終え玄関へ急ぐ。父が既に馬を用意していてくれた。私は急いで父の後ろに乗る。母の馬は気性が荒いせいで乗りづらいから大体は父の方に乗る。急いで病院に向かい到着した。馬は父に預け母と一緒にソニアの病室に向かう。連絡を受けてから動悸が早い。大丈夫だと言い聞かせながら早歩きで向かう。ソニアの病室の扉の前に立って扉を開けようと手伸ばすと母に伸ばした手を掴まれる。突然の行為に驚いて母に目を向けると

 

「ニーナ、心して扉を開け」

 

「...どういうことです母上」

 

「お前は強い。お前は強者だ。私の娘だ。お前はここに来て誰に支えられてきた?」

 

「もちろんソニアです。初めて会った時から今までずっと支えられてきました」

 

「そうだ、ソニアははっきり言って強くはない。稀な光適性があるが強くはない。だが、お前も知っているだろう。ソニアは心が強い。いつも明るく、人を引っ張っていく力強さがある。カリスマのようなものだろうまさに光のようだ。だが、今日で変わっていくだろう」

 

「...まだ容態も見ていないではないですか、なぜ言い切れるのです」

 

「ソニアの親からある程度は聞いているからだ。...お前は強者だ、だがまだ幼い。だから聞くぞニーナよ。お前は扉を開ける勇気があるか?」

 

 ...しばし考える。ここまできてソニアの容態を見ずに帰るなんてありえない。だからこれは私の心に問われている。少しソニアの事を思いを振り返る。

 

 初めて会ったときは天使みたいだなという印象だった。真っ白の髪色初めて見たがこれが光適性の髪色かと素直に綺麗だと思った。風が吹いてサラサラと髪の一本一本があおられてキラキラと光っていた。思わず手を伸ばして撫でてしまおうとした。流石にいきなり初対面でそれはないだろう流石の私でも分かる。もっとよく見たいと思い、ソニアの目の前に立った。ソニアと私の身長差は頭一個分違う。目の前に立ったからソニアが上目遣いで私を見上げる。その目はとても綺麗な碧眼で星が煌めいているようだ。ずっと見つめていたら引き込まれそうな錯覚を覚える。顔のパーツは整っていて特にその小さな口に目が行く。白い肌にピンク色の唇、酷く色気がある。自分の心臓がうるさく主張する、それを悟られないように名を名乗り握手を求めた。ソニアが私の手を見つめゆっくりと手を出し私と握手をした。握手をした瞬間、ビビっと体に刺激が走った。初めての感覚に内心困惑したが今はソニアの手の感触を確かめる。すべすべとしていて小さい手、私の手で覆えてしまう程小さい。私とは正反対のような手だ私のは大きく皮膚が分厚く柔らかくない。稽古で木刀を振っているからだ。これが女の手かと思った、少し悲しくなった。

 そこからか、彼女とよく遊ぶようになったのは。馴染めるように図ってくれたり、村の案内、一緒に勉強をしたり。私は口下手だから彼女がよく話してくれて助かった。私が話すのが苦手なのも見抜いていたのだろう。毎日遊び段々と二人きりで遊ぶのが増えてきてお互いの家で遊んだり、泊まったりなんかもした。初めての経験だらけで毎日ドキドキしていた。

 そう、彼女は見た目に似合わず活発な子だ。体じゃなく心が強い子なんだ。気配りができ、周りを笑顔にする光の子だ。

 

 私は扉を開けた。彼女のベットの横で彼女の両親が泣いている。白衣を着た男の人が悲痛な顔している。

 

 私は彼女を見た。そこには初対面の時のように天使のような...いやほんとに天使なのでは?と思ってしまう程に儚く美しい女の子がいた。一瞬ソニアには見えなかった、容姿もそうだが天使のように美しく可愛らしかったがどこか力強さを感じる目や仕草、オーラのようなものが出ていたが今は違う。今の姿は弱弱しく儚い、目は私を見ているがそこには前まで感じていた力強さは私には感じられない。あまりにも弱い、意志がない。病室のベッドに似合いすぎるその姿に私は一瞬見間違えたのだ。

 

「ニーナちゃん...来てくれたんだね」

 

「...ああ、来たぞ」

 

 なんと返事をしたらいいかなんと声をかけたらいいかわからなかった。元々口下手の私の口からは全くといっていいほど声が出ない。

 ソニアの声量はかなり小さかった。病室にはソニアの両親が泣く声しかなかったから聞こえたが誰かの声が重なったらかき消されるだろう。私もちゃんと声を出せただろうか、声は震えていなかっただろうか私は堂々としてソニアには心配をかけまいとしようとしたがあまりにも様子が違っていて動揺してしまった。一日でこんなことになるなんて誰が想定できる?

