転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある? 作:折本装置
良かったらお願いします。
「じゃあ、改めてプランクを始めます。三十秒時間を測ってます」
【なるほどね】
【三十秒持つのだろか】
【今更だけど、時間測るタイプのやつはASMRに向いていないと思うの】
確かに、ASMRとはスローペースでじっくりと癒していくものだ。
だから、短時間しかできないプランクが向いていないと言われれば、間違いではない。
実際、立案した後でそこには気づいていた。
けれども、しろさんいわく「そこは大丈夫」とのこと理由はわからなかったがきにしないことにした。
きっと、何か彼女なりの考え方があるはずだから。
「さて、私は今現在君に対して、馬乗りの体勢になっております」
私の、ダミーヘッドマイクの頭部は横たえられており、顔面は真上にあるしろさんの顔を見ている。
囁き声を聞き取る必要があるので、相変わらず距離感が近い。
キスするような、あるいは本当にキスされているのではないかという距離でしろさんは囁いている。
「プランクをする際、私は君の上でプランクをするので、私が落ちちゃったときに下で支えていただきます」
【がんばる!】
【俺そんな力ないんだけど】
【もしかして、俺らも筋トレをする配信だった?】
ASMRにおいて大事なのは、没入感だ。
自分がそこにいるのだと錯覚させるのが一番重要。
そういう意味では、彼女の言葉選びは完璧だったと言えるはずだ。
「じゃあ、はじめるよ」
「よし、改めてプランクをやっていくよ」
「三十、二十九、二十八」
しろさんはプランクを始めた時に、カウントダウンスタート。
三十から数えて、数字が下がっていく。
私の、ダミーヘッドマイクの頭部はしろさんの下にいる。
なおかつ、私の顔面はちょうど上を向いている。
つまり、私の体の上に、ちょうどしろさんの体があるような状態である。
さらにいえば、プランクをしている以上、しろさんの顔は私のすぐそばにある。
その状態で、カウントダウンをされるわけでして。
色々とよからぬことを考えてしまいそうになる。
「二十二、ぐ、二十、じゅうきゅ、じゅうはっ」
疲れてきたのか余裕がなくなり、だんだんと言葉遣いが崩れてくる。
まずい、どうしよう。
すべての言葉が、息遣いが、体勢が、センシティブなものに感じられてしまう。
体ががくがく震え、重力に引っ張られて大きさを強調された胸部装甲が揺れ、顔や首から汗がしたたり落ちる。
聴覚と視覚。そして、想像力。
私に残されたものをすべて使って、今この瞬間こそを全力で味わっていた。
「さん、に、ひうっ、いち」
やがて、終盤に差し掛かり、既にしろさんの体力が限界に近づいていた。
というか、無理やり腰を上げて維持しているけど、もう筋トレとしては瓦解している。
ついでに、私達の精神も既にある意味で限界を迎えようとしていた。
また新しい何かに目覚めてしまうではないか。
「ゼロ」
『あふうううううううっ』
まるで、全身が痙攣したかのごとく、電流が私の脳内を駆け巡る。
吐息交じりのカウントダウンは、少なくともそれだけ私にとっては刺激が強かった。
そして、それが終わった瞬間、しろさんは体勢を崩し始める。
自重を支えきれなくなったのだろう。
音を立てすぎないように膝をつき、そこから太腿、体、腕、頭の順にマットに体を横たえていく。
さすがにそこだけは譲れなかったのか、なんとか私に当たらないような体勢で着地。
だが、それはしろさんの顔が私のすぐ近くにある状態。
寝転がっている私に覆いかぶさるようにして、しろさんは倒れこむ。
何かをした後のように、息を荒くして。
「はあ、はあ、たった三十秒って侮ってたけ、ど、本当にきついね」
回復していた状態から一気にまた元に戻ってしまったしろさんを見て、私は言葉が出てこない。
それは視聴者さん達も同様らしく。
【ああ】
【ふう】
【最高……】
【この三十秒でここまでやってくれるなんて】
みんながみんな、しろさんの全力に感じ入っていたということだろう。
「さて、こんな調子なんだけど、ここから最後に腕立て伏せをしていくよ」
【お、いよいよか】
【これで終わりかあ】
「いやいや、すみませんね。もう、腕が上がりそうにないんですがまあがんばろうと思います」
腕立て伏せ、またの名をプッシュアップ。
腕や胸筋などを鍛えられるトレーニングだ。
ちなみに、女性の場合は胸筋を鍛えるとバストアップ効果などもあるらしい。
正直、しろさんには是非とも鍛えていただきたい。
別に変な意味は全くないけどね。
変な意味は全くなくて、ただ健康でいて欲しいというだけで。
「腕立て伏せも、上体起こしやスクワット同様十回やらせてもらうよ。はじめます」
しろさんは、手を肩幅まで広げて私の頭の横に手を置く。
「いーちっ、んっ、これ、維持するのもきつくない?」
【あっ】
【気づいてしまったか】
【最後の最後にとんでもない試練が】
【かわいい】
「くっ、んっ、にーいっ、さーんっ、しーいっ」
【ちょっとペース早くなってない?】
【きつすぎて早く終わらせようとしている】
【余裕がなくなってるみたいでえっっ】
視聴者の皆さんも、かなり喜んでいらっしゃるようだ。
ただ、私としてはそれどころではない。
しろさんが動くたび、しろさんの胸部装甲が先ほどの比ではなく揺れ動いている。
元々、Vtuber活動を始めたころからかなり大きかった。
そして、この一年半ほどで、さらに成長した。
禁断の果実が、目の前でアダムを誘惑するかの如く、今私の目の前でしろさんのしろさんが弾んでいる、揺れている、誘っている。
『お、おおう』
視線が、唇と胸部を無限ループしてしまう。
柔らかい体が、筋肉と関節の動きに合わせて弾み、口から息を漏らす。
それだけのことなのに、どうしようもなくあるはずもない心臓がばくばくと拍動するような感覚がある。
「ご、ろくっ、ななっ、はちっ、きゅうーうんっ」
それだけではない、しろさんの体が私の上で上下に動いているため、まるで本当に
実際は、ただの健全な運動でも、私達の曇りしかないまなこと、この特殊な体勢ではそうとしか思えない。
「じゅうっ、ぷはあっ」
またしても、しろさんが私の傍に倒れ伏す。
「お疲れ様、今日はもう終わりということで、おやすみなさい」
【お休みなさい】
【お休み、うっ、ふう】
【おつねむ―】
【おつね、ふぅ】
コメントの反応を見る限り、今日の配信はかなり好評だったようだ。
めちゃくちゃ攻めた企画だったからね。
◇
配信が終わっても、文乃さんはマットから動こうとしなかった。
吐息が耳に当たって、こそばゆい。
なんだか耳が熱い気もするし。
『お疲れさまでした』
「うん、ありがとう。もう一歩も動きたくないや」
『私もちょっと疲れました』
「え、なんで?」
『ええと』
その後数分間、私は言い訳をすることに全力を注いだ。
数分というのは、メイドさんたちが文乃さんを抱えて、そのままベッドに運んだからである。
『お疲れさまでした、おやすみなさい』
そんな私の声は、誰の耳にも届かなかった。
彼女の、いつも通りのかわいらしい寝息だけが、部屋には響いていた。
まさか筋トレを四話にわたってやることになるとは。
今回は、マシュマロでのリクエストに応えた回となります。
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Vtuberの方だけ知っていた
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どちらも知っていた
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どちらも知っていたし、何ならやる側だ