【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月29日 最後の夜

 

 覚悟を決めたからこそ、っていうのもある。

 

 泣いても笑っても、明日が最後だから。

 

 未来の人生含めて最も濃い1ヶ月だったのは間違いない。

 

 大変で、(肉体的に)疲れる日常で、毎日が忙しなかった。

 

 変態で、(精神的に)疲れる人で、毎日を楽しんでいた。

 

 監禁はさすがに遠慮したいけど、

 

 それでも、

 

 また1ヶ月前に戻るようなことがあったとして、

 

 ボクは、

 

 ナーねえに会いに行くんだろうな。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「あ、これ……」

 

「えへへ♪ 本日の夕飯は和牛のひつまぶしで~す♪」

 

「懐かしいな。これ食べたさに居座って監禁されたんだよねー」

 

「私にとっても思い出の味になっているよ♪」

 

「思い出の味と言うには豪華すぎる気もするけど」

 

「ゆくゆくは2人の記念日に毎回食べるようにしたり……♡」

 

「はいはい。それじゃ、いただきます」

 

「………………ん?」

 

「あ~久々の柔らかさ~。さすが和牛」

 

「え? そーくん突っ込まなかったよね? 軽く流したけど否定しなかったよね!? そういうこと!? お姉さん期待して良い!?」

 

「ナーねえ、ごはんが冷めちゃうよ」

 

「お願いだから流さないで!」

 

 

 

 

 

「は~い背中流し終わったよ~♡」

 

「ありがと」

 

「それでは前の方も……ゴクリ」

 

「もう何度もこのやり取りしているけど、何度目か分からない同じセリフを贈るよ。もうとっくに自分で洗ったから」

 

「うううぅ、いつになったら洗わせてくれるの?」

 

「知らんがな」

 

「分かったよ。そーくんは先にお風呂に戻ってて……」

 

「いやいい。今日ぐらいはボクがナーねえの背中洗ってあげる」

 

「……!!? そーくんがデレた!?」

 

「違うから」

 

「そういうことなら私も覚悟を決めるよ。さあ! カモン!」

 

「背中だって言ってるだろ。後ろを向きなさい」

 

 

 

 

 

「じゃあ、そろそろ寝ようか」

 

「待ってそーくん。待って」

 

「どうしたのさ?」

 

「何でさも当然のように私のベッドに潜り込んでいるの!?」

 

「ほぼ毎日人の寝るソファとタオルケットの間に入り込んだ人が、今更何を」

 

「待ってちょうだい。今日だけで夢としか思えないような夢の出来事が連発してて、脳がそれを上手く処理できないというか。はっ! まさか、これは夢!? 私の願望がついに夢を限りなくリアルにするまで昇華させた!?」

 

「もうそういうのいいから、早く寝よ。眠気が限界なんだ」

 

「し、失礼しましゅ///」

 

「ん。いらっしゃい」

 

「ふ、ふつつか者ですが――」

 

「いやここ、ナーねえのベッドだから。正気に戻ってよ」

 

 

 

 

 

「…………ねえ、そーくん」

 

「何?」

 

「そーくんは……明日に全部掛けているんだね」

 

「目処が立ったからね」

 

「………………そう」

 

「ナーねえ」

 

「……ギュって、していい?」

 

「今日だけだよ」

 

「うん」

 

「……」

 

「……」

 

「おやすみナーねえ」

 

「おやすみそーくん」

 

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