【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月19日 看病プレイ

 

 

 少し考えれば分かることだったんだ。

 

 

 体力に自信のないのに、その体で行う探索。

 

 不得意だけど、しなければいけない立体地図の作成。

 

 あとは夏場だったこととか、監禁に対するストレスとか。

 

 まあ、色々だよね。

 

 だから、考えれば分かったはずなんだ。

 

 

 こう(・・)なるってことぐらい。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「はい、そーくん。あ~ん♡」

 

「ハァ、ハァ。あ、あーん……」

 

「フフフ♡ 美味しい?」

 

「……うん。リンゴの甘みが良いよ」

 

「ホント! じゃあもっとたくさん作るね!」

 

「ナーねえ、ボク病人。そんなに食べられないよ――けほっ」

 

 

 はい。風邪を引きました。

 

 38度だって。

 

 この熱いのか寒いのかよく分からない感覚、随分久しぶりだなー。

 

 

 そんなこんなで、朝から風邪の症状で苦しんでいたボクは半泣きのナーねえによって診察され、ただの風邪だと判明した今は、打って変わり上機嫌になったナーねえによる看病をされているわけだ。

 

 現在ボクはいつも寝ているソファじゃなく、ナーねえの仕事部屋――その奥にあった天蓋(?)とかいうヒラヒラなものが付いた大きなベッドで寝かされている。ビックリするぐらいフカフカだ。風邪を引いてなかったら2、3分で眠れていたと思う。

 

 朝ご飯代わりのすり潰したリンゴがやけに美味しく感じるなー。

 

「ふふふ♡ まさか本当に看病プレイができるなんて……日頃の行いが良かったのかな~? もうもう♪ いつも以上に世話焼いちゃうぞ♪」

 

「だかr――ゴッホゴホ! ……だから、何で上機嫌なの?」

 

「私がいつも寝ているベッドなの。今度からそ-くんもこっちに来て良いんだよ?」

 

「話を聞いて」

 

「意識が混濁しているそーくん。1人はヤダというワガママを聞いてあげて一緒に寝る私。夢と現実の境が曖昧になったそーくんは……きゃ♡」

 

「ナーねえにツッコミどころしかない件」

 

 もうね? 全てが疲れる。 ダルくてしかたない。

 

 

 “看病プレイ”って、ただの“看病”でいいでしょ。

 カタカナ3文字が付くだけで急にいかがわしくなる。

 

 日頃の行いが良いとか、ボクを監禁しておいてどの口が言うか。

 

 いつも以上に世話されるとか嫌な予感しかしないし。

 

 ほぼ毎朝ボクの寝ているソファに潜り込んでいるのに、今更ベッドで一緒に寝たって大した違いないだろって感じだし。

 

 最後には妄想の世界に入り込んじゃってるし。

 

 

 こんなのいちいち反応していたら切りがないよ。

 考え事するだけで疲れる。

 ナーねえはほっといて寝るに限るよ。

 明日までに治して、また探索を再開するんだ。

 

 ……あぁ、だけど、

 これだけはキチンと言っとかないとな。

 

「ナーねえ」

 

「なーに?」

 

「風邪を引いた子供相手の1番の看病が何か知っている?」

 

「世話する人の愛♡」

 

「そういうのいいから」

 

 ここら辺で現実を教えなきゃな。

 

「それは――」

 

「それは?」

 

「静かに寝かせることだよ。というわけでおやすみ」

 

「………………え? 本当に寝ちゃうの!?」

 

 布団をかぶり直して完全に寝る体勢に入れば、珍しく本心から焦った雰囲気のナーねえが「ウソでしょ!?」と驚いていた。

 

「看病のために、たくさんのプランも用意したのに!?」

 

「ゴッホ! ……ナーねえは風邪を何だと思ってるの? 下手に側で色々されると、むしろ悪化するって。何の病気でも病人用の食べ物をよく食べて、環境を整えてよく寝るのが1番効果がある治療法なんだから。……そもそも、そこに置いてある長ネギとかどうする気なの?」

 

「刻んで布に包んで首に巻くと良いって!」

 

「民間療法か」

 

「おしりに長ネギをブスッ!とすればすぐ治るって!」

 

「民間療法か」

 

 いや本当に民間療法かも怪しいな。

 どこの情報なんだか。

 

 ……それ以前に、あの立派なネギをボクのおしりに刺すつもりだったのかナーねえ。座薬じゃないんだよ?

 絶対大変なことになるところだった。

 理由は分からないけど、確実にボクの中にある大切なものを無くす危機だったに違いない。

 

「じゃ、昼食の時に起こして。おかゆでお願い」

 

「そ、そんな~~~」

 

「本当にボクのこと大切なら本気で静かにして」

 

「うぅ~……そーくんがいるのに何もしちゃいけないなんて。待っているだけだなんて。――はっ! まさか、これが世に聞く“放置プレイ”ってやつなのかしら!? そーくん、恐ろしい子!!」

 

 

 確信した。

 例えボクがいなくなっても、ナーねえなら逞しく生きていけるって。

 

 




 少なくとも、日本で最初におしりへ長ネギぶっ刺した人は頭がおかしい。
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