【中編】蜘蛛屋敷~ボクとヤベぇ女の脱出夏休み戦争~   作:影薄燕

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8月4日 確実に”G”以上はありました(蒼太:小学生)

 

 初めてこの屋敷で朝食を取ったのが2日前だっけ?

 その時は「パン美味しい!」ってはしゃいでいたなぁ……

 

 それが遠い思い出のようで、

 

 何を呑気にしていたんだと後悔していて、

 

「はい。そーくん、あ~ん♡」

 

「あ、あーん……」

 

 こんな状況でパンの味なんか分かるかということだ。

 

 

 

(どうすればいい……?)

 

 ボクは毎度おなじみのソファで頭を抱えていた。

 

 昨日、突然のナーねえからのカミングアウト後のことはほとんど記憶にない。

 

 たぶん、空想の中だけで存在しないと思っていた人外が普通の人と同じように暮らしていたことと、そんな人外に目を付けられてしまったことに対する現実逃避が理由の1つ。

 もう1つが目を付けられてしまった結果、甘やかされて可愛がられて……それが命とは別の危機を感じてイエスマンになったことだろう。

 

(そもそも、蜘蛛の神様って何!?)

 

 あの時、扉を開こうとしたボクの動きを止めたのが、トリックの類いだったらどんなに良かったか……

 証明するかのように、その細い指先からたくさんの糸が出た光景を見て「あ、これ手品でも何でもないや。マジで人体から糸出てる」と遠い目になった。

 

 

 ――なるほど。これが絶望か……

 

 

 何かもう色々諦めたよ。少なくともその時は。

 

 でも、何だかんだで1日経って復活したボク。

 マジメにこれからのことを考えることにした。

 

(まずは改めて状況整理だ)

 

 すでに3日はいるこの部屋を含めた生活スペースはかなり広い。

 外に続いていると思われる扉を覗いて部屋同士が繋がっていて、ボクが座っているソファとテレビや食事用のテーブルがあるスペースを除くと、それ以外のスペースがどうなっているのか不明のままだ。大体が今いる場所で完結しているから、わざわざ他のスペースに行く必用がないという意外にも、単純に今は人外の生活している場所とか何があるか恐ろしいと尻込みしている部分もある。

 

 唯一、ある程度判明してるのは……

 

「~♪ ~~~♪」

 

 絶賛ナーねえの鼻歌が聞こえてくる作業部屋(仮称)だ。

 

 実はナーねえってニートなんじゃと思っていたけど(すごく失礼)、実は自宅でできる系の仕事をしているらしい。

 何の仕事かは聞いていない。

 もう好奇心や興味で行動しないって誓ったんだ。

 

 今日の朝になって急に何かを思い出したかのように作業部屋で何かを作っている。

 

 え? 逃げるチャンス?

 昨日の今日で同じことして警戒心を上げてどうするんだよって話だ。

 これでも必死に件の扉に仕掛けが無いかちょっとずつ調べてるところだし、1度ナーねえの生活サイクルを把握しないとチャンスをモノに出来ないかもしれない。

 

(焦ったらダメだぞ蒼太。今のところナーねえ――もとい、あのヤバい女はボクの命を狙っている訳じゃない。時間はある。何とかこの屋敷から脱出する手段を考えるんだ)

 

 半端に脱出しようとしたら昨日の二の舞いになる。

 

(そもそも、ナーねえが望んでいることは何だ?)

 

 思い出せ。ナーねえが正体を現してからのことを!

 

 

 

『私が一生養ってあげるから♡』

 

 

『そーくんはぁ、もっと私に甘えていいんだよ?』

 

 

「はぁん♡ こうやって近くで見るとホントに可愛いなぁ~」

 

 

「お姉さんのコレ(・・)、気になる?(たぷんたぷん)」

 

 

「はい。そーくん、あ~~~ん♡」

 

 

 

 ………………

 

「……ダメだ。全く理解できない……!」

 

 その場に崩れ落ちそうになる。

 

 まるで、テレビで毎日のようにやっている政治のニュースでも見たかのような不明さだった。

 何となく「この人は悪いことをしたのか」とか「お金に困ってるんだ」ということまでは分かっても、それ以外がちんぷんかんぷんでよく分からない時に似ている。

 

