転生したら、Vtuberのダミーヘッドマイクだったんだけど質問ある? 作:折本装置
久々に、ASMRも告知も一切関係ないコラボ配信をした翌日。
「こんばんながねむー。永眠しろです。そして」
「はい、がるる家長女の天使羽多です。今日はよろしくお願いします」
しろさんに続くのは、彼女より少し低くておっとりした声。
なれど、力強くはきはきとした声。
メイド服しろさんのLive2Dの隣で動いているのは、桃色の髪と白い服、白い羽の天使。
『天使の歌姫』天使羽多さんである。
今日は、『ZENITH』というFPSを一緒に遊ぼうというコラボ企画となっている。
しろさんも、時折ソロで配信したり、がるる先生とコラボ配信したこともあるゲームだ。
こういうゲームのいい点は、そのゲームが好きな人達と取り込めること。
そして、同じゲームをやっているVtuberさんとコラボするきっかけになることだ。
どうしたって、やっていることがまるで違う人とはコラボしにくい。
実際、それが原因で裏では仲良しなのに表ではコラボできなくなった、という事例も聞く。
お互いに、やっているゲームが多少なりともかぶっているのは幸運かもしれなかった。
「久しぶりのコラボですもんね、いつ以来でしたっけ?」
「ええと、凸待ち以来ね。……ちなみに、これ話題に出して大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですよ」
【初手から危なっかしくてワロタ】
【プレイングも危なっかしいのに】
【おい事実陳列罪だぞ】
余談だが、コラボ配信前にはきちんと双方NGの確認をしあっている。
事前の打ち合わせは、そういう意味でも大事だ。
ラーフェさんとの打ち合わせが一番大変だったな。
とにかくギリギリのラインを攻めようとするせいで、ギリギリまでガイドラインを定めなくてはならなくなった。
下ネタに特化したVtuberさんと今後コラボすることになったら、活用できるのかもしれない。
ラーフェさん以外に使うような状況には陥って欲しくはないが。
いや本当にお願いしますよマジで。
最悪、ナルキさんあたりを緩衝材にして何とかしてもらおう。
これ以上、しろさんに汚れて欲しくない。
「そう考えると結構期間が空いちゃったよね」
「私はまだ鮮明に覚えてますよ。なぜかイケボで口説く様に指定されたことを」
「しろちゃん、そういう系のASMRはやらないよね」
『確かに』
おっと、つい声が漏れてしまった。
先日ナルキさんたちに指摘されていたが、しろさんはあまり永眠しろというキャラクターから外れたロールプレイをあまりやりたがらない。
多分、無理して演じているとかではなくて自然にやっているからなんだろうな。
しろさんと文乃さんの間にギャップはほとんどないし。
オーラは違うんだけど、それはあくまでも集中しているだけというか、別人になるわけではないのだ。
視聴者を癒したいのも、救いたいのも、感謝しているのも、大好きなのも、全部本音。
死神を名乗るのだって、元は自虐と自戒を込めて、今は誰も死なないでほしいという祈りを込めてのもの。
早音文乃さんは、永眠しろというキャラクターをロールプレイしているわけではない。
彼女の本心からの言葉で、あるいは挙動で私に向き合っている。
だから、まるで別のキャラクターを演じるということへの習熟度は意外にも低い。
むしろ、よくセリフリクエストに対応できたな、と思うくらいだ。
【よくぞ言った羽多さん】
【羽多ちゃん、有難う】
【実際あんまりないよね】
視聴者からも突っ込まれている。
「まあ、そうですね。全然やってないですよね。やっぱり需要があるのかなあ?」
「それは絶対あるよー。コメント欄のみんなも心待ちにしてるっぽいよ?」
【待ってます】
【楽しみにしてます ¥2000】
【頼む、いろんなシチュエーションボイスをください】
「まあでも、メイド服を手に入れたので、メイドとご主人様のシチュエーションASMRは何回かやりたいなと思っています」
「ああ、そういえばまだ使ってないもんね」
「あれ、しれっとASMR全部観てるみたいな発言しませんでした?」
「全部は見てないけど、大体は見てるよ?」
「『えっ』」
あとしろさん、まだ私聞いてなかったから心の準備とかできてないんですけど。
本当にやるんですか、メイドさんASMR。
心臓のストックを用意しておかなくては。
「それにしても、羽多さんがゲームをするだなんて、意外でした」
「私だってゲームくらいするけどね」
「配信でやっているイメージが全然なかったので」
羽多さんの活動は、ほとんど歌配信と歌動画である。
たまに、雑談やASMR配信をやることはあっても、ゲーム配信をやっているところなどまず見ない。
なお、ゲーム画面はカジュアルマッチであり、二人ともダウンしており、視聴者一人が二人を回復しなくてはならない状態になっていた。
マッチが始まって二分の出来事である。
「たまにやることはあるけど、正直年に一回くらいのペースでしかできないのよね」
「それはまた何でですか?」
「単純に私がゲーム下手すぎるから苦情がすごくて。あと、歌とかASMRをやって欲しいって気持ちもあるみたい」
「なるほど」
実際、同じ配信者であってもコンテンツへの需要には偏りがある。
ナルキさんで言えば最も人気があるのは他の配信者とのコラボであり、しろさんで言えばASMR配信だ。
そして、羽多さんの場合は歌配信への需要が最も高い。
「まあ、でもコラボ配信の時はこうしてゲームをすることもあるんだ。ソロでやったのはたぶん一回だけなんじゃないかな」
「なるほど。私も同じですよ。あっ、全滅してましたね」
実際、羽多さんはゲームが下手だ。
がるる先生のようにシンプルにセンスがない、という感じではなく、ゲームそのものに慣れていないような動き。
端的に言えば、コントローラーやキーボード―のどこを押せばゲームキャラクターがどう動くのかを覚えきれていない人の動きだ。
多分、経験さえ積めばどうにかなるタイプだと思うんだけど、配信上で経験積めないとなると難しいだろうな。
歌を軸に据えている関係上、そこまでゲーム配信ができないというのは仕方がないことだし。
「じゃあ、今度裏でやりませんか?」
「え、いいの?」
「はい、まあ私も人に教えるとかは出来ないんですけど、遊ぶくらいなら」
まあ、すでに友人通り越して家族になっていたりする間柄だ。
配信無関係に通話することもあるし、そこにゲームが加わってもいいだろう。
「しろちゃんはさ、ゲーム配信とかやってたりする?」
「やりますけど、私の場合ゲームASMR配信なので苦情がくることはないかもしれません」
「あー、なるほど。ちゃんとリスナーさんの需要とすり合わせてるんだ」
「というより、私のやりたいことがASMRなので、それをずっとやってるってだけなんですけど」
「わかる。私も、歌が好きで歌ってるだけだからね」
羽多さんは、元々U-TUBE上で歌い手として活動をしていたらしい。
ただ、あまり人気が出ていなかったときに、今所属していたVtuber事務所から打診を受けていた。
そしてVtuberとしてデビューし、今に至るというわけだ。
「色々やりたいことはあるから、色々やってはみるけどさ、それでも軸はブレさせないようにって決めているんだ」
「軸、ですか」
「うん、私の夢。いつか、絶対に達成したいって思っている目標」
「それは?」
もしかしたら、彼女が配信で言ったことがあったかもしれない。
ただ、しろさんも私も聞いたことがなかったので尋ねた。
登録者数百万を超え、メジャーデビューをしてオリジナル曲やCDを出した『天使の歌姫』の目標とは何か。
「それはね、いつか世界中を回ってソロライブをすること」
少しの恥ずかしさも見せず堂々と、彼女は己の夢を語った。
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