【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

21 / 36
8月17日 案外ストレッチは難しい

 

『みんな、集まれー!!』

 

『『『『『はーーーーーい!』』』』』

 

『はーい! みんな一緒にっ! 背伸びの運動からー!』

 

「せいのっ。1、2、3、4。2、2、3、4。――っと」

 

 

 本気の脱出1回目が失敗に終わった翌日の午前。

 ボクは体操服(ナーねえ作。薄いしズボンが短い)を着て、朝の教育番組を見ながらラジオ体操やストレッチの類いをしていた。

 

 というのも、昨日の探索でボク自身の体力の無さが目立ったからだ。

 

 あのどう考えても屋敷の外観に対して空間の広さがおかしい迷路――いやもう迷宮と言っていい空間を攻略するには、今のままでは先に時間制限の方が来ると分かった。

 

 出来れば、時間制限内で帰ってくるまでしたい。

 いや、うん、切実に。

 最終的には、絶対。

 

 大量の蜘蛛に運ばれるのと同時、心の中にある大事なモノがどんどん磨り減っていく音が聞こえたんだ。

 自由の身だったら、装備も何もかも放りだして異次元階段の空間に身を投げたかも知れない。

 やらないけど。

 冗談でも何でもなく死んじゃう。

 

 そういったことを回避し、改善するため、体操とストレッチによる室内でもできる体力作りの一環をしている最中だ。

 

「うみぃ~~~……結構疲れるな……」

 

 こういうのってバカにできない。

 普段使わない筋肉とかも使うから、マジメにやるとかなり疲れてくる。

 今も脇腹の筋肉を伸ばしている最中だけど、急がずゆっくりやらないと筋肉を痛めるって理由でテレビの見本より時間を掛けてしている。

 

 

 まぁ、それとは別に疲れる理由もあるんだけどね。

 

 

「ハァ、ハァ、そーくんのぉ……うなじぃ……」

 

 すぐ後ろでナーねえが見てくるんだよ。

 それも首とか、胸元とか、太ももとか……

 

「……ナーねえ。毎日お風呂で見ているでしょ?」

 

「それとこれとは別なの!」

 

 別らしい。

 

「露出度(?)はむしろ減ったと思うんだけど……」

 

「違うわそーくん! 見えないからこその素晴らしさがあるの! 汗をかきはじめて僅かに濡れた首筋、背を大きく逸らしたことで見えた服の中から覗ける胸元、普段意識しないからこそ見てしまう太ももとそのラインに沿ったお尻!! これだけでゴハンが何杯でもいけちゃう!」

 

「やめて」

 

 いつだかのコスプレ大会の時より興奮した様子のナーねえが人外云々関係無しに怖い。頬を赤らめないで。目をギラつかせないで。

 

 不味いな。

 常識が通用しないナーねえがナニをしでかすか予想付かない。

 ぶっちゃけ、いつも以上に身の危険を感じる。

 今日の所は何とか大人しくしてもらわないと。

 

「あの、ナーねぇ――」

 

「よーっし! せっかくだから私もそーくんと一緒に体操しよ!」

 

 間に合わなかった。

 ついでに言うと、嫌な予感しかしない。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 案の定でした。

 

「こういう風に体伸ばすのなんて何十年ぶりかなー」

 

「さ、さあ……?」

 

 

 目 の や り 場 に 困 る !

 

 

 現在のナーねえは動きやすいよう――タンクトップ姿だ。

 しかも「思いっきり動きたいから」という理由でブラジャーを付けてない。

 

 つまり、

 

「おいっちにーさんしー、にーにーさんしー」

 

 何と言うか……すごい。

 胸にある2つの塊だけ別の生き物みたいだった。

 

 音で表わすなら「バルンッ! バルンッ!」って感じかな。

 “縦横無尽”って言葉の意味がよく分かる。

 

 ほぼ毎日思うことだけど、何食べたらああ(・・)なるんだろ?

 ナーねえと比べると世の中の女性がみんな貧乳に思えてきた。

 間違った認識のはずなのに「そうでもないかも」と思ってるボクがいる。これ家に帰れたとして治せるかな?

 

 どっち道ずっと見ていたら目の毒すぎるってことで、座った状態での前屈をし始める。こうでもしなきゃ目が離せなくなるもん。

 アレ(・・)はもう兵器だよ兵器。

 

 とにかく意識を切り替えようと硬い体をほぐしていると、

 

「ね、ね? そーくん、手伝ってあげようか?」

 

「手伝うって何を?」

 

「今そーくんがしてる前屈とか2人一組でやったりもするんでしょ? ちょうどテレビでやってるよ」

 

 ナーねえに言われてテレビに視線を戻すと、床に座って前屈している人の背中を後ろのもう1人が押している姿があった。

 

 ……ここで断っても良いけど、実害はなさそうだし、断ったあとが面倒な予感もするから背中を押してもらうぐらいいいか。

 

「いきなり強く押さないでね。徐々に、ゆっくりと、だよ?」

 

「はーい♡」

 

 ナーねえが後ろに回り込む。

 

 そして――

 

「はーいゆっくり体を前に倒して~♪」

 

「~~~~~!!?」

 

 背中に、やけに弾力のある物体を押しつけながらゆっくり倒れ込んできた!

 

「ちょ、ナーねえ何してるの!?」

 

「? そーくんが言った通りのことだけど?」

 

「だったら何でくっつくのさ!?」

 

 二人羽織みたいに抱きつく形でナーねえが密着してくる!

 

 服の生地が薄いからほとんどダイレクトに感触がぁっ!!

 うううううぅ、汗かいてるはずなのに何で良い匂いがするのさぁ……

 

「だって私とそーくんじゃ身長差があるし、これなら私も同時に運動ができるでしょ? なーんにも、問題ないよ♡ ……はぁん♡ そーくんの汗のにほい……スーハー」

 

「現在進行形で問題だらけ!!」

 

 結局こういう事態になるのか。

 

「押さないでっ! 押さないでってば!」

 

「うん、分かった。じゃあもっと押すね♪」

 

「ネタじゃないからあああああああああ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。