【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月18日 脳の限界

 

 

――ガチャ。

 

 

「~♪ ~♪ あ、おかえりそーくん♡ 今日は自力で帰って来れたね♪」

 

「………………ただいま」

 

「ありゃ? そーくんったら随分お疲れみたいで」

 

「……うん。疲れたよ。………………ねえ、ナーねえ」

 

「なーに?」

 

「……あの異次元階段の空間だけどさ」

 

「うん」

 

「この際、どんなに広くても、難易度が高くても良いから…………階層ごとに分かれた空間にしてもらいたかったよガクッ」

 

「!? そ、そーくーーーーーん!」

 

 夕方。

 その日、本気の脱出2日目を終えたボクはゾンビのような足取りで何とかナーねえの待つ部屋に辿り着き、そこで1度ダウンした。

 

 原因?

 脳の限界だよ。

 主にマッピングでの。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 以前から本気で脱出するためには――あの異様な階段いっぱいの空間を攻略するためには、自分で地図を作っていかないと無理なことは分かっていた。三次元構造を紙に書く苦労による一般人枠の小学生が負う苦労も。

 

 ボクの空間認識能力はお世辞にも高いとは言えない。

 何かの本で見たけど、そういう能力って子供の頃の外遊びとかで高くなるって話だ。しかし、ボクは必要以上に体力を消耗しないよう基本インドア派で過ごしていた。それが体力の無さに繋がったわけだけど。

 

 そんな中でのマッピング。

 

 最初は階層ごとに書いていけば何とかなると思っていた。

 どういう風に作ったにしても作りやすいよう、把握しやすいよう、“区切り”があるだろうからそこを基準にしようと。

 

 甘かったよ。

 

 無かったんだ。区切り。

 正確には区切りっぽいのはあるけど、高低差も広さもガン無視しているからどうやって紙に書けば良いのか分からない。

 

 建築法無視にしたってアレ(・・)はない。

 むしろ、どうやってあれだけの広範囲に異次元階段の空間を作ったのか聞きたかった。というか、昨日のお風呂タイムの時点で聞いた。

 

 

『時間だけは無駄にあったからね~。毎日ちょこちょこと自分で改造していったらああ(・・)なちゃった♪ 遊び心ってやつだね♪』

 

 そんな遊び心いらなかった。

 なんて無駄に卓越した無駄な技術の無駄使いなのだろう……

 

 ちなみに、あんな構造の空間を把握できるのかと聞けば、

 

 

『だって故郷じゃアレよりもっとも~~~っと複雑で巨大な“巣”を作ってたんだよ? それを全部把握していたんだよ? あのくらいなら目を瞑ってぇ、鼻歌を歌ってぇ、ラン♪ラン♪とスキップしながら踏破できるよ!』

 

 

 どうやらナーねえの故郷――神様の世界で作っていた“巣”とやらはこの世の魔境らしい。

 アマゾンの奥地完全制覇の方が遙かに簡単なのは間違いない。

 

 そんなナーねえがボクを逃がさないよう(ニャルさん曰く、「ゲーム」なので攻略は不可能ではない)大規模DIYにより各種トラップを設置したのがあの空間だ。

 改めて思う。

 鬼畜難易度だと。

 

 だけど、

 

 それでも、

 

 

「ボクは、諦めるわけにはいかないんだあああああああああああああああっ!!」

 

 

 寝かされていたソファーから勢いよく立ち上がる。

 

 さっきまで寝込んでいた。

 帰還して、倒れて、ナーねえに看病されていたんだ。

 

「キャ!? そーくんが、そーくんが立った!」

 

「やかましいよ!!」

 

 ナーねえが嬉しそうに手で口を覆いながらネタ(?)を言う。

 いや、もしかしたらネタとか関係なく普通に出た言葉なのかもしれないけど。

 

 ボクはすぐ机の上に紙とペンを用意してあの空間の地図を作る。

 途中まで書いてあったそれを、より分かりやすいように脳細胞を働かせる。

 

「そーくん! 病み上がりなんだからもう少し寝てなきゃ――」

 

「止めないでナーねえ。ボクは……ボクは……!」

 

「――せっかくの看病プレイがぁ!」

 

「何その嫌なワード!?」

 

 そんなこと言われたら余計に寝込む訳にはいかないよ!

 




~おまけ~

雪菜「むっ! どこかで誰かが『やかましい!』と叫んだ気がする!」
ステラ「ユキナ様、変な電波を受信しないでくださいとあれほど……」
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