【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月12日 いたずら電話?

 

「むぅ」

 

 昼食後から約1時間。

 昼間から昼寝というか、横になって考え事をしている蒼太です。

 ハンバーガーとフライドポテトを食べてすぐソファで横になったから、ちょっと胃が重い。

 

「ん~~~」

 

 ゴロゴロ……ゴロゴロ……

 

「むむむむむ」

 

 グイ~~~! ポキポキ……

 

 ………………

 

「あー! ダメだ! 考えが纏まらない!!」

 

 寝方を変えたり、伸びをしたり、関節を鳴らしたり、

 そんなぐーたらな時間を過ごしても頭の整理は付かなかった。

 

 

 原因は昨日のナーねえがした昔話(実話)。

 

 

 今まで謎だったナーねえのアレコレが分かったのは大きい――大きいけど……同時に、ナーねえが抱えるものまで分かってしまった。

 

 

「あーあ、昔いたっていう、鈍感系主人公だったらどんなに良かったか」

 

 流行り廃りの関係で今は数が少ないらしいけど、人の気持ち(特に女の子。ここ大事)に対して鈍い主人公をうらやむ日が来るなんて。

 悩み事とか少なそうだよね。

 同じ時期にいた暴力系ヒロインに絡まれる確率が高いみたいだけど。

 

 ちなみに、難聴系主人公なんてのも存在するらしい。

 登場人物の誰か、耳鼻科勧めてやりなよ……

 

「1人は寂しい……か」

 

 そんなの、ボクだって知ってる。

 

 借金を返済し終わるまで、お母さんもお父さんも働きづめだった。

 お母さんは小学生のボクがいるから早めに帰れるようにしてたけど、それでも「ただいま」って声が聞こえるのは夕方過ぎになって。

 

 それまでの2、3時間は誰もいない、テレビも玩具もない家で1人いた。

 宿題とか、予習とかしていた時期もあったけど、何も生活音がない、人のいる気配がない中でするのが苦痛だった。だからするのは決まって誰かが帰ってきたあとだ。

 まぁ、勉強以外することがなかったから学校での成績は良かったけど。

 すごい皮肉だよね。

 

 学校の友達と遊べる時はとにかくギリギリまで遊んだ。

 だけど、向こうも用事があったり別の友達と約束してたりで毎日遊べるわけじゃなかった。だから1人で家に帰るのが決まった日はトボトボと歩いて、できるだけ家に帰るまでの時間を稼いだりもした。

 

 これでおもしろい場所とか、歩いて行ける距離にあれば良かったんだけど。

 お金を使うゲームセンターは論外だったし、近所の公園も砂場と鉄棒だけという「子供を来させる気あるのかな?」といったチャチさだった。

 

 最初は砂の城とかを作ってみて――1人でする空しさを知った。

 というか、上手くできなかったボクの近くで公園のすぐ隣の家に住んでいるらしい年下の女の子がネズミの国のお城を作っているのを見て心が折れた。アレと比べてボクの城の歪さときたらね……

 

 次に鉄棒で遊んでみた。

 ……当たり前だけど、1人でずっとしてたら普通の練習になってたよ。

 大会に出る選手じゃないんだから、やれることなんてたかが知れてる。

 鉄棒の授業で苦労しなかったことは皮肉だったなー。先生が「やるな! まるで何度も基礎を練習したみたいにすごい自然体だ!」って。

 乾いた笑いが口から出たよ。

 

 こんなボクでも、まだ“マシ”なんだ。

 

 だって、ナーねえは外に出ることも誰かと会うこともできない。

 そんな時間を何十年も過ごしてきたんだ。

 

 ナーねえは人外だし、元の年齢からしたら1割にも満たないだろう時間のことなんて、ボクが考えているより気にしていないのかもしれない。

 でも、もしも大きな差が無かったら?

 本気で寂しいと感じていたら?

 

「どうすればいいんだよ……」

 

 脱出しようとして、あのメチャクチャな作りの屋敷に心が折れた。

 

 でもやっぱり、ボクは変わらず夏休み終了までに家に帰りたい。

 

 そこにきてナーねえの過去を、寂しさを知って、

 

 頭がグルグルしだした。

 

「誰でも、何でもいいから、何か切っ掛けが欲しいよ」

 

 割と切実な願いだった。

 

 いろんな障害や妨害があるせいで、道が通れなくなっている状態。それを改善してくれるものだったら何でもいい。脈絡無くゴ〇ラが現れて全部踏み潰していきました、といったようなメチャクチャな展開だってこの際構わない。

 

 とにかく、何かを――

 

 

――リリリリリリリリッ!!

 

 

「わっ!?」

 

 突然の音にビックリする。

 でも、この音って……

 

「電話?」

 

 それも随分昔のタイプの。

 テレビとかで紹介された黒電話みたいな音に近い。

 

「管理人さんからのじゃ……ないよね」

 

 管理人さんとナーねえを繋ぐ電話は別に置いてある。

 簡易な固定電話だ。

 監禁されたあと、隙を見て家や警察に掛からないかタメしてみたけど、ウンともスンともいわなかったっけ。

 

 その電話だって音はボクの家にあるのと似た『プルルルルル』って音だ。

 

 何よりの問題は音の発生源で――

 

 

――リリリリリリリリッ!!

 

 

「よりにもよって、あの(・・)部屋から音がする」

 

 魔の部屋(コスプレ室)とは違った意味でヤバそうな部屋。

 ボクが嫌な気配を感じて調べなかった唯一の部屋。

 その部屋から、電話の音がする。

 

「どうしよ……?」

 

 一向に電話の音は鳴り止まない。

 

 ちょっと、あの部屋に行くことだけは二の足を踏むし……

 

 というか、何でナーねえは電話に出ないんだよ。

 仕事場にいたって普通に聞こえるよね。

 

「ちょっとナーねえ? おーい!」

 

「はいはーい♡ 私を呼んだかな、そーくん♡」

 

 聞こえてないのかと大声で呼んだらすぐに来た。

 

「いや、呼んだも何も、さっきからずっと電話が鳴ってるじゃん」

 

「電話? 聞こえなかったけど……どこの?」

 

「聞こえてない? あの、部屋からずっとなって――あ」

 

 いつの間にか電話の音は鳴り止んでる。

 ナーねえと話している間に、いつの間にか静かになっていた。

 

「え? あの部屋から?」

 

 ナーねえは特に何も思うことはないように例の部屋へ入っていき――普段通りの様子で戻ってきた。

 

「特におかしな様子はなかったよ? 確かにあの部屋には電話があるけど、鳴った形跡もなかったし。そーくん寝ぼけてたの?」

 

「寝ぼけてって、そんなはず……あれー?」

 

 そんなはずないと言いたいのに、実際あれだけうるさかった電話の音はナーねえには一切聞こえておらず、ボクだけが聞いてたらしい。

 

 結局それ以降、電話が鳴ることもなく1日が終わってしまった。

 

 おっかしーなー?

 

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