 

「ある程度聞いているだけでしたので詳しく聞いてもよろしいですか?」

 

 母が医者に声をかける。そうだ、何があったのか全くわかっていなかった。医者が周りの人たちを見渡す。それから声をだした。

 

「正直、原因は不明です。心臓がかなり弱っていることしかわかりません。魔法を使われた痕跡はなし。昨日まで普段通りという話でしたし、まだ五歳ですので魔法は使っていないはずです。未成熟の体と知識で無理をした結果、というわけでもない。ということはこれは未知の病という可能性です。今まで私も長らく医師をやっていますが突発的な心臓の病。経過を見てみなければ何も判断ができません。下手に魔法を使ったり、薬を服用したら何が起こるかわかりませんので」

 

 つまり今は何もできないということだろうか?難しい言葉だらけだが多分そういうことだろう。ソニアを見る。彼女は微笑んでいる、なぜそんな顔ができるのだろう。辛くないのか?我慢するしかないんだぞ。ふと、彼女と目が合う。

 

「私は大丈夫。だからそんな泣きそうな顔をしないでニーナちゃん」

 

 私は泣きそうな顔をしていたらしい。だからかソニアの顔がよく見えなかったわけだ。

 肩に手を置かれる。顔を上げると母と目が合った。

 

「ニーナ、泣くのは家で泣け。今は...違うだろ?」

 

 母の言葉には時々重みがある。今の時のような状況の時と稽古の時だ。その言葉の意味を一瞬考え、目を袖で強く擦って涙を拭う。そして私は真っすぐにソニアも見つめ近づく。ソニアの手を...力を入れたら簡単にも折れてしまいそうな手をゆっくりと持ち上げ両手で優しく壊れないようにそっと包む。

 

「ソニア...私が守る、私が支える...だからどうか笑ってほしい」

 

 私は彼女を見つめて力強く言い切る。いや、宣言する。彼女の表情は微笑んでいるが、私には辛そうにみえる自分を偽っているように見える。不安なのだろう、当たり前だ。だから私が今度は支え、守ると誓おう。彼女のような光にはなれないが、彼女だけの光にはなれるように努力しよう。これは私の誓いだ、彼女には多くをもらったからこれは恩返しだ。

 

「なにそれ、ふふ。可笑しなニーナちゃん...でも、ありがとね」

 

 そう言って彼女が笑った。そのあまりにも美しい笑顔に私は見惚れてしまって言葉が出てこない...。彼女の笑顔があまりにも眩しくて綺麗でずっと見ていたい思ってしまって...口が動かない。さっきから心臓がうるさい...さっきの心臓の動きじゃない。顔が熱い...ど、どうしようこっからどうする?手汗やばいかも...気持ち悪がられてないかな...そんなことを考えていたら。

 

「ふふふ...まるでプロポーズだな」

 

 母の言葉で周りの空気が和らいでクスクスと笑い声が聞こえてきた。咄嗟に回りを見てしまったが後悔した。ソニアの両親も私の両親も医師も私を見てニコニコとしてたのだから。一層に顔が熱い...そしたらソニアの手に力が入った。何事かと真っ赤な顔のままソニアを見る。

 

「ほんとにありがとね...ほんとは怖かったんだ。でも、ニーナちゃんに言われて元気でたよ」

 

 だからこれはお礼っとソニアが言い、私の手を握ってそのまま顔へと持っていき私の手に、チュっとリップ音を鳴らしてキスをした。酷くその音が響いたような気がした...え?ってか私何された?

 

「ははは、結構恥ずかしいね。これ」

 

 顔を赤くしてはにかむソニア。肌が白いからよくわかる。私も顔がさっきから真っ赤だ、頭が痛い...煙でてるかも。

 

「これは将来安泰ですね」「これからも末永くお願いしますね」「いえいえこちらこそ」

 

なにか親同士が言っているが頭に入ってこず私とソニアは見つめ続けた。




五歳児です
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