【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月21日 レッツ、クッキング!

 

「――というわけで! 今日はパンを作っていこうと思います!!」

 

「どういうわけ?」

 

「そーくんと私の初になる共同作業で、愛の結晶を作りたいと思います!」

 

「パンの話だよね?」

 

「レッツ、3時間クッキング♪」

 

「いつも通り何も聞いてないな」

 

 時刻は午前9時。

 この日はナーねえの思いつきでパン作りに付き合わされることになった。

 

 ホント唐突だな。

 探索は午後からだから別にパン作りぐらいならいいんだけど。

 

 テーブルの上には一通りの材料が揃っている。

 端っこにはレシピも置かれていた。

 朝食を食べ終えたら、入れ替わりで材料その他が送られてきたんだ。昨日の内に管理人さんに頼んだんだろうなぁ……

 ボクは何も聞かされていないけど。

 

「ナーねえ、これボクが断ったらどうする気だったの?」

 

「何が何でもそーくんと一緒に作るぅっっっ!」

 

「いや、だから……」

 

「泣き落としでも何でもやってやるもん!」

 

 ……今何でもするって言った?

 

「じゃあ、一時帰宅とか――」

 

「あ、それはダメ」

 

「そこだけは譲らないのね」

 

 一喜一憂してた表情からの真顔は怖い。

 前回もそうだけど、ボクの帰宅だけはナーねえの中で超えてはいけないラインらしい。「帰宅」の言葉だけで冷静になる。

 やっぱりここから脱出するしか方法はないみたいだ。

 

「で? 何作る予定なの?」

 

「白パンとウインナーロールとチョココロネだぞ♪」

 

「何故にそのラインナップ?」

 

 白パンは、まぁ分かる。

 ものすごくシンプルなパンだったはずだから。

 

 だけど、ウインナーロールとチョココロネをどうして加えたのか。

 

「白パンはすごく簡単だから。初心者のそーくんでも問題ないって」

 

「うん」

 

「あとの2つは~そーくんを見てたら作るべきだって♡」

 

「ちょっと待て」

 

 何でボクを見てそれを作ろうと思った!?

 何で材料のウインナーをナデナデしている!?

 

「それじゃあ始めましょうか!」

 

「もう好きにして」

 

 

 結論から言おう。

 本当に無事に終わるのかというボクの不安に反して、特にこれと言ったことなくパン作りは終了した、

 

 

 基本の白パンは何もかも始めてということで、手にくっつく生地と悪戦苦闘しつつも普通に楽しめた。生地が膨らんでいくのはおもしろかったな。

 

 ウインナーロールは……まぁ、無事には済んだ。

 ホットケーキミックスを使った簡単なモノで、ウインナーに生地を巻き付ける作業は新鮮だったけど……ナーねえ、頼むからウインナーとボクを交互に見ないでくれないかな? 「あと2年ぐらいかしら」って、本当何を想像してるのこの人外!?

 

 チョココロネは少し難しかったな。

 最期にチョコを入れるための空洞を作る作業とか。

 ちょっと歪だけど、なんとか成功した。

 

 そうやって発酵とかの工程を挟んで出来上がった生地を作業用エレベーターで管理人さんの所へ運び、少し遅めの昼食で焼かれたパンが出てきた。

 

 美味しかった。

 今までのパンも美味しかったけど、やっぱり自分たちで作ったものだったからか、そういったパンよりも美味しく感じたわけだ。

 

 ……叶うならまた作ってみたいけど、どうだろう?

 その時、ナーねえは隣にいるのかな。

 

 

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