 お母さんやお父さんが「そ-くんは頭が良いけど、まだちょっと早いかな」と言っていたように、小学生のボクでは理解するのがまだ早く、難しい世界なのかもしれない。学校の先生も「心と体の成長で分かるようになってくることもある」って授業で言っていたように、ナーねえの真意を理解するにはボクはまだ子供過ぎるのかもしれない。

 

 ……ナーねえのアレ(・・)は変な危機感が常に襲っているけど。

 

(とにかく、ご機嫌を損ねないようにしながら隙を見て――「でっきた~~~♪」――っ!?)

 

 突然のナーねえの声に、バッと顔を上げる。

 

 一体何だと声のした方を見れば、作業部屋からナーねえが何かを持ってスキップしながら出てきたところだった。

 

「ど、どうしたの」

 

「ふっふーん! ようやく完成したんだよ! ジャッジャーン!!」

 

 持っていたものを広げるナーねえ。

 

 えっと、コレってもしかして……

 

「パジャマ?」

 

「うん。パジャマ」

 

 いや、何故にパジャマ?

 

「ここ数日、私にとって運命的なアレコレがあったわけだけど」

 

「ボクにとっても忘れられないだろう数日だね」

 

 主にトラウマ&教訓と言う意味で。

 

「私は今朝になって、ものすごく大事なことを思い出したの」

 

「……それは」

 

 

 

「そ-くん、ずっとお風呂入ってないじゃない!!」

 

 

 

「………………あぁ!!」

 

 ポンッとてを叩いて納得する。

 

 そうだ、そうだった!

 何か気持ち悪いなーと思っていたけど、お風呂に入ってないんだ。

 

「最初の数日はそーくんも寝てばっかだったし」

 

「内1日は薬で眠らされていたけどね」

 

「昨日はようやく私のモノになったそーくんが愛おしくて、時間を忘れて接していたから私もお風呂に入るの忘れちゃってたし」

 

「誰がオマエのモノか」

 

 おっと、つい本音が。

 聞こえてないよね?

 

「それでさっきまでずーっと、そーくんのためにパジャマを作ってました!」

 

「これ手作りなの!?」

 

 ウソでしょ? パジャマって手作りで出来るものなの?

 うっわ、肌触り良すぎ。何を素材にしたらこんなシルクみたいな生地になるんだ? いや、そもそもボクはシルクに触れたことないからあくまで予想でしかないんだけども。

 しかも、パンツまで用意されてる。すごい複雑な気持ちだぁ。

 

「そういうわけだから……そーくん!」

 

「あ、はい」

 

「一緒にお風呂入ろう!!」

 

「………………へ?」

 

 どこか鼻息の荒いナーねえを目の前にしばらくフリーズする。

 

「お風呂に入るのは分かったけど」

 

「うん!」

 

「何でナーねえと?」

 

「そんなの……私がそーくんと入りたいからだよ!!」

 

 ………………

 

 自由への逃走!

 

「逃がさない♡」

 

「ぐわっ! また糸が!?」

 

「はぁはぁ……そーくん、一緒に洗いっこしよ♪」

 

「ちょっと待て! ボクはもう1人でお風呂に入れるぞ!」

 

 お母さんと最後に入ったのだってずっと前なのに!

 人外とはいえ、姿は綺麗なお姉さんのナーねえと一緒にお風呂に入るなんてさすがに恥ずかしいよ!

 

「恥ずかしがってるそーくん、良い!!」

 

「目が怖いんだよ!! ちょ、来るな。そのワキワキしたてを止めろ1人では入れるって言ってるだろうって服を脱ぎ出さないでこっちに来ないでってだから来るなってばああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 そのあとのことは……記憶が曖昧だ。

 恥じらいがオーバーしてからは、されるがままだった気がする。

 

 唯一記憶に残ってること?

 ……ナーねえが肩にぶら下げていたのは、メロンと言うよりも小玉スイカだったってことだな。

 

 




【現在の逃走勝敗】
 2戦0勝2敗

 主人公はまだ性的なアレコレには目覚めてません。
 なので、恥ずかしさの方が勝ってます。
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