【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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7月31日 すべての始まり

「は? 父さんたちの会社が倒産した?」

 

 小学校最後の夏休み。

 7月31日。8月が迫り、本格的に暑くなってきた頃。

 家で夏休みの課題を片づけている最中、共働きしているはずの両親から告げられたのは予想外過ぎるカミングアウトであった。

 

「蒼太。オヤジギャグを言ってる場合じゃないんだ」

 

「そうよ、そーくん。ダジャレを言ってる場合じゃないの」

 

「そんなつもりはないから」

 

 

 

 高木蒼太(たかぎそうた)

 それがボクの名前だ。

 

 自分で言うのもなんだけど、年齢の割にはしっかりしている方だと思う。

 借金だけ残して死んだバカ祖父母の代わりに、両親はしっかり働いてお金を返しきった。幼い頃から自分たちの食事は手を抜くくせに、ボクの食事や学校で必要になるモノだけはちゃんと取らせる両親を少しでも楽させたくて、家の手伝いなどを積極的にしたのが原因だろう。

 

 で、そんな両親も借金を返済し終えたのを機に有名企業に2人揃って入社し、それに伴って都会のボロアパートから地方の小さい一軒家(ローンあり)へ引っ越したのが1月前のこと。

 

 本当なら母さんの方は仕事を辞めて家のことに集中してもらいたいところだったけど、ボクの高校や大学に行かせる分のお金が危ういんでこれまで同様働くことにしたそうだ。

 働き過ぎないか心配な面もあるが、是非がんばってほしい。

 さすがのボクも大学はまだしも、高校に通えないのは嫌だ。

 将来的な意味でも青春的な意味でも。

 

 新しい学校の生活は、あと少しで夏休みという半端な時期に転校したために仲の良いクラスメイトはまだいない。

 前の学校では普通に友達もいたし、残り半年の小学生ライフの間に仲良くなれそうな子を見つけて、中学校でしっかりとした友人関係を築きたい。

 

 

 閑話休題。

 

 

「まずは説明して。ボクでも分かるぐらい簡潔に」

 

「あぁ。……ぶっちゃけると、引っ越した数日後に会社が倒産したんだ」

 

「ぶっちゃけすぎでしょ!?」

 

 ほぼほぼ最初の方じゃないか!

 

「蒼太にこれ以上心配させたくないし、別に父さんたちは何もしていないとはいえ……引っ越してすぐに無職になったなんて……なぁ?」

 

「言えるわけないじゃない?」

 

「ごもっともで」

 

 これ、ボクだから一先ず冷静に話を聞いているけど、普通ボクぐらいの年齢でそんなこと聞かされたら軽くパニックになるだろうね。

 

 倒産の原因自体は、まぁ、良くあるタイプだ。

 汚職というか、脱税というか、情報流出というか……ようは会長・社長・幹部のほぼ全員で政治家たちがマジギレすることしていたと。

 酷すぎて会社の信用も地に落ちる――どころか地面に潜り込んだと。

 余りにも内容がアレ(・・)すぎて、国が介入したと。

 何にも関係ない社員たちを突然無職に追い込むわけだから、相応額の補助金や就労サービスもちゃんと両親は受け取ったそうだが……

 

「補助金のおかげで蒼太にはバレずにここ1ヶ月暮らすこともできたし、まだまだ余裕はあるんだけどな……」

 

「肝心の正社員採用の再就職先が見つからなくて……」

 

「マジか」

 

 今は臨時のバイト&パートで働いているけど、やはり正社員と比べると待遇やお給料が長期的に見てみると差が出てしまう。

 

 両親は何でもかんでもそつなくできるタイプじゃない。

 自分に合う仕事なら問題ないけど、合わない仕事だと精神的に参ってしまうタイプだ。実際、共働きの初期に母さんがそれで一時的にやつれてたし。

 

 それで自分たちに合った仕事を探そうと思うと中々上手くいかなかったと。

 

 都会と地方とじゃ単純に企業の数だけじゃなく求められるものも違ってくるだろうし、父さんと母さんは運悪く自分に合う仕事が見つけられなかった。

 

「そっかー。そうなると最悪、中学生になったらボクもバイトすることになっちゃうかも?って話になってくるの?」

 

 中学生でもやれるバイト……思いつかないけど、探せばあるはずだ。

 

「あ、そういうことじゃないんだ」

 

「……と言うと?」

 

「仕事の候補は見つかったの」

 

「……それ自体は良いことなんじゃ?」

 

 あとは面接するだけの状態ってことだろ?

 一発で採用してもらえればボクとしても嬉しいんだけど。

 

「あー、何と言うかその、ちゃんとした求人で見つけたわけじゃなくて、信用できる人を探していた人からのスカウトだったんだ」

 

「大丈夫なのそれ?」

 

 今の時代、そんなの怪しすぎない?

 

「いや、向こうも大分困ってるみたいでな。話を聞いた限りじゃ困ってる理由にも納得できるし、今の時点で信用できないんなら警察でも法律事務所でも好きに相談して保険を掛けといていいってことでな」

 

「労働条件的にも待遇含めて良い方だし、守秘義務がある代わりにお給金が倒産した例の会社よりもずっと良いのよ。これなら採用さえされれば、そーくんをちゃんとした大学に通わせることも夢じゃないって」

 

 両親は「不幸中の幸いだ」みたいに言ってるけど、こっちは不安すぎる。無計画ではないんだけど、どうもポジティブすぎるんだよな父さんと母さんって。

 ボクが遠くで友達と遊んでいた時も、連絡し忘れていたのを謝ったら「連絡がないのは元気でやってる証拠だ」って言う人たちだし。

 

「でだ。ここからが本題なんだが……」

 

「ここまでが前座だったの?」

 

 もうおなかいっぱいなんだけど。

 

「試験採用で1ヶ月間働くことになったんだが……」

 

「その間は住み込みで働くことになりそうなの」

 

「え? それって……」

 

 直後、両親が揃って土下座する。

 

「「お願い。8月中だけ1人で暮らしてください!」」

 

「……詳しいことを聞こうか」

 

 

 どうでもいいけど、両親揃っての土下座なんて見たくなかった。

 

 